トントン―
深夜、雄二の部屋にノック音が響く。
「ど〜ぞ」
「…」
現れたのはタマ姉。
「もう、何もしないぜ」
「そうね。できない、でしょう?」
「…んじゃ、オレの首でも絞めに来た?」
環はベッドに横になっていた弟の布団に、さも当然、当たり前のように潜り込む。
「それも悪くないかもね…でも……」
「悪いが、単に(タカ坊の代理)、てなら死んでもお断りだぜ。いくら愚弟なオレでも、な」
(ああ…やっぱり……わかってたんだ、雄二には……)
「ふふ……処女かどうか以前にね、「面倒見がいい兄貴」みたいに思ってるから、て
……私、タカ坊に手酷くフラれちゃった…」
「自業自得、だろ?」
「…うん、うん!……だよ、ね…あれだけ二人と一緒にいて、昔っから「ガキ大将」やってて…
今さら「幼馴染みヒロイン」枠面、ってないわよね……はは……は、ぐっ!」
最後の方は涙声。雄二は環の頭を、強引に胸の中にしまい込むように引き寄せた。
掛け布団に、環の号泣と嗚咽が染み込む。
(…―――!!――)
「…私が、タカ坊に振り向いてもらえない、て確信が…あったの?」
「う〜ん、逆にいえば、このみ側との絆強さが際立ってて目についた、て方が正解かな」
「最低男……」
「じゃ、今日はもうオレ寝るわ」
「本当に最低、ね…上げ膳、据え膳を知らないの…」
環の寝巻きの下は、なかった。
「私を……とことん淫乱な牝にする計画だったんでしょ?……」
「否定はしない」
環は、雄二の首の後ろに手をまわして。
「…ハマってあげる、その計画に。それに「ご主人様」……もう私の肉体は貴方無しじゃ――」
いつかの凌辱劇を、自ら再演し始めるのだった。
―END.