「あぐ!……痛ッ!…」
(こ、このままじゃ…私、し…死ぬ……かも…)

環は既に満身創痍、あと僅かも攻撃をくらったなら、即死すらあり得るほど弱っていた。
「んじゃトドメ、と!」

「――!」

環はあっさり死んだ。

そして―

「………え?」

まるで何事もなかったかのように蘇生、復活した。

「実は俺、この世界じゃ(道具屋)の役割を与えられててな」
「?…そ、それが何だって言うのよ?」

「つまり今姉貴が死亡状態から復活できたのは、俺の持つこのアイテムの力によるもの、ってわけ」
雄二は、手に持つ小さな小瓶を環に見せる。
「なんですって?…」

「そして―」
雄二はがさごそと後ろに隠してあった袋の中から、一見、普通に現実世界の側でも
市販されているパンを取りだして、無理矢理、環の口に入れた。

「むぐ!……ちょっ!雄二!?一体何すん……ええッ?!傷が……治って…る?」
「この世界じゃ、どうやらパンは、体力回復や治療効果のある薬らしいんだ」

「な、何によそれ…随分といい加減な…」
気づけば、環の身体は完全回復していた。

しかし、それは――

「じゃ、じゃあ雄二。それを――」
「第二ラウンド開始、っと」

再度、強者が弱者をなぶる地獄絵図の再現を意味してもいた。
「がッ?!……ぐ!……」
(…ゆ、雄二……う、嘘でしょ?……あ、あははは…ま、また私、死ん―――)

激痛から死へ。そして強制蘇生されてそのループ。環の精神は、もう限界を迎えていた。

「…お……お願い……もう………このまま…し、死なせ…」
「ん〜、よく聞こえないな〜」

環は。
生まれて初めて、実の弟に心底から恐怖を覚えた。