迅×沢村投下します
でも割りと迅の片思いです



業務を終えた響子がロビーを通りかかったとき、自販機の取り出し口に
手を突っ込んでいた迅と目が合った。
「お疲れさま」
迅は取り出したばかりのペットボトルのお茶を手に、ゆっくりと響子に近付き、
そしてそれを差し出す。
「ありがとう」
少しばかり逡巡した響子が手を伸ばしたが、寸でのところでペットボトルが逃げた。
迅を見上げると、いたずらっ子のように笑っている。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
……やっぱり。響子はそう思った。目の前の男が今から何を言い出すか、
大体見当がついている。小さい溜め息が出てしまった。
「よかったら、これから――」
「だめ」
迅の言葉を遮って、響子は断りの文句を言う。
「もうやらないって決めたの。前にも言ったはずだけど?」
責めるような視線を送りながら、迅の手からペットボトルを奪う。
買いたてらしく、まだ温かい。自分の業務が終えてここを通る時間が
サイドエフェクトで分かっていたのだろうかと考えると、僅かだが
あまりいい気分にはならなかった。