名前はマジカ、只今修行中の魔法使いの少女である。
「………」
魔法使いにとって集中力とは必要不可避のものだ、それこそ稀代の天才といわれる魔法使いも
これを切らすとただの凡愚と化してしまうだろう。
修行の内容としてみれば初歩中の初歩ではあるが、これを疎かにすれば魔法使いなんてものは
当然なれるわけはないのである。
「っ!ハァッ!」
と、修行の最中マジカは突然閉じていた目を見開くと中空に電撃を放った。
初等魔法サンダーである。
「やったぜ!」
「何をやっとるかぁっ!」
サンダーを放ちガッツポーズをとるマギカに様子を見守っていた師匠が突っ込みを入れた。
「え、だって耳元でぶんぶんと蠅がうるさく…」
「蠅位で集中切らすなぁ!ただでさえ周りに蚊取り線香焚いて楽な環境でやってるつーのに!」
「ししょー、そこは『サンダーで蠅を撃ち落せるようになったか、成長したな』くらいの言葉
で褒めてあげないと」
「うるせぇよ!効果範囲広げて撃ったらそりゃ当たるよ!威力だって全然満たしてないしな」
「でも蠅を…」
「ただの虫をやってもなぁ」
と、マジカの師匠は肩を落としてふぅっと溜息を吐いた。
このマジカという少女、魔法使いの修行を始めて早2年。その実力は大抵の魔法使い見習いが半年で
到達するレベルにようやくなったくらいのものである。
なお、これは扱える魔法の種類という話であって威力に関しては問題外(悪い意味で)である。
「なんでこう、お前は雷系統は範囲広くしても絞っても同じ威力なんですかね。」
「それは逆にそっち方面に向いてるって事なんじゃないですかね」
「威力の下限が基準の奴がそれをいうかなぁ!?」
マジカのサンダーの威力は常人からしたら『ん?なんかパチッときたぞ?』位のものである。
相手が蠅だからこそ、落とせたもののしぶとさには定評があるGさんクラスになるとちょっと動きを
止める位しか効果がない。
因みに他の系統はというと…
火系統:火打石なんていらんかったんや
水系統:うわ、びっくりしたなぁもう
氷系統:夏に氷室要らずって便利ねー
風系統:いいそよ風やなー
土系統:自分で投げた方が威力あるよね
位なもので、精々が暮らしに便利になる程度のものである。少なくとも、実践に耐えうるレベルではない。
「あ、すいません。そろそろ洗濯物乾く頃合いなんで修行切り上げちゃってもいいですかね」
「家事の片手間に修行すんなよ!!」
と、まぁ。マジカの日常はこんな感じである。さて、ここまで見ていただければわかるとおりマジカには
魔法の才能がない。実際、今も家事の片手間で座禅を組んでいただけなのである。
加えていえば、系統魔法がまともに使えるようになったのもここ最近の事でありそれでいて威力も雀の涙である。
このようなクラスの人間は元々魔法なんてものは扱えるものではない。魔法は体内に魔力素と呼ばれるものがないと
使えない(抵抗は出来る)、これを体内で生成できる者には個人差がありまるっきり0の者が居ればそれこそ尋常では
ない量の魔力素を生み出すものがいる。そしてマジカは前者にあたる人間であった。
魔力素が0の人間がいくら魔法の鍛錬を積んでも、魔法のレベルはあがらない。レベルをあげるためにはまず体内で
魔力素を貯める、もしくは生成できる体に作り替えていかなければいけない。
そして、その方法とは勿論。