「――も、も、申し訳ない。本当に申し訳ない」
「やっちゃったものは仕方がないわ。そんなに謝らないで下さい」
額を床にこすりつけているラルを見おろして、リン子は苦笑いした。
「し、しししかし。もしも、もしもその……」
「もしもの時は、まあ、なんとかします」
「わ、私が責任を取りますっ」
「ふふふ。そうね」
すっ裸で土下座しながらまじめな顔をするラルがおかしくて、リン子は吹き出した。
「その時は……店ごと買い取ってもらっちゃおうかしら」
「そ、そうですな……ハハハ」
「ふふふ」
「ハハハハ……」
ラルはそそくさと浴衣を着ると逃げるように部屋を出て行った。
リン子も浴衣を着てひとつ息をついた。まだ下半身に、全身に、熱い昂ぶりが残っている。
くせになったらまずいなあ――。
ふと、寝床に目をやると、眠っているチナの顔から何か上気したものを感じた。
「ははーん」リン子は意地悪な笑みをうかべて寝顔に顔を近づけた。
「チナちゃん。起きてたでしょう」
チナはぴくりと小さく肩をふるわせたが、目を閉じたまま何も答えなかった。
「ふふふ。いいお勉強になったかしら?」
チナは固く目を閉じたまま何も答えなかった。リン子はまた吹き出した。

 (終)