マサキ君が料理を食べるのを、厨房から見つめてみる私。
歳の差が、とか考えてもみたけど、それは言い訳にもならない。
私は、マサキ君が、好きなのだ。

マサキ君がラーメンを食べ終え、肉飯に取り掛かろうとした時だった。
私の携帯電話に一通のメールが届く。
それを見た私は、胸が弾けそうなぐらいに高鳴った。
『俺は○○の親父さんとメシに行くからな』。
それは父さんからの、最低限の連絡を示したメール。
幼馴染みというおじさんと食事に行くのはよくあるが、今回は違うのだろう。
つまり、前に進めぬ私の背中を押すためのことだ。
携帯をパタンと閉じた私は、覚悟を決めた。

「ね、ねぇ、マサキ君?」
「は、はひっ!」

レンゲに乗せた肉飯を溢しながら、マサキ君は私のほうを向いてくれる。
いつも家で一人だけで食事をしている姿が気掛かりだっただけなのに、気がついたらいつも気にしてしまう少年。
イケメンとは言えない。
だけど、不器用な笑顔が悲しくて、たまらなくいとおしくて。

そんな彼に、私は精一杯の想いを振り絞って、愛の言葉を呟いた。
何を言ったか、なんて頭にない。
無我夢中で、真っ赤に燃える頬だけが私の全てだった。
気がついた時には、私はマサキ君を抱き締めていて、マサキ君に抱き締められていた。
受け入れられたのか、拒絶の抱擁なのか、解らない。
ただ泣きじゃくるマサキ君を、私も泣きながら抱き締めていた。