出来たんでどうぞ

夜の洋館の一室
数人の女が口々に非難を浴びせかけ、とげとげしい視線を投げつける。
その視線に何か別のものが含まれていることに気付ける者はなかなかいるまい。
ベリーは全く身に覚えのない非難にとまどっていた。
「証拠」として突きつけられた デジタルカメラは彼の所持品ではなく、そこに写っていた画像は それこそ彼に覚えがあるはずがない。
「ほんっと、さいてーだよね。下着の盗撮なんかして‥‥犯罪だよ、これ」
「変態やったんやね」
「黙ってないで何とか言いなさいよ!」
三人の女もとい、モカ、シフォン、アズキは口をきわめて非難する。
だが身に覚えがないのだからどうにもならない。
反論したところで、理屈が通じそうな雰囲気ではなかった。
そしてどうあっても 彼が犯人だという決めつけは動きそうになく、空気はますます不穏になってゆく。
ときおり「警察」という言葉が使われるようになりはじめる——が、元々世間一般に空き家と認識されている洋館に警察が動くことは不自然なことであり、その点についてもベリーは少しずつ疑念を懐き始めていた。
「どうすりゃいいんだよ・・・」
彼は後ろにいるチェリーの顔を見た。
「いきなり私に振らないでよ。少なくとも誠意を示すしかないんじゃない?」
「誠意って何をしたらいいんだ?」
「そうね、たとえば——」
モカが挙げた「誠意」の示し方は、常軌を逸したものだった。
だが、それですべての合点がいった。
ずさんな濡れ衣も、警察の名を出す脅しも、 そして非難に混じる奇妙な視線の意味も。
モカが挙げた解決策——それはあろうことか、セックスだった。
彼女は言う。
ここにいる全員を完全に満足させることができれば、 君の罪は無かったことにする、と。
タチの悪い冤罪を わざわざでっち上げるあたり、彼女らの性根はあまり素直ではなさそうだ。
それらを見抜いたベリーは、困惑の表情から悪魔らしい不敵な笑みに一変した。
「なるほど、そういうことか。いいぜ。全員まとめて満足させてやるよ。嫌になるほどね」