すやすやと眠る初音殿の傍らで、
ちびちびと梅酒を舐めつつ、今度の曲の楽譜データなどを眺めつつ、小一時間。

「んー……。」

と、伸びをする初音殿。どうやら、目を覚ましたようだ。

「気が付かれたか?」
「あ……、はい……。すいません……。」
「いやいや、こちらにも非はあったゆえ。
 大丈夫か?気持ち悪い、とかはないかの?」
「それは、だいじょぶ、ですけど……。ちょっと暑いです……。」

そう言って、初音殿は掛け布団をばさ、と
上半身まで跳ね除けて、手でぱたぱたと扇ぐ仕草をした。
確かにまだ少し酩酊しているようで、語尾が弱々しく、顔も赤い。

「あまり大丈夫そうには見えんがの。」

初音殿の頬に、手を当ててみる。

「あー……。」
「ん?どうした?」
「手、冷たくて……、気持ちいいです……。」

初音殿は、頬に添えられた手に自分の手を重ね、
恍惚の表情を浮かべてそう言った。

「まあ、心地良いならなにより。」
「……んー。」

すると、初音殿はこちらに手を伸ばしてきた。

もう一方も差し出せということか?
そう解釈して、もう一方の手も反対側の頬に置き。
わしの手が初音殿の両頬を包み込むような形になる。

初音殿の頬も手も、熱を帯びて熱いなあと、
そんなことをぼんやりと考えていたら。

初音殿が不意に、ぺろ、とわしの手を舐めた。