「・・・というわけじゃ」
少女は喋り終えると満足気にこちらを見つめた
俺は、彼女に対し率直な意見を述べる
「ごめん、聞いてなかった」
「なんじゃとー!!」
「だって、長いんだもん」
彼女が怒るのも無理はない、自分の話を真剣に聞いてくれないのは腹立たしいだろう
しかし、こちらの身にもなってほしい
俺は、難しい話とか一人語りとか、そういう話は苦手なんだ
老人の話というのはどうしてこんなに長くなるのか・・・
おっと、誤解があると困るので言っておこう、目の前の少女は
実は俺より年上だ、それもかなり
詳しい事は分からんが、本人がそう言うんだからそうなんだろう
「もっと簡潔に言ってくれよ」
「だいぶ端折ったつもりじゃが?」
「長い、3行で頼む」
「単細胞か!」
少女はまた大声で怒鳴った

「つまりじゃな、大昔に王様がおったのよ」
「ふんふん」
「その王様は、ある神様の力で『触るとなんでも金になる』能力を貰ったのじゃ」
「ある神様?」
「諸説あってな、太陽神アポロン、または豊穣と酒の神ディオニュソスらしい」
「え?どっち?」
「だから諸説と言っておるじゃろ、どっちもじゃ」
「だって気になるんだもん」
「アポロンの場合は罰として、ディオニュソスの場合はお礼としてらしいの」
「ああ、じゃあディオなんとかさんで」
「?」
「だってお礼の方がよくね?」
「・・・続けるぞ、王様は手にした力でなんでも金に変えた」
「いいね!」
「しかし、触るだけで金になるのじゃから、何も食べられなくなったのじゃ」
「あ、俺やっぱりアポロンさんにするわ」
「どうしたんじゃ?」
「だって、お礼に貰った力でそんな事になるなんて嫌だし」
「・・・そうか」
彼女はなぜか眉をひそめた
「王様は後悔して、金になったものを全て元に戻してとお願いしたのじゃ」
「全部はもったいなくね?」
「王様は、金にする力で自分の娘まで金に変えてしまっていたのじゃな」
「全部はもったいなくね?」
「すると神は、王様の願いを聞き届け、金にする力を失わせたのじゃ」
「もったいね」
「しかし、王様の耳を『ロバの耳』にしたんじゃ」
「・・・はあ?」
俺は首をかしげた
「質問、どうしてロバの耳にしたんですか?」
「これも理由があってな、アポロンが自分の音楽の腕を馬鹿にされたからという話がある」
「じゃなくて、どうしてロバなの?」
「多分センスのない耳だという意味じゃろ」
「ロバフェチ?」