男垂涎のショーは始まりと同じく唐突に終わった。
「つぎはー、○◎駅ー」
 車内アナウンスが合図だったように、急におっぱいの揺れが止まる。
 「あぁっ、いやぁ…あら?」
 そう言った八百万の顔が名残惜しそうだったのは男の勝手な妄想だろうか。
「あれ?終了??」
「いやぁいいもの見れた、眼福眼福」
「お前少し手を伸ばせばよかったのに」
「いや、俺まで敵になる気ないし。」
 周りの男たちも怪訝な顔をしながら、通常通りに戻っていく。
 出久は少し罪悪感を覚えながらも、脳内画像フォルダにさっきの画像を焼き付けていた。
 ガンッ。「痛っ!」
 そんな出久の向こう脛を蹴った奴が居た。
 顔を上げると見覚えがあるので、出久はそのまま名前を呼ぶ。
「あれ、物間くん?よくも!」
「あぁごめんごめん、下向いてたから蹴っちゃった、ごめんねデクくん…だったっけ?」
 ひさしぶりにデク呼びにショックを受ける。
 物間は思いっきり小バカにした口調で言ってきたからだ。
「緑谷…です」
「あぁそう?ところでデクくん」
 物間はそのまま笑顔で言う。
「さっきの見た?」
「え!?みみみ見てないよ!?」
 さっきの、と言われて八百万のことを思い出した出久はとっさに否定してしまう。
「えー?じゃあ見間違いかなぁ、
さっき電車の窓からオールマイトが人助けしてたように見えるけど
…オールマイトフリークのデクくんが見てないなら見間違いだったんだね。」
「う、ううううううんそうだと思うよ!?」
 クラスメイトの痴態を見てて他所なんて全く見えませんでした―――
 なんて言えない出久は少し後ろめたく思いながらも勢いよく首を振った。
「そっか、そうだよねぇ。ところで今日の午後の実戦訓練、A・B組の合同だよね、負けないからね」
 物間がそう言う。その言葉にはクラスメイトでよく見かけるヒーローに対する真摯な思いを感じ取り、出久は(もしかしてこの人も悪い人じゃないかも?)と思った。
 しかしその次、彼が言う言葉に凍りつく。
「ところでさ、SOSがあったら助けるべきだよね、いつでも。」
 ヒーロー志望っていうのならさ。

(ば・・・バレてる!?八百万さんのこと見てて助けなかったのを!?)
(あれは葉隠さんでしたかしら?また、していただきた…って私何考えてるの!?)
 A組二人はその日の午後、色々考え込んで集中できず、
 実力をだせずにB組にあっさり負けてしまった、とさ