夕日が落ちる頃に、教職員が帰宅をし始める。
最後の一人が校門に鍵を掛けると、校内は静かになった。

 西村と北本は、やっとの思いで掃除箱から転げ出る
長時間を起立の姿勢で耐えていた二人は、ヘトヘトに疲れてるようだ。

 それでも二人は、全力疾走で校舎の窓から出ると
頑丈そうな校門に無理やりよじ登り、校外に飛び出た。


「――やったな、西村。 バレなかったぞ」ハァハァ
「ああ、上手くいった。 北本、今日はラーメンでもおごるよ」ハァハァ
「そっか、……なら、焼きソバの大盛りがいい」ニヤリ
「おぉ、から揚げも付けようか? みんなには秘密だぞ」ウン
「ふっ……、秘密なのか?」ニヤニヤ
「うん、秘密だ。 俺達だけのな」ウンウン

「ふふっ、ふふふふ」
「ははっ、はははは」


 二人は月夜の中で、怪しい笑いを繰り返しながら歩きだした。
 北本が、西村に軽い頭突きをかまして笑う
西村は腰に隠してあったノートで、北本の頭を叩きかえして笑った。

 月も笑っていた……かもしれない。


――了――