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ありがたや…
まさか岩下×荒井を書いてくれる方がいらっしゃったとは

せっかくなので自分も書いてみました
中途半端な出来&夜中のテンションで書き上げたものです
お時間のある方はどうぞ↓

空は曇っている。今にも一雨来そうな天気だ。



僕は無意識に、人を探していた。
あの集会の日に初めて会った、3年生の女生徒。
艶のある黒髪と陶器のように白い肌をした、岩下明美と名乗った女生徒を。
……どうして彼女に会いたいのか、自分でもあまり分からなかった。
純然たる好奇心のようにも思えたし、漠然とした興味にも思える。要するに「何となく」、僕は岩下明美を探していた。



少し校内をふらついても彼女らしき人は見つからなかったので、仕方なく屋上へ行くことにした。
雨が降りそうな時に行く場所ではないけれど、ひょっとしたら彼女がいるかもしれない。そんな一縷の思いを抱きつつ、僕は屋上に足を踏み入れる。

―――雲が垂れ込めた空と、湿っぽい外気がうっとおしい。
やっぱり来ないほうがよかったかも、と思いつつも周囲を見渡す。一歩、二歩と踏み出し、人影を探していくと、
「……あ」
いた。
一目見ればすぐに分かった。透明な水の中に墨汁を垂らしたような存在感が、脳内にどっと押し寄せる。
人気のない、今がチャンスだ。
慌てないよう、ゆっくりと歩きつつ、偶然を装って彼女の隣に立ち止まった。
「…こんにちは」
「…あら。あなたは…」
「2年B組の荒井昭二です」
柵にもたれかかった体を起こして、彼女は僕の方を見る。
「覚えているわ。集会に来ていたわよね?」
「はい」
「やっぱり。そうだったわね…」
正面に向き直り、また、景色を見た。
「…何を見ているんですか?」
「……空。雨、降りそうね」
「ええ」
沈黙。
風のない屋上で黙ったまま、しばらく僕らは空を見ていた。
「…………ねえ、荒井君。どうしてここに来たの?」
長い沈黙の後、彼女が口を開いた。
「雨が降りそうなのに」
「…ああ、その、…何となくここに来たいと思ったんです」
「…そう」
ふう、と息をつく。そして、蒸し暑さにうんざりしたような顔で、長い髪をかきあげた。
「荒井君、私の家に来てくれないかしら?」
「え?」
「どうしてか、聞きたい?……何となくよ」
にんまりと微笑んで、足元の鞄を拾い上げて昇降口へと歩いていく。
僕はそれに誘われるように、その後について行った。