ガンダムヒロインズMARK ]Y [無断転載禁止]©bbspink.com
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0001名無しさん@ピンキー2016/02/13(土) 12:36:34.15ID:P5MOE7O9
語るも良し!エロパロ書くも良し!
ガンダムの娘ッ子どもで妄想が膨らむ奴は集え!

ガンダム以外の富野作品やGジェネ、ガンダムの世界観を使った二次創作もとりあえず可!
で、SSは随時絶賛募集中!

■前スレ
ガンダムヒロインズ MARK ]X
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1385961055/

■関連スレ
ガンダムビルドファイターズでエロパロ
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1381888018/
0002名無しさん@ピンキー2016/02/13(土) 12:38:35.75ID:P5MOE7O9
■過去スレ
ガンダムヒロインズ
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1007/10076/1007655458.html
ガンダムヒロインズ MARKU
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1040/10405/1040508424.html
ガンダムヒロインズ MARKV
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1056/10568/1056852515.html
ガンダムヒロインズ MARKW
http://pie.bbspink.com/eroparo/kako/1071/10716/1071647163.html
ガンダムヒロインズ MARKX
http://idol.bbspink.com/eroparo/kako/1082/10821/1082193496.html
ガンダムヒロインズ MARK VI
http://idol.bbspink.com/eroparo/kako/1093/10936/1093639318.html
ガンダムヒロインズ MARK VII
http://sakura03.bbspink.com/eroparo/kako/1103/11032/1103211618.html
ガンダムヒロインズ MARK VIII
http://sakura03.bbspink.com/eroparo/kako/1111/11118/1111804843.html
ガンダムヒロインズ MARK IX
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ガンダムヒロインズ MARK,X ( 10 )
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133328333/
ガンダムヒロインズ MARK ]T
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149928068/
ガンダムヒロインズ MARK ]U
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169384276/
ガンダムヒロインズ MARK ]V
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1197866886/
ガンダムヒロインズ MARK ]W
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1250978555/

■公式サイト
SUNRISE official Site
ttp://www.sunrise-inc.co.jp/
機動戦士Zガンダム
ttp://www.z-gundam.net/

■SS保管所
機動戦士ガンダム Voice Of The Earth まとめリンク
ttp://www.eonet.ne.jp/~spiritshout/vote/top.html
フェニックステイル(小説)
ttps://novel.syosetu.org/35071/
フェニックステイル(画稿)
ttp://www.pixiv.net/search.php?word=フェニックステイル

■参考リンク
シャア専用辞典
ttp://www.geocities.jp/charsenyou_jiten/e/v.html#2
0003フェニックステイル第21話投下準備2016/02/13(土) 12:43:27.27ID:P5MOE7O9
本来なら第21話は今回で終わりとなる予定でしたが、文量がまた少し伸びてしまい、現在の投下規制ではもう一日必要になりました。

>>1>>2に投下規制の状況も書いておけばよかったですね。
0004フェニックステイル第21話2016/02/13(土) 12:44:28.91ID:P5MOE7O9
「うーん、浅い。やっぱ読まれてたかな?」
 シールドの後ろに『仕込んで』おいたジム・ライフルからリンが放った一斉射は、ザクUの左肩部スパイク・アーマーを吹き飛ばした。マゼラ・トップ砲を構えた僚機からの狙撃を、リンは軽やかに掻い潜る。
 編隊は崩さず、速度もまったく緩めていない。
 ネイサンとシエルに牽制のビームを撃たせる中に自機を紛れ込ませ、ビーム攪乱膜に守りを頼んで安心しきった敵を、近距離からの奇襲でまとめて一気に葬り去るつもりだったのだが。
「さすがにそこまで馬鹿じゃあないか」
 くすくすと笑うリンの眼前でマシンガンを構えたザクUが機位を整え、慌てふためいたように機動しながら反撃してきた。だが照準は狂い、火線は明後日の方角へ抜けていく。
 そして近距離戦なら、ビーム攪乱膜の効果も薄れる。
 閃光が煌めき、90ミリ弾に加えてビームの雨がザクを襲った。
 ビームライフルを速射モードに切り替えた、後続する二機からの射撃だ。ビームスプレーガンの系譜に連なるBR-S85は、近接戦闘での速射でこそ真価を発揮する。
 三機がかりの集中射撃で、リンの奇襲を生き残ったザクUは次々と被弾。降り注ぐ90ミリ弾と光の矢に右肩の防盾、そして左腕と左腿をあっけなく貫かれ、破孔からぱっと明るく爆炎を噴いた。
 マゼラ・トップ砲を装備していたザクUが、予備兵装らしきザクマシンガンに換装しながら応射の火線を開く。三機のジムUはあっさりと掻い潜って防衛線を抜き去り、先頭を行くリンに従って急旋回を掛けていく。
「おお命中、敵機小破! いや中破? やるねぇ、シエルちゃん!」
『どうも』
 わざとらしく弾んだ声でリンが賞賛しても、新配属の少女パイロットはつれない返事を寄越すだけだ。かわいいねえ、と微笑むリンに、不機嫌そうにネイサンが聞いた。
『俺も一発当てたんだが』
「知ってる。褒めてほしかった?」
『……今のを凌いだとなると、なかなか手強い。すぐには片付かないぞ。どうする、リン?』
「そうだねー。ジャックには悪いけど、船を抑えるより、まずはこっちの二機から料理しようか。もう敵さんの領域にずいぶん深入りしてる。まあ最悪、あのニュータイプだけ連れて帰れればいいよね」
『つまり、二機とも墜としていいんですね?』
 冷たい声音で少女が言った。リンが笑みを深める。
「おっ、いいね。行っちゃう? シエルちゃん、いきなり撃墜数二機稼いじゃう? やる気満々だねぇ! えらいえらい。帰ったら何かおいしいもの食べさせてあげるよ。何がいいかな? そうだなー……」
 リンは大きく弧を描いた急旋回を終え、シールドを構えた左手にビームサーベルを握り込んだ。大きく相対速度を乗せてぶつかり合う反航戦、一撃離脱はもう終わった。ここから先は巴戦だ。
 試し噴きしたビームサーベルのメガ粒子が、全天周モニターからリンの頬へと照り返す。唇を嘗めた。
「北京烤鴨(ペキンダック)なんて、……どうかな?」
0005フェニックステイル第21話2016/02/13(土) 12:45:19.51ID:P5MOE7O9
『ノーラ! 生きてる!?』
「だ、大丈夫っ。まだ、まだやれる……まだ、戦える……っ!」
 ノーラのザク・ファドランは、一瞬にして半身不随に陥っていた。
 四発の高速徹甲弾と三発のビームを浴びても、なお瞬時の機体爆散は免れた。
 だが左腕部と左脚部はビームと90ミリ弾に貫かれて大破。機体はAMBAC能力と兵装運用能力の大半を失い、その戦闘力を大きく低下させてしまっている。
 ビーム攪乱膜の守りに拠っていてさえ、これか。
 生き残れたのは単に幸運の結果に過ぎない。あとほんの少しの不運があれば、自分はこの三十秒足らずの間に、もう三回は死んでいた。
「う、うう……」
 冷たい恐怖にノーラは唸った。
 一瞬でファドランの機体を貫いたビームを、90ミリ高速徹甲弾の威力を思う。
 装甲を破ってこのコクピットに飛び込むそれらに五体をバラバラに切り刻まれ、あるいはメガ粒子の灼熱や融合炉の誘爆に、骨も残さず焼き付くされる瞬間を。
 ――次に来られたら、もう。
 時計を見る。援軍の到着予定時刻まで、あと四分三十秒。
 敵機の編隊が切り返してくる。
 ――保たない。
 MS戦でのビーム攪乱膜の効果を見たのか、ケンドー丸はなおコンテナをカタパルトで打ち出してくる。
 イオタがプチモビで操る甲板上のビームバズーカもジムUを狙って必死に旋回しているが、MSの機動性に追従できているようにはとても見えない。
『ケンドー丸を守る! 行くよ、ノーラ!』
「りょ、了解……!」
 片手にザクマシンガンを、そして片手にマゼラ・トップ砲を抱えたミリアム機が、ノーラ機を守ろうとするかのように前面へ出ながら敵機を追う。
 精密狙撃による攻撃を捨てて、制圧射撃による防御――時間稼ぎに徹するつもりなのか。震える声で答えながら、それでもノーラは機体を前に進める。
「ミリ姉っ、――あいつら!?」
 急旋回で機動してくる敵機が、ケンドー丸の格納庫へと流したティアーナ機へと急接近している。大きく目を剥いてノーラは叫んだ。
「ティアーナ!!」
0006フェニックステイル第21話2016/02/13(土) 12:46:48.18ID:P5MOE7O9
 シエル・カディスは冷たい殺気をたたえた瞳で、眼鏡とバイザーの下から静かに敵機を睨んでいた。
 ザク――ジオン公国の象徴たるMS。
 シエルの中でその機影は、ルウム戦役の忌まわしい記憶と分かちがたく結びついている。
 少女が生まれ育った家とコロニーを端から端まで焼き払い、混乱の中で乗り込んだ避難船を父と弟ごと沈めた核の炎。遊び同然に脱出艇を追って撃ち抜き、目の前で母の半身と命を奪った砲弾。
 その破壊と殺戮の全てが、このMSからもたらされた。
 天涯孤独で難民キャンプに放り出された十歳の少女に、銃後の世界は冷たかった。ルナツーから各地を転々とした末、たった一人で送り込まれた旧サイド6のコロニーは、露骨なまでに親ジオン派の空気に染まっていた。
 ――ジオンはスペースノイド解放の大義のために戦っているのだから、悪く言うことは許さない。
 辛いことがあるのなら何でも言いなさい。面接でそう優しく笑っていた転校先のエレメンタリーの教師は、シエルがあの日の記憶を必死に振り絞り、やっと口にした瞬間に豹変した。
 おまえは嘘を吐いている。ジオンの軍がそんな非道を行うはずがない。
 四つのサイドを潰したのは彼らが解放され、ジオンの理想へ従うことを恐れた連邦軍だ。あの無様な張り子の虎の艦隊が、正義を行うジオンの軍に敵わぬと知ってコロニーへ核を打ち込んだのだ。そうに違いない。
 皆さん、この子は重力に魂を引かれたスペースノイドの裏切り者、連邦の豚です。何を言っても信じてはいけません。
 ですが、許してあげましょう。彼女は連邦のプロパガンダに騙されているだけなのです。皆さんはこんな愚かなことを言う、悲しい子になってはいけませんよ。
 教師はそう公言し、誰もが彼女を冷笑し、群れで平然と蹴飛ばした。学校にも街にも、孤児院にすら居場所など無かった。
 シエルに出来たことは、ただ黙々と勉強し、自分を鍛え続けることだけだった。
 この手に知識と技術がありさえすれば、自分もジオンと戦える。避難船から脱出艇を出したあの船員の少女のように、連邦軍の兵士になれる。
 きっと、復讐できる。
 そして80年の1月1日、彼らはア・バオア・クー陥落と停戦発効の報と同時に掌を返した。
 ジオン礼賛の空気は雲散霧消した。表向きは。
 連邦軍が堂々とコロニーに駐留するようになって、教師も同級生もすべてを忘れたようにザビ家を罵り、未だに各地で破壊活動を続ける残党軍を嘲笑した。
 そして、そのまま同級の面子が一緒にジュニアハイへ繰り上がっても、彼らは裏でシエルを連邦の豚と呼ばわって嘲り続けた。
 人間とはそういうものなのだ、とシエルは思った。ひとり淡々と磨き上げた、彼らの追従を許さぬ並外れて優秀な成績と能力だけが、少女を支えるすべてだった。
 連邦軍のMSパイロット候補生試験にあっさり合格して教育隊に進んだとき、シエルは彼女に出会った。
 ちょっと呆れるくらいに胸の大きい、内気でおどおどした感じの少女。
 いろいろな意味でよくMSパイロットの適性試験に合格したなと思える少女だったが、なぜか彼女はシエルを初めて目にした瞬間に瞳を輝かせ、さらに彼女がルームメイトだと知るや、すごい勢いで抱きついてきた。
 制服の胸で窒息しそうになったので、とりあえず足技で倒した。
「えっ、あなたもルウム出身なの? 私はテキサス! お父さんが無茶苦茶な人で、開戦後も退避勧告をぜんぶ無視してギリギリまで残ってたんだけど……終戦前の戦闘で、とうとうコロニーに大穴が開いちゃって。
 だから私ね、生でガンダム見たことあるよ。本物の、アムロ・レイが乗ってるガンダム! ……まあ遠くから、ちょっとだけなんだけどね」
「テキサスって、ああ……。あの、牛の放牧を大規模にやってた。それで……」
「……なんで私の胸を見るの?」
「いや、……別に」
 アイネ・クライネは様々な面でシエル・カディスと正反対の少女だった。そうでありながら、二人は不思議と馬が合った。何でもそつなくこなすシエルへアイネは必死で付いてきたし、シエルもアイネの好きに任せた。
 ふだん人見知りするアイネが自分と一緒の時にだけ見せる暖かい笑顔に、まっすぐに自分を求めて向き合おうとしてくる真剣な眼差しに、無理矢理に触れあってくる彼女の豊潤な女性美に満ちた柔らかな温もりに、
自分の荒んだ心がいったいどれだけ救われたか分からない。
0007フェニックステイル第21話2016/02/13(土) 12:47:41.83ID:P5MOE7O9
「そういえばさ。アイネはどうしてMSパイロットを目指してるの?」
「? 私? 前に言わなかったっけ。私は、復興のため」
「復興?」
「そう! 今の連邦軍の使命はそれでしょ。どこのL点もデブリだらけで、そこにはジオンの残党が潜伏してる。
 デブリを片して、ジオンの残党をやっつけて――またL点を昔みたいに、人の住める場所に戻すの。それが私の、いま一番MSでやりたいこと!」
「……復興、――そうか」
「うっ……わ、私、大きいことを……。み、みんなには……内緒だよ??」
 そういうのも、あるのか。
 連邦軍のMSを駆って、ジオン残党のMSを落とす。
 殺す。
 私のすべてを奪った連中から、今度は私がすべてを奪う。
 今までそれしか考えていなかったけれど、それとは違う道があるのだ。
「サイド4駐留艦隊って……拠点も活動領域も、ぜんぜんバラバラだもんね。……ねえ、シエル。私たち……また、会えるかな……?」
「…………」
 いつの頃からだろう。アイネの側にいると、胸を締め付けられるような苦しさを感じるようになっていた。
 いつも視界の端に彼女を追って、際限なく彼女の存在を求めるようになってしまっていた。
 このままでは自分はきっと、アイネを深く傷つける。
「――髪留め?」
「要らなかったら、捨てていいから。――じゃあね」
 だから、離れる。互いを忘れる。そして、違う道を歩いていくのだ。
 この同じ軌道のどこかで、彼女の幸せを願いながら。
 アイネが配属された巡洋艦《アバリス》は、彼女の属するMS隊もろとも全滅した。
 徹底的な殺戮を行うことで知られる、ルスラン・フリート傘下のジオン残党勢力《大ジオン仏道》による襲撃だった。生存者はなかったと聞かされた。ひとかけらの遺体すら。
 ジオンはまたあざ笑うように、自分の半身を奪っていったのだ。
 もはやジオンに連なる者たちをこの世から一人残らず根絶やしにしない限り、自分の人生に一切の安息はあり得ないことをシエルは知った。
『よし、シエルちゃんはあのニュータイプを拾おうか。機体はもうだいぶボロボロだけど、なにせ相手が相手だしねぇ――パイロットが死なない程度に、サクッと無力化しちゃっておいて』
「了解」
 消えることのない暗い殺意だけが、今もシエルの心の奥底で燃えさかっている。
 目の前のザクも、ふざけた偽装貨物船も、すべてまとめて宇宙の塵にしてやりたい。
 かつて奴らが、無防備の故郷と家族を殺し尽くしたように。今またアイネを殺したように。
 たとえ自分が受けた仕打ちの万分の一にすら満たなくとも、それで微かには和らぐだろう。この胸に宿る、真っ黒な炎は。
「生かしてやるよ、お前だけは。今だけは、な」
 力なく漂流する敵機を蹴飛ばして軌道を無理矢理変更しながら、シエルはビームサーベルの光刃を走らせた。
0008フェニックステイル第21話投下中断2016/02/13(土) 12:49:28.00ID:P5MOE7O9
投下規制対策のため、ここでいったん〆ます。
第21話は次回で 完結する予定です。

リクエスト応募ありがとうございます。
映像本編を見返しながら、少しずつ進めていきたいと思います。
新スレでもよろしくお願いいたします。
0010フェニックステイル第21話後編2016/02/13(土) 18:36:18.49ID:4K4086sv
 全身が熱い。
 真っ赤に焼けた弾片が、変形した構造材とノーマルスーツが、五体に深く突き刺さっている。
 息が苦しい。
 区画はとうに真空になっていた。ノーマルスーツの破損部からエアが抜けていく。補修も出来ない。意識がかすむ。
 手足が動かない。
 歪んだ構造材の下敷きになり、四肢はことごとく捻り潰された。
 四人分の苦痛が少女ひとりの意識の上で重なり合えば、骨折していない部分など残りはしなかった。
「あ、うう……あ、あ、あうう……っ……」
 MS墜落を受けた敵巡洋艦マカッサル。そこで墜落に巻き込まれた乗員四人分の苦痛と恐怖が殺到し、ティアーナの意識を一気に押し潰している。
 機体はズタズタに引き裂かれていても、ティアーナの肉体に外傷はない。
 だが肉体を司る精神の方は、すでに四人分の激痛に塗り潰されていた。戦闘継続はおろか、軽易な操縦すらも不可能だ。
 自分の手も足も間違いなく今ここにあるのに、ティアーナの心の中でそれらはとうに砕けていて、だから彼女はそれを少しも動かすことが出来ずにいる。
『とにかく、下げなきゃ……!』
「……のー、…………ら…………?」
『ティア!? 生きて――! ティア……! 良かった、良かった……! いま……いま、助けるからっ!』
 その暗闇の中で、少女の暖かく優しい感情を、渦巻く苦痛と薄れる意識の中でティアーナは感じる。
 ノーラ、――ボクの、友達。
『ティアーナは、……私が守るっ!』
 ノイズ混じりの全天周モニターの向こうで、ノーラ機はザクマシンガンを構える。
 そしてティアーナの機体に手を掛け、ケンドー丸の軌道方向へ押し出した。いい計算だ。何事もなければ、自分はこのまま前部ハッチから収容されるだろう。
 だが、二人は。ここに残って、迫り来る敵の新手と戦う二人は。
「――!」
 激痛に鈍って霞む感覚の中、ティアーナは戦闘の流れを察して感じ取る。
(ノーラ、だめ。逃げて――)
『えっ?』
 猛烈な射撃がノーラを襲い、機体を貫く。出鼻を挫かれて撃ち負けても、ノーラ機はかろうじて致命傷を回避した。それでも全身に被弾して左半身が機能を失う。
 掩護に入ったミリアムの応射からあっさりと離脱し、敵は二人の防衛線を抜き去って急旋回していく。
 敵が強い。勝てない、とティアーナは悟った。
 急旋回の機動から、ジムUの一機が自分の直上へ迫ってくる。
 明らかに異常な戦闘能力を示した自分を、機体の手足を落としてから鹵獲するつもりなのだ。
 そしてティアーナは敵である彼女たちが、ミリアムとノーラを殺そうとしていることも理解していた。
 敵は三機がかりでビームライフルとジムライフルを牽制に放ちつつ、一機がティアーナ機に足蹴りを叩き込む。
「あぐっ――!」
 激震とともに満身創痍の機体が吹き飛び、少女の機体はケンドー丸への回収コースから外れていく。ビームサーベルを抜き放って追撃が来た。
『ティアーナにっ、触るなあああぁっ!!』
 そこへノーラが絶叫しながらザクマシンガンを右手で構え、片手撃ちでは弾着が散るのも構わずに連射しながら突進してくる。
 ミリアム機がマゼラ・トップ砲を構え、ようやく砲身旋回を終えたイオタのビーム・バズーカもこちらを狙う。
(ミリアム、そこで撃って――)
『――ティア!?』
 ティアーナの思惟に導かれ、ミリアム機がマゼラ・トップ砲を放つ。175ミリ徹甲榴弾は過たず精確無比にジムUの機体主要部を狙って飛翔。
 だが見透かすように構えられていたシールドに弾かれ、浅い角度で跳ねて明後日の方角へ飛び去った。
『離れなさいッ!!』
 イオタの怒声。死角から挟み撃つようにビーム・バズーカの閃光が走る。だがミリアムの狙撃で牽制してもなお、長大な砲身の挙動は重たかった。
 ジムUは軽やかなロールを打って逃れ、かすり傷もなくビームの一撃を回避して後退する。
 そこへザクマシンガンの斉射を浴びせながら飛び込み、ノーラ機はジムUを押し退けるようにしてティアーナの側へと滑り込んでくる。
0011フェニックステイル第21話後編2016/02/13(土) 18:38:42.97ID:0sXTv83w
『ティアっ、ごめん! 大丈夫!?』
 息を切らせたノーラのファドランが、全天周モニター越しにティアーナを見つめるようにモノアイを巡らせた。
 彼女たちを守ろうとするかのようにケンドー丸がまたコンテナを放ち、二人の至近で弾けてビーム攪乱膜の新たな層を広げていく。
 だが攪乱膜をいかに的確かつ濃密に展開したとしても、もはや万能の守りたり得ないのは今までの戦闘が示したとおりだ。
 ジム・ライフル装備の一機は言うに及ばず、残りの二機も変幻自在の戦闘手段を使いこなす。
 そして、敵は決してその手を休めない。流れるように三機編隊を組み直すや、再び一丸となって切り返してくる。
 今や彼らの殺意はノーラとミリアムだけでなく、甲板上にプチモビで立つイオタまでもを狙っていることをティアーナは知った。
 次の突撃で誰か、彼女の大切な人が死ぬ。
『負けるもんか……ぜったい負けるもんか……私が守るの……ティアーナは……ティアーナは、みんなは、私が……私が、守るの……!』
『――イオっち、援軍は?』
『さっきの通信が最後よ。あと、四分半――』
 ノーラの声は震えていた。ミリアムの声は乾いていた。イオタの心はもうここにはなく、彼女はどこかずっと遠くを見ていた。
 ティアーナの口元に、ふっと安らかな笑みが浮かぶ。
 最後の力を振り絞り、少女はそっと操縦桿を握った。
『――ティア!? あんた、何をっ!?』
 敵機のただ中へ向かってスラスターを噴かし、ただ漂流するように接近していく。
 同時に自らの腰に残っていたヒートホークを掴み、一気に赤熱させる。そして真っ赤に焼けたその刀身を、自機のコクピットハッチへと押し当てた。
『ティアーナ!?』
『ちょっとこのバカ!! あんた何やってんのよ!!』
「だ、ダメ……ダメよ……ティアーナ。……それだけは……それだけは、ダメ……」
 薄い天蓋一枚の下でプチモビルスーツから、必死にビーム・バズーカを操作していたイオタが唇をわななかせた。
「……れんぽーぐんの、ひと、……聞こえる?」
 ビーム攪乱膜の内側を抜け、通信系統を自軍専用の秘話回線からオープン回線に切り替えながら、ティアーナは敵兵を呼ぶ。
 返答はなかったが、ティアーナは敵がそれを受信したことを直感で知った。
「お願いだから……もう、やめて。みんなを、いじめないで……でないと、ボク……今すぐ、死にます」
 ヒートホークの赤刃が、コクピットハッチに触れた。
 堅固な装甲板が瞬時に沸騰して泡立ち、ヒートホークに押された分だけ溶解していく。一年戦争時に地球圏最強の装甲材、ルナ・チタニウム合金すらたやすく溶断してのけたその威力は折り紙付きだ。
 全天周モニターの映像を通じて、ティアーナはその炎熱地獄をじっと目の前で見つめていた。
 希少なニュータイプである自分の利用価値は計り知れない。だから敵が危険を冒してでも自分を捕獲しようとしていることを、ティアーナはすでに見抜いていた。
「ボク……とーこー、します。だから……攻撃、やめて。みんなを、逃がして。助けて、あげて――」
『ティアーナッ!! あなた、何をしているの! やめて! やめなさい! 今すぐ、今すぐこっちに帰ってきなさい!!』
 半狂乱でイオタが喚いた。彼女は知っているのだ。
 今の地球連邦軍がニュータイプを手に入れたら――それもジオン残党兵などという、人権について一切考えずに済むニュータイプを手に入れたら、一体どうするのかということを。
 ごめんね、と心の中だけでティアーナは謝る。
 そして、ティアーナも知っていた。目の前の敵が単なる時間稼ぎを受け入れたり、そのまま見逃してくれるほど甘くはないということを。
 稼働中のミノフスキー・イヨネスコ式融合炉は、ある一定の条件を満たしながら破壊されたとき、核爆発する。
 ミノフスキー物理学の原理に由来するこの融合炉の爆発は、旧世紀の核物理学で定義された核爆発とは異なるものだ。
 しかしその規模が通常炸薬の威力を遙かに大きく上回ることから、近年ではこれも新たな核爆発の一種として扱われることが増えていた。
 ヒートホークでコクピットブロックを貫き、そのまま一気に胴体内の主ジェネレータを真っ二つに叩き割る。
 それで機体は即席の小型核爆弾と化すのだ。
0012フェニックステイル第21話後編2016/02/13(土) 18:40:58.59ID:d+ze5lvy
 そしてティアーナは今、敵兵たちから『迷い』の色を感じ取っていた。
 希少なニュータイプを捕虜に出来るかもしれないこの機会は、敵にとっても強力な誘惑だ。ギリギリまで捕獲を諦めはしないだろう。
 自爆など単なる脅しに過ぎないのではないか、と思ってもいる。少なくとも一機は確実に巻き添えに出来るはずだ。
 自爆だけで敵を全滅させることは無理でも、両手足を縛られたような不殺の戦いを皆に強いる、自分という枷の存在はなくなる。一分や二分の時間は稼げるはずだ。援軍も確実に近づいている。
 その一分や二分の差で、ケンドー丸は――ティアーナの大切な人たちは、助かるかもしれない。
 ジム・ライフルを構えたジムUが、僚機を押しとどめるように左手を上げた。単機でこちらへ近づいてくる。
 隊長機らしい。自爆の巻き添えに出来れば、大きく戦力を削げるだろう。ラッキー、とティアーナは微笑む。

『――ふざけんなっ!!』
 だが耳元のスピーカーで少女の絶叫が、そして後方で感情が弾けた。半身不随のファドランが虚空を蹴り、まっしぐらに前進してくる。
「ノーラ……ダメだよ、来たら――」
『だってこれは、私らの戦争でしょうが! なんで真っ先にティアが死ななきゃなんないのよ!? おかしいでしょ! ふざけんな!!』
 彼女の動きを見た二機のジムUが、即座にビームライフルを放った。光弾はノーラ機の手前で攪乱膜に触れてねじ曲がる。
 しかしその精確な照準は彼女の中破したファドランなど、ビーム攪乱膜から出た瞬間に撃墜できるのだと無言のうちに語っていた。
『くっそおおおっ! イオ姉ミリ姉、支援してよ! じゃないとティアが! ティアがあっ!!』
「あのね、ノーラ」
『あによっ!? 遺言なんか聞かないかんね!!』
「――だいすき」
『えっ――』
 攪乱膜の内側で自機を制動しながら、ノーラは怒りに泣き叫ぶ中で虚を突かれた。
「イオタに、拾われてから……毎日……とっても、楽しかったよ」
 涙に霞む視界の中で、ノーラの機影へティアーナは微笑む。
 コクピット内に貼られた、何枚もの写真を見た。皆と写っているどの写真の中でも、ティアーナはいつも笑顔だった。
「暗くて寒いところに、ずーっと……一人ぼっちで、いたとき……こんなに、暖かいところがあるなんて……知らなかった。
 世界にイオタや、ミリアムや……ノーラが、いてくれて……ボクがこんなに、幸せな気持ちになれるなんて……知らなかった」
 装甲を溶かし続けるヒートホークが、コクピットハッチの過半まで沈んだ。
 蓄積し続ける超高熱の影響を受けた全天周モニターが、その裏側で歪みはじめる。発泡し、変質し、正面から少しずつ機能を喪失していく。
「みんなはボクに……もう、一生ぶんの……幸せを、くれたよ。だから……、ボクはもう、いいの。ボクの大好きな、みんなが……生きていってくれれば、それで……いいの」
 内側から沸騰するように泡が浮き上がってくる全天周モニターに、リニアシートから離れて漂う写真が触れた。
 真空の中で高熱に炙られ、写真は見る間に炭化していく。
 ティアーナの笑顔が、イオタの優しい微笑みが、ミリアムの澄まし顔が、ノーラの怒り顔が、何もかもが真っ黒な炭になって燃え尽きた。
「とっても、楽しかったよ。だから、ボクは、もう……パパとママのところに、帰るね」
 そしてティアーナは、その指先を操縦桿のボタンに掛けた。
 あと一押しだけで、彼女のファドランは事前入力されたプログラム通りの動作を行う。
 渾身の出力でヒートホークを機内へ押し込み、コクピット内部のすべてを焼き尽くす。そして破損に構わず最大出力で稼働している主ジェネレータを、そのまま一気に破壊するのだ。
「イオタ、……ボクがいなくても、ちゃんと笑って。ミリアム……イオタをおねがい。ノーラのことも、かっこよくしてあげて。
 ノーラ、……今までいっぱい、いやなこと言って、ごめんね……。かっこいい彼氏、作って……自慢、してね……」
 まだ生きている側後面の全天周モニターと、機体の装甲を通した直感で、ティアーナは近づく敵機の距離を計っている。もっとも適切な自爆のタイミングを計っている。
 そして敵も、ただ手をこまねいているわけではない。
 側面に一機のジムUが流れて、ビームライフルで狙撃姿勢を取っていた。ヒートホークとマニュピレータを狙っている。
 博打ではあるが、その狙撃でティアーナの自爆を封じつつ、一気に攻勢に出てケンドー丸を殲滅するつもりなのだ。
 ――でも、その動きは全部お見通し。ボクの方が先手を取れる。
0013フェニックステイル第21話後編2016/02/13(土) 18:42:51.79ID:z63sEQy+
 みんなを、守れる。
『……ざけんな』
「――ノーラ!?」
 そしてティアーナが敵の意識を引きつけていたから、敵の防衛線には中破したファドランに突破を許す、僅かな隙間が生じていた。
 ジムUのビームライフルが光軸を放って跳ねる。だがノーラは有らん限りのスラスターを噴かして歯を食いしばり、転がるように掻い潜った。
 ティアーナへ迫るジムUへ突進しながら、120ミリ弾の雨を降らせる。連射しながらノーラは叫んだ。
『死にたくない、って言えクソガキ! もっと遊びたいって言え! もっとイオ姉のおっぱい触りたいって言え! 一生ぶんの幸せだあ!?
 笑わせないでよ、あんな程度で足りてるわけないでしょ!! まだ死にたくないって言え! たった一人ででも、自分だけでも生き延びたいって言えぇ!!』
 ノーラの突撃で、連邦軍が一気にシフトを変えた。ティアーナの捕獲を中断し、全戦力をノーラ機の排除に向けてくる。
 イオタがビーム・バズーカを放ち、ミリアムもマゼラ・トップ砲を一発撃つきり、ザクマシンガンに持ち替えて連射しながら突進してきた。
 ミリアムは敵隊長機に襲いかかる。ジム・ライフル相手に猛然と連射を交わし合いながら、唇を歪めて絞り出すように呟く。
「青臭いのよ、バカが――これ戦争なのよ? もっと救われない惨めな死に方した子が、今まで何十億人いたと思ってんのよ――」
 敵隊長機を気迫で押さえ込むミリアムの掩護を受けていてさえ、敵の反撃はあっさりと立ち直ってノーラを捉えた。
 ティアーナを最初に蹴飛ばしたジムUが頭部バルカン砲を放ちながら、ビームサーベルを抜いて肉薄してくる。
 ボロボロの機体でザクマシンガンを構え、それを真正面から迎え撃ちながらノーラは喚いた。
「何が大好き、だこの野郎! 最後の最後に分かった風な口利いて一人で小さくまとまろうとする、おまえみたいなクソガキなんかなあっ、私はだいだいだいだいだいっきらいだあああぁーーーっ!!」
『――ノーラ……』
 半壊した機体からノーラが撃ち返す120ミリ弾の連射は掠りもせず、逆に60ミリ弾の射線は機体のそこかしこを撃ち抜いて弾ける。弾着に震えるノーラ機へ、敵機はビームサーベルで斬りつけてきた。
「あぐうっ!? くそおおおぉぉぉっ!!」
 被弾で全天周モニターのいくつかが割れて薄い空気が噴き出す。ノーラ機の右腕はボロボロの防盾ごと切り落とされて、ザクマシンガンを構えたまま漂流していく。
「こなくそおーーーっ!!」
 左肩のスパイク・アーマーはとうに失われていたが、ノーラは構わず突進して体当たりを掛けた。
 だがその必死の体当たりもジムUは平然と盾で受け止める。そして敵機はお返しとばかり、コクピットハッチへ突き蹴りをくれた。リニアシートを衝撃が貫く。
「ああーーーっっ!!」
 もはや姿勢制御も出来ず、ノーラ機はスピンしながら吹き飛んでいく。回転する視界の中で、別の敵機がビームライフルで狙うのが見えた。
 丸い銃口。ロックオン警報と高エネルギー警報が二つ続いて鳴り響く。
 回避機動は間に合わない。
0014フェニックステイル第21話後編2016/02/13(土) 18:44:41.95ID:NYrBnRzA
 ――ああ、そうか。私、死んじゃうんだ。
 何も出来ずに。ティアーナも、船のみんなも、誰も守れないままで。
 バイザーの下で涙が溢れた。
「――ごめん、ティアーナ……」
 そして、ビームが迸る。
 強烈な火線が機体の中心を捉え、装甲を撃ち貫いて命を焼いた。
 融合炉が暴走し、巨大な爆発が一輪の光球となって広がっていく。
(あっ、――)
 その膨大な光量と爆圧を装甲越しに浴びながら、ノーラは激震するリニアシートの上で、ティアーナの気配が消えるのを感じた。
 何かが聞こえる。ミリアムの声だ。
『九時方向!? 連絡のあった援軍じゃない――これは!?』
 そしてオープン回線に、新たな雑音が進入していた。
 呪文のような文言を唱える、男女の声――そして木製打楽器らしき、アップテンポの単調な音色。
『ジオン強者の砲(つつ)の音、諸行無常の響きあり』
『シャングリラの川の色、コロニー必衰の理(ことはり)をあらはす』
 急速に接近してくる彼らは、ケンドー丸が待ち望んでいた援軍ではなかった。
 何の気配もなく、前触れもなく――ティアーナの超感覚にすら拾われずに彼らは近づき、そして、あの長距離狙撃を成し遂げたのだ。
『おごれるレビルも久しからず。ただ光る宇宙(そら)の夢のごとし』
『たけきザビ家も遂にはほろびぬ、ひとへにア・バオア・クーの塵に同じ』
 三機のMS、MS-14A《ゲルググ》の編隊は猛烈な加速でデブリの海を突き進みながら、ビームライフルで残る二機のジムUを狙う。
 先頭を行くゲルググのコクピットで、頭上のハロ改が打つ木魚の音を聞きつつ、総髪の男は澄み切った瞳で戦場を見下ろしながら呟いていた。
『南無阿弥陀仏――腐敗極めし連邦亡者、もろびと挙りて成仏すべし』
0015フェニックステイル第21話投下終わり2016/02/13(土) 18:51:13.37ID:7Ls6uKTd
第21話、終了です。
二系統の書き込み手段が用意できたため、なんとか投下することが出来ました。

リクエストは今しばらくお待ちください。
0016名無しさん@ピンキー2016/02/18(木) 14:58:07.77ID:o+kv8bDI
すごい連載作品の間で申し訳ないのですが、ここは1年戦争の
ボール小隊の話とか投稿してもよいのでしょうか?
0018名無しさん@ピンキー2016/02/18(木) 19:25:28.77ID:jxV29TPs
>>16
なんかサラミスにポイされて
ドラム缶にボコボコにされて
投降戻って来たサラミスに誤射ドン!
な光景が浮かんだけど違うよね?

是非投稿して下さい!
0019名無しさん@ピンキー2016/02/18(木) 20:04:53.07ID:o+kv8bDI
宇宙世紀0079年 11月月10日
地球における最大の資源採掘地オデッサが陥落し、
決戦の舞台は宇宙(そら)へと移行しつつあった。
そして12月24日、ソロモン陥落を受けた
ジオン総司令部はソロモンから脱出した残存艦隊、
また使用可能な艦船、MSは言うに及ばず、
練習機、試作機、8割以上完成している機体までをも
駆り出し、宇宙要塞ア・バオア・クーに絶対防衛戦を構築した。
また公国軍が誇る超弩級宇宙空母ドロス、二番艦ドロワも健在で
その威容を放っていた。
今、ここにジオン公国サイド3本土の防衛をかけた
最後の戦いが始まろうとしている……


連邦軍艦隊の3分の1が消滅したのも束の間、
瞬く間に再編成され、宇宙要塞ア・バオア・クー攻略を強行させた。
巡洋艦にこれでもかと搭載されたMSが飛び立って行く。
連邦軍の量産型MS、RGM79ジムだ。
しかし、私に与えられたのは、RB79ボール。
宇宙作業ポッドを改修し、兵器に転用した機体であった。
改修とはとんだお世辞だ。
何てことはない、作業ポッドの頭に大砲を積んだだけの
急造兵器であった。そこからついた別名『丸い棺桶』。
それもそのはずだろう、訓練学校は20日前に卒業した。
もっとも、過程をかなり短縮して2ヶ月しか訓練を受けていない。
ボールでもまともに動かせればいい方だろう。
宇宙世紀0079年12月31日……私の最初にして、最後の戦いであった。
0020名無しさん@ピンキー2016/02/18(木) 20:06:27.40ID:o+kv8bDI
これを『激戦』と言わずして何と言うのだろう。
横で応戦していた僚機がバラバラになり、爆散した。
耳をつんざく絶叫に、酷いノイズ、コクピットに響く警報音。
姿勢制御もままならない。飛び交うビームの閃光に、機体の残骸。
シミュレーション訓練やマニュアルなど何の役にもたたなかった。
みるみるうちに減少していく推進剤に21発しかない弾は残り5発。
3つの小隊で出撃した私達は、たった旧式のザク1機相手に全滅しかけていた。
機体・姿勢の制御、周囲を索敵!
「ザクは!?さっきのザクは!?」
思わず声を上げた矢先、真正面にヒートホークを振りかざしたザクの姿があった。
ああ、死ぬんだと思った。
次の瞬間、ザクの頭部が吹き飛び、仰け反ったザクの胸部に穴が開いた。
『下がれ!爆発に巻き込まれるぞ!!』
インカムを通して凛とした声が響いた。
我に返った私は、無我夢中で後退し、爆発を避けることができた。
「はぁはぁはぁ…あ、ああ」
『新兵、大丈夫か?』
今になって震えが来た。ノーマルスーツを着込んで寒くはないのに
震えが止まらない。私は両腕で身体を抱き込んだ。
『おい、聞いているのか?』
『…………………』
震えて声が出ない。手が痺れ、喉が渇く。
私は無意識のうちに何度も失禁していたらしい。
股間にじっとりとした湿り気を今になって感じた。
『返事をしろ!新兵!官、姓名を名乗れ!』
上官と思しき怒声で初めて我に戻った。
『はひっ…は、はいっ!第三大隊、第7中隊!オハイオ隊の
補充兵で、ユキ=キクチハラ、二等兵であります!』
『へぇ、同じ隊とはね、一昨日着いた新兵か?』
『は、はい!』
『残弾数、推進剤のチェックし、報告しろ。
 が、こちらもさっきのが最後だ。補給に戻るぞ』
『は、はッ!』
 
>>17>>18こんな感じです。
DVDでみたア・バオア・クー陥落9日後に
内部へ偵察しに行く話にエロ混ぜたようなかんじにしようかなと。
イグルーは最高だ。重力戦線も大好きですが
0021フェニックステイルの輩2016/02/18(木) 21:12:40.79ID:MqpTshDS
>>20
GJ!
次回は補給先でユキさんと助けに来た人の容姿が見られそう。
エロも戦闘も楽しみにしてます。
0022名無しさん@ピンキー2016/02/18(木) 21:48:19.26ID:jxV29TPs
>>20
続き楽しみです!
どうエロが入るのか期待!
senka?senkaなのか?

重力戦線は個人的に死神が癌でした
ドップやマゼラアタックやユーコンなんかをやって欲しいです
まあそんな地味なん売れんだろうけど
0023名無しさん@ピンキー2016/02/19(金) 20:39:59.55ID:a0vt6tae
いぐるはキャラの動きがディズニーアニメみたいに大げさでミュージカルチックなのが鼻に付く
舞台俳優のキャプチャらしいから仕方がないのかもしれんけど
0024フェニックステイルの輩、リクエストその一2016/02/20(土) 21:49:01.16ID:R89z2qX/
前スレで受けたリクエストのその一、ファ凌辱が完成したため投下します。
申し訳ありませんが受領したシチュエーションではしっくり来ず、設定をかなり改変してしまいました。

救いのない凌辱ですので、ご注意ください。
0025碧空の下、花園は散る2016/02/20(土) 21:50:07.03ID:R89z2qX/
「――カミーユ、ウウッ、カミーユぅ……っ、どこよ……、どこにいるのよぉーっ!!」
 コロニー内の上空を激しく飛び交うビームと砲弾。地球連邦軍ティターンズの見慣れたMSが、市街に撃墜されては爆散する。
 唐突に戦場と化したグリーン・ノアで、ファ・ユイリィはひとり住宅地を走っていた。
 彼女がいつも気にかけていた、幼馴染みの不器用な少年――カミーユ・ビダンの自宅は先ほど、グリーン・ノアを襲った謎のMSの下敷きになって全壊している。
 空襲警報が鳴り響く中で、ファがカミーユの安否を案じて私室へ入ったときだった。彼女はそこで連邦軍のジムUに叩き落とされたMSの墜落に巻き込まれ、かろうじて助かったのだ。
 MS同士の格闘戦から逃れ、ひどく混乱しながら当て所もなく廃墟を走る少女の後ろに、オープントップの対MSミサイル車両が付いた。
「ん? あの子。確か、ビダン中尉の息子の女じゃないのか」
「カミーユ・ビダンのか?」
 車両を操るティターンズの兵士が二人、彼女の姿を目にして呟く。
 ファはその若くみずみずしい少女の素足を、ホットパンツから無防備にさらけ出したまま走っていた。長く艶めいた癖のある黒髪と健康的な肢体が鮮烈に、戦場の空気を浴びて高ぶる男たちの気を惹いたのだ。
「カミーユ・ビダンなら、さっき基地で見た! 奴はガンダムを奪って、MPのマトッシュ中尉をバルカン砲で撃ち殺そうとしやがったんだ。外部スピーカーで笑っていたぞ!」
「何だと? 前からとんでもねぇガキだとは思っていたが――野郎、エゥーゴに通じていやがったのか!」
 ティターンズでMS開発に携わっている技術士官ビダン夫妻のどら息子、カミーユ・ビダンの存在は軍の内部でも知られていた。成績は優秀らしいがとにかく素行不良で、MPからは前から目を付けられていたらしい。
 そういえば今日も士官相手に暴行事件を起こしたらしい、と噂で聞いた。
「とんでもねえガキだ――待てよ。じゃあ奴がエゥーゴのMSを呼び込んで、これをやらかしたってことなのか」
 運転手はグリーン・ノアの惨状を見渡す。そこいらじゅうで上がる火の手、崩れた家屋。一体どれだけの死者が出たのか想像も付かない。助手席の兵士が無線機からの放送を受けて叫んだ。
「――空襲の敵は下がったらしい! 川の穴から宇宙に出て、今は宙域警備のMS隊が追撃してる」
「じゃあ俺らもお役御免か? 次の指示は!」
「何も言ってこない。上も相当混乱してると見える」
「何もないなら――いま出来ることをせんとな」
 兵士が意味深な視線を同僚に送り、そして目の前を走る少女を見る。
「カミーユの女なら、エゥーゴの工作員で間違いないな」
「戦闘の混乱で取り残されたか、それともきれいに見捨てられたか。気の毒だが――悪事の報いは受けてもらう。知っていることは、吐いてもらわんとな!」
 エレカのアクセルを一気に踏む。少女を追い越し、その前方で急制動をかけて前を塞いだ。兵士が下車し、小銃を構える。
「止まれ、カミーユの女!おまえもエゥーゴの工作員だな! 壁に手を突いて足を広げろ!」
「――え、エゥーゴ? 工作員……!? カミーユが……カミーユが、何だって言うんですか!?」
 連邦軍の兵士に幼馴染みの名を呼びながら銃口を突きつけられ、動転しながらファが叫ぶ。だが平和に生きてきた少女の無知な動作は、工作員の隠し武装を警戒する兵士たちを刺激した。
「止まらんか!」
「アウッ!!」
 小銃の床尾で強打され、ファは路上に倒れる。ホットパンツの裾がめくれ、太股の奥に白い下着をちらついた。
「あ、あなたたち、何を――ひっ!」
 起きあがろうとするファの眼前に、再び銃口が突きつけられる。
「おとなしくエゥーゴの情報を吐け! 他の工作員はどこだ!? お前を見捨てた男をかばい立てしても、ためにはならんぞ!」
「だから! 何も知らない、って言ってるでしょうっ!!」
 屈辱に涙を浮かべながら、ファは毅然と反抗した。だが兵士たちは瞳に暗い光を宿して薄笑いを浮かべるばかりだ。
0026碧空の下、花園は散る2016/02/20(土) 21:51:38.95ID:R89z2qX/
 ティターンズは組織の拡大に伴い、多くの将兵を新規に受け入れていた。
 建軍当初の理想であった『連邦軍最精鋭のエリート部隊』など、とうの昔にかけ声倒れで終わっていた。
 ティターンズの組織と権限、予算が急激に拡大する影では、降って沸いた特権につけ込む腐敗と情実人事が横行。エリートとは名ばかり、もはや練度も士気も一般部隊の平均を下回りつつある。
 彼らもそんな者たちの一部だった。
 若く元気を持て余した地球出身者。なおかつティターンズ構成員に縁故がある、というだけの理由で入隊を許された者たちだ。そして今や、こうした将兵がティターンズの多数派となりつつある。
 周囲で流れ弾や墜落したMSがそこかしこに火の手を広げ、視界は悪化しつつある。お誂え向きの物陰もあった。
 そんな彼らが、こんな絶好の機会を逃すはずなどないのだった。
「……い、いや……あ、あなたたち、な、なにを……ひっ!?」
 明らかに様子がおかしい。そう感じたファが震えながら呟いたときには、兵士が大振りな軍用ナイフを取り出していた。
「まずは身体検査だ」
「や、やめて! 何をするの……いやっ!!」
 恐怖に震える少女に兵士が覆い被さり、組み敷く。ナイフを出した一人が正面から両足を開きながら迫り、もう一人が上から両腕を押さえつける。
 冷たい刃金の感触がすべやかな腹に触れたと思った瞬間、ファの上体をぴっちりと包む上着は下から上へと一気に切り裂かれた。
「いやーーーっ!!」
 乳房を包むブラジャーだけを残して、白い柔肌がさらけ出される。程良い丸みを帯びた乳房がブラジャー越しに鷲掴みにされ、乱暴にぎゅう、と握りつぶされるように揉みしだかれて変形した。
「い、痛い――ああっ!!」
 刃を上にしたナイフが胸の谷間へ差し込まれ、乱暴に引き上げられてカップの左右を切断する。
 裏地が汗で肌に張り付いていたブラジャーのカップが左右に払いのけられると、蕾のように可憐な乳首がぷるんと震える白い乳房の上で露わになった。
「上半身に武器はないな……次は下だ」
「やめてぇ!!」
 抵抗するファの両手両足は力ずくで押さえ込まれて、少女に出来ることはただ空しく泣き叫ぶだけだ。
 拳銃とナイフの冷たい刃金の感触に怯えるファから、ホットパンツが引きずりおろされる。ブラジャーと揃いの白いショーツがむき出しになると、正面の兵士もズボンを下ろしていた。
 ショーツが引きずり下ろされた。強姦される恐怖の中、無意識の自衛措置として濡れた女性器、そして縮れた黒い陰毛が、もわりと独特の臭気を放つ。
「最後はここだな……女工作員にはお誂え向きの隠し場所だ。奥まで確認させてもらうぞ!」
「!!」
 兵士ははやるあまり、ファの片足だけからショーツを脱がせて足首に掛けたまま、勃起しきった己の男根を彼女の膣口に押し当てた。
「いやあーっ! カミーユ! カミーユゥーーーッ!!」
「ヘヘッ、奴は来ねえよ! お前は捨て駒だったらしいな!!」
「嘘よ、嘘よーっ!! カミーユ! 助けてカミーユッ!!」
 恐怖と絶望のどん底で、それでも少女は力を振り絞って少年の名を呼んだ。
 そして、男根がファの膣口へ挿入される。兵士はしっかりと少女の両腿を抱え込み、一気に腰を叩きつけた。
「あああーーーッ!!」
「おおお……ッ!!」
 処女膜を一瞬で摩滅させ、膣奥まで貫き通す。子宮口を叩いた男根を伝い、破瓜の鮮血が流れ落ちた。見開かれた瞳から大粒の涙も、同時に。
 少女が初めて経験する荒淫は、半端な潤滑液では守りきれない破滅だった。狭い膣内は強引に押し広げられ、草地の上に腰を押しつけたまま男の体重にのし掛かられて何度も、何度も貫かれる。愛撫による快楽のない単純な痛みに、息も絶え絶えにファはあえぐ。
「クウウウウッ! いい、いいぞ……」
「へへへ……いい身体してるじゃないの! カミーユとは何回ヤったんだ? 毎晩かぁ?」
 戦場と化した市街の草地で、少女をリズミカルに犯しながら、兵士は抜群の締まりを示すファの秘裂に唸った。
 少女の背中が草地に擦れるのにも構わず激しい腰遣いを叩き込み、重力に負けて潰れた乳房をたぷたぷと揺らす。その乳房はもう一人の兵士に揉まれ、絞り上げられ、口に含まれて乳首を吸われていた。
0027碧空の下、花園は散る2016/02/20(土) 21:53:09.31ID:R89z2qX/
 ――いつか、カミーユと……二人で。
 少女が心の奥底でそう夢見ていた初体験は、戦場の悪夢の中で汚された。
 見も知らぬ兵士のペニスはファを気遣うこともなく、愛撫もなしに激しいピストン運動を繰り返す。少女の胎内を何度も何度もえぐり込み、彼自身のかたちに変えていく。
「オッ! オッ! オッ! オオオ〜〜〜ッ、締まるうううっ、ウウッ――、出、出るゥ!!」
 突きまくられる中で泣き叫ぶファが目を見開いた瞬間、男はひとり勝手に少女の中で達する。男のピストン運動のペースが速まり、そして再奥に尖端を止めた瞬間、ファはそれを悟って絶叫した。
「いやああああああっ!! カッ、カミーユゥーーーッ!!」
 放たれた濃厚な精液が、ファの膣奥を満たす。子宮口にぶち撒けられた数億の精子が、少女の卵子を目指して荒々しく突き進んでいく。
 そして少女は先週、生理を終えたばかり――今日が、彼女の排卵日だった。
「――おおおおおお……。いい、ぞぉ……」
 最後の一滴までを彼女の中に注ぎ終えると、兵士はたっぷりの余韻とともに逸物を引き抜いた。
 ごぷり、と音を立てて鮮血混じりの白濁液が溢れ出し、腿と尻を伝って草地に落ちていく。
「……かみー、……ゆ、……」
 己の胎内に熱い迸りを感じた少女はびくんと震えると、そのまま瞳の光を失い、力尽きたように崩れた。
「へへへ……さすがエゥーゴの工作員だ、訓練がいい。武装は処分したあとだったようだな」
「よし、次は俺が尋問を――」
 自身の男根を拭き取りながら一人が退き、もう一人がそこへ入って兵士たちは笑う。だが全裸に剥かれて凌辱されたまま放心状態のファを見下ろしながら、彼らはエレカの接近音を聞いた。誰かが下車してくる。
「何事かっ!? ――この少女はどうした!」
 エレカで乗り付けてきたのは、ティターンズMPのマトッシュ中尉だった。服装を直した兵士たちは何事もなかったように敬礼し、報告した。
「エゥーゴの工作員一名を確保しました! 工作員同士の仲間割れで、強姦されていた模様です」
「仲間割れで強姦だと!? この急時にか!?」
 異様な情景と報告に食ってかかったマトッシュに、兵士たちは不意に真剣な表情を浮かべて小声で囁いた。 
「それが、中尉殿! ……この少女、実は――カミーユ・ビダンの女、らしいのです」 
「何っ!?」
「間違いありません。以前にも何度か一緒にいるところを見た者がおります。カミーユ・ビダンはMS奪取計画を実行に移し、そのまま彼女を見捨てていったものと思われます」
「そういえば、確かに……以前の報告にあった。この少女……間違いない!」
 犯された少女をまじまじと眺めながら、マトッシュの表情に確信が、そして瞳に暗い光が宿る。
「あの小僧、カミーユ・ビダンの女か……! よし。お前たち、彼女を拘束し、本部へ搬送しろ! 本部も大打撃を受け、混乱している。お前たちは私の指揮下に入り、尋問を支援するのだ。……協力してもらうぞ」
「了解であります、中尉殿!」
 敬礼しながら、二人は去りゆくマトッシュの背中に笑みを向ける。気絶したファに手錠をかけると車両の荷台へ搬送し、そしてティターンズ本部へ出発していった。
 捜査、尋問と称する凌辱を延々と受け続けたファ・ユイリィが解放され、エゥーゴ旗艦アーガマと合流するのは、それから約二ヶ月後のことである。
 一部の記録によれば、グリプス戦役が佳境を迎える88年1月、彼女はアーガマ艦内で男女の双子を出産したとも言われている。
0028投下終わり2016/02/20(土) 21:54:12.45ID:R89z2qX/
リクエスト作は以上です。
もしご感想などあれば、次回以降も続けたいと思います。
0029名無しさん@ピンキー2016/02/20(土) 22:46:28.80ID:9/ZTVyxC
GJ、そしてこのスレがエロパロ板にある事を久々実感w
マトッシュ…カミーユに笑いながらバルカンで撃たれたMPの人ってので、なんとなく思い出した
(記憶と違いあるかもだけど)
…中尉だったんだぁ、へぇ〜
0030名無しさん@ピンキー2016/02/22(月) 16:54:21.93ID:y178ILgx
ファには悪いけど、エロい!常に生命の危険に
さらされる戦場では種の保存云々で受精率半端ないのかもね
このあと出産したみたいだけどカミーユどう思ったんだろうね?
もし描いてくれるのであれば08小隊のシローとキキの和姦
を描いて欲しいです。史実ではアイナだけど、個人的にはキキ推し
小説ではうろ覚えですがファみたいになったか、される前に自害したのか
どっちかだったはず
0031名無しさん@ピンキー2016/02/26(金) 14:31:02.93ID:kFUwncRp
>>20の続き

第7中隊はア・バオア・クーの西、Wフィールドと呼ばれる戦区から進攻している
艦隊の傘下にある。巡洋艦30隻かなる艦隊であったが、帰投した時には
何隻か減り、少破、中破…無傷な艦は片手で数えられるほどになっていた。
無理もない、MSの搭載機能を増設するために砲や機銃を減らしているのだ。
敵機の襲撃を受ければ、それ相応の損害を被ることは明白だ。
本命ではない西の戦区でさえこの有様なのだから、連邦の主力艦隊が展開している
北と南の戦区はもっと酷いだろう。
私の所属しているオハイオ隊は古参の隊と聞いている。
パーソナルマークはボールに描かれたシャークマウス。鮫の口だ。
しかし、私のような未熟な搭乗員では何の効果もない。
「ボールで生きて帰ってきたんだ、次はジム乗りだな」
ボールのハッチを開けると、取りついた整備長が笑った。
私が生き残ったのは、横に着艦している上官のおかげだ。
「新兵、機の補給には時間が掛かる。今の内に隊を再編成だ、艦内に戻る」
「はッ!了解しました」
0032名無しさん@ピンキー2016/02/26(金) 14:31:47.79ID:kFUwncRp
艦内に戻った私と上官は搭乗員のブリーフィングルームに入った。
出撃前は賑やかだったが、今はガランとしている。
「着任した時に顔をちらっとしか見てなくて、ごめんなさいね
もう一度、名前は―――――」
「はッ、ユキ=キクチハラであります」
「エルシー=マーヴィンよ。改めてよろしくね、ユキ」
少尉は優しく言って握手を求めてきた。
「い、いえ…そんな…私こそ、少尉殿とわからず申し訳ありませんでした」
初陣で頭が真っ白になっていた私を救ってくれたのはオハイオ小隊の隊長である
マーヴィン少尉であった。1つの小隊はボール3機編成であり、それが3つ。
オハイオ隊は隊長を含めて12名いたのだが帰投できたのは少尉と私だけ。
数合わせでしかない技量の低い新兵は一日で全員が入れ替わることもあるらしい。
少尉が新兵の顔など覚えていないのは当然だ。
「本来ならジム1機に支援のボール3機編成なのに…ジムは先行して支援機を
置き去りなんて…酷い話だわ。他のボール小隊も酷い有様でしょうね」
少尉がノーマルスーツのメットを脱ぎ、言った。
金髪のショートカットに凛とした眼が成熟した大人という印象を受ける。
私はまだ18歳。とても同じ女性とは思えない。
「…………」
私は何も言えず、下を向いていた。補給が完了すれば、また出撃しなければならない。
次に生きている保証はない。
「顔を上げて、ユキ。次の出撃でもしっかりフォローする。だから生き残ることを
第一に考えなさい」
少尉は私を抱きしめて背中をさすってくれた。
0033名無しさん@ピンキー2016/02/26(金) 14:36:27.54ID:kFUwncRp
「はい…ありがとうございます」
「でも、その前にショートパンツを変えることをお勧めするわ」
「え…あ、えっと…気付いて」
私は真っ赤になって言った。ノーマルスーツの下のショートパンツは
グショグショで悲惨な状態になっている。
「初陣はされでもそうなるものよ。私の場合はどうなのかは想像に任せるけど?」
「は、はい…し、失礼します」
更衣室でショートパンツを履き替え、再びブリーフィングルームに戻ると
少尉ともう1人の隊員がいた。階級は、伍長。こちらに気付いたらしい。
「少尉から話は聞いている。メーン小隊のロブ=ノールマン伍長だ」
見るからに古参という感じがする。年齢は少尉よりも少し下だろうか。
「はッ、ユキ=キクチハラであります。伍長殿」
「ああ、よく生還できたな。しかし、オハイオの生き残りは少尉殿と新兵だけですか、
ウチは俺だけ。ザク1機に対してボールの損害は―――――」
そこまで言って、伍長は敬礼した。誰かがブリーフィングルームに入ってきたようだ。
「艦のボール隊の生き残りはこれだけか…」
低い声を共に現れたのは、この艦の艦長であった。
歴戦の勇士を思わせる口ぶりに渋めの顔。
さすがに少尉よりも年上だろうけど、まだ若いと思う。
「あ、あの生還できたのは、ここにいる3人だけであ、ありましゅか!?」
私は思わず声を上げて、思いっきり噛んでしまった。
「そうだ。艦隊も敵機の攻撃を受けて被害が少なくない。頼みのジム隊は
敵のモビルアーマーと交戦して散り散りだ。他の戦区の隊やMSが入り交じって
再編成には時間が掛かると旗艦から通達があった」
モビルアーマー……噂で聞いたことがある、MSのように首や脚を無くし、戦闘機のように加速、ビーム兵器を搭載したジオンの新兵器だ。1機でMS複数機とも対等に
渡り合えるというのだから、驚きだ。
なによりそれらに共通しているのは、特に大型だと言うことだ。
「ジャン、この戦区にモビルアーマーが?」
少尉が艦長に問う。え………名前ですか?
「未確認だが…ジム隊の通信によるとそうとしか思えん。エルシー、ボールだけで
出撃は許可できん。ジム隊の帰還を待て」



>>27戦火って痛々しいですよね。男は気持ちいいかもしれませんが
受けるファにとってはもう自決モノでしょうね。
08小隊で一番好きなのは敗残兵のザク3機がキキの村で戦う話。
あのザク達を作るために陸戦型ジムを買ってシールドだけ使うとか、
色々やったのはいい思い出です。
0037名無しさん@ピンキー2016/03/14(月) 23:58:30.88ID:6ta3mLaR
>>33の続き

艦長×エルシー
ユキ自慰
エロ


「おい、新兵、寝るのもいいが食っておけよ」
「ひ、ひゃあ!?」
私はウトウトしていたらしい、ノールマン伍長が冷たいドリンクボトルを
私の額にあてたようだ。場所はブリーフィングルーム。
「も、申し訳ありません、五長殿」
私はハッとして敬礼した。
「よせよせ、堅苦しい。食えるときは食え、それから寝ろ。
空腹は戦闘中にもろに出るぞ。何でもいいから腹に入れておきな」
伍長はドリンクを飲みながら、携帯口糧のパックを私に放った。
「はッ、はい」
私はパックを開き、中身のスナックブロックを口にした。
バーベキュー味だ。これは美味しい部類に入る。
ちなみに一番不味いのはビーンサラダ味。
ビネガーが効き過ぎていて、その臭いに食べる気が失せる。
それを食べるには、どんな口糧にも付属しているレッドペッパーを
大量にまぶして、味覚を麻痺させて口に押し込む。
「食ったら仮眠しとけ、まだ編成には時間が掛かるだろう」
「は、はい…あの、少尉殿はどちらに?」
マーヴィン少尉の姿が見えない。
「ああ、艦長と一緒に出て行ったよ。今頃は艦長室でおっぱじめてんじゃねぇの?」
「そうですか艦長と―――――えッ?」
何か凄いことをサラリと言われた気がした。
「え…え、ええ!?」
「そうか、お前は知らないんだな。まぁ、そういう事だ、あまり詮索するなよ」
伍長はそう言って眼を閉じた。
そういえば、名前で呼び合っていたし、古参だったらそういうこともあるんだろう。
にしても……少尉殿と艦長がそんな関係だったとは、意外だ。
あ…やばッ…せ、戦場なのに…な、なんで濡れて…緊張が一気にほぐれたのか
あの凛々しい少尉が…セ、セックスして…甘く喘ぐ姿を想像したら…
私って最低だよ。
0038名無しさん@ピンキー2016/03/14(月) 23:59:10.04ID:6ta3mLaR
「あ……ジャン…んッ」
「エル…」
艦長室の簡易ベッドの上でジャンはエルシーの中に押し入ったペニスを
ゆっくりと前後させた。捲れたシャツから覗く豊満な乳の先端がピンと
その存在を主張している。
「エル…ッ」
ジャンが愛称を呼び、その先端を口に含んだ。
ちゅっと搾乳するような音に頬を染め、エルシーはジャンの頭部を抱え込む。
「あッはッ……やだ…吸う音…」
極限られた者、にしか見られたことのない肌が
愛でられる甘美な行為にエルシーは声を上げた。
「すまん…どうにも…その……君が欲しくてな」
エルシーの乳房をすくい上げるように揉み、その先端をくりくりと刺激し、摘む。
「んぅ…フフ…戦場に来ると誰でもそうなるわ。欲しいのは男だけじゃないのよ」
「君を抱いたまま、眠って…目が覚めたら故郷のベッドの上だったら…
と思うときが度々あるよ…」
「あら…艦長は頭がおかしくなったのかしら?」
エルシーが戯けて言うと、ジャンは尻肉を鷲掴み、一気に突き上げた。
「んんッ…あん…もう少しゆっくり…あ、ダメッ」
「すまん…くっ…エル」
ジャンはエルシーの首に舌を這わせて、激しく腰を振った。
ちゅぶ…ぢゅるという淫らな吸引音が室内に響く。
「ほんと…ん…男って…野獣…乱暴よ…」
エルシーは下腹部に力を込め、締め上げた。
キュッと締まった膣道に圧迫されジャンは歯を食いしばった。
「お…おおッ…おッ!」
「ン…んんっ!あッあッあ!」
ジャンの剣突が行為の終局を告げる。
ビクンっと波打つジャンの腰、首を仰け反らせたエルシーは
腹部に放出され、広がる熱い体液を感じた。
「んッ…んッ…あ……」
眼をつむり、より奥へ、奥へ種を付けようとする雄の本能。
「あ…はァ…まだ出て…」
「う…エル……おお…」
ジャンはくぐもった声でエルシーの名を呼び、官能的な丸みを帯びた尻に
指を食い込ませて、欲望を解き放っている。
エルシーは断続的に広がる精を受け止めた。やがて果てたジャンはエルシーの
身体に倒れ込む。厚い筋肉に覆われた胸がエルシーの豊満な乳房を押し、荒い息をついた。
「…ん…う…んん……満足した、野獣艦長さん?」
エルシーはくすっと笑むと眼を閉じ、背中に両手を回した。
「エル……愛している」
一頻り絶頂の余韻を絞り尽くしたジャンはエルシーにペニスを
埋め込んだまま深い口吸いを交わした。
0039名無しさん@ピンキー2016/03/15(火) 00:00:33.15ID:2lCOwe/D
―――――更衣室
(…し、少尉のおっぱい…おっぱい…お尻…お尻)
更衣室で、ショーツがグショグショになるのも気にせず私はオナニーに耽った。
ああっ!イッ…イクッ!あああッ!イクッ!
私は喉を仰け反らせて、下腹部から閃光のような快感が 突き抜ける
感覚に眼をつむった。こ、こんなすぐにイっちゃうなんて…ああ、最低だ。
ピッピッと潮が飛び散らせながら、ふるふるとお尻を震える。
上官をオナニーのオカズにして…更衣室で耽るなんて、思ってもみなかった。
皆、どうやって性欲処理しているのかな…なんて思う日が来るなんて。
これが生きている実感なのか… ねっとりとした体液が絡みつく指先を
潤んだ目で眺めながら私は思った。

続く

戦場では絶対できないであろうし、
味方が戦っているのにラブラブしているのはごめんなさい。
次回は戦闘メインで。
0043名無しさん@ピンキー2016/04/03(日) 22:37:09.72ID:hXlybTPM
作ったのは間違いなく◆FxF.OK.oSOew だがね
こいつが百合ゲースレで8なめた真似をしなければ被害が拡散することはなかった
艦これスレも実私スレもごんぼスレもトリガーのなったのはなめた真似をしたチクリマンに他ならない
今回の百合板の災禍のトリガーのなったのは ◆FxF.OK.oSOew が原因だと言っておく
こいつが素直に避難所に篭いもっていればエロパロのほい
うに集中して百合板ではここまでする気はなかったがな
矛先そらそうとしても無駄だぞ?にきびおいしいです タッパーに540粒くらい貯まってます
ふたを開けると にきびのすっぱいニオイがして
はゆっくりと彼女の顔を見ながらホカホカの生レバーを味わい食べました。
ズルッと喉を通りました。「ストローおじさん」って知ってる?
昔、映画館とかに置いてあったタン壺(みんながカ〜ッペ!とタンを吐く壺)に
うに食べるそうです。 ごはんの上にハナクソとか鼻毛が丸え!
汁はご飯の隙間を通って下に溜まるけど、全部飲み干すそうです。ゴクゴク
ツンと何かつけられるような衝撃が走るとともに、俺はリッカを抱き寄せた。
「ごめん 下着を脱がせ、生まれた時の姿になるリッカ。 可愛い。いほっぺにキス。 彼が感じろは、全部知ってる。僕の方を見てい
誇るニオイ最強品といっても過言ではない
舌苔…パサパサした中に若干の潤いあり(口内の状況により様々)薄い粘土の味がする。手を使うことなく口でモゴモゴしながら食えるので外出時にオススメ
カサブタ…乾燥具合によって質が決まる。特に乾燥後期段階のモノは歯応え良。食べ頃は自然に皮膚から剥がれ落ちる前後
鼻の毛穴の細長いカス…油っ懇願するような悲痛な叫び。 俺にこんな綺 
 きちんと、愛し合いたかった。われたら、もう、我慢できないじゃん……」
ぁ、俺ももう――我慢できない」 テッテレー、と効果音でも付きそうな勢いで、
「むね、さわらないで」「小さいとかそんなん関係なしに可愛って、リッカ」0
わしながら、リがあって美味 。緑色が高品質とされる 。空腹時の定番。
耳垢…苦い。細かい毛が混じっていて、粉っぽい。水分が多いとニオイはトップクラスに分類される
目ヤニ…塩味。とにかく堅くて、小さい。歯応えが萎びた納豆に似ている
爪の垢…薄い塩味。もさっとしている。意外に量が多く、食べごたえあり。通は足の親指のモノを好む
ニキビ芯…味なし。ゴマみたい。ヘソのゴマ…味なし。歯応えは体調によってまちまち。香りは独特
フケ…粉っぽい。1か所に大量に集めて食うのがベター 。まれにさいカサブタが付いてくる事があるが、こ
れはまぎくプレミア物。まさにダブルネームの価値を再認識されられる程の希少品。
他の毛よりコシがあり歯触りも良い。うどんで例えると讃岐のような位置付け。希少性はやや高い
皮…通常は足の裏の皮を食用とする。厚ああ1首の薄皮は数年に一度しかとれないマニア垂涎品
ぽい。如何にきれいな形で取れるかが肝心。サイドの溝が好漁場
今日ひとりで、いつも行く喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、 一 中に」で」る。れないから……実力行使で、と思って。あはは」
 ストロー突っ込んで全部飲み干すらしいよ。ゴックンゴックン!
ストローが透明だから飲んでるのが丸見え! たまにハナクソが詰まるらしいけど、思いっきり吸って食べるらしい。スッポン!
ちなみにストローは絶対に洗わない方針だそうです。
「どんぶりおじさん」もいるようです。 タン壺を熱いご飯にぶっかけてジュルジュル流しこむよにこんな綺麗事を言う資格
「ん、感聞かせてね」つ前の席にOL風の女性が座っていて、それが超美人!
僕はボーと見惚れていると、彼女がハンドバックを持ったままトイレへ行きました。
5分位して帰って来たので、もしやウンチでもしたのか? 今行けば彼女の
便臭が嗅げるかもと思い、僕もトイレに入りました。
ちなみにトイレは男女兼用です。 初恋ドリンクというシールが貼られた瓶の蓋をけ、ぐいっと一気に飲み干す。
 これで味が初恋ジュースのそれだったらどうしようかと考えなくもなかったが、味は普通の栄vンクと同じだよ……あれ、にゃんうyちゃんとしっく」
 入ると香水の香だけでしyた。
失敗かと思kい、念yのため汚物入れを開ける7りました温もの残る
感激しc信じられない位の量の生レバーがドッサリと乗ってbした。t
その場で僕はまだ暖かバーを全部口に入れてしまい8ました。
こんなに大量のレバーを一度に口に入れた事はありませ.jj
彼女は会社かうtら帰るy途中ナプキンを取り替えyられ5yなかhっhたのiで溜hまっていた分が出たのhかy、tjう
半端な量ではありませんv。iス8。 彼の閉じたキあああああいいういいbgtyy8u
0046フェニックステイル第22話2016/04/10(日) 12:30:43.63ID:up+1PuGD
「ネイサン!」
 何の殺気もなく放たれた長距離狙撃。その光軸が僚機の中心を貫き、巨大な火球に変える瞬間をリンは見た。
 同時に自機とシエル機へも射弾の雨が降り注ぐ。ビーム攪乱膜の間隙を縫って飛来する火線の狙いはあくまで精確。リンはシールドを構えた防御姿勢を取りながら、回避運動を強要される。
「《大ジオン仏道》、――こいつらが!」
 戦友を失い、絶好の好機を潰された。それでもリンは迫り来るMS-14A《ゲルググ》の三機編隊を前にしつつ冷静に、そして冷徹に戦況を判断していた。
 友軍MS一機喪失。敵には予想外に早く強力な増援が出現。もはやニュータイプも敵船も捕獲する余裕などない。好機は完全に失われたのだ。
 ならば沈めるまで。
『ハラキリ』しようとするかのように自機の胴部へヒートホークを食い込ませた《ザクU》へ、リンは迷いもなくジム・ライフルの銃口を向けた。
 強力な脅威となる敵ニュータイプを生かしてはおけない。捕らえられないなら、確実に殺せるときに殺しておく。
「!」
 だがマズル・フラッシュを吐いて高速徹甲弾の連射が放たれたとき、もう一機のザクが飛び込んでニュータイプ機を突き飛ばしていた。
 右肩の防盾が数発の90ミリ弾を弾いても、なお数発が機体を抉る。それでも敵機はザクマシンガンを左構えで応射して、決死の気迫でリンを下がらせた。
「ちいいいッ! 44、いま叩ける敵だけを叩いて下がるよ――44?」
『大ジオン仏道ッ!!』
「シエル!!」
 リンが制止する間もあればこそ、シエル機は迫り来るゲルググの正面へ飛び出していた。シールドを向けたままBR-S85ビームライフルを両手で構え、速射モードで光軸を放つ。敵機も応じ、ビームの射線が交錯する。
 一対三。
 シエルのRGM-79R《ジムU》が放った火線は、咄嗟の応射とは思えない精度で敵機を捉えた。特徴的な流線型を描くシールドの表面に光軸が跳ねて煌めき、肩部装甲を削ってゲルググの先鋒機を揺らがせる。
 だが敵機が一丸となって放った射弾も、またシエル機を猛然と打ちのめす。
 続けざまに三発被弾したシールドが、連邦十字の中心部から真っ赤に焼けた。前腕部との接続基部が溶け落ちる。熱被害が左前腕の基部まで達する前にシールドを外して投げ捨てた。
 それでも彼女は突進を止めない。
 ライフル内のE-CAPを搾りきって銃身を焼き切る勢いで連射を放ち、最後には頭部バルカン砲からの火線まで添えながら、シエルは敵機の突撃と交錯した。
 メガ粒子と60ミリ砲弾が無数に飛び交い、装甲と部品が砕けて飛び散る。
 ゲルググの長大なビームライフルは精度と威力に勝るが、速射性と取り回しの面ではスプレーガン系列のBR-S85に劣る。だから強引に距離を詰めて撃ち合えば、数で勝る相手とも互角に戦える。
 それは七年前のア・バオア・クー戦から変わらない原則論。そして理屈で正しくとも実行は極めて困難、事実上不可能な戦術だ。
 だがシエルは何の迷いもなく決行した。彼女が持つ並外れた判断力と反射速度、そして煮えたぎる怒りと憎しみに支えられた戦意がそれを可能にしたのだった。
 一瞬のうちに破片と閃光を撒き散らし、一機と三機が前後に離れる。
『ゲオルグ居士ッ!?』
 襲撃時から開かれたままのオープン回線に女の悲鳴と、男の重厚な声色が響いた。
『見事――!』
 ゲルググの先頭機は右腕を失っていた。ビームライフルごと吹き飛んでいく。
 そして光弾に中心部を貫かれたシエル機の頭部も火を噴く。バルカン砲の残弾ごと弾け飛んだ。
『なればこそ、この場にて成仏させん! 喝ッ!!』
 片腕のゲルググは慣性を無視するような急制動で円弧を描いた。ビーム・ナギナタを残った左手に構えて抜くや、シエル機めがけて逆落としに迫る。
 頭部メインセンサー群を失ったシエルは、すぐにその挙動を捉えきれない。それでも巧みな姿勢制御で機敏に跳ね上がると、シエルは肩部サブセンサーの視野に敵機の機動を捉えた。
 大半が死んだ全天周モニターの向こうの敵機へビームライフルを向け、さらにビームサーベルを抜き放ちながら少女は歯を剥く。笑った。罠へ誘い込んで刈り取ろうとするかのように。
『極楽往生!』
『地獄に堕ちろッ!!』
 首無しジムUを構えもろとも切り裂かんとばかり、ビーム・ナギナタの粗く太い光刃が重MSの大質量とともに突き進む。
0047フェニックステイル第22話2016/04/10(日) 12:32:21.38ID:up+1PuGD
『シエルッ!!』
『ぬう!!』
 だが、そこを横合いから90ミリ弾の猛射が襲った。ゲルググはスカート下からメインスラスターを噴き、敏捷にロールを打って離脱する。
 それを掩護する二機のゲルググがジム・ライフルの連射と銃火を交わすと、両者の距離は弾けるように大きく開いた。
 激突直前の二機の隙間を強引にこじ開けて割り込んだリンは、部下の少女を守れる位置を取りながら構えを直す。
「シエル! 大丈夫? 生きてる!?」
『行けます! やれます! 嬉しいっ、私はツいてます――アイネの仇、大ジオン仏道! 今ここで、貴様らを、殺すッ!!』
 シエルは機位を立て直すや、離れていくゲルググ編隊の背中を追おうとした。そのコクピットに唐突なロックオン警報が鳴り響く。
「まあ、少し落ち着こう」
『!?』
 リン機が眼前で彼女に、ジム・ライフルの銃口を向けていた。
「一緒に行こうよ。とりあえず私の後ろに付いて、さ」
 動きを止めたシエル機を従えてリンは滑らかに、そして穏やかに加速を再開する。母艦が対空砲火を放てばその弾道となるであろう線上を避けつつ、二機はゲルググの接近を牽制する進路を取った。
「ねえ、シエル。あんたの敵討ち、ってさ――たかだかあいつら三匹狩ったぐらいで、終われるようなもんなの?」
『隊長――』
「私は違うけどなあ」
 奇妙なほどに平板な声で、淡々とリンは続けた。
「他人様のスペース・コロニーに核をぶち込んで、サイド丸ごと皆殺しにしといて――ザビ家さえ追い出せば無罪放免。自分の本国は南極条約と連邦の戦後政策に守られて無傷。
 それでスペースノイドの解放者、なんか気取ってくれてさ。ねえ、シエル。……あいつら、許せる?」
『…………』
「私は、ここじゃ終われない。死んでいった連中の分まで――私は必ず、奴らへ本物の復讐をする。そのために、生きる」
『……その通りです』
 少女の声色が変わったのを確かめると、リンはふっと笑った。顔を上げて敵機を睨む。
「《アルマーズ》を守る。艦の後衛を張りながら、戦域を離脱するよ!」
『……了解――!』
 そして彼女たちの眼前で、三機のゲルググも反転しながら再び編隊を整えていく。
『ゲオルグ居士! ご無事で!?』
『大事無し。未だ我らに利有り。南無阿弥陀仏。エレイン信女、この機に新たな功徳積むべし』
 右腕を失った機体へ寄り添うようにしながら損傷状況を確認するゲルググの傍らで、もう一機が油断なくビームライフルの銃口を二機のジムUへ向けている。敵方を警戒しながら機内の少女が叫んだ。
『姉様! 今の連邦亡者、『大ジオン仏道』と!』
『聞こえていました、フローラ。我らの宗名が知られているとは――そのうえよもや、ゲオルグ居士の機体に傷を付けるなど。やはりこの者たち、今までの餓鬼道、畜生道とは違います。油断してはなりません!』
 絹糸のごとき銀色の髪をヘルメットの下で結い上げた美しい娘が、幼さを残した妹からの声に凛々しく答える。
 戦場の中心となる偽装貨物船の側を航過していく彼女たちの足下で、一機のザク・ファドランがヒートホークを自らコクピットハッチへ押し当てていた。
 緩慢な割腹自殺を決行しようとしていたその機体に、別のファドランが組み付く。傷ついた機体で自機のヒートホークを振り上げ、自殺目的の熱斧をその腕部ごと切り落とした。
 そしてどろどろに溶けたコクピットハッチへ、必死に冷却剤の噴射を始める。
 ジオン公国軍制式パイロットスーツの胸元に並外れて豊満な乳房を包んだ銀髪の美少女は、幼くも穏やかな目元からその光景を哀れむように見下ろしていた。
「あの方々、ご苦労なこと。もう中身は『空っぽ』ですのに」
『彼女たちが望むなら、後で『完全成仏』を手伝って差し上げましょう。ですがフローラ、今はこの者たちが先です』
 ゲルググ編隊は旋回を終えつつあった。なお前進してくるサラミス改級駆逐艦、そしてその艦と彼女たちとの間へ再び割り込もうとするジムU編隊の間で、次の標的を定めようと頃合いを探っている。
「いいえ姉様、それよりも私はあれを!」
『フローラ!?』
 エレインが驚きの声を上げる中、フローラ機がビームライフルをもたげる。ゲルググのモノアイがレール上を動き、戦場後方へと望遠を掛けていた。
 胴体部に頭部だけを残して大破したハイザック。
 ファーガスン隊との戦闘で四肢を破壊されながらも、残存したセンサーでなお戦場を遠巻きに観測し、すでに後方へ退いた母艦マカッサルへと情報を中継し続けようとしていた機体だった。
0048フェニックステイル第22話2016/04/10(日) 12:34:24.92ID:up+1PuGD
『フローラ! 奇襲もなしにこの距離から単機で射掛けても、当てられたところで完全成仏は――』
「いいえ姉様、やります!」
 姉の制止を振り切り、少女は遠い敵機を照準する。だがロックオンしない。センサー有効範囲外。火器管制系でも修正しきれない微妙な計算を照準へ加味して、そしてフローラは念仏とともにトリガーを引く。
「南無阿弥陀仏ッ!!」
 そして放たれたメガ粒子は十数キロを渡って狙い過たず、ただ一撃でハイザックの中心核を貫いた。
 一瞬でコクピットハッチを撃ち抜いてパイロットの肉体と生命を蒸発させ、次いで暴走した核融合炉が巨大な火球となって弾け飛ぶ。
 ハイザックのパイロットは苦痛を覚える間もなく、原子に分解されて光輪とともに消滅した。フローラはその瞬間、何かを感じたようにはっと目を見開きながら呟く。
「――完全成仏」
『完全成仏……!?』
『完・全・成・仏! 見事、フローラ信女!』
 ゲオルグ機が親指だけでビーム・ナギナタを保持したまま、四指を伸ばして祈りを捧げた。エレイン、フローラもそれに倣う。
『南ァ無・ジオン。今日二人目の完全成仏。フローラ信女、見事』
『ジーク・阿弥陀仏。ありがとうございます、ゲオルグ居士。ただ、今日はまだこれから――もっと多くの連邦亡者を、完全成仏させねばなりません!』
『然り。励めよ、両信女! まずは大勢から安らがせん!』
『御意!』
 右腕を失ったままのゲオルグ機に先導されて、三機はサラミス改級駆逐艦を襲撃するコースで侵入していく。
 戦闘艦が持つ火力と索敵は、MSのそれを遙かに上回る。ゲルググの有効射程外から彼らを早々に捕捉するや、多数のメガ粒子砲塔が甲板上で蠢く。
 強烈な光軸の束を放ってきた。大ジオン仏道はケンドー丸が残した、もはや完全に拡散しつつあるビーム攪乱膜の残滓に拠りつつ、精確な射撃へ回避運動を交えつつ肉薄する。
 だが、90ミリ対空機銃群はまだ撃たない。頃合いを待っている。有効射程へ入る絶好の瞬間に統制射撃を開始し、一気に敵MS隊を撃砕するつもりなのだ。
 ゲオルグはその敵艦の落ち着きぶりを高く評価する。戦い慣れている――そうであるがゆえ、この機を逃さず成仏させねばならぬ、とも。
 そしてゲオルグも、このまま直接この艦と交戦するつもりなどない。
 斜め後方から追いすがるように走ったビームと90ミリ弾の火線を、ゲルググ三機編隊は背越しに見ていたように回避した。ロールを打って駆逐艦から離れながら、艦砲の射程外へと敵MSを誘い出していく。
 リン・リンリーはジム・ライフルの射線を蛇のようにうならせ、ビームサーベル抜刀のとともに突進した。追従するシエル機とともに、ゲルググ編隊へ背中から切りかかる。
 片腕のゲオルグ機がビーム・ナギナタを、そしてエレイン機がシールド裏にマウントしていた、MSの丈ほどもある長柄の格闘用ビーム兵器――ビーム・ナガマキを抜き払って迎え撃つ。
 激突した。
 三機編隊を脇腹から食い破らんとする強烈な勢いを乗せたまま、リンとシエルがそれぞれ叩きつけたビームの光刃がメガ粒子の飛沫を激しく散らす。
「いやぁ、本当っ――イイ趣味してるよ、あんたらっ!!」
 襲撃時から木魚と念仏を流し続けたまま、今なお開きっぱなしのオープン回線にリンが喚いた。斬り結びながら楽しげに。逆境でこそ笑ってみせるのが彼女の人生哲学だ。
「敵は殺す、戦えなくなった相手も殺す。目に付く相手は全員殺す! あんたら戦闘に勝った後でご丁寧に一人ずつ、ビームで焼いて回るんだってね。ねえ、一体ナニが楽しくってやってるわけ?」
『否。利己の楽しみに非ず。ただ宇宙(そら)の仏道に叶えばこそ、我らは為せり』
「何を――!!」
 ゲオルグと切り結ぶリンの剣撃は変幻自在。言葉の中でも片手でビームサーベルを操りつつ、頭部の60ミリバルカン砲をお留守にするようなことはない。
 敵機が光刃の鍔迫り合いに甘えて足を止めれば、その瞬間にバルカン砲が頭部を砕く。
 だが彼女を相手取るゲオルグの老獪さは、まったく射撃の機会を許さない。
 ビーム・ナギナタが基部両端から放つ二条の光刃、そのビームサーベルとの接点を軸に機体が廻る。
 その両側から同時に出る刃の扱いはあまりに至難で、それは熟練パイロットが不足した一年戦争末期における、ゲルググというMSの戦績不振に輪を掛けた。
 ビーム・ナギナタは以降、ゲルググ系後継機の武装から姿を消す。
 しかし一度パイロットが使いこなせば、その威力は通常型のビームサーベルを圧倒する。
 リン機を相手に片腕ひとつでビーム・ナギナタを操るゲオルグは、リンの想像を遙かに越える力でその真価を引き出し、彼女を完全に封じ込んでいた。
0049フェニックステイル第22話2016/04/10(日) 12:37:15.54ID:up+1PuGD
 そしてエレインが振り上げるビーム・ナガマキの光刃もまた、十分以上の間合いと剣速をもってシエルと巧みに切り結ぶ。
『殺す――! 大ジオン仏道! 貴様らこの場で、私と死ねぇっ!!』
『それほど千々に乱れた心で、何が為せるというのです』
 リン機と異なり頭部を失っているシエル機は、もはや頭部バルカン砲を頼れない。怒りに研ぎ澄まされたシエルの迷いない剣閃も、エレインが巧みに操るナガマキの間合いを抜くことが出来ずにいる。
 そして残弾の乏しいライフルを使うには、互いに距離が近すぎた。
 ビームサーベルを両手構えにして猛然と襲いかかる首なしジムUの斬撃を、ゲルググは巧みに打ち払い続ける。銀髪の美女は玲瓏たる声を発して少女へ説いた。
『我らはただ、ジオニズムの理想と仏法の調和せる、宇宙衆生(スペースノイド)の独立せる楽園――真なる浄土を、この地球圏に拓かんとするのみ』
『スペースノイドの、楽園――?』
 頭部メインセンサー群を失い、肩部サブセンサーから得られる限られた視野。
 メガ粒子の飛沫を撒き散らしながらビーム・ナガマキの光刃を操り、全力の押し込みを仕掛けてシエルを弾き飛ばそうと動き続けるゲルググの背後に、シエルはスペースコロニーの巨大な残骸を見た。
 あの日。U.C.0079、1月15日。
 ルウム戦役でジオン公国軍は、サイド5ルウムのコロニー群を核攻撃で焼き砕いた。少女の家族も、友人も、故郷も――二十億を超す人命もろとも、世界のすべてが塵となって消え去った。
 シエル・カディスの世界は、あの日、滅んだ。
『何がっ、――何がスペースノイドの楽園だ! お前らジオンがその何十億人を殺し尽くした結果が、このL1の有様だろうがッ!!』
『違います。ジオンはスペースノイド独立の真の守護者。無為の殺戮など為してはいません』
『ならば、この光景は何だッ!!』
『ジオンが引導を渡したのは、悪しき地球の重力に魂を惹かれ、真のスペースノイドに徒なすばかりの連邦亡者。
 ジオンは連邦に呪われた邪悪な生からの、速やかな解放――成仏という、魂の救済を与えたに過ぎないのです』
「ッ!!」
 側面から殺気。
 シエルは脚部と肩部スラスターを全開に噴かした。さらに敵機のシールドへ蹴りを叩きつけて間合いを開く。半瞬のうちに飛び退いた隙間を光軸が撃ち抜いた。
 ノーマークで残った最後の一機――フローラ機が矢継ぎ早の狙撃で、わずかに足を緩めたシエルを襲ったのだ。
『悪しき地球連邦の重力に魂を捕らわれた餓鬼畜生の救いは、メガ粒子と核爆発による一瞬の業火即身完全成仏にしかないのだとっ!
 五十億の亡者を救ったジオンの功徳への報恩として成仏するのが、あるべき人の自然な生き方なのだと! そんな簡単なことが、どうして分からないのですっ!!』
「喋るなッ!!」
 有効射程が開けた瞬間、シエルは限られた視界からビームライフルを応射した。だが二対一。火力で圧倒されたシエル機が左肩に被弾、肩口から断ち切られた左腕がサーベルを保持したまま流れていく。
 残る武装はライフルのみ。E-CAPの残量も乏しい。リンは敵隊長機らしきゲルググと切り結んだまま動けずにいる。
 シエルの口元に不気味な笑みが浮かんだ。
『偉大なるジオンの功徳で地球連邦の呪縛から解き放たれ、仏と成った五十六億七千万の連邦餓鬼畜生――その安らかに満たされた魂の呼び声が聞こえないのですか?
 さあ! あなたも今こそ成仏し、その一柱となるのです!!』
「お前らを先に殺してからなッ!!」
 横から割り込んできた射撃支援を受けて、正面の敵機が長柄の光刃を振り上げた。火線に圧されて崩れるように下がったシエルへ、一気に突進してくる。
 だが唐突に降り注いだ強烈な火線の嵐が、その迫るゲルググを強引に押し下がらせた。
『なにっ!?』
「アルマーズっ――」
 息を呑んでシエルは呻く。艨艟が迫っていた。
 彼女たちの母艦である駆逐艦アルマーズは退避するどころか、自らのMS隊とゲルググがぶつかり合う戦場めがけて割り込むように突進してきたのだ。そして自艦から敵機へ、あらゆる火力を叩きつけていく。
『リン、シエル! 下がるぞ、来いッ!!』
『ヘイズ!?』
『艦長――』
 アルマーズはシエルと距離の開けた二機を弾幕で押し流すと、リンと絡み合う敵機にそのまま体当たりを掛けるような勢いで迫った。
 リンは後方から迫る母艦の軌道とその対空射撃の弾道まで読んだかのような動きで、絡み合っていた敵機との間合いを開くや一気に射撃で押し返す。
 そのままシエル機とともに母艦の内懐で直掩の位置に付けると、リンのジムUは対空砲火と一体になりながら、弾倉交換したジム・ライフルから射撃を放った。
0050フェニックステイル第22話2016/04/10(日) 12:40:22.51ID:up+1PuGD
『ヘイズ。ネイサンが――』
『分かっている。だが、ここは下がる! リン、一年戦争を思い出せ――俺たちずっと、そうやってきただろう?』
 一年戦争。
 敵だけが持つMSの猛威。もはや物量すらも圧倒的なジオン宇宙艦隊。限られた拠点。硬直した及び腰な友軍。
 そんな劣勢の中でおびただしい犠牲を耐え忍びながら、彼らは――トラキア隊は何度となく好機を捉えては、貪欲にジオン軍へ襲いかかった。そして、生き抜いた。
 敵と味方の返り血の中で学んだのだ。泥水を啜っても生きてさえいれば、敵を殺す機会は、また必ず巡ってくると。
 だがそのとき、アルマーズの索敵手が報告した。
『一時方向より、高速で接近する熱源体二――分かれた、合計六……いや、八! 一時方向よりMS六機、高速で接近中!』
『敵の援軍……ッ!』
《コムサイ改》級哨戒艇。
 ジオン公国軍の主力戦闘艦、《ムサイ》級軽巡洋艦の艦首部に装備されていた多目的大型艇《コムサイ》を、単体での作戦行動を前提として改修した戦闘艇だ。
 艇内には二機のMSを格納して簡易な補給整備機能を有し、自衛火力として対空機銃他の火器類も装備している。
 すでにアルマーズの有効射程から離脱したルスラン・フリートの偽装貨物船が待ちわびていた、そしてアルマーズが予測していた援軍がデブリを縫って、ついにこの戦場へ到達したのだ。
 その平板な艇体へ跪くようにしながら上下対称に搭載されていたMSが、コムサイの甲板を次々と蹴飛ばすようにして舞い上がっていた。格納庫からも。
 MS-09R《リック・ドム》――おそらくは独自仕様の近代化改修機。それが六機。
 コムサイ改の背と腹で今まで温存してきた推進材をぶち撒けるかのように、その強力なスラスターがスカート下で咆哮した。暗色の重装甲で微細なデブリを跳ね飛ばしてくる。速い。
 二機のジムUはこのまま友軍のゲルググが抑えきれると判断したか、リック・ドム編隊は二個小隊に分散しながら、サラミス改級駆逐艦への対艦攻撃を狙う軌道を取った。
 アルマーズの対空砲火はゲルググとの交戦に分散しきっており、もはや全力をリック・ドムへ集中させることが出来ない。その操艦がいかに巧みであろうと、ここからMSの機動性を振り切れるはずもない。
 捕捉される。
 90ミリ機銃の数門が素早く対ゲルググ戦から振り分けられて、リック・ドムへとその照準を変更した。だが単艦の駆逐艦にとって、同時に迫る九機もの敵は多すぎる。
 十字レールを走る六基のモノアイが、ジャイアント・バズ六門の暗い砲口が、サラミス改級駆逐艦を見下ろす。
 迎撃の火線の中で回避機動を躍りながら敵艦を狙い、先頭の一機がジャイアント・バズのトリガーに指を掛けた。
 ここで六機から同時攻撃を叩き込めば、対空射撃に妨害されながらでも一発は当てられると彼らは踏んだ。
『なりませんッ!!』
『!?』
 だが初弾を放とうとしたリック・ドムは、予期せぬ方向からのビームに射撃動作を阻止された。
 二個小隊はそのまま咄嗟の回避機動に入り、敵艦への攻撃侵入軌道から離脱していく。先頭機のパイロットが見たのは自機へビームライフルの銃口を向けてくる、友軍機のはずのゲルググだった。
『な、何をするッ!?』
『あなたがたの武装では、そんな及び腰の射撃では、連邦亡者を完全成仏に至らせられません! 半端な攻撃で肉体に無用の苦痛を与えれば、悔い無き完全成仏を妨げます。
 それでは新たなる怨念の輪廻を生むだけということが、なぜ分からないのです!!』
『大ジオン仏道か……っ!』
 そのゲルググを駆る少女、フローラの強烈かつ理不尽な神懸かった気迫が、増援のリック・ドム部隊を凍らせた。そして友軍相撃すらも辞さないその断固たる気迫は、他の二機からも同様。
 このまま対艦攻撃を継続しようとすれば、連邦軍と戦う前に背中から撃たれて彼らが先に『完全成仏』させられてしまうかもしれなかった。
 二機のゲルググが彼らと敵艦の間に割って入る。
『悪人正機――悪しき連邦亡者とて、いや連邦亡者だからこそ、苦悶の中で地獄に堕としてはならぬのだ。慈悲の心から放つメガ粒子と融合炉核爆発の業火で、その肉体を原子レベルで荼毘に付す。
 そうして重力の呪縛より解き放ち、こころ安らかに極楽往生させねばならぬ』
『対艦攻撃は我ら大ジオン仏道が主導します。サラミスの乗員すべてを苦痛なく一瞬にして蒸発成仏させる術、我らが心得ておりますゆえ。本隊の方々は支援と牽制を願います。南ァ無・ジオン』
『……ジーク・阿弥陀仏――』
 ゲオルグの説教をエレインがまとめて有無も言わさず一方的に指示を与えると、リック・ドムのパイロットは信仰心のない平板な声で応じた。
0051フェニックステイル第22話2016/04/10(日) 12:42:16.52ID:up+1PuGD
 サラミス改の射程から離脱した九機のMSは、素早く編隊を組み直しながら、再度の攻撃軌道に入っていく。
「ふうん――まず足並みを揃えてくるかあ。敵さん、手堅いなあ」
 遠方を巻いて攻撃編隊を整えていく九機もの敵MS隊に、アルマーズの前方でたった二機の阻止線を展開しながらリンは笑った。
 敵の足並みが揃わなければ、多少は艦に被弾を受けてでも乱戦に巻き込んで数機を落とし、強引に突破して離脱するつもりだった。
 だが敵は一挙に全力を集中して、自軍の損害に構わずあくまで撃沈しに来るらしい。
 増援の到着で均衡は完全に崩れ、戦力比は圧倒的不利。次の突撃を阻止できる公算は薄い。
 どうすれば生き残れるかではなく、どうすれば一機でも多く道連れに出来るか、を考えるべき状況なのだとリンは知った。
『隊長、なんだか楽しくなってきました』
「いやあ、戦争ってやつはこうでないとねえ」
 シエルは笑っていた。リンも笑っていた。美しい少女と娘の二人が浮かべるそれは、ひどく邪悪な笑顔だった。
 アルマーズは今、再びその火力を沈黙させている。機銃に次弾を装填し、メガ粒子砲にエネルギーを充填し、砲身を冷却しながら艦長からの射撃号令を待っている。
『南無阿弥陀仏』
『ジーク・ジオン!』
 ルスラン・フリートのMS隊は、そこを目掛けて突撃した。
 三個小隊同時攻撃。
 迎撃に来るであろう敵MSにはリック・ドムが応戦し、同時に駆逐艦への陽動攻撃を仕掛けて対空砲火を分散させる。大ジオン仏道のゲルググはあくまで対艦攻撃に徹する構えだ。
 そして、大ジオン仏道は真正面から敵艦に迫る。
 まずはビームで艦首から艦尾へ、そして艦橋から艦底へと貫通し、艦体の主要隔壁すべてに風穴を開けてダメージ・コントロールを無力化する。
 動きが止まったところで融合炉をビームで破壊し核爆発させ、その爆圧を艦体すべてに隈無く通す。同時にジャイアント・バズの集中砲火を叩き込めば、敵乗員は一瞬ですべて苦痛なく蒸発させられるのだ。
『姉様。あの者たちからは、並みならぬ怨念を感じます』
『やはり通常の連邦亡者とは違うようです。ジオンへの強い怨念を抱いた連邦亡者、成仏させれば特に大きな功徳となりましょう――フローラ?』
『――姉様、何か……、直上ッ!!』
『!!』
 かっと目を見開いたフローラの警告が、エレインに紙一重でフットペダルを踏み込ませる。
 ゲルググの重厚な機体が横へ滑った。一瞬前まで彼女の機体のあった空間を、火を曳く何かが逆落としに飛び過ぎていく。
 実体弾、360ミリ級。高初速――MS用バズーカ・タイプ火器からの砲撃ではない。
『姉様っ!!』
 そしてエレインが回避する先を読んでいたかのように、やや低速の第二射が来襲した。咄嗟に構えたシールドへまともに着弾し爆裂、本体の身代わりとなった装甲板をまっぷたつに叩き割る。
 エレイン機は編隊から一気に沈んだ。
0052フェニックステイル第22話2016/04/10(日) 12:42:40.85ID:up+1PuGD
『新手ッ!!』
 不意急襲の長距離砲撃。大ジオン仏道がもっとも得意とする戦術を逆に返され、フローラはビームライフルの銃口を上空目掛けて跳ね上げた。彼方の敵影を捉えて狙撃しようとする。
 RGM-79GS《ジム・コマンド》は忽然とその横腹に出現した。
『な』
 いつ、どこから現れたのかも分からなかった。
 フローラの研ぎ澄まされた六感を簡単にすり抜け、認識の内懐に突如降って沸いた敵機は、巨大な相対速度を帯びていた。
 完全な死角から現れて超高速で突撃しながら、両手に構えた光刃の剣閃二条でフローラ機へと斬りつける。
 回避も迎撃も不可能だった。
 ゲルググの胴をビームサーベルが一気に斬り裂き、装甲を蒸発させて全天周モニターを食い破る。少女の豊かな肢体をメガ粒子の閃光が照らし出す。
「南無阿弥陀仏――」
 死の閃光を至近に浴びながら、フローラは穏やかな瞳でただ安らかに念仏を唱えた。
 だが業火は少女の肉体を呑み込む寸前で停止する。
 強引に割り込んだゲオルグ機がビームナギナタの長突を放ち、敵機のサーベルを紙一重で食い止めたのだ。
 そして、交錯は一瞬。
『きはッ!』
 ゲオルグ機との間に光熱の飛沫を跳ね散らすと、ジム・コマンド――その近代化改修機は楽しげな声ひとつ接触回線に残したきり、弾丸のように突き抜けていった。単機。
『なんだこいつは! どこから沸いたッ!?』
『大ジオン仏道めっ、伏兵の奇襲を許すとは口ほどにもない――優先目標変更、中隊全力で奴を潰す!』
 紅白の機影が慣性を殺すことなく走り抜けてくる軌道の先で、リック・ドム隊が突撃と砲撃の標的を正面のジムUから、彼らへ迫るジム・コマンドへ変更する。
 二個小隊、六門のジャイアント・バズが集中して一機を狙った。
 だが上方からその編隊をめがけて、再び高初速弾が撃ち下ろしに降り注ぐ。
『あぐっ!?』
 初弾が一機を直撃して左腕を消し飛ばし、ほぼ同時に来た次弾は編隊直上で爆ぜた。霰弾の雨を叩きつけられ、三機の動きがわずかに鈍る。
『この距離から、実体弾で狙撃!? バズーカじゃない、キャノン系――あっ』
 そしてジム・コマンドの剣閃は、その隊長機を袈裟懸けに斬り捨てる。
 コクピットを消滅させジェネレータを大破させられたリック・ドムが、航過するジム・コマンドの背後で盛大な火球へ変わった。
『隊長!』
『そんな、一撃で――!?』
 それでもリック・ドム隊が五機がかりで放った砲撃を、ジム・コマンドは平然と縫って抜き去る。機体を立て直したエレイン機がビームの狙撃を放っても、背越しに見ていたようなロールで軽やかに避けた。
 二機を斬り裂きながら突破した敵射程外で急旋回しつつ、ジム・コマンドのパイロットはオープン回線で戦場へ吠える。
『完全成仏、ナンマンダブゥ〜! ってかぁ? 俺ァ学が無ェから、神様仏様のことァよう分からんがよ――こいつぁ春から縁起がいいぜ』
 紅白の機体は輝く月を傲慢に背負った。ゴーグル・カバー越しのモノアイ・センサーが、三機のゲルググと五機のリック・ドムをあざ笑うように見下ろす。
 ゲンナー・ウェズリー少尉は八機の敵影を眼下に、その満面に狂獣の笑みをたたえて唇を嘗めた。
『食い放題ってのは最高だなァ、オイ』
0053フェニックステイル第22話投下おわり2016/04/10(日) 13:06:58.52ID:up+1PuGD
今回はここまでです。次回、決着予定。エロはその次に出したいなと思っています。

>>39
ユキちゃん百合ん子だった……! いいぞ。
引き続き、戦闘にもエロにも期待します。
0056名無しさん@ピンキー2016/04/29(金) 20:34:37.76ID:UYDxfW5z
夜な夜なバナージの部屋に忍び込むミネバ様ありますか?
0058ななし2016/05/04(水) 22:11:30.29ID:ODW5rikR
「あ、あの。ミコットさん。ちょっと、相談があるのですが……」
『は?え?私?』
「はい、ミコットさんにです。」
『な、なんでジオンのお姫様であるあなたが、一民間人の私に相談があるの?
回りに言うこと聞いてくれる人いっぱいいるでしょ?』
「相談できたマリーダは、もういなくなってしまいました…」
『あー。船内生活上の問題?だったら、私よりミヒロ少尉に…』
「そうじゃありません。その、ミコットさんだからこそ相談したいのです。」
『え?まさかバナージとのこと?』
「(コクリ)」
『天然なの?それともわざと言っているの?』
「その、ミコットさんはバナージと同じ学校だったとお聞きしましたので、
私より彼のこと良く知っていますよね?」
『(天然だった。このクソジオン女!)』
「ダメですか?」
『……何?内容によるわ。話してみて。』
「はい!えと、あの、実は、バナージと無いんです、、」
『??? 何が?端的に話してくれます?』
「ですから、バナージとの関係の進展が無いんです。これからどうすれば良いでしょう?」
『(イライラ)それ、私に聞くの?!』
「だって、ミコットさんバナージと仲が良かったんでしょ?彼の好みとかご存知ですよね?」
『あいつ、散々合図送ってたけどぜんぜん乗ってこなかったのよ!(怒)』
「え?」
『(…ん、ここでダメなアドバイスをすれば、ひょっとして真面目なバナージが
この子にドン引きするかも…)』
「ミコットさんでもダメでしたか…」
『まって、まって!任せて。アドバイスするわ』
「はい!ありがとうございます」
『まずは、二人っきりになる状況を作って。そうね、まずは夜にバナージ部屋にこっそり押しかける』
「え!いきなりですか?」
『あいつ鈍感だから、それぐらいしないとダメね』
「そ、そうですね。」
『そして、ゴムを咥えて胸元を開いて、押し倒す。』
「はっ?えっ?えっ?」
「はい、これあげるから。箱ごと1ダースあげるから」
『ミコットさん、なんでこんなに持っているんですか?』
0059名無しさん@ピンキー2016/05/04(水) 22:34:11.23ID:aZHu8bZ6
「あ、あの……一人じゃ不安なので、一緒に来てくれませんか?」
0060ななし2016/05/06(金) 10:25:11.59ID:r79j4Y+0
バナージ編
「リディ少尉、あの、ご相談があるんですが。」
『何だいバナージ?ミネバと喧嘩でもしたのか?』
「いえ、そうじゃなくて。リディ少尉は社交的ですし、女性と付き合った事もありますよね?」
『まあ、何人かとは付き合ったことはあるが。どうした?』
「その、オードリーとどういう風に付き合って良いかわからなくて、、、」
『ははっ、キスぐらいはしたんだろ?』
「ええ、まあ、しかし、その後自然に運べる方法が分からないんです。」
『(ムカ)ほ、ほう。じゃあ、彼女も君のことを思っているし、そのままの雰囲気
で行けるんじゃないか?(なんでこんなアドバイスしてるんだ俺?)』
「すいません、本当に経験が無くて、どういう風に振る舞えばいいのでしょうか?
教えてください!お願いします」
『(……ここで強引な方法を教えてやれば、固いミネバから愛想をつかれる可能性があるな)
わかった、力になろう』
「ありがとうございます」
『そうだな、まずは、どこか二人っきりになれる部屋に呼び出す。』
「はい」
『そして、いつものように何気ない言葉を掛けてやる。』
「はい」
もし言葉に詰まって気の利いたことが言えなくなったら、、』
「言えなくなったら、、」
『肩に手をかけて押し倒す!(そして張り倒される)』
「え?い、いきなりですか?強引じゃないですか?」
『男は少し強引なくらいがいいんだよ。』
「しかし、基本的にいつも凛としている彼女にそんなことしたら、引かれませんかね?」
『冷静?君と話している時は浮かれているように見えるよ?気がつかなかったのかい?』
「そうなんですか?」
『そう、だから、彼女の方が待っている可能性がある』
「分かりました。大変ためになりました。ありがとうございます」
『おう、頑張れよ。そうだ。餞別にいいものをやろう。男としてのエチケットだ』
「これ、いつも持ち歩いているんですか?」
0064フェニックステイル第23話前編2016/05/14(土) 02:25:02.94ID:7Md9VALw
「アホとなんとかは高いところがお好き、っと」
 冷たく呆れた口調で呟きながら、サブリナ・ミケリヤ少尉は眼下に――遠い地球を背にして散らばる敵MS編隊を次々と照準していた。右肩の固定式360ミリロケット砲、そして左肩に構えたバルザック式380ミリロケット・バズーカが交互に火を噴く。
 RGC-80SR《ジム・キャノン空間突撃仕様改》はデブリに紛れ、月を頭上に二門の砲を撃ち下ろしていく。
 機体名の由来でもある右肩固定装備のロケット・アシスト砲は、精度も初速もMS用バズーカ砲に勝る。一方で手持ち武装のバルザック式ロケット・バズーカは取り回しに優れる。
 交戦領域の異なる二門の火器は相互補完の関係にあるが、サブリナはそれのみならず両者の弾速差すらも利用して、彼女独特の中距離火力戦闘を展開していた。
 時間差で弾ける榴霰弾の火網と榴弾の火球が、もはや編隊を崩して必死の回避機動で逃げまどう群れとなった敵機を照らす。全天周モニターからバイザー越しに照り返す爆光を浴びながら、サブリナは邪(よこしま)に笑った。
「鴨撃ちってのは、楽でいいよねぇ――リン。そっちの首無し、ネイサンじゃないね。新入り?」
『まぁ、ね――やられたよ、サブリナ』
 撃ち下ろしながら指向したゴーグル・アイ越しに、サブリナはレーザー通信でリン・リンリー少尉を呼んだ。彼女はそのまま砲撃と索敵、まったく異なる作業を一人で同時に並行しつつ、掴んだ情報を旧友へ送る。
「敵後方から熱源、スラスター光が新たに六。機動特性からたぶんMS-21。増援の第二波が来るよ」
『へぇ、私らはすっかり敵さんの蜂の巣を突ついたってわけだ。――それ、いいねぇ』
 都合三個部隊を向こうに回した死闘を繰り広げながら、リンのRGM-79R《ジムU》は今なお五体満足を保っている。
 二人の奇襲で生じた一瞬の隙にサラミス改級駆逐艦《アルマーズ》のプチモビから予備弾倉を受け取り、半壊した僚機を従えながらジム・ライフルへ再装填して構えなおした。
 そして大ジオン仏道との戦闘で頭部と左腕部を失った僚機、シエル・カディス伍長機もまた整備班からビームライフルとビームサーベルの予備を受領している。
『リン。正面の奴らを叩いて、混乱の合間を抜けるぞ』
 通信小窓にアジア系の青年将校が顔を出した。アルマーズ艦長ジャクソン・ヘイズ大尉は自らのMS隊長に呼びかける。
「つまり潰していいってことですね、ジャック?」
『好きにしろ』
「了解――」
 武装は回復し、推進材にもまだ一戦の余裕はある。リンは笑った。
「ねえ、シエル。さっき生き延びておいて、よかったでしょ?」
『最高です。皆殺しにしましょう、隊長』
 単機の友軍にいいように掻き回されている敵陣めがけて、シエルは笑顔でスラスターを開く。
 RGM-79GSR《ゲシュレイ》で先行したまま突撃したゲンナー・ウェズリー少尉に第一撃で隊長機を切り捨てられ、残ったMS-09R《リック・ドム》五機はサブリナからの砲撃に曝されながら、あからさまに混乱していた。
『しょっ、小隊長っ――囲まれた!? 今度は私たちが逆に囲まれたのっ!?』
『狙われてる! 畜生あいつ、デブリの陰から!』
『さっきのジム・コマンド、来ますッ!!』
『落ち着け、数はまだこちらが倍だ! 一小隊、ジム・コマンドへ逆襲対処を――ぐっ!?』
「いやあ、させんでしょ」
 はるか上空から指揮官機の所在を見破り、サブリナのジム・キャノンはリズミカルに発砲する。照準の先へ砲弾を次々と導くように『置いて』いく。
 実体弾の飛翔速度はビームよりずっと遅い。この長距離からでは着弾まで数秒を要し、目視してから反応出来るほどだ。
 狙われたリック・ドムの小隊長機は即座に加速する。迫る弾道を全力で回避し、爆炎とともに開いた霰弾の傘から逃れた。
「ビンゴ」
 だが動きを読んでいたかのように、その眼前で爆光が閃く。榴弾の至近爆発が機体を激震させ、たまらず制御を失ったその中心部を光軸が貫いた。
『アッ――』
 熱線に切り裂かれた融合炉がひとたまりもなく暴走し、超高熱のプラズマをぶち撒ける。リック・ドムがまた一機、巨大な火球と化して消滅した。ジム・キャノンが右手にもう一門構えた長銃身火器、R4型ビームライフルからの狙撃だった。
『しょ、小隊長まで――』
『畜生ッ!!』
 それでも辛うじて体勢を立て直した数機が、サブリナ機からの射線を辿ってジャイアント・バズの応射を放つ。だが反撃の砲弾は敵機に届くことなく、手前でデブリに阻まれむなしく爆散した。
 それどころか、また別座標からの砲弾が彼らを叩く。ジム・キャノンはデブリ間を素早く小移動して、新たな狙点に陣取ったのだ。
0065フェニックステイル第23話前編2016/05/14(土) 02:26:26.71ID:7Md9VALw
『あっ、くぅっ――ああっ!?』
 時間差で飛来する砲撃の雨に打ちのめされ、編隊を大きく散らして孤立した一機の眼前へ、流星のようにジム・コマンドが迫っていた。
『いやああああああっっ!!』
 狙われたリック・ドムの少女パイロットが絶叫し、ジャイアント・バズを投げ捨てながら背中のヒート・サーベルを抜き放つ。だが胸部ビーム砲から放たれた光軸の速射をあざ笑うように掻い潜り、ジム・コマンドは突撃機動のまま光刃を振るった。
『あ、』
 ――死ぬ
 だが彼女の肉体を蒸発させんと迫ったメガ粒子は、その眼前で阻止された。
『ほおぉ? またアンタかっ!』
 楽しげに笑うゲンナーは速度を殺さず、そのまま一撃離脱していく。片腕のMS-14A《ゲルググ》が二機の間に割り込みながら、ビーム・ナギナタの光刃とともに立ち塞がったのだ。
『ゲオルグ居士ッ!』
『畜生、墜ちろッ!!』
 盾を失ったエレイン機がビームライフルを放ち、砲撃に曝されながらもリック・ドム編隊がジャイアント・バズとザクマシンガンで追い撃つ。しかし追撃の弾雨はジム・コマンドが曳くスラスター炎の軌跡をなぞるばかりで掠りもしない。
 あまりにも速すぎた。リック・ドムのパイロットたちが罵る。
『なんて加速だ、バケモノめ……ッ!』
 宇宙世紀史におけるMSの単純な瞬間加速性能はその最初期、一年戦争末期の段階ですでに飽和していた。
 熱核ロケット技術は人間の耐えうる限界以上の加速度をMSが発揮するに十分以上の性能を達成していたし、有人機であるMSは根本的に『Gの壁』を超えられない。そのためこの後の百年以上に渡って、MSの限界加速性能が根本的に進化することはなかったからだ。
 実際のところ一年戦争以降の『MSの機動性の進化』とは単に機体を軽量化し、推進材の搭載量と燃焼効率、推進器の持続性能を増すことで、総加速時間を延長していただけに過ぎない。もっとも実運用上ではそれこそが非常に重要なのだが。
『遅ェよ、オメーラ。欠伸が出るぜ』
 そしてゲンナーは人間の限界を振り切るほどの超加速を平然と使いこなし、あっさりと残党軍の有効射程限界付近を離脱していた。最大推力を発揮して一気に高熱を溜め込んだスラスター群を冷却しながら、ゲシュレイはあざ笑うように次の襲撃へ向けた緩旋回を掛けていく。
 間断なく降り注ぐジム・キャノンの砲弾が炸裂する中、エレインが叫んだ。
『くっ――ゲオルグ居士! 先ほどの連邦亡者がまた!』
『修羅道め、世にはばかるか――』
 そしてジム・コマンドが一撃離脱しても、ジム・キャノンはなお砲撃を続行しており、そして前方からは元いたジムU二機がサラミス改もろとも肉薄してくる。強力な援軍を得た機と衝撃効果を逃さず、ここで逆襲へ転じるつもりなのか。
 バイザーの下、ゲオルグはくわっと目を見開いた。
『本隊の方々! 聞かれいッ!!』
 指揮官全滅、二機被撃墜一機中破。一個中隊六機もの戦力へ一瞬にして半壊以上の大損害を受け、もはや半ば烏合と化したリック・ドム隊を、ゲオルグが腹の底から放つ大音声が貫いた。
『修羅道のジム・コマンドは自分がこの手で成仏させよう。エレイン信女! そこな二機を率い、ジムUとサラミス改を迎え撃て。フローラ信女! そこな二機を率いて向かい、ジム・キャノンを叩け!』
『御意! 方々、続かれませい!』
『りょ、了解っ――』
 そして大ジオン仏道が有無も言わせず指揮系統を掌握すれば、もはや指揮官を失ったルスラン・フリートのMS隊はただ従うより他になかった。戦場の主導権を連邦軍から奪回すべく、反撃の糸口を付けにかかる。
「おっ。やっとこ敵さんこっち来たか」
 コクピット・ハッチ側面を全天周モニターもろともゲンナーのサーベルに焼き切られていながら、ゲルググの一機が盾でデブリを凌いでサブリナ機へと肉薄してきた。
 追従する二機のリック・ドムとともに、ビームライフルとジャイアント・バズで火蓋を切る。
 即座にサブリナは標的を正面の敵へ切り替え、猛然と応射を開始した。360ミリ級実体弾とビームが飛び交い、デブリの海に爆光が乱れ咲く。
 一対三。だが配置を掌握した無数のデブリを射撃陣地にしながら三門の重火器を構えるジム・キャノンは、決して撃ち負けることなく互角に戦い、容易に接近を許さない。
「おおっと!」
 サブリナが飛び退いた瞬間、彼女の陣取っていたコロニー壁面の残骸が赤熱し沸騰、背後へ光軸が突き抜けた。ゲルググが放つビームは薄い防壁など容易に貫く。その狙いはどこまでも精確。
「ハハッ、いいねぇ――気に入ったよ、アンタ!」
 目潰しの榴弾を見舞い返して予備陣地まで下がりながら、サブリナは楽の出来ない相手だと冷たく笑った。
0066フェニックステイル第23話前編2016/05/14(土) 02:27:43.65ID:7Md9VALw
 そして熾烈な火力戦が渦巻く眼下で、彼我のMS隊主力も中距離を割って激突する。
 MS数では連邦二機にジオン三機。だが執念と殺意を漲らせながら躍り掛かるジムUに対し、大ジオン仏道に引きずられて戦うリック・ドム二機の動きは精彩を欠いた。
『あ、あと少し待てば、友軍の増援第二波が来ます! 何も今、無理に仕掛けなくとも――』
「それでは戦機を逸します! 悪逆非道なる連邦修羅道亡者は、今この場にて成仏させねばならぬのです!!」
『もうやだ……っ、やっぱり頭変だよ、この人たち……!』
 ゲオルグは言葉通りに単機のままで、凶悪な加速で躍り狂うジム・コマンドに食らいつきながら抑えこんでいた。エレイン以下の三機はビームライフルとジャイアント・バズを放ちながら、サラミス改からの掩護を背にして迫るジムU二機を迎え撃つ。
 アルマーズが放つメガ粒子砲の火線を潜り、360ミリ榴弾が次々に咲かせる爆光を蹴破りながらジムUは迫った。艦砲の圧倒的な支援火力を前に、三機のジオンMSはじりじりと押されて下がる。
「修羅道亡者め、なんたる気迫か……っ!」
 大盾を失ってビーム・ナガマキを左手に持ち、ビームライフルを右手で構えながら、エレインはきつく敵機を睨みつける。
 最初の狙撃で一機を葬り、絶対の優位を確立してから決定的な接近戦を仕掛けたはずだった。彼女たち大ジオン仏道は今までも地球圏の各地でそうやって、もっと装備の充実した連邦軍やティターンズの部隊を、跡形もなく完全成仏させてきたのだから。
 にもかかわらず、眼前の敵部隊はそれを凌いだ。あまつさえゲオルグの機体が片腕を奪われるなど、今まで一度も無かったことだ。
 この敵は明らかに、今までの連邦亡者と格が違う。
 今この場で殲滅することが出来なければ、必ず強力な禍根となる。
「逃しはしません――南ァ無・ジオン!」
『じっ、――ジーク・ジオン!!』
 裂帛の気合いとともにエレインが叫び、破れかぶれでリック・ドムの二人も続いた。
 首無し片腕のジムUが応じたように火線を開く。かつて一年戦争時代には『戦艦の主砲並みの威力』とも称された、1.9MW級のビームが降り注いだ。
 そして駆逐艦の強烈な火力支援に撃ち負けて、エレインら三機は精確な照準を取ることが出来ない。その間に距離を詰めて、近接火力の充実した敵は容易に劣勢を覆した。
『ちくしょおおおおっっ!!』
 ジム・キャノンからの狙撃で片腕とジャイアント・バズを失っていたリック・ドムの片割れが、予備兵装のザクマシンガンで懸命に弾幕を張る。胸部ビーム砲も光軸を放った。
 だがジム・ライフルを構えたジムUは迷いのない軌道で迎撃の射線を振り切る。
 90ミリ高初速弾の射線が蛇のようにうねって絡みつき、次々と火花を散らしてリック・ドムの装甲を穿つ。
 チタン・セラミック系新素材を組み込まれた重装甲は耐えきるかに見えたが、無数の破孔から煙がたなびく。僚機の少女がジムUを引き離そうとジャイアント・バズを放ちながら絶叫した。
『もうその機体はダメ! ケニー、逃げて!!』
『そ、ソニア――ごめん、俺、もう』
 だが躍るジムUは射線を絶やさず、動きの鈍った機体へさらに頭部バルカン砲の火力を加えた。
 コクピット・ハッチへピンポイントで殺到した60ミリと90ミリ弾の集中射は、リック・ドムの中心部を完全に貫通。次々と機体の背後に抜けて飛び出していく。
『がぶっ。ソニア、お、俺はずっと、君を――』
 隻腕のリック・ドムはそこで起爆した。重厚な機体が内側から爆ぜた光熱に負けて跡形もなく消し飛び、巨大な光輪となって消滅していく。
『ケニイイイィィィッッ!!』
 蒸発した僚友の名を絶叫する少女の眼前へ、彼の溶け消えた爆炎を突き破りながら敵が出現する。
 首と左腕のないジムUがリック・ドムの爆発を目くらましにして、交戦していたエレイン機を振り切ったのだ。
 慟哭する彼女へ、ジムUはまっすぐビームライフルを向けていた。涙の向こうに銃口が丸く見える。
 死神そのものの姿だった。
『あっ――』
 それでも少女は反射的に、半壊したジムUへジャイアント・バズの砲口を向け返していく。だがテンポがわずかに遅れている。
 間に合わない。
 自分も、ここで――
0067フェニックステイル第23話前編2016/05/14(土) 02:28:49.13ID:7Md9VALw
『脇がお留守ッ!!』
 女の叫びとともに突如として迸った120ミリ弾の連射が、首のない死神の姿をかき消すように離脱させていた。
 MS-06F3《ザク・ファドラン》、単機。ルスラン・フリート偽装貨物船《ケンドー丸》所属MS隊の機体だ。
『はっ、エレイン。天下の大ジオン仏道が、ずいぶん苦戦してるじゃないのッ!』
『バーレット少尉――』
 加勢のザクとゲルググの二機がかりで火力を応酬し、三機はかろうじてジムUからの間合いを開く。サラミス改の有効射程から大きく後退しながらエレインがうめいた。
 事実上すでに壊滅していたファーガスン隊の、最後の可動機だった。ミリアム・バーレット少尉は大破した二機の僚機をパイロットごと母艦に送り届けて預け、ザクマシンガンの予備弾倉だけを受け取って即座に戦場へ復帰したのだ。
 機体はすでに90ミリ弾数発を被弾し、完調にはほど遠い。それでもミリアムは友軍の支援に駆けつけた。
『あっ、あ、ああ。け、ケニー。隊長。小隊長、……みんな――ぐっ!?』
「アンタもシャキッとしなッ!!」
 ザクの掌底が生き残ったリック・ドムの脇腹を小突く。ミリアムはなお彼女らを狙って蠢く二機のジムUを、三機相手に互角以上に渡り合うジム・キャノンを、常軌を逸した速度のままで隻腕のゲルググと楽しげにもつれ合うジム・コマンドを睨みすえた。
「こいつらは『ルウムの亡霊』! 一年戦争でMSも無しにジオンの艦隊をゲリラ戦で襲っちゃあ、跡形もなく殲滅してた筋金入りの『悪霊』ども――文字通りに大物喰い(ジャイアント・キリング)の常習犯だ。
 下手にやり合えば取り殺されるよ!」
『『ルウムの亡霊』――なるほど。これが噂に聞くルウム難民兵部隊、ソギル戦闘団のなれの果てというわけですか』
 緊張とともに得心するエレインをよそに、ミリアムはひとり唇の中だけで呟いていた。
「――でも、大丈夫。行ける。こいつらの中に『アイツ』はいない――それならまだ、勝ち目は十分ある」
 機体性能から計りえないほどの戦力を示す四機の連邦軍MSの中から、彼女は決して忘れ得ない悪夢の影を探していた。そして今、それが見あたらないことに安堵している。
 かつて旧式のありふれた汎用量産機に乗り、時代遅れのくたびれた骨董品を構え――そして人智を超えた未知の恐怖と絶望を彼女の魂に刻みつけた、記憶の中の悪魔の姿を。
 ――大丈夫。今ここにアイツはいない――アイツさえいなければ、戦える。いくら強敵だろうと切り抜けられる。
「何とかしなよ、エレイン。悪霊どもを成仏させるのが、あんたらの本業でしょうが」
『言われずとも……ッ!』
 きつく歯噛みし、エレインは戦況を一瞥する。
 なお熾烈な高機動戦闘を展開するゲオルグは均衡を破れず、ジム・コマンドを封じ込むのに精一杯。フローラたちもジム・キャノンからの猛烈な砲撃を抜けず、容易に距離を詰められないばかりか、少しずつ損害を受けてすらいる。
 すでに三機もの友軍機を撃墜され、自分たち大ジオン仏道の手の内までも知られてしまった。
 だからサラミスだけは絶対に沈めなければならない。母艦さえ撃沈することが出来れば『宇宙船』としては推進系に大きな制約を抱えた存在であるMSは、もう拠点まで帰れなくなる。あとはゆっくり始末すればいいだけだ。
 そこまで考えたとき、ふとエレインの脳裏に疑念が過ぎった。
 出し惜しみがなさ過ぎる。
 推進材を搾りきるかのように豪快な殺人加速で、多勢の敵陣を翻弄するジム・コマンド。携行弾薬を一気に使い切る勢いで火力戦闘を展開するジム・キャノン。
 なお戦力比では劣勢の中で後先を考えないように戦う、この連中の『勝ち目』とは何だ?
0068フェニックステイル第23話前編2016/05/14(土) 02:29:38.79ID:7Md9VALw
 そのときエレインのはるか頭上でジム・キャノンが、不意に正面の三機相手の砲撃頻度を緩めて後方へ下がった。
 言うまでもなく、360ミリ級の大型実体弾はそう多数を携行することなど出来ない。贅沢に撃ちすぎて早々に弾薬切れを起こしたか、そうでなくとも残弾数が切迫して火力を落とさざるを得なかったのか。
『いずれにせよ勝機――ここで距離を詰めさせてもらうッ!!』
『――お待ちなさい、何か――』
 対峙していた二機のリック・ドムが勢いづいて前面に出る。違和感を覚えたフローラは呼び止めようとしたが、正規の指揮系統下にあるわけではない彼らは耳を貸さなかった。
『隊長たちの仇、取らせてもらうッ!!』
 長物を抱えたまま火力を切らせた中距離支援機など、接近してしまえばただの鈍重な獲物でしかない。リック・ドムは強力なスラスターを噴かし、一挙に肉薄を試みる。
 ジム・キャノンが慌てて食い止めようとするかのようにバズーカで榴霰弾を放ってきが、もはや気休め程度の足止めにしかならなかった。
『行けるッ』
 彼らは最後まで気づかなかった。
 ジム・キャノンが砲撃の手を緩めながら、その高度な通信機能で、ある座標の情報をレーザーで送信していたことを。
 漂流するデブリの配置と彼我の位置関係を利用し、彼らの取り得る機動経路が絞り込まれていたことを。
『高エネルギー反応――』
 そして閃光がすべてを呑んだ。
 MS用ビームライフルなど比較にもならないメガ粒子の奔流が、リック・ドムの重厚な機体を蝋細工のように容易く捻じ切り押し流す。瞬時に全壊した融合炉が核の火球を広げるまでもなく、二機のMSは濃密なビームの嵐の中で蒸発していた。
 サラミス改級『巡洋艦』一隻がそのメガ粒子砲火力を集中発揮した一斉射は、サブリナの指定した座標を余すことなく網羅し蹂躙。その死の空間へ誘い込まれた敵機を跡形もなく消滅させたのだった。
 戦慄に震える唇で、フローラが念仏を唱える。
『……南無阿弥、陀仏――』
「ン……。いい加速、いい操艦、いい斉射だ。リドリー、また腕上げたねぇ」
 唯一生き残ったゲルググにバズーカから榴霰弾を放ち、後退させながらサブリナは微笑んだ。艦砲斉射の来た方向をちらりと見やる。
 遙かデブリ群を通した距離の彼方から、サラミス改級巡洋艦が急速に接近していた。
 宙域に漂う暗礁をものともせずに突き進むその船足は、アルマーズのそれに勝るとも劣らない。熟練の操舵は無骨な艦体を繊細に操り、大型デブリを確実に縫って戦闘宙域へと突入させていく。
 MS甲板上に立つ四機のジムU。旧式の短銃型兵装、ビーム・スプレーガンを構えた機体が、カタパルト上で前傾した。
0069フェニックステイル第23話前編投下終わり2016/05/14(土) 02:33:03.88ID:7Md9VALw
今回は以上です。後少し、第23話でこの長い戦闘も終えて、第24話では久方ぶりの情事に入りたいと思います。

pixivにファーガスン隊のフルカラー画を投稿しました。お楽しみいただけますと幸いです。

>>60
乙です。いっそリディとミコットで……
0071フェニックステイル第23話後編投下準備2016/05/28(土) 22:01:34.95ID:kcCFR1Uc
少々半端ですが、第23話を途中で切りましたので投下します。
当初の予定は破綻し、戦闘決着は次回(第24話)まで続くことになってしまいました。申し訳ありません。
前半についても一部修正のうえ、pixivとハーメルンに挿絵付きで掲載いたします。
0072フェニックステイル第23話後編2016/05/28(土) 22:03:04.96ID:kcCFR1Uc
「ン……。いい加速、いい操艦、いい斉射だ。リドリー、また腕上げたねぇ」
 唯一生き残ったゲルググにバズーカから榴霰弾を放ち、後退させながらサブリナは微笑んだ。艦砲斉射の来た方向をちらりと見やる。
 遙かにデブリ群を貫き通した距離の彼方から、一隻のサラミス改級巡洋艦が急速に接近していた。
 宙域に漂う暗礁群をものともせず、時に外板で跳ね返しながら突き進む無骨な艨艟。その船足はアルマーズのそれに勝るとも劣らない。熟練の操舵は無骨な艦体を繊細に操り、大型デブリを確実に縫って戦闘宙域へと突入させていく。
 ゲルググと砲火を交わしながら、そのMS甲板上に立つ四機のジムUへサブリナは微笑んだ。
「マコト、下拵えはやっといたよ――そんじゃあと、ヨロシク」
 旧式の短銃型兵装ビーム・スプレーガンを構えた機体が、カタパルト上で前傾する。その背へ艦橋から艦長が呼びかけた。
『二機撃墜か――砲術、よくやった! 肝は冷えたが、飛ばしてきた甲斐があったな。マコト、頼むぞ!』
『ええ、いい操艦でしたリドリー。22より各機。我が隊はこれより前方戦場を引き継ぎ、僚艦アルマーズの離脱を掩護する。すでに敵支配宙域深部へ侵入しつつある。敵増援を警戒し、深追いは厳に避けよ』
『了解!』
 MS隊長の若い女が凛と命じれば、その後方でビームライフルを構えた二機と、ハイパーバズーカを構えた一機が唱和を返す。
『前方進路アンクリアド――22は先行するが、無理に追いつこうとはするな。後続は24の指揮で確実に三機編隊を保ち、適宜22を支援せよ。22、出る!』
 言うが早いか、サラミス改級巡洋艦の電磁カタパルトが火花を散らす。ジムUの機体を全力で前方宙域へ投射した。カタパルトで得られた初速にスラスターの噴射を加え、ジムUは漂流物の隙間を鮮やかにくぐり抜けていく。
『すごいっ……』
『よ、よぉしっ。シュン、クライネ伍長! お前らは俺に続けっ!!』
 後続を任されたパイロットが、緊張を殺しきれない調子で声を張り上げた。跳ね返るようにMS甲板を滑り戻ってきたカタパルトの下駄を履き、彼の機体も前傾する。
『戦闘宙域後方より、高速接近する熱源体六! ……いや、先頭の一機が速い? これは――』
 だが同時に艦橋から索敵手が叫んだ。隙なく敷かれた巡洋艦の対空監視 が敵影を捉えたのだ。
 ルスラン・フリートの増援第二波、六機。その先頭を切る機体が不意に編隊から突出した。そのまま凄まじい急加速を掛けて、上方から肉薄してくる。望遠を掛け、索敵手が息を呑んで叫んだ。
『機種照合完了、突出する先頭はMS-18E《ケンプファー》!』
『うげっ――特務機かよ!?』
 随伴するMS五機を置き去りにするように加速し、その重武装機は先のゲンナーにも劣らぬ高速で発艦した先頭機を狙った。
 MS-18E《ケンプファー》は一年戦争中に開発されたジオン公国軍MSの中では、破格の性能を有するMSだ。その基本スペックは今日の第一線機と比べてまったく遜色ないばかりか、いくつかの項目では勝ってすらいる。
 特に重要なのが推力だった。
 材料工学の面で決定的に地球連邦に劣ったジオン公国にとって、容積を制約されるMS用高出力ジェネレーターの開発は鬼門であった。それでも地球降下作戦によって得られた希少資源は、技術水準の底上げに大きく貢献した。
 その成果であり精華の一つが、ケンプファーに搭載された1550KW級主機である。この出力値は現在の連邦軍主力MSのほとんどを上回る。
 さらに同機で特筆されるのはその高出力の大半が、推力向上のために注がれていることだ。
 ビームサーベルを除き、ケンプファーはその武装にビーム兵器を採用していない。ビーム兵器の駆動時に生じる出力低下を嫌い、その全力をスラスター系の高出力運用に集中するためだ。
 代わりに過剰なまでの実体弾兵装が搭載されている。戦闘でそれらを消耗するほどに機体は身軽になり、ビームサーベルを使う頃には出力低下など問題にもならなくなっている。
 だからその機動力はゲンナーの駆る、ジムU規格で改良されたゲシュレイをも上回るのだ。
0073フェニックステイル第23話後編2016/05/28(土) 22:04:53.19ID:kcCFR1Uc
 ケンプファーは多くが練達のパイロットともに特務部隊へ配備され、少数機での浸透と後方強襲任務で活躍した。戦後混乱期の紆余曲折を経てルスラン・フリートへ流れ着いたこの機体とパイロットもまた、そんな元ジオン特務部隊の一員だった。
 実戦で磨き抜かれたその直感が、強者の気配を嗅ぎ分ける。彼はいま最優先で殲滅すべき目標を狙い、愛機に人体を擦り潰さんばかりの最大加速を維持させたまま突進させていく。必中の狙点で彼は叫んだ。
「もらったッ!!」
 背負い式のジャイアント・バズ二門、脚部のシュツルム・ファウスト二基が次々火を噴き、そして手中のショットガンがルナ・チタニウムコーティングの散弾を放った。
 標的はただ一機。
「遅い――」
 十分以上の機速に乗せて斉射された重爆撃は狙い過たず、単機で突出するジムUへ集中した。敵機はスプレーガンを構えて迎撃するような素振りを見せたが、その前に爆発の巨大な火球が連鎖して機影を呑み込む。
 少なくとも至近弾多数、そして間違いなく直撃の手応えもあった。もはや影すら残っていまい。
 ジム一機を葬り去るには明らかな過剰火力だったが、出し惜しむ選択など彼にはなかった。その戦闘嗅覚と思い切りの良さが、彼を今日まで生き残らせてきたのだから。
 だが敵機の反応は予想外に鈍かった。彼が感じた強者のプレッシャーは、何か別のものだったのだろうか。
 己の勘も鈍ったか――失望混じりに苦笑しながら、ケンプファーは広がる火球群の上を駆け抜けていく。続けざまにサラミス改から発進してくる後続のジムU隊を叩こうとしたとき、不意の衝撃が機体を揺らした。
「!?」
 薄れゆく爆炎を突き破って、ビーム・スプレーガンの短銃身が覗いていた。
 閃光の連射が煌めく。
 初弾でケンプファーの右腕が根本から吹き飛ぶ。胴体中心部への次弾は避けても、左のジャイアント・バズが融解する。
 咄嗟にパージした次の瞬間、バズーカは後方至近で爆ぜた。破片が薄い背面装甲を撃ち抜き、機体を激震させながら吹き飛ばす。残りの武装に誘爆しなかったのは恐ろしいほどの幸運だった。
「うッ――うおおおおおおッ!?」
 状況を理解できないまま離脱しながら、彼はその姿を目撃する。
 弾片に穿たれ炎熱に炙られた長六角形のシールドを構え、何事もなかったかのように平然と前進していくジムUを。
 その右腕だけをぐるりと回して、背越しに彼へ向けられていたビーム・スプレーガンの銃口を。
「バカなッ!!」
『各機、撃て』
 一気に変化した重量バランスを修正しながら、ケンプファーは後方から来るスプレーガンの連射を必死に回避する。だが、そこへ前方からも火線が来た。強力なビームと榴弾の炸裂が片腕の特務機へ集中、紙一重の射弾が装甲を削りフレームを焦がす。
 正面からジムU三機。サラミス改級巡洋艦から発艦した後続部隊だ。そうして前後から狙い撃ちにされれば、彼は半壊した機体を必死に立て直しながら再び全速を発揮して、今度はただ離脱していくよりなかった。
 スプレーガンはおろかビームライフルの有効射程からも迅速に離脱してのけた敵機に、四機編隊を率いるその女性隊長が舌打ちした。
『フム。まともに挟み込んでも落とせんとはな――奴はエースだ! 手強いぞ、各機警戒しろ!』
『りょ、了解っ』
『ハヤカワ准尉! すごい――何がどうしてこうなったのか全然分かりませんけど、さすがですっ!』
『いや、じゃあそのエースを手玉に取ってのけるアンタは一体何なんだよ……』
 ジムU三機が口々に答えながら、ビームスプレーガンを構えて先頭を行く隊長機の後方に付けた。そして編隊の上方からもジム・キャノンが隊長機に接近する。
『いやぁ、マコト。あんた相変わらずイヤラシイ『後の先』を取るねぇ』
『敵が焦って勝手に外しただけです。サブリナ、私は前に出ます。後ろの面倒を見ててください』
 そっけなく答えながら前衛に出るジムU一機と、合流したジム・キャノンに率いられる四機編隊。
 それら五機の後方にはサラミス改級巡洋艦が続いている。そうしてたちまち連邦軍の最大戦力と化しながら、サラミス改級駆逐艦との合流を目指してくるのだ。その部隊の圧力は絶大に過ぎた。
0074フェニックステイル第23話後編2016/05/28(土) 22:06:16.04ID:kcCFR1Uc
 それら五機と一隻の行く手で駆逐艦の部隊と交戦していた、ルスラン・フリートと大ジオン仏道の三機からも、その状況は確認できていた。
『そんな、嘘っ――マグリット曹長のケンプファーが、強襲斉射を外した!?』
『返り討ちに遭うなど、無様な――あれで特務などとよく言えるッ!』
 ケンプファーのパイロットを知るリック・ドムの少女が愕然と呟き、強力な機体を操っていながら不甲斐なく退けられた味方にゲルググのエレインが怒気を吐く。
『――ビーム、……スプレーガン……?』
 そしてザク・ファドランのミリアムは、ひとりその目を見開いていた。
 新たな敵MS編隊の先頭を悠然と来る一機に、その機体が手にした旧式武装に、彼女はモノアイから最大望遠を掛けたまま硬直している。
 記憶の奥底に潜んでいた、決して消えない影が蠢く。
 ミリアムは震える声で賢明に、何かを搾り出そうとするかのように呻いた。
『あ、……あいつ、は……あいつは……っ……!!』
『妖怪変化ッ!!』
 そのとき少女の絶叫とともに、ミリアムの前方で機影が走った。
 ゲルググ。合流目指して後退途中だったフローラ・イアハート信女の機体が、再び加速していた。そのジムUの進路を阻むように躍り掛かっていく。
『下がりなさいフローラ! ここは増援第二波とともに戦力を結集し、再び一丸となって当たるのです!』
『いいえ姉様! あれは――あの敵は、尋常ではありません! 私には分かります、あの邪悪こそ仏敵天魔……この世から、必ず除かねばならぬものです!!』
 絶叫しながらフローラ機がビームライフルの照準を合わせた。漂流するデブリの隙間から射線を選び、絶叫とともにトリガーを引き絞る。
『悪霊退散、――南無阿弥陀仏ッ!!』
 センサー有効範囲外への長距離精密狙撃すら当ててのけるのがフローラだ。そして狙われたジムUはまともな回避機動すら取ろうとしていない。
 必中の確信とともにビームを放ちながら、彼女はなお駄目押しの第二射、第三射を重ねた。微細なデブリが幾重もの光軸に焼かれ、戦闘空域に閃光が煌めく。
 彼女が狙いすまして撃ち放ったビームのすべてに、間違えようのない確かな直撃の手応えがあった。
 ジムUは何事もなかったかのように光弾の隙間を抜けた。
 一発の被弾もなく、ただ緩やかに加速してくる。その短銃身が不気味に揺れた。
 スプレーガンが射弾を放つ。連射。中距離を超えて飛んだ低出力の低収束ビームは、ゲルググに命中してもシールド表面に弾けるだけだ。
 しかし続けざまにゲルググの機体表面で拡散したビームの飛沫は、シールドの脇から出ていたビームライフルの銃身を次々に蝕む。
 まさにフローラが発砲しようとしていた次弾のメガ粒子が、加速途中で銃身とそのIフィールドを破られて溢れた。
 暴発。
『アウッ!?』
 ビームライフルの爆発がゲルググの機体を叩き、激震させる。風穴が開いたままのコクピット内へはそれでも破片を入れずに済んだ。
 だが肩を蹴飛ばされたように崩れたゲルググの真っ白になった視界が回復したとき、ジムUは今までの動きが嘘のような急加速で肉薄していた。近距離からビームスプレーガンが指向される。
 有効射程内。
 ジムUの無表情なゴーグル・アイが、スプレーガンの丸い銃口が、フローラの魂を射貫く。念仏を唱える間はない。
 だが発砲直前、二機の間に影が走った。先のケンプファーをも超える高速で割り込む。
 戦闘空域を縦横無尽に機動しながら、ジム・コマンドとの巴戦を繰り広げていたゲルググだった。ジム・コマンドの背中を狙った増援第二波の掩護を受けて、格闘戦から離脱しながら進路上へと勢いのまま、出力最大のビーム・ナギナタを構えて突入してきたのだ。
 その猛烈な突撃をジムUはサーベルひとつで受けきった。ビームの飛沫と火花が飛び散る。それでも激突の勢いは殺しきれず、絡んだ二機は鍔迫り合いのまま転げるように流れ去っていく。接触回路を言葉が伝った。
『これは居士殿、お初にお目に。聞けば先日、部下がずいぶんお世話になったようで』
『先日の修羅道……そのおぞましき力、もはや人の業ではあるまい。人を捨てながら化生し、悪鬼羅刹と成り果てたか!』
『さあて。なんのことやら――』
 女の唇が笑みに歪む。
 ゲオルグ・ラインダース居士とマコト・ハヤカワ准尉は互いの光刃を切り結びながら、ゲルググのモノアイとジムUのゴーグル越しに睨み合った。
0077名無しさん@ピンキー2016/06/06(月) 22:45:34.87ID:o0GF9OET
ルールカの髪コキssください!
0078名無しさん@ピンキー2016/06/06(月) 22:49:24.95ID:o0GF9OET
ノーベルガンダムかルイスかポケットの中の戦争のクリスのどちらかによる髪コキご奉仕ssください
0080名無しさん@ピンキー2016/06/06(月) 23:38:13.43ID:o0GF9OET
うるせぇ、書いてくれねぇんだよ
0083名無しさん@ピンキー2016/06/08(水) 06:56:49.53ID:UKYHqKlZ
国民よ立て!妄想を執筆力に変えて、立てよ国民!
このスレは諸君等の力を欲しているのだ。
ジーク・ジオン!!
0087名無しさん@ピンキー2016/06/08(水) 13:08:38.04ID:6Iza8oGE
ずっと書き続けられる根気に敬服します


77 :

名無しさん@ピンキー

2016/06/06(月) 22:45:34.87 ID:o0GF9OET

ルールカの髪コキssください!


78 :

名無しさん@ピンキー

2016/06/06(月) 22:49:24.95 ID:o0GF9OET

ノーベルガンダムかルイスかポケットの中の戦争のクリスのどちらかによる髪コキご奉仕ssください
0088名無しさん@ピンキー2016/06/08(水) 21:45:56.12ID:4hK/znqQ
感想は無いがクレクレだけは立派
書き手に薦められるスレッドでは無い罠
0090名無しさん@ピンキー2016/06/09(木) 02:00:32.61ID:ZOe4799U
ルールカの髪コキで……
0092名無しさん@ピンキー2016/06/09(木) 04:30:05.86ID:ZOe4799U
誰も書いてくれないからさ……!じゃあ髪の毛で尿道攻めされるのでいいよ!
0094名無しさん@ピンキー2016/06/09(木) 07:29:12.94ID:ZOe4799U
自分のかいたやつで抜けるか?無理だわ
0096名無しさん@ピンキー2016/06/09(木) 18:04:35.28ID:zAUjphfd
髪コキSS
0097名無しさん@ピンキー2016/06/13(月) 01:08:26.13ID:dCkeeXiq
ISAPとゴミクズ信者がスレ占拠してた時から
ここにはクレクレしかいなかったゾ
0098名無しさん@ピンキー2016/06/13(月) 02:22:56.34ID:wyRjSbKq
髪コキルールカ
0100名無しさん@ピンキー2016/06/17(金) 21:00:00.94ID:CODCfN+O
あきらめろ
誰も書いてくれんよ
今季の萌えアニメとかの方がまだ可能性がありそうだ
おねだりするならそんなスレ探せ
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