ガンダムヒロインズMARK ]Y [無断転載禁止]©bbspink.com
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あきらめろ
誰も書いてくれんよ
今季の萌えアニメとかの方がまだ可能性がありそうだ
おねだりするならそんなスレ探せ 正直ここのSSより髪コキ基地の方がずっとか面白いからもっとやれ ルー・ルカとルイス・ハレヴィの髪オナホ髪コキご奉仕がみたいんじゃ…集団でおかされる時に髪コキを少しいれるのじゃなくて1から十まで髪コキでおかされたい!!!! そういうことにしていいからさっさと髪コキSS書いてください 三ヶ月ぶりですが、投下します。
二万文字を超えてしまいました。10レス以上になると思います。
一回で投下しきれるか分かりませんが、行けるところまで行ってみます。
申し訳ありませんが、今回も直接的なエロはありません。
第二章はようやく今回で完結となります。 ――もしビーム・スプレーガンを構えた旧式のジムが、L1の暗礁宙域に現れたら。
決して見るな、寄るな、戦うな。
その影はルウムの悪霊。ジオンの核に焼かれた二十億の怨念の権化。
触れてはならない。
触れたが最後、地獄の底まで引きずり込まれる。
挑んではならない。
冥府の使いに生者の剣など通りはしない。
奴を倒せるとすれば、それは、おそらく―― 暗礁の宇宙に二条の光がもつれ合う。絡まる度に火花が爆ぜる。
推進の噴焔を曳いてビームサーベルとナギナタの光刃を打ち合い、メガ粒子の干渉波を撒き散らしていくのは二機のMS。
RGM-79GSR《ゲシュレイ》とMS-14A《ゲルググ》は、暗礁宙域に鮮烈な軌跡を曳きながら互いに激しく絡み合う。彼我の斬撃で飛び散るメガ粒子とともに、オープン回線から男の心底楽しげな哄笑が弾けていた。
『ハアァッハハハァァァアアアッッ!! いいねェ! やるねぇ! 楽しいじゃねぇかッ、坊さんよォ!!』
『否、拙者は居士。僧籍に非ず――凡俗たる不浄の身より、宇宙に仏道を求める者』
『こまけぇこたァいいんだよ!』
残された唯一の武装であるビームナギナタを縦横に駆使して、片腕を失ったゲルググは執拗にゲシュレイへ絡みつく。隻腕のゲルググはむしろ軽くなったとでも言わんばかりに高機動を見せつけており、傍目にその攻防は互角に見える。
だが二刀構えで躍るゲンナーはその実、懐にまだビームガンを残していた。ゲシュレイは連邦系MSの定番兵装たる頭部バルカン砲を廃した機体ではあるが、それでも距離を開かれればその瞬間に勝負は決する。
食らいつくゲルググを前に、あくまで主導権はゲシュレイの側が握っていた。
『最高だなオイ! オープン回線で垂れ流してたさっきの説教、良かったぜぇ。感動した! やっぱりジオンの残党ってのは、アンタみたいな風でなくっちゃいけねぇ!』
アジテータに魅せられた狂信者の熱量で、剣戟の隙間からゲンナーは吠える。殺戮への最短距離を走る無駄のない光刃とともに。
『てめぇんとこ以外のスペースノイドはサクッと五十億殺してのけて、ドンとでっかく胸を張る! そう男前に割り切れてこそ、ジオンの武人様って奴だ!』
『南無阿弥陀仏。ジオンの核は清浄再生の聖火。宇宙衆生たるべき道を外した五十億の連邦亡者を現世の妄執から解き放ち、新たな人の世の礎を宇宙に築いたが我らの功徳』
『そうそう、それそれ。それだよ、それ――それが聞きたかったんだよォ!』
互いの肉体を締め上げ続ける超10G級の加速度ごと、ゲンナーはひどく楽しげに笑い飛ばした。純粋な歓喜と賛意とともに、清廉な殺意が二条の光刃に宿って迫る。それをナギナタの両刃で同時に捌きながら、ゲオルグはただ平静なまま反撃の糸口を探していた。
『――なのに最近の残党どもと来たら、コロッと急に言うこと変えてよ。全スペースノイド解放の大義がどうのこうのとほざきやがる。ガッカリだぜ。
違うだろと。そうじゃねえだろと。お前んとこが救うのは、ジオンの選民様だけだったろぉ? せっかく成し遂げた皆殺しのデッカイ偉業を、そんなに忘れちまいたいのかねぇ』
『我らは忘れぬ』
『――ホ?』
『ジオン勝利に不可欠の礎となった、ルウム二十億柱の無縁仏。その完全成仏を祈りつつ――その入寂を無駄ならしめぬ、宇宙浄土の新たな礎を築かんがため。我ら、大ジオン仏道はここに在る』
『いいね』
にい、とゲンナーは心底嬉しそうに笑う。
『いいね、アンタ。本当に、いい……アンタみたいな奴と戦りたい、ってな。俺ァ、ずーっと思ってたんだ……だから――もっと来いよ! 前に来て戯れろよ。楽しいお遊戯タイムにしようぜェ!』
『!』
だがそのとき、後方宙域を閃光の束が押し貫いた。
デブリを焼き尽くして走る、メガ粒子の奔流――それは巡洋艦の艦砲斉射だ。呑まれたリック・ドム二機が爆光を広げる。
その猛火力を放ちながら現れた新手のサラミス改級巡洋艦は、MS甲板から次々とカタパルトでジムUを発艦させてくる。先陣を切った機体は一際目立つ加速で、交戦中の友軍駆逐艦を目指す最短経路を驀進してきた。
戦闘宙域へと接近しつつあったルスラン・フリートの増援MS隊第二波から、MS-18E《ケンプファー》がそこへ急加速で突出する。その重武装をもって新たな連邦軍増援部隊の出足を叩かんと、スラスターも焼けよと言わんばかりの超10G級高加速を維持しながら迫っていく。
『……修羅道!』
だがゲオルグは元ジオン特務部隊員による迎撃の結果を見るまでもなく、光刃越しにゲシュレイへ強烈な当たりを掛けた。高速機動する二人の隙間へ大型デブリが割り込むや、ゲオルグは全出力で弾けるように離脱していく。
『ああ!? なんだよオイ、お前もマコトが気になんのか!? ――畜生、袖にされちまったか。しゃあねぇ――』
そして敵機に見捨てられたゲンナーは、もはや逆上してその背を追いすがるでも、強敵たちに狙われた旧友を助けようとするでもなく、ただ前進経路上の獲物を睨んだ。唇を嘗める。
依然として後退中の偽装貨物船《ケンドー丸》。壮絶な高機動戦闘を展開しながら、ゲンナーはその艦尾を捉えられる間合いにまで迫っていたのだ。 「じゃ、気ィ取り直してこっち喰うか」
ビームサーベルを腰のラックに戻し、ゲシュレイの標準射撃兵装であるBG-M79Rビームガンに持ち替える。
それはマコトの愛用するビームスプレーガン改同様、一年戦争時の旧式ビーム兵器の改良型だ。
BR-S85のような中距離戦闘には対応し切れていないが、ビームの長時間照射――ギロチン・バーストと呼ぶ者もいる――が可能という特性を有している。つまり『撃ち抜く』のではなく『切り裂く』運用が可能だった。
BG-M79は《P-04》でゲシュレイとともに近代化改修を受ける前の一年戦争モデルでさえ、MA-05《ビグロ》の重厚堅牢な巨体を一射で爆散させるだけの破壊力を実証している。
ましてゲンナーの手に掛かれば、コロンブス級輸送艦などひとたまりもない。
ビームガンが狙うその甲板が光ったと思う間もなく、巡洋艦の主砲クラスの火線がゲシュレイの影を薙ぎ消す。
コロンブス艦上で密かに射点を変えていたビーム・バズーカから、不意急襲で放たれた数秒の照射。巧みな照準と絶好のタイミングで照準点近傍を薙ぎ払った死の光線は、肉薄する敵機を確実に蒸発させるはずだった。
「惜しい」
だがゲンナーは己の勘に従うまま見透かしたような機動で、あっさりとビーム狙撃を外していた。
ビーム・バズーカほどの大出力火器、それも長時間照射のあとで第二射はすぐに出せない。火点も知れた。その前に撃沈できる。
レティクルの中へと見る間に大きく迫る敵艦に向けて、ゲンナーは唇を舐める。だがビームガンのトリガーを引こうとした瞬間、その眼前へ曳光弾の火線が走った。
『ニュータイプを守れッ!!』
MS-09R《リック・ドム》を輸送してきた後、離脱するケンドー丸の後衛に付いていた《コムサイ改》級哨戒艇だった。
二隻。数門の機銃からあらん限りの火線を放ち、体当たりも辞さずの勢いでゲシュレイの行く手を阻まんと肉薄してくる。
『落ちろォッ!!』
艇首部のミサイル・ランチャーが火を噴く。ゲシュレイの軌跡へ覆い被さるように、盛大な火箭の雨が降り注ぐ。
コムサイ改二隻分の全弾斉射が巨大な爆炎の連鎖を広げ、二隻はそれを掠めるような急旋回で離脱に入った。 『や、やった――ゲブ!』
ゲシュレイの蹴り足が真上から、コムサイ改の艇首ブリッジ部を踏み潰した。
艇内格納庫にMS二機を呑んで余りある巨体を蹴撃ひとつで沈めつつ、哨戒艇を踏み台にした全力噴射でゲシュレイが跳ねる。
『ひッ――』
迷いのない機動は一瞬にして、後続のもう一隻へ深々と突き刺さっていた。薄い甲板を踏み抜かないよう、艇体構造のもっとも強固な部分を狙って蹴り足を突き入れる。
そして跳び去るゲシュレイから真後ろに二条の光軸が走ると、二隻のコムサイ改は揃って心臓部を貫かれ、巨大な火球と化して爆散した。いずれの艇からも、乗員の脱出は皆無だった。
「はッ。艇でMSを殺ろうってんなら、もっと覚悟が無ェとなァ」
飛び石にした二隻のコムサイ改を一瞬で爆沈させ、ゲンナーはもはや目前に迫った偽装貨物船の後ろ姿へと再び狙いを定める。
「俺がパブリクでザクを狩るときはそうやってた」
プチモビに操作される甲板上のビーム・バズーカは再充填しつつ、なお鎌首をもたげて狙い返してきている。
そして見れば甲板上には、他にもプチモビの群がわらわらと現れていた。不相応に巨大なザクマシンガンやシュツルム・ファウストを構え、必死の防御射撃を仕掛けてくる。
だがゲンナーには、そんな急拵えの対空砲もどきなど眼中にもない。ろくに定まりもしない120ミリの弾道が軽妙な機動の間近を掠めていっても、冷たい瞳でつまらなさそうに、ふん、と鼻を鳴らすだけだ。
「ダメだ。不味ィ。さっきのゲルググ坊主は良かったのに、ジオンの残党も『天然』モンはめっきり味が落ちちまった。やっぱここは真面目に本腰入れて、俺が『養殖』してやらねェとダメか――ほッ!」
だからゲシュレイの鼻先へと曳光弾が降り注いできたとき、その正確な火線を紙一重で回避したゲンナーは心底嬉しげな表情を浮かべたのだった。
逆落としに迫りくるのはMS-06FZ《ザク改》の二機編隊。ルスラン・フリート増援第二波の一翼だった。
片やMMP-80型ザクマシンガンから高初速の90ミリ弾を放ち、その精確な射線でゲンナーの高機動にも追従して巧みに牽制。そして片や長柄のヒートホークを振りかぶり、デブリの合間から絶妙の死角を縫いながら切りかかってくる。
迷いのない操縦にはいずれも手練の気迫がある。先ほど突出して無謀にも単機でマコト・ハヤカワ准尉機へ挑み、それでも半壊しただけで生き残るという凄腕を見せつけたケンプファーの僚機と見えた。
「なんだよオイ――今度はお前らが遊んでくれんのか? ククッ――世の中、まだまだ捨てたモンじゃねぇなァ」
口角を釣り上げ、ゲンナーは蕩けるような至福の笑みを浮かべた。シールドを向けるや裏面懸架の《クラブ》が噴炎を曳いて飛翔し、牽制の初弾が敵機前方のデブリを砕く。
広がる巨大な爆煙を抜いたゲシュレイは立ちふさがるザク改と激突、光刃と熱刃が激しい火花を撒き散らした。 ジムUとゲルググ、両機の眼前でビーム刃が飛沫を散らす。突撃したゲルググが機体ごと叩きつけた巨大な慣性のままに二機は流れて、二隻のサラミス改級をつなぐ線上から外れていく。
ゲルググは鍔競り合いの逆刃でジムUを斬ろうと、ジムUは頭部バルカン砲と左手のスプレーガンでゲルググを打ち砕かんと、光刃の接点を支点にしながら互いに激しく格闘する。
最初にそのジムUへの迎撃を試みたのは、フローラ・イアハート信女だった。
だが彼女が必殺を確信して放った狙撃のすべては、突出したジムU先頭機を一弾として捉えることなく、すべて理不尽に回避された。あまつさえビームスプレーガンの応射でビームライフルを爆破されている。
瞬時に間合いを詰められて今度は自身の機体そのものを撃墜される寸前、光刃ひとつの突貫で彼女の危地を救ったのがゲオルグだった。揉み合うように転げる二機が遠ざかっていく。
『ゲオルグ居士ッ!!』
葉型シールドの裏側に残されたビーム・ナギナタを抜き、フローラはそれでも加勢せんと急行する。だがさらなる高速で後方から迫ったエレイン機が、彼女にビームライフルを投げ渡しながら抜き去っていった。
『フローラ、あなたがこれを使いなさい!』
『姉様!?』
言うや同時にビーム・ナガマキを構え、ライフル・モードでエレインは撃った。
ナガマキは多目的ビーム兵器だ。本来のビームライフルほどの精度や威力は期待できないが、それでも敵機の周辺を光軸が掠めていけば、こちらの存在は見せつけられる。
だが狙われたジムUはゲオルグと繰り広げる格闘戦の中から文字通りの片手間に、エレインへスプレーガンの曲撃ちを返してのけた。三連射。
『ぐうっ――!』
鋭敏な回避機動で二発はかろうじて外したが、一発が直撃してエレイン機から肩部装甲を弾き飛ばす。
致命傷ではなかった。しかしあの状況から当ててくるなど、もはや人間業ではあり得ない。
それでもエレインは沸騰する感情のまま、怯むことなく突進を継続した。
『連邦の雌がっ、汚らわしい手で居士様に触れるなあああっ!!』
絶叫しながらナガマキを白兵戦モードに戻し、長大なビーム刃を発生させて斬りかかる。
絡み合うゲルググとジムUがようやく離れた。ジムUが抜け目なく放ったバルカン砲の射弾がゲオルグ機に絡み、数発が装甲を穿つ。
だが、今なら――この二機が同時に挑みかかれば、相手がこのジムUだろうと斬り伏せられる!
『ぐっ!』
しかしエレインが挑む直前、その上方から射弾の雨が降り注いだ。ビームライフルと榴霰弾による制圧射撃。単機でフローラを翻弄してのけた手練のジム・キャノンに率いられて迫り来る、ジムU小隊の後続部隊だ。
『姉様に触れるなッ!!』
フローラが猛然とビームライフルで応射するが、一対四、これほどまでの火力差はいかんともしがたい。あっさりと撃ち負け、ただ回避一辺倒へと押しこまれてしまう。
だが多勢に無勢で渡り合おうとした彼女が完全に突き崩される直前、連邦後続部隊の脇腹へと増援第二派の残余が切りかかっていた。
MS-21C《ドラッツェ》三機が、右腕部固定式の40ミリ機関砲を乱射しながら挑みかかる。
高速機動のまま左腕補助ジェネレータが唸ってビームサーベルを展開、迎撃の光刃を広げるジムUと切り結んでは一撃離脱に転じていく。
『い、今の爆発……コムサイの――みんなのいる、方向――』
『よそ見してんな! 目の前の敵と戦えバカッ!!』
そしてエレインがいきなり抜けた駆逐艦正面では、残されたザクUとリック・ドムがなお必死の防御戦闘を展開していた。二丁のザクマシンガンが展開する必死の弾幕が、なお執拗に追撃してくる二機のジムUをかろうじて遠ざけている。
だがエレイン機が勝手に転進した今、自分たちだけでこの二機と一隻は止められない。サラミス改のメガ粒子砲からも狙撃されている。とうに限界は超えていた。
ミリアム・バーレット少尉は新兵らしき少女パイロットが操る最後のリック・ドムを従えながら、一気に後退を決断した。
『後ろの味方と合流する! 下がるよッ!!』
『はっ、はいいッ!!』
ミリアム機が敵機へ向けてハンド・グレネードを投擲するや、彼我の中間で巨大な閃光が広げる。照明弾。ティアーナ能力解放戦闘に備えた、非致死性兵装の残弾だった。
『離脱ッ!!』
二機はそのまま転げるように距離を開いた。加速維持時間に勝るリック・ドムが、ファドランの前方を先行していく。 「……ルウムの、亡霊――」
ミリアムは震えるほどにきつく歯噛みしつつ、大ジオン仏道のゲルググ三機と連携出来る位置まで下がった。
周囲を見れば無謀にも『奴』へ挑戦し、半壊しながらもかろうじて生き残ったケンプファーも、ようやく長経旋回を終えていた。こちらへ合流の動きを見せている。
「いやぁ。凄いよ、アンタ――奴とやり合って生き残れるなんて、大したモンだ」
かつて彼の所属したジオン特務部隊とは、ニュータイプ部隊もかくやの凄腕集団だったというのは事実らしい――強ばる表情でミリアムは笑った。
迫る敵MS隊の後続に対してフローラ機が散発的な射撃戦を展開しつつ、もはや格闘戦能力のみとなったゲオルグとエレインの二機が突撃の機会を窺う。
そして三機のドラッツェと半壊したケンプファーが一撃離脱の機会を探る中へと、ミリアムたちのザクUとリック・ドムも合流した。
これでジオン側は、ほぼ全戦力の集結を完了した。
だが、それは敵も同じことだ。
前方からは血に飢えた二機のジムと駆逐艦が迫り、後方からは『奴』を含む五機のジムと巡洋艦が押してくる。
数の優位はもはや無く、そして今や勢いすらも呑まれようとしている。
「――帰れない、か……?」
ミリアムはヘルメットの内側で一人ごちる。遙かな彼方を睨めば、やはり異常な戦技を見せつけたジム・コマンドに追撃された母艦の後方で、ザク改と思しき二機の機影が果敢に応戦する火線と光条が見えた。
あの連中も特務の凄腕らしいと聞いている。あちらは何とかなるだろう――最悪でも、次の増援が到着するまで持ちこたえてくれればそれでいい。
だが、こちらはもう分からない。
このまま敵MS隊を突破できなければ、戦闘艦二隻に支援された圧倒的に優勢な火力のもと、一方的ななぶり殺しに遭うだけだ。
何よりも――敵にはあの『亡霊』がいるのだから。
『助かったよ、マコト』
『リン、ネイサンのことは残念でした』
執拗に食い下がる三機のゲルググを火力で押し退け、ついに合流を果たした二機のジムUが背中を合わせた。スプレーガンとジムライフルが互いの死角を補い、隙を狙って突撃を試みる敵MS隊を威圧する。頭部を失ったままのシエル機が脇を固めた。
『敵さん、ずいぶんいい感じにまとまってきてくれたねぇ――あと一揉みで、跡形もなくせる』
『いいえ。リン、十二時の鐘が鳴りました。シンデレラは帰る時間です』
マコトが口にした瞬間。互いに逆方を向いたビームスプレーガンとジムライフルの間に、見えない殺気が走り抜けた。
『……あっはっは。どしたのマコト? ずいぶん変わったこと言うねぇ……これだけ大歓迎してくれてる敵さん放っぽって、このままスタコラ帰ろうっての? 私ね。両親から、客人への返礼は倍返しにして差し上げろ、って教わったの』
『リン。連中はあれだけバカスカ照明弾をバラ撒きました。あの異常な閃光の連鎖が今、そこいらじゅうから敵をうようよと引き寄せています。ここはもう、敵さんのお城の中――客人は私たちの方です。長く留まれば留まるほど、私たちの不利になるだけです』
今や指呼の間にまで迫った僚艦トラキアが、アルマーズとの合流を目前にして旋回機動へ入った。
なお猛攻するケンプファーとドラッツェ編隊を、自艦の対空砲火とサブリナ率いる直掩MS隊で巧みに押し退けている。
そしてトラキアは減速から反転へ、元来た経路の撤退を目指していく。すでに撤退軌道に乗っていた、アルマーズを先導するように。
『カボチャの馬車も到着です。舞踏会はお終いですよ』
『……ふぅん、そっか。でもね、マコト――王子様と意地悪姉妹は、まだ帰したくないってさ!』
『!』 『降魔!』
『調伏ッ!!』
再び編隊を整えた三機のゲルググが突入してくる。ビームナギナタと何か槍状のビーム兵器をかざした二機が突撃、そして後方から一機がライフルで狙撃。研ぎ澄まされた連携攻撃が二機のジムUを狙う。
それは連邦軍が完全に合流し、相互支援の防御火網が完成する直前を狙った賭けだった。
果断ではある。だが一歩間違えれば連邦軍に完全に包囲され、一方的に撃滅されかねない。大ジオン仏道はそれだけの気迫をもって、マコト・ハヤカワを狙っていた。
彼らは見抜いたのだ。今この瞬間を逃しては、もはや彼女を倒せる機会は永遠に失われると。
「大ジオン仏道、――あいつらなら、ひょっとして――」
そして一瞬の逡巡の後、ミリアム・バーレットも意を決する。
『ついてきな!』
『バーレット少尉!?』
『坊主どもを掩護するよッ!』
傷ついた機体を虚空に跳躍させるや、ミリアムはザクマシンガンを構えて突進した。
ジムライフルと首なしのジムUは、猛攻するイアハート姉妹がかろうじて抑え込んでいる。もう一機、スプレーガンを構えたジムUにゲオルグが挑んでいた。
そしてミリアムは大ジオン仏道とは別方向からスプレーガンのジムUを狙い、銃口から迸る火線の雨を被せた。わけも分からぬまま、リック・ドムの少女もそれに続く。
己の内から沸き上がる、出所の知れぬ確信とともにミリアムは叫んだ。
『スプレーガンのジムを撃てッ! 今この機を逃せば、もう永遠に奴は討てないッ!!』
「少尉、――何を言って……!?」
二門のザクマシンガンがマコトを狙う。応射しながら回避運動するジムUのシールドに、120ミリ弾が火花と跳ねた。同時に二方向三機から執拗に狙われ、さしもの『スプレーガン持ち』も動きが乱れた――そう見えた。
突撃するザクとリック・ドムの行く手に光軸が走り、二機に回避機動を強要する。だが直撃は出来ず、その行き足は止まらない。
『うおおおおおっ!? なんかマコッちゃんがヤベェぞオイ!』
『ハヤカワ准尉!!』
『ちいいっ――あいつら、捨て身かっ!』
連邦軍による包囲殲滅のリスクを完全に無視した、ジオン残党軍五機の強引な突撃はトラキアMS隊主力からも見えていた。
だがサブリナがR4ライフルで牽制の長距離狙撃を放つ他に、有意な支援はまったく出来ていない。執拗に波状攻撃を仕掛けるドラッツェとケンプファーが、彼らの行く手を阻んでいるのだ。
『こんちくしょう――このハエどもがあっ!!』
次々に一撃離脱を仕掛けてくるドラッツェの三機編隊へビームライフルの短連射を放ちながら、ロブ・サントス伍長は絶叫した。
脚部を大型プロペラントタンク兼推進器に改造したドラッツェは、AMBAC能力と射撃時の安定性こそ低いが、直線加速と継戦性では群を抜く。
不安定な40ミリ機銃も近距離戦では馬鹿には出来ない。ロブとアイネが放つビーム、シュンが撃ち放つ榴霰弾も抜いて必死に食らいつくドラッツェは、彼らの陣容を喰い破れずとも大いに掻き乱していた。
そして生じた綻びに、稲妻にも似た機影が迫る。
『うっ――うおわあああぁっっ!!』
群青隻腕の一角鬼――ケンプファーだった。
火力はすでに本来の数分の一まで低下し、残る兵装は背部ジャイアント・バズ一門とビームサーベルのみ。
だが武装の大半と片腕を捨てた身軽な機体は、パイロットをすり潰すような超高加速からその光刃を閃かせた。
『ひあ!?』
『サントス伍長が抜かれたっ!? ミケリヤ少尉!!』
ロブ機のシールドを半分に寸断しながら、ケンプファーは一気に前衛を突破する。頭部60ミリの射線に追われながらも、背部ジャイアント・バズを後衛のジム・キャノンへ放った。
至近で爆ぜた榴弾片がR4ライフルを穿ち、ジム・キャノンの機体を揺るがす。猪突するケンプファーがそのまま重武装の機体へとどめの斬撃を振り下ろすと、火花の雨が宇宙に弾けた。 『ッ!?』
『――惜しい』
ハイザック用の小型シールドを装備した左前腕部から、ジム・キャノンは光刃を展開していた。
ボックス型ビームサーベル。かつてRGM-79SC《ジム・スナイパーカスタム》が前腕に固定装備していたそれを、サブリナ機は近接防御用に移植していた。
そして至近で膠着した二機が、互いの頭部60ミリバルカン砲を開いたのは同時。
足を止めながら撃ち合うなら、軽装甲のケンプファーがジム・キャノンに勝てる道理などない。ケンプファーは機体のそこかしこを貫通されながら、不自由な機体に残る推力を振り絞って必死に離脱していく。
『やるじゃないのよ、特務さん――』
だが笑うサブリナのジム・キャノンもまた、火器の過半を打撃されていた。
R4ライフルにはジャイアント・バズからの弾片が食い込み、肩部固定式キャノン砲もバルカン砲に砲身を抉られた。バルカン砲とビームサーベルを除き、もはや中距離火力のバルザック式バズーカしか残っていない。
彼我入り乱れる格闘戦への精密狙撃は、事実上これで封じられた。ケンプファーは作戦目的を達成したのだ。
『墜ちろッ、化け物ォォォ!!』
そしてサーベルとナギナタがメガ粒子の干渉波を散らす中心へ、ミリアムは銃身も焼けよと連射しながら突進していく。
ゲオルグともみ合う敵機からビームスプレーガンがぱっと煌めき、後続する少女のリック・ドムがザクマシンガンを吹き飛ばされた。弾倉の残弾が誘爆して機体を揺らす。
『きゃあああっ!?』
『構うなッ、サーベル抜けぇッ! あたしが奴に組み付いて動きを止める、いいか、確実にあたしごと奴を叩き斬れッ!! ゲルググ坊主も巻き添えにして構わん!!』
『ひっ――りょ、了解っ……』
自機にもヒートホークの柄に手を掛けさせながら、ミリアムは喚いた。気迫に少女が色を失う。
たとえ三機がかりでも、奴と斬り合ってまともに勝てるとは思えなかった。だが体当たりを仕掛け、動きを止めることぐらいは出来るはずだ。
敵は超絶の神業さえも鼻であざ笑う幽鬼の女王。生身の人間が打ち勝つ術など、捨て身以外にはあり得なかった。
ファドランがヒートホークを、リック・ドムがヒートサーベルを抜く。ミリアムは右肩部シールドを前面に出してスプレーガンからの狙撃に備えながら、渾身の斬撃へ向けて流体パルスに溜めを作った。
ゲオルグはなお互角の攻防を展開している。イアハート姉妹も駆逐艦のMS隊を抑えていた。
神機天佑。
神仏を信じないミリアムがそう思った。今なら奴と、差し違えられる――ミリアムの表情に、涙混じりの奇妙な笑みが浮かぶ。
『大ジオン仏道ッ! 私のことを、覚えているかぁっ!!』
そのときオープン回線に、少女の頓狂な叫びが響いた。
ドラッツェ隊がなお激しく斬りかかる乱戦を抜いた、ジムUの一機からだ。
なお濃厚なミノフスキー粒子に遮られて、その絶叫は決して遠くまで届かない。それでも戦場に生じた一瞬の空白を抜いたその機体は、まっすぐにゲルググの一機を――指揮官用通信ブレードを頭部に立てた隻腕の機体を目指して突進してくる。
ジムUが続けざまに数発放ったビームライフルの光弾は、ミリアムたちの突撃を妨害した。格闘兵装の二機はただ旋回を強要され、そして開いた空間へとそのジムUは突撃してくる。
『この、声は――』
今まで決して鈍ることの無かったゲオルグの動きが、そのとき初めて俄に揺らいだ。
『――クライネ伍長?』
マコトが解けるようにゲオルグからの距離を開き、彼女の背を突くように迫ろうとしていたザクとリック・ドムに真正面から向き直る。
アイネはそのままビームサーベルを抜き放って突撃、ゲルググのナギナタに受け止められた。
『忘れているなら教えてやるっ。私はこの前お前たちが襲って皆殺しにした巡洋艦、《アバリス》隊最後の生き残りだ!』
『な』
そして、ゲオルグも忘れていなかった。 宙域で悪逆非道の限りを尽くした連邦外道艦アバリス。その隙を突いて襲撃した際、最後まで果敢に抵抗し――そして自らビームナギナタでコクピットを貫き、核融合炉爆発の火球とともに完全成仏させたはずの少女パイロットの声を。
『ば、莫迦な――あ、あのとき――あのとき確かに、私は……滅我粒子にてその身を荼毘に付し、即身完全成仏に導いた、――はず……』
『残念だったな、それは単なる記憶違いだ! 私は今、ここで確かに生きているぞッ!!』
ゲルググの巨体もろとも、狼狽したゲオルグを圧し斬るようにアイネは叫んだ。ジムUがスラスターの出力を全開する。
『何が完全成仏だ! 何が宇宙浄土だ! お前らジオンの亡霊どもにそんな権利も、そんな力もありはしないんだ! いま、私は確かに生きている――私は生きて、お前らジオンの理想なんかに壊されない、私たちの新しい世界を作るんだっ!!』
「そうだ。今、生きている――」
二人が戦う背後で、リック・ドムがヒートサーベルを握り拳ごとスプレーガンに打ち砕かれた。あくまでマコトへの突撃姿勢を崩さなかったザクUも、正面からスプレーガンに乱打されて立ちすくむ。
ようやく突撃が無謀と知れたか、リック・ドムは胸部ビーム砲を発射しながらザクとともに離脱していく。その二機に射弾を応酬しつつ見送りながら、心底楽しげにマコトは笑った。
「幽霊なんかじゃない――君も私も、な」
そしてアイネ機の剣閃が、ゲルググを一気に押し切る。
それまでの人間離れした獅子奮迅が嘘のように、ゲルググは機位を崩して圧し流される。アイネは突き構えでそこへ猛進した。
『さあ成仏しろ、大ジオン仏道ッ!!』
『おおおっ――おおおおおおッ!!』
『ゲオルグ居士いっ!!』
その光景に、ジムライフルの機体と交戦していたエレインが絶叫した。もはや後先の算段も何もなく、ただ激情のままに彼女のゲルググは跳ねる。
エレインは横合いからナガマキを構え、咄嗟の射撃を放って二機の合間に割り込もうとした。ナガマキの光弾はエレインが自分で信じられないほどの精確さで二機の中間を抜け、少女のジムUは咄嗟に退いて狙撃から逃れる。
だがエレインが次弾を放つ寸前、榴霰弾が眼前でぱっと弾けた。弾幕がエレイン機を横殴りに乱打する。
「あぐっ!?」
『彼女はやらせない!』
ハイパー・バズーカを構えたジムUからの掩護だった。
『小癪なあああっ!!』
狙撃の機会を封じられたエレインは、即座に突撃を決意する。自らの機体でその開いた隙間へ滑り込もうと、ナガマキから光刃を伸ばすと全力で突進した。
「ゲオルグ居士、いま参ります――」
「地獄へか?」
何か不吉な意志の力を、エレインは感知する。背後から。
コマ送りのように緩んだ時間の中で、全天周モニターの正面にカットインが開く。
ロックオン警報。
エレインとフローラが二機がかりで抑えていた、アルマーズMS隊の片割れ――首なしのジムUが肩部サブセンサーの視野と、ビームライフルの射線上にエレイン機を捉えていた。
銃口が丸く見える。急機動したエレイン機の動きを読み、待ち伏せていたのかもしれない。
決してあり得ないはずの、ゲオルグの危地という異常事態。それを目の当たりにした衝撃がエレインを狂わせ、もっとも危険な目前の敵を忘れさせたのだ。 「しまっ――」
『――地獄に落ちろ、ジオンの屑』
冷たく呟き、シエル・カディスは静かにトリガーを引き絞る。
BR-S85の銃口から迸ったメガ粒子は、敵機の中心核を狙って迸り――そして過たずコクピット・ブロックを撃ち貫いた。
直前に射線上へ割り込んでいた、フローラ・イアハート信女機の。
『――フローラ?』
『ねえさま。庵(いおり)の皆に、』
閃光に焼かれる直前、妹は姉へ優しく微笑んでいた。八年前までの無垢な少女のように。
「南無阿弥陀仏――」
ゲルググのコクピットは一瞬でメガ粒子の奔流に焼き尽くされ、内包した美少女の意識とともに蒸発した。
重厚な機影はその中心部から歪んで崩れ、貫通された融合炉からプラズマの奔流が溢れ出す。
フローラ機は巨大な光球と化して一瞬で消滅。その強烈な照り返しは周囲のMSを押しやり、シエル機の装甲までもを叩いて激震させた。
「ぐっ、ううう! 邪魔立てをっ――まだだっ。アイネの仇――貴様も――貴様も、墜ちろォ!」
シエルはその機体を盾に生き残った、もう一機のゲルググを執拗に狙う。
そして通信索敵機能の要を担う頭部ユニットを失っていたシエル機は、その警報に気づけなかった。
――逃げて
「えっ?」
戦闘宙域を、強大なメガ粒子の集中豪雨が薙ぎ払った。
すべてを光熱の中に押し流す、圧倒的な艦砲射撃――それはサラミス級が出せる火力ではない。そしてトラキア隊の面々はその鮮烈なビーム光の威力を、忘れようもなく覚えていた。
『この火力、あのときの!?』
『まさか、また――!』
高エネルギー警報の元を辿れば宙域の彼方に、鋭角の艨艟が巨体を現していた。サラミス、マゼランの連邦系航宙戦闘艦の系譜に連なりながら、同時にMS戦へ高度に対応した意匠。前方へ複数展開されたカタパルト甲板から、次々にMSが発進してくる。
同時に宙域全体を覆うほどの高出力で、ミノフスキー粒子に妨害されながらも通信波が一方的に放送された。
『こちらは地球連邦宇宙軍、環月方面軍戦艦《ジャカルタ》。これより正面宙域で戦闘中の『友軍』を支援する』
『――《エゥーゴ》!』
『きっ、来たぁ! ほれ見ろ! いつまでもモタモタウロウロしてっから、案の定、あの連中がまた来やがったああああああ!!』
有無も言わさず矢継ぎ早にカタパルト射出されて展開してくるMS隊は、リック・ドム擬きの新型を先鋒にして早くも十機近く。
無線放送で堂々と宣言された、彼らが支援しようとしている『友軍』とやらが地球連邦正規軍ではないことぐらい、誰もが言われなくとも理解できた。
激戦の末に疲弊しきった両軍をまとめて、容易に一掃しうる新戦力の出現。巡洋艦トラキアから即座に信号弾が放たれ、戦場の宇宙に大きく弾ける。
「全軍、即時撤退――」
『さあさあ、エゥーゴさんのお出ましだ。いよいよここで店じまいだ! とっとと帰るぞ、早よ乗れやリン!』
この場での最上位者である、昔馴染みの僚艦艦長が通信小窓に顔を出す。とうとう直接に釘を差されて、崩れたゲルググ二機を狩ろうとしていたリンも諦めたように首を振った。迫る新型戦艦へ目を眇める。
『リドリー、……了解。あれが、エゥーゴ――そこのあなた、そのままシエルをお願い』
『はっ、了解です少尉殿! ――え? ……シエル??』
シエル機は今や頭部に加え、機動の要たる両脚部までも失っていた。高エネルギー警報と艦砲射撃からの退避が遅れたためだ。
それでも彼女が機体ごと蒸発せずに済んだのは、トラキア隊の少女パイロットが操る一機が、体当たりを掛けてまで離脱を支援してくれたからに過ぎない。
そのトラキア隊機に曳かれるように誘導されて、シエル機は艦隊への帰投コースへ入っていく。 そして、あれほど執拗だったジオン残党軍も、連邦軍への攻撃を止めていた。警戒態勢は崩すことなく、しかし次第に距離を取りながら離脱していく。トラキア艦長リドリー・フランクス大尉は、その光景にひとり艦橋で訝しんだ。
「――ふん。エゥーゴの連中、未だルスラン・フリートとの連携は出来ておらんと見えるな――」
ケンプファーが大破し、ゲルググも一機撃墜された今、ルスラン・フリートにこれ以上の戦闘を継続する力はないはずだった。
そしてエゥーゴが到来しても攻勢に出てこないということは、彼らもまたエゥーゴを警戒しているということに他ならない。
「よし。今ならまだエゥーゴに完全に捕捉される前に、全MS隊を収容して離脱できる――って、マコト!? 何やってんだおまえ! 退くんだよ。後退! 全軍後退、って言ってんだろうが!!」
『21。22は推進材と残弾に余裕大。これより単機で友軍の撤退を支援する。宙域内の全MS隊は22より先に母艦へ帰投せよ』
『りょ、了解!』
『准尉、お先に――』
連邦軍の全MS隊が一斉に母艦へ帰投していく中、マコトのジムU22だけが最後尾でエゥーゴMS隊を睨む格好になった。
『いいよリドリー、マコトがケツを持ってくれるんなら安心ってもんだ――こっちは残弾がない! マコト、先に下がるよ!』
『ええサブリナ、皆をよろしく……リドリー、ご心配なく。お茶だけ用意しておいてください』
『馬鹿野郎! マコトお前、絶対帰って来いよ!!』
ジムU22の背部スラスターが噴焔を吐いた。シエル機の狙撃で散ったゲルググの残骸が漂う空間を飛び抜けながら、マコト機は旋回を繰り返しつつエゥーゴの接近を威嚇する。
「ハヤカワ准尉の、あの動き――何だろう。――何かを、探している……?」
トラキアのMSカタパルト甲板へロブ機と同時に着艦しながら、シュン・カーペンター伍長は遠い隊長機の奇妙な動きに目を凝らした。大破したアルマーズ隊機とともにアイネ機も着艦し、弾薬と推進材の艦外補給に整備兵たちが彼らを取り巻く。
そしてエゥーゴMS隊が、戦闘宙域へ侵入してきた。
弾丸じみた速さでデブリを縫って先陣を切るのは、つい先日にも見たリック・ドム擬き。その背後には以前にも見られたジム擬きと、ハイザックに似たブレードアンテナ付きのMSが従っている。
すべてが新型機と見えた。後退するジオン残党軍MS隊には目もくれることなく、連邦軍へ――その後衛たるマコト機めがけて突進してくる。
落ち着き払った男の声で、ノイズ混じりの通信が入った。マコトはその声を覚えている。
『――宙域のミノフスキー粒子濃度、きわめて高。我がMS隊の新型センサーに不具合を確認――友軍誤射の恐れあり。繰り返す、友軍誤射の恐れあり。現戦域は我が方が引き継ぐ。サイド4駐留艦隊は、現在地より早急に退避されたい』
リック・ドム擬きの頭部に据わる、旋回軌条を持たない異形の大型モノアイ。その眼光が戦闘宙域を不気味に睨む。
連邦軍在来機を圧倒する新型メインセンサーのすぐ背後に位置する頭部コクピット内で、全天周モニターとコンソール上へ正確に描き出されていく戦況表示を見渡しながら、その男――ジャカルタMS隊長ベリヤ・ロストフ大尉は笑った。
『この過酷な暗礁宙域では我が方の、月面育ちの軟弱なセンサーなどはものの役にも立たないようだ』
そしてトラキア艦橋では、リドリーが艦長席のアームレストを叩く。
「――ふっ、ざ、けんな――エゥーゴのクソ野郎ども! 今度はそれで味方討ちを正当化しようってのか!? 後部単装砲、行けるな!?」
『いつでも!』
『リドリーさん。マコトの加勢、ウチの連中も混ぜてください』
「当たり前だジャック! 野郎、新型だろうがブチ墜とすッ!!」
トラキアとアルマーズ、サラミス二隻の後部で単装砲群が蠢く。
だが最前線に立つマコトは、いつも通りにしごく平板、事務的な声色で応じるだけだった。 『ご親切にどうも、ロストフ大尉』
『やあハヤカワ准尉、奇遇にもまたお会いしましたね。いま退避されないのなら、生命の保証はいたしかねますが?』
あのとき感じたままのざらついた気配をよそに、マコトも冷たい笑いをベリヤへ返した。
『ご自由にどうぞ。どうかご心配なく――こちらも好きにさせていただきますので』
『了解――』
それまでフラフラと、どこか当て所ないようにも見える動きで旋回していたマコト機。エゥーゴ機との接触直前、彼女はようやく求めるものを見つけだした。
「――あった」
宙域に浮かぶ、一点の微かな燐光。
MSなどよりずっと小さく、新旧のデブリに紛れて漂うそれをマコトはかろうじて捕捉し――瞬間、彼女はそこへ全速でジムUを突進させていた。
同時にリック・ドム擬きも虚空を蹴る。随伴する二機を置き捨てるような急加速だ。
理由はひとつ――その新型モノアイも、同じ存在を捕捉したのだ。求めていたものを。
巨体の繰り出す挙動は軽く、推進の火は力強く、そして何より確かに速い。
その機動性能がジムUはおろかケンプファーやゲシュレイさえも上回ることなど、もはや素人目にも明らかだった。
宙域の同じ一点を目指して二機は猛進し、そして最初のビームがマコトへ走った。
リック・ドム擬きからではない。その後方へ離されながらも追従する、ブレードアンテナ付きのハイザック擬き――それが構える長銃身ビームライフルが長距離から、正確無比にマコト機の中心を狙ったのだ。
そしてマコトも同時に応射していた。ハイザック擬きが放った狙撃の光軸はジムU22を掠めて消えたが、その応酬が口火となってリック・ドム擬きが火線を開く。
鋭角的なシルエットの長砲身バズーカが火を噴き、迎え撃つマコト機の前方に爆炎を散らした。両機は互いに譲らず直進し、散りゆく火球を蹴破るように飛び込んでいく。
リック・ドム擬きは初弾ひとつで右手のバズーカを下げた。続けざま、左手に握った小型ビーム銃から速射が迸らせる。
スプレーガンに劣らぬ連射速度、なおかつ倍近い高出力で注いだ射弾の雨。応射しながら掻き分けるように進むマコトは一発の直撃も受けることなく、そのすべてを真正面から突き破っていた。
二機が激突する瞬間にぱっと火花が、そして爆光がふたつ閃く。
飛び抜けるリック・ドム擬きは、掌中のビーム短銃を。そして駆け抜けていくマコト機も、その右手からビームスプレーガンを失っていた。
相打ち。
だがリック・ドム擬きの背で、一対のバインダーが閃く。重厚な巨体が独楽のような迅さで廻り、スプレーガンを失ったジムUを眼下に見下ろした。新型バズーカの砲口が背後の死角からマコトを捉える。
炸裂した。
榴霰弾が装甲を叩く。近傍を掠めていくビームの射弾から、急旋回でリック・ドム擬きは機敏に逃れた。
一度は巡洋艦まで後退したジムU三機が再出撃して、猛烈な射撃を降らせてきたのだ。
『掩護します、准尉ッ!!』
『早く戻ってきてください!』
『隊長―ッ! はやくきてくれーーーっ!!』
「ほう。雑兵風情が、その旧式でリック・ディアスに挑むのか――」
急激な回避機動で生じた加速度の底から、凄絶にベリヤは笑う。
しかしその時にはもう、マコトのジムU22はシールド裏から予備スプレーガンを手にしていた。ベリヤ機との間で、猛烈な銃砲撃が飛び交う。
『大尉、離脱をッ!』
ハイザック擬きが再びビームで狙撃し、追いついてきたジム擬きが新型バズーカから発砲する。弾ける榴霰弾がマコト目掛けて投網を開いた。斜め構えのマコト機シールドに弾片が弾け、そしてある弾片は腕部装甲まで貫き通す。
そしてマコトと敵機が離れたのなら、リドリーがそれ以上我慢を続ける理由などはもう何一つ存在しなかった。
『撃てェッ!!』
トラキアとアルマーズの二隻が、そのとき使えるすべての火力を開放した。サラミス級二隻が放つ後方火力、さらに三機のジムUがBR-S85とハイパーバズーカの火力を加えて、エゥーゴの新型MS隊をも圧倒していく。
『22より21。21、帰投する』
『おかえりなさい、准尉――!』
その火力がこじ開けた局所優勢の穴を辿って、マコトのジムUは母艦へと全速力で合流した。出迎えの三機とともに、巡洋艦と並進しながら戦場を離脱していく。
そしてゲシュレイを載せたパブリク改級哨戒艇が矢庭に四機を追い抜き、その艦列に加わった。
そのまま暗礁宙域の彼方へ、連邦軍の三隻は見る間に遠のいていく。 一転して静寂に帰った宙域で見送るRMS-099《リック・ディアス》に、一機のMSA-003《ネモ》が寄り添った。静かな女の声が問いかける。
『――大尉。追わなくてよろしいのですか?』
『うん。今はこれでいい。確信が持てたからね。やはりここは宝の山だよ。いま随分と散らかっている中にも、まだ『福』が残っているかもしれない』
『艦と主力はルスランを追いますが。ここの捜索に人を割きますか?』
『必要ない。これから、いくらでも機会はある――』
彼らの後方ではRGM-79R《ヌーベル・ジムU》の編隊が、軍使の白旗を掲げながら進行していく。なお警戒の布陣を崩さそうとしないまま後退行動を続けるジオン残党軍MS隊、そして偽装貨物船へと向かって。
『――そうだろう、ルチア?』
『はい、大尉』
RX-107《ロゼット》のコクピットに座る女性パイロットは、全天周モニターに呼び出した録画映像をじっと見つめている。
「……相変わらずね。マコト・ハヤカワ――」
長距離から狙撃する彼女へと、ビームスプレーガンを向けるジムU。
雌獅子の傲慢さでその機影を睨みつけながら、金髪の美女は唇を舐めた。 「連邦の新型戦艦は《エゥーゴ》だと名乗ったそうです!」
「助けてくれるのか……? 敵の敵は、味方ってことなのか?」
「今、行方不明だったタールネン少佐からも通信が入ったらしいです――あっちに収容されてたってことなんでしょうか?」
戦艦ジャカルタに後方へ付かれながら並走する、偽装貨物船ケンドー丸。
大ジオン仏道のゲルググ二機をはじめ、今なお戦闘能力を保つ数機のMSが今なお艦外へ展開してはいる。しかし彼らはジム系MSを主力として迫るエゥーゴ部隊相手に、露骨な交戦の意志を見せてはいなかった。
そしてケンドー丸のMS格納庫は激戦から帰投した満身創痍のMS隊を収容して、整備兵たちが怒号とともに飛び交う修羅場と化している。
大破したザクUファドランの一機がその一角で機体を強制冷却され、さらにコクピットハッチを破断開口された状態で固縛されていた。その内部から救出された少女は、パイロットスーツ越しに豊かな胸へ抱かれている。
「ティアーナ、……疲れたのね。いいのよ……ゆっくり……ゆっくり、休んで……」
栗色の長いツインテールを無重力に泳がせたまま、少女は静かに眠っている。すべての痛みと苦しみから解き放たれたように、安らかな表情でただ静かな寝息を立てている。
もはや物言わぬティアーナ・エイリス上等兵を救出したきり抱きしめたまま、イオタ・ファーガスン大尉はそこから一歩も動かなかった。
「……ウソ、だよね。ティア……」
ノーラ・ジャンセン伍長は掛ける言葉の一つも持てないまま、それ以上二人に近づくことすら出来ずに立ち尽くす。ミリアム・バーレット少尉は自機のコクピットから、遠くその光景を見つめている。
その格納庫全体を覆う混乱と喧噪の中を、パイロットスーツ姿の一団がかき分けるように進んできた。プチモビを動員してファドランの予備兵装を持ち出し、対空砲火を展開していた船客――ギュンター・グロスマン大尉以下の一団だった。
胸にティアーナを抱いたきり、俯いたまま動こうとしないイオタを取り囲む。
「ファーガスン大尉! エイリス上等兵の妙なる槍働きに、我ら一同心底より感服いたしました!」
「――グロスマン大尉……?」
眼鏡の下から虚ろな瞳を向けるイオタに構わず、男たちはその腕の中のティアーナを覗き込む。寝息を立てるその姿に安堵するや、興奮さめやらぬ勢いで次々にまくし立てた。
「いかなファドラン仕様といえど、ザクUを以て連邦のハイザックとガルバルディβをああも痛快に撃ち砕くなど、まさに彼女こそジオン武人の鑑!」
「ジオン十字勲章の名だたる勇士にも劣らぬ働きでしたぞ!」
「あのニュータイプもかくやの狙撃、まったく脱帽いたしました! 彼女さえいれば、もはやアムロ・レイごとき恐るるにも足らず!」
「ニタ研の強化人間が何するものぞ!!」
「…………」
男たちの歓喜と賞賛に包まれながら、イオタは微動だにしない。紙のような顔色のままで少女を抱きしめ続ける彼女の瞳に、光る滴が溢れ出す。
「いやあ、ともかく彼女が無事でよかった! ジオン再興の日は近い! ジーク・ジオ――ぶフッ!」
感極まった一人が拳を振り上げ、一同の唱和を導き出すより早く、あらぬ方向から飛来した工具がその背中を強打していた。
「だっ、誰だこれはァ! 何をするかァ!!」
「――申し訳ありません、先輩方。ウチの連中、上がったばっかでしてね……今、ちょっと疲れてるんです。……少し、静かに……しておいて、いただけませんかね……」
自機から降り立ったミリアムが静かに、しかし確かな殺気を帯びた瞳で睨みつける。戦場帰りの荒んだ眼光が、その意味を知る男たちを圧し下がらせた。 「――あの。その子、……大丈夫、なんですよね?」
そのとき不意に少女の声が、人垣の向こうから呼びかけてきた。
男たちが道を開けると、パイロットスーツの可憐な少女が現れた。ボブカットの柔らかな髪が汗で張り付くのも構わず、彼女はイオタへ歩み寄ってくる。
ただ一機だけ生き残った、リック・ドム搭乗員の少女だった。
「その子、……ニュータイプ、なんですよね。その子さえいてくれれば……連邦がまた新型のガンダムを作って、アムロ・レイや強化人間を乗せてきても……、その子がみんな、やっつけてくれるんですよね……?」
止める者の一人もないまま、幽霊のように少女は歩いた。イオタの眼前に達し、焦点の定まらない瞳で二人を覗き込む。
「みんなが、……私の部隊が……みんな死んでまで守ったこの子は、……また、戦ってくれるんですよね。誰よりも強くて特別な、本当に選ばれた存在だってことを、見せてくれるんですよね……?」
「伍長……」
イオタは答えない。なすすべもなく震える少女の小さな肩を、女の手がぎゅっと後ろから強く掴む。
ミリアムは無言で彼女を抱き寄せた。その途端、少女の瞳から堰を切ったように涙が溢れ出す。少女はミリアムの胸にすがりついて、意味のない大声を上げながら泣きじゃくった。
格納庫の脇から、担架を抱えた衛生隊がようやく姿を現した。人垣をかき分けてティアーナの元までたどり着くと彼女を固定し、イオタを伴って搬送していく。
「――私、なんにも……なんにも、出来なかった……」
そしてノーラはその一部始終を、ただ傍観することしか出来なかった。
もはや打ち捨てられたティアーナ機の、強制開口されたコクピットハッチに腰掛けながら、焼け焦げたその内装を見つめてノーラは呟く。
無重力に漂い出てきた、写真の切れ端をノーラは掴んだ。
ティアーナが勝手にコクピット内へ張り付けていた、何枚もの写真のひとつだ。眠る自分の顔に落書きして、得意げに笑うティアーナがそこにいた。ノーラも少し、笑う。
「……あの、バカ」
そして炭化した写真は、ノーラの指先ひとつで脆く崩れ去った。ティアーナの笑顔が灰燼になって、船内気流に乗って流れていく。
「……強く、なりたい」
誰もいないコクピットの中で、ノーラは一人うずくまって膝を抱えた。涙が零れる。
「強く、……なりたい、よぉ……」
少女の嗚咽は格納庫に渦巻く喧噪に呑まれ、誰にも届かずに消えていった。
ケンドー丸の進路上に、いくつもの光点が浮かび上がる。
近傍の衛星拠点から出撃した、ルスラン・フリートの増援第三波となるMS隊であった。その勢力、ゆうに数十機。
エゥーゴとルスラン・フリート。
のちに地球圏を揺るがすことになる二つの勢力が、この日、邂逅した。 トラキアとアルマーズ、そしてパブリク改級哨戒艇《バチスカーフ》の三隻は戦域を離脱してから、いくらも行かないうちに僚艦と合流できた。
民間貨物船《リバティ115》とそこから展開した、VWASSのRB-79《ボール》編隊に護衛された戦隊旗艦《マカッサル》を加え、五隻は一路《P-04》を目指していく。
トラキアのMS格納庫は完全に修羅場だった。アルマーズ隊のリン機とサブリナ、ゲンナーの機体は損傷も消耗も激しく、優先整備を受けている。マコト以下のトラキア隊機は、艦外補給を受けながら待機中だった。
そして、アルマーズ隊の片割れ――首も、左腕も、両足までもを失ったジムUは艦内格納を許されず、トラキア隊機とともに艦外繋留されている。
『嘘、――アイネ? 本当に、アイネ、……なの……?』
『そうだよ。そうだよシエル、私だよっ! 私、ちゃんと生きてるよ!』
最初にその機体を曳航してきたジムU22をすぐ隣に繋止するや、パイロットの少女はコクピットハッチへ跳んでいた。
宇宙で間近から見つめ合うバイザーの奥に、見る見る涙が溢れていく。とうとうこらえきれなくなって、アイネはその豊かな胸にシエルをヘルメットごと抱きしめた。
『ちょっ! あ、アイネっ……』
『シエル。私、強くなったよ。シエルに負けないぐらい――シエルのことを、守ってあげられるくらい強くなったよ』
『――アイネ、……バカ。……アイネのくせに……十年、早いよ』
抵抗を試みたシエルの腕から力が抜けて、二人の少女はそのままノーマルスーツ越しに互いの肉体を確かめ合った。
コクピットハッチで人目もはばからず抱き合う二人に、居合わせた二人の男性パイロットは目を白黒させ、マコトは吹っ切れたように大きく溜息を吐いた。
シールドの裏に隠した、自機の左手をそっと見下ろす。
「やれやれ。まさか『二人目』とはな。どうやらまた、頭痛の種が増えそうだ――」
その掌中で真空に揺れる長い銀髪、そして横たわる美少女の豊満な肉体。
「さて。今度はどうしたものかな」
淡い燐光に包まれたその安らかな寝顔を周囲の僚機から隠しながら、マコトは遙かな進路上に遠く浮かぶ、迫り来るP-04の巨体を見つめた。 第二章、これにて終了です。次回より第三章となります。
例によってハーメルンとpixivに、挿絵を投稿しております。
そちらの方もご覧いただければと思います。
以前に受領したリクエストも、少しずつ進んでおります。
非常に不定期にはなってしまっておりますが、またこちらも投稿させていただければと思います。
それでは、ご感想お待ちしております。 フェニックステイル三次創作
シュン☓アイネ
エロ
※この話はフェニックステイル作者さんより
設定をお借りして書いたモノであり
本編とは関係のない完全IF話です。
だがここまで来たら、もうそんな少女とでもいい。肉棒の切っ先が、
ついに少女の膣口に触れた。あと一押しで、すべてが終わる。
「いやッ!や、やめてえ!」
僕は懇願に構わず、濡れそぼった秘裂にペニスを突き入れた。
「あッ!い、痛ッ!や、やああッ!」
「あ…あッ…あ…キ、キツイ…」
ペニスの先端と粘膜が触れ、狭い膣道の締めつけに僅かに被っていた
包皮が一気に剥かれる。少女の体内の熱い感触に僕は圧倒された。
気持ちよすぎる……自慰などと比べ物にならないほど気持ちいい!
兵士が戦場で女を犯すわけだ。死ぬまでにもう1回などと考えられない。
死ぬまで何回も、何十、何百回味わっても足りない。
「痛い!やだああ!やめていやぁ!お願いだからやめて下さい!」
眼下の少女は涙を浮かべながら拒絶の言葉を発する。
自分から誘っておいてそれはないだろう?
精液を飲み下しセックスを求めたのはお前だろう?
と言ってやりたいがこちらも余裕がない。
もう一度出しておかないともちそうにない。
「ン!ン!ンンッ!と、溶ける!ペニス溶け!あッお…おおッ!」
奥に突き入れるほどキツく絡みついてくる。深く突くと拒み、
抜こうとすると未練がましくねっとりと絡みついてくる。
これが女の人…気持ちすぎる。 整備長も、隊長もこの少女のような秘裂を持っているんだ。
突く度に呻きとも鳴きともつかな声を上げ、熟した果実のような香りを振りまく。
「はッはッはッ!さ、最高だよ!君!君の中気持ちよすぎる!」
「やッ!わたし!違ッ…こんなのわたしじゃ!本当のわたしは――」
本当の私?男の剣を受け入れる鞘だろ?これで童貞卒業だ。
もう同期生にバカにされないですむ。
貧相な身体の同期生とヤッたあいつも、娼婦で卒業したあいつも、
どいつもこいつも見返す事ができる。こんな美少女で卒業した奴はいない。
「や…もう…もうやめて!うッううッ…何で…どうして…こんなのいやぁ!」
少女はすすり泣き始めた。これも演技なのか?まぁいい。
突き上げる度に上下に振れる乳房。
こんな乳の持ち主で未だかつて見たことがない。
隊長もかなりの巨乳だかこれはもう別格だ。
「痛い」「やめて」「いや」などと花びらのような唇から発せられたら逆に興奮する。
僕はその爆乳に顔を埋め、射精時に逃れられないように密着した。
ああッ…の、昇ってきた!自慰は射精した精液の処理に困るが、今回は違う。
中で出す。妊娠とかそんなことはどうでもいい。どうせ避妊薬をのんでいるだろうし
構いやしない。グググッとペニスを駆け上ってくる射精の前兆がいつもの倍だ。
「おッ…うッ!で、出ッ!ふ…う!」
僕の呻きに目を見開いた美女は絶叫した。 「ダメッ!中に出さないで!に、妊娠しちゃう!お、お願いだからやめてえええ!」
半狂乱になって僕を引き剥がそうとするが、もう止まらなかった。
最奥まで埋め込んだペニスの先端がグワッと膨らみ、熱い体内で爆発した。
「あ、ああッ…ああ!いやああああッ!」
少女はビクンビクンと背を震わせ、張り裂けるような声をあげた。
「おッ…おおッ!…うおッ!」
鈴口を引き裂くような射精に僕は歯を食いしばりながら、少女の柔らかくて
盛り上がった丸い尻肉に指を食い込ませて二度、三度の射精のタイミングに合わせて
ペニスを突き入れる。少女の乳の谷間に顔を埋めて、その甘美な芳香を胸いっぱいに
吸いながら残りを全て吐き出すまで腰を振り、密着し続けた。
「うッ…ううッ…出さないで…て…妊娠…って…言ったのに…」
注がれる度に打ち震える少女の体温を感じながら僕は果てた。
END
設定をお借りした作者さんありがとうございました。 ISAPとゴミクズファンネルどもー!
帰ってきてくれー! 新年あけましておめでとうございます。本年も懲りずにフェニックステイルを投下して参りますので、引き続きよろしくお願いいたします。
今回から新章突入ですが、相変わらずエロはありません。悪しからずご了承ください。 『長々距離レーザー通信、接続状況最終確認――導通及び感明良し』
地球を取り巻く広大な宇宙空間に、幾重もの中継を経たレーザー通信の回線が繋がる。月の傍らから地球の反対側へ、ラグランジュ点からラグランジュ点へと遠い、遠い距離を隔てて、電気信号が走り抜けていく。
ノイズ混じりに画面が開いた。高級士官用執務室が映し出される。画面の下端に小さく"Side 7 : Green Noir 2"の表示。
中央の席に略式軍帽を被った赤い眼鏡の男、そして傍らに髭の参謀将校が立っているのを確かめると、若い女の声が議事を淡々と告げはじめた。
『グリーンノア2の皆様、おはようございます。それではこれより新サイド4宙域における過去一週間の状況に関して、サイド4駐留軍《P-04》基地より、最新の連絡を実施いたします』
画面が切り替わる。最初に像を結んだのは、宇宙を行く艨艟の静止画像。暗礁宙域を背にしたサラミス改級巡洋艦だ。周囲には地球連邦軍の量産型MS、RGM-79R《ジムU》が数機。画面の片隅に小窓が開いて航路図を示す。
『2月25日。新サイド4駐留艦隊第441戦隊所属の巡洋艦《アバリス》は、同暗礁宙域外縁部を平常通りに哨戒任務中のところ、
同宙域深部を拠点に活動する大規模ジオン残党組織《ルスラン・フリート》配下と思われるMS小隊に襲撃されました』
同時に『参考資料』と題された数枚の静止画像が展開する。旧ジオン公国軍の量産型重MS、MS-14A《ゲルググ》三機。それぞれの両肩にはそれぞれ独特のチャイニーズ・キャラクターが一字ずつ。
『奇襲を受けて展開したジムU四機のMS隊を殲滅され、アバリスも轟沈しました。
同じく近傍宙域で哨戒任務に当たっていた第223戦隊所属の同級巡洋艦《トラキア》がMS隊を緊急発進させながら駆けつけたものの、敵MS隊は捕捉出来ず追撃を断念。
周辺宙域を捜索し生存者一名を救助した後、トラキアは哨戒任務に復帰しました』
いくつもの中継点を経たレーザー通信の彼方、オーディエンスの男たちから含み笑いが漏れた。
『ふん。たかがゲルググ三機相手に、MS四機とサラミス一隻が手も足も出ずに丸ごとか。ずいぶんと脆いものだな』
『まあまあ大佐。一般部隊の雑兵など、所詮こんなものでありましょう』
ブリーフィングを受ける男たちが尊大に声を震わせて鼻で笑う。だがブリーファーの傍らに控える二人の将官は、まったく意に介していない。若い女性士官はプレゼンテーションをただ淡々と進めていく。
『続きまして翌2月26日。《P-04》への航路を取っていた民間貨物船《リバティ115》が、ジオン残党勢力MS隊の襲撃を受けました。このMS隊は25日にアバリスを襲撃したものとは別の部隊です』
同じく記録映像が展開する。今度はMS-06F《ザクU》、MS-09R《リック・ドム》、MS-21C《ドラッツェ》が各一機ずつ画面に躍る。
しかしよく見てみれば、どの機体も一年戦争やデラーズ紛争の当時そのままの機体ではないと分かる。肩部サブカメラやスラスター類に、増設強化などの改修部分が確認できた。
それら改良型のジオンMS群に続いて、こちらは一年戦争当時そのまま――いや、むしろ当時よりも武装を弱体化させたと見える、RGM-79A《ジム》やRB-79《ボール》が姿を現す。
両者のアイコンが宙域モデル図の中を泳ぎ、接触して交戦を開始した。
『リバティ115からは、同乗の民間警備会社MS隊が展開し応戦開始。同時に救難信号が発信されました』
『民間警備会社? ――ああ。ヴィック・ウェリントンの系列か』
『近傍宙域を航行中の巡洋艦トラキアがこれを傍受し、再び即応。現場へ急行するとともにMS隊を緊急発進させ、リバティ115へ取り付かれる前に交戦開始。
ジオン残党MS隊を撃破し無力化し、さらに全機の鹵獲に成功しました。が――』
サラミス改級巡洋艦のアイコンから伸びたジムU四機が、ザクUとリック・ドム、ドラッツェの三機編隊と交戦し、撃破する。だが、そこへ横合いから艦砲射撃の閃光が走った。
『ここで介入してきたのが、環月方面軍所属を名乗る新型戦艦《ジャカルタ》です』
今までの画像と異なり、不自然なほどに画素の粗い写真が写し出される。
主推進器を艦体後部両舷で左右に分離させながら搭載した、地球連邦軍系の直線が目立つ意匠の新型宇宙戦艦。
その左右に伸びた長大なMSカタパルトから出撃してくるのは、RGM-79C《ジム改》に似た、緑色に塗装された胴体部をはじめとする機体全体を重厚化させているジム系MSだった。
量感を除けばRGM-79CR《ジム改高機動型》のように見えなくもないが、画像が今までのジオン系MSを写したそれと異なり細部が粗いため、厳密な判定は難しい。 そしてそんな低画質の画像でも、参加者たちの意識を一気に引きつけるには十分だった。
『これが、――《エゥーゴ》めらの新型機か』
そのとき初めて地球を挟んだ反対側から、低い唸りと忌々しげな重い吐息が漏れた。ブリーファーはそれも無視して、なお淡々と続けていく。
『ジャカルタ艦長はミノフスキー粒子散布と電子戦を並行し、宙域内の無線通信を封鎖。そのうえでジオン残党組織による月でのテロ計画対処を理由に、トラキア隊が鹵獲したMS隊の即時引き渡しを要求してきました。
しかしトラキア艦長はこれを拒否し、鹵獲機を収容しての離脱を企図。一触即発の緊張が続く中、突如『機体トラブル』を理由にジャカルタMS隊の一部がトラキアMS隊を襲撃しました』
連邦軍のジムUとエゥーゴの新型ジム、両者が激しく入り乱れる。それでもエゥーゴ機はビームライフルなどの武装は使わず、あくまで体当たりやシールドの打突のみを武器に執拗に絡んでくる。
その機体のパワーは明らかにジムUを圧倒していた。
『小競り合いとなってトラキア隊は一機が小破するも、反撃でジャカルタ隊の一機を撃墜。
しかしジャカルタ隊はこの混乱の隙を突いて、鹵獲されたジオン残党MSをパイロットごとすべて奪取することに成功。この段階で両者は離脱し、ジャカルタは暗礁宙域内へ姿を消しました』
『はっ。なんと無様な……!』
髭をたくわえた中年の参謀少佐が、地球の向こうで低く罵る。やはりそこにも今までにない強い感情が滲んでいた。
『エゥーゴの尻尾を掴む機会を、よくもむざむざと――しかしさっきからたびたび名前の出てくる、このトラキアとかいう艦は何だ?
ジオン残党ともエゥーゴともろくに戦いもせず、すぐに引き下がってばかりではないか! 敢闘精神がまったく足りておらん――まったく、これだから一般部隊は!』
『続いて日を改め2月28日』
傍らに座る女性将官に顎で示され、ブリーファーは何か絡もうとしてきた彼を強引に無視して続けた。
『第223戦隊旗艦を務める巡洋艦《マカッサル》と駆逐艦《アルマーズ》が暗礁宙域を哨戒中のところ、民間払い下げのコロンブス級輸送艦らしき不審船を発見』
画面が切り替わる。新たにサラミス改級駆逐艦に追われるコロンブス級輸送艦、そしてその前方に潜んで待ちかまえていたサラミス改級巡洋艦が現れた。
『不審船は追跡するアルマーズからの停船命令に従わず強行突破を試みたため、戦隊は前方に待ち構えるかたちで布陣したマカッサルからMS隊を展開。これに対し不審船もMS隊を出撃させ、MS戦となりました』
巡洋艦からRMS-117《ガルバルディβ》二機とRMS-106《ハイザック》四機が出撃し、不審船から来るザクU三機と激突する。
機体は旧式で数も劣勢のザクU隊は、しかし正面に展開するガルバルディβとハイザックのMS隊を次々に狙撃し、ついには一方的にすべてを撃破してのけた。
『たかがザク相手に……なんと不甲斐ない』
『はっ。新サイド4のMS隊はデブリ掃除のし過ぎで、肝心の戦い方を忘れたのではないのか?』
冒頭のアバリス隊に続き、またしても旧型機を操るジオン残党軍に手玉に取られる連邦軍部隊に、男たちが呆れきった声を上げる。だが画面に映し出された実機の戦闘記録映像と女の挟んだ解説が、彼らを再び緊張に引き戻す。
『敵MS隊はMSの通常の有効射程を遙かに越える超長距離から、精密狙撃を仕掛けてきました。ここで観測された狙撃距離と命中精度及び射撃速度は、一年戦争時に記録されたアムロ・レイ大尉の数値を大きく上回ります』
『なっ』
『――強力なニュータイプ、だと言うのか……? いや、しかし。よく見ればこのザクの狙撃は機体の手足を掠めるばかりで、まるで直撃出来ておらんではないか。アムロ・レイなら、すべて一撃で仕留めておる』
『た、確かに』
彼が言うとおり、なぜか映像の中で次々と狙撃を受けても爆散した機体は一つもない。ブリーファーは特にその件について説明しなかった。
接近戦で六機のMS隊をやはり一機も爆発させずに蹴散らすと、ザクのアイコン群が画面上をサラミス改目掛けて接近していく。
MS隊すべてを失った巡洋艦がそのまま突破されるかと見えたとき、なんと巡洋艦マカッサルは勇敢にも自ら敵前に立ちふさがって反撃する。
その対空砲火がザクU隊を阻止し、あまつさえ超長距離狙撃を連発していた一機を中破させてしまった。
『おお……なんと果敢な』
『ほう、なかなかやるではないか。ふん、しかしこんなもので落とされるようでは、大したニュータイプではなかったようだな』 巡洋艦はそのまま不審船――敵輸送艦と交戦しながら脇から抜けて離脱するが、そこでジオン残党艦へ追いついた後続の駆逐艦から三機のジムUが肉薄する。
MS戦が発生したが、ニュータイプと思しきパイロットのザクを失った不審船MS隊に、先ほど見せた神通力じみた戦闘力はもはや無かった。ザクUがまた一機中破する。
『敵MS隊はこの戦闘において、不可解なほど多量の照明弾を発射していました。これは救援要請の信号でもあったらしく、暗礁宙域深部からは多数のジオン残党増援部隊が次々と出現してきます』
ブリーファーが言うが早いか、画面の端から三機のゲルググが出現し、交戦中のジムUと生き残りのハイザックを一機ずつ撃墜する。さらにコムサイ改級揚陸艇二隻に搭載されて、リック・ドム六機が戦場に到着。
形勢は逆転した。ジオン残党軍はそのまま圧倒的な戦力差で、戦場に残った駆逐艦一隻と二機のジムUを殲滅していくかに見えた。
『これに対し、我が軍も近傍宙域を航行中の巡洋艦トラキアが照明弾と戦闘光を確認、直ちに反応していました。
まずトラキアに同行していたP-04駐留部隊所属のMS隊が、パブリク改級哨戒艇で先行し接敵。次いで本隊も到着します』
RGM-79GS《ジム・コマンド》――いやRGM-79GSR《ゲシュレイ》と表示された機体がもはやMAじみた高速で、ジオンMS隊の脇腹へ横槍を入れるかたちで突きかかる。
さらにRGC-80SR《ジム・キャノン改》が、ゲシュレイの突撃と巧みに連携した砲撃戦を展開。瞬く間にリック・ドム二機を撃墜し、連邦軍残存戦力は反撃に転じる。
そして到着したトラキアが混戦のさなかへ艦砲斉射を放つと、リック・ドム隊は一機を残して全滅した。トラキアMS隊のジムU四機が戦線に参加したことで、戦勢は再び逆転したかに見える。
だがジオン側もさらにMS-18E《ケンプファー》とMS-06FZ《ザク改》、ドラッツェから成る六機編隊が戦闘加入。
増援第三波でジオン側が盛り返して互角の戦闘が展開されるも、連邦軍はなおもじりじりと押し込み、コムサイ改二隻とゲルググ一機を撃墜する。
『ジオン側も増援部隊の第三波を投入し、戦闘は再び膠着――そしてここで再び、戦艦ジャカルタは現れました』
戦闘宙域へ侵入してきた戦艦ジャカルタは、露骨に連邦軍部隊を狙う艦砲射撃を放った。続いて多数のMS隊を発進させる。最初の接触で出てきたジム改もどきだけではない。
今度はどこかリック・ドムに似た――しかし、全く異なる印象を持った重MSが先頭に立って突進してくる。戦場の均衡は一気に崩れた。
『――これもエゥーゴの新型か……? ええい、なぜここだけ画素がこうも粗い……』
『戦艦ジャカルタの介入を受け、この時点で戦闘宙域の残存部隊指揮官となっていたトラキア艦長は、全軍に離脱を下命。ジオン残党軍も同時に離脱を開始しました』
トラキア隊のジムUとエゥーゴのリック・ドムもどきが急接近し、激突して一対一で火花を散らす。両者はそのまま母艦へ帰投し、その戦闘を最後に二つの艦隊は離れていった。
『最終段階においてトラキアMS隊とジャカルタMS隊による偶発的交戦こそ発生したものの、双方に大きな損害は無し。両者はそのまま接触を断って離脱しました。
以降、第223戦隊は部隊を再編し、P-04への前進を再開――現時点までの状況報告は以上です』
『ふん、田舎部隊のジムUと互角か』
『しょせんは民兵。このリック・ドムもどきの新型も、大したことはなさそうですな』
ジオン残党軍MS隊へ守られながら宙域深部へ後退する輸送艦へと、エゥーゴ部隊はまっすぐに接近していく。
プレゼンテーションはそこで終了した。画面が閉じる。
代わって大型モニターは再び、映像会議の参加者たちを映し出す。
地球と月の狭間に浮かぶ、新サイド4のL1暗礁宙域。
地球を挟んだ月の反対側、サイド7のL3宙域。
L1――新サイド4復興再開発拠点《P-04》からの参加者は、ブリーファーを除いて二人。
一人はP-04駐留部隊司令の男性准将。壮年のアジア系で、穏やかな微笑みを浮かべている。
そこに異質な点があるとするなら、それは異常なまでに筋骨を隆起させた屈強な体格と、その顔面を非人間的なまでに歪める深く大きな傷跡だった。殊に右目の周辺からは肉が大きく抉れ、眼球がほぼ露出していた。
そしてもう一人はすでに相当な高齢に達した白髪の、ヨーロッパ系の女性准将。肩書きは新サイド4駐留艦隊副司令。姿勢と眼光は確かだが、少なくとも容姿を見る限り、生半可な年齢ではない。
もはや軍人としての現役など、何十年も前に勇退していて然るべきと見えた。 そして、L3――サイド7《グリーン・オアシス2》に築かれた地球連邦軍の新たな軍事拠点から参加するのは、禿頭に独特の赤い眼鏡を掛けた大柄な大佐と、傍らに立つ髭の少佐の二人。
片や准将二人、片や佐官二人。両者の階級差は明らかだったが、それでもL3の佐官二人は鷹揚な構えを崩すことはない。
理由は彼らの制服にあった。
地球連邦軍制服に独自の意匠を加えた濃紺の制服は、ジオン残党組織の掃討を目的として独自の予算と強権を与えられた、地球連邦軍特殊部隊《ティターンズ》のものであった。
そしてティターンズ所属将兵はその他の地球連邦軍一般部隊の将兵に対し、一から二階級上の扱いを受ける権限を有する。
つまり、この赤眼鏡を掛けた禿頭の大佐は、その二階級上――准将を超えた少将としての格を有することになるのだ。
まして彼がそのティターンズにあって、実働部隊における事実上の最高指揮官の地位にあるのであれば、本来の上官たちを歯牙にも掛けないその傲慢さも、実にもっともなことではあった。
「ふん、なるほど。ユン准将、ウォレン准将。貴官らからの情報提供には感謝しよう。
エゥーゴ艦ジャカルタの追撃部隊には、すでに一個戦隊を手配した。間もなくコンペイトウから出撃する――彼らへの拠点の提供と、道案内をよろしく頼む」
バスク・オム大佐が鷹揚に呟くと傍らの参謀、ジャマイカン・ダニンガン少佐が端末を操作し、派遣部隊の編成表を表示した。
旗艦としてティターンズ自慢の新鋭重巡洋艦アレキサンドリア級一隻に、護衛のサラミス改級巡洋艦が二隻と、艦載MSが合計二十四機。ティターンズにおける標準的な戦闘単位である。
だがそれを見て、凶相のP-04駐留部隊司令――ユン・ソギル准将はほんの少し、困ったように眉を顰めた。
『なあ、バスク君。ティターンズから援軍を寄越してくれる、というのはありがたい。ありがたいが――ちと、数が少なすぎはせんかね?』
『……少ない、とは?』
バスクの傲慢さなど最初から意にも介していなかったかのように、ソギルは淡々と語りはじめる。
『ふむ。サイド7にあるバスク君のその快適なオフィスからでは、なかなか理解しづらいのかもしれんが。我々の任地である新サイド4は実に混沌としたところでね。
先ほどの流れでも見てもらったように、この辺りにはジオンの残党がずいぶんと多い。しかも最近その動きはどんどん活発化していて、実は一年戦争の頃より増えているんじゃないかと思うぐらいだよ』
はっはっは、と愉快そうにソギルは笑った。顔面が表情筋ごと抉り取られている、その右目だけを除いて。
『このジオン残党、ルスラン・フリートとエゥーゴが連携したのなら、その戦力は生半可なものではない。そこへ本格的に攻撃を仕掛けようというのなら、せめて、この十倍――三十隻は寄越していただきたいな?』
『な、何をバカなっ! 三十隻だと!? 新サイド4駐留艦隊の、全戦力の何倍だと思っているのだ!!』
そこでバスクに代わり、傍らのジャマイカンが口角泡を飛ばして割り込んできた。
二百機以上のMSを抱える三十隻もの大艦隊となれば、昨今拡大著しいティターンズといえど、おいそれと出せるようなものではないのだ。
それほどの大戦力を一方面に抽出してしまえば、それこそ各地のエゥーゴとその予備軍を抑えられなくなるだろう。
やれやれとソギルは溜息混じりに、出来の悪い教え子を相手にするかのように優しく諭す。
『君。暗礁宙域は攻めるに難く、守るに易いのだよ。基本中の基本だ――士官学校で習わなかったのかね?』
『そんなことを言ってはおらん! どんなふざけた丼勘定をすれば、この頭のおかしい戦力要求が出てくるのかと言っている! 山よりでかい猪などおらん。
何がルスラン・フリートだ、過大評価が過ぎる! ギレン親衛隊を基盤とした最大勢力デラーズ・フリートが潰えた今、地球圏のジオン残党などはもはや風前の灯火よ!』
『そう言われてもな。現に我々の正面には、多数の残党軍が出没しておるのだよ。
どう少なく見積もっても百機以上もの、大MS部隊を抱えた連中がな――それと新鋭装備のエゥーゴ戦艦が手を結んだというのなら、こちらも相応の勢力で挑まねば、かえって無用の損害を重ねるばかりではないかね』
『そもそも貴様等が自分の作戦区域にジオン残党どもの跳梁を許しておるから、そこをエゥーゴにつけ込まれたのだろう!
いかなる犠牲を払ってでも、まず貴様等がジオン残党を殲滅して膳立てを整え、そのうえで我らがエゥーゴを叩くのが筋であろうが!!』 『はて? 私の記憶が確かなら、ティターンズはジオン残党の掃討を目的として設立された組織のはず……。
誇り高き地球連邦軍のエリートたる貴官らが、ジオン残党の巣窟たるサイド4を我らのごとき一般部隊に長年預けっぱなしにしたまま、今度はジオン残党ではなくエゥーゴとかいう新参者だけを相手にさせよと主張する……。
何だかこれはずいぶん不思議な話ですな、ウォレン准将?』
ソギルが飄々と水を向けたのは自身の傍らで、不機嫌そうに座ったままの老婆だった。
彼女――ヨランダ・ウォレン准将はすべてを馬鹿にしきったような表情のまま、冷たい瞳でモニターの向こうのティターンズ将校二人を一瞥する。薄く乾いた唇を開いた。
『そうじゃな。三十隻など、とうてい話にならん』
『当然だ。我らティターンズは地球連邦軍最高の精鋭、一般部隊などとは格が違う! 厳しい選抜試験を潜り抜けてきたその精鋭部隊の三隻は、一般部隊の三十隻をも凌駕すると知れ!』
ソギルの非常識な提案が新サイド4側の身内からも却下されたと見て、調子づいたジャマイカンが勢いに乗って畳みかける。
だが、老婆は眉ひとつ動かさずに言葉を継いだ。
『全軍じゃ』
『――は?』
言われた意味がまったく理解できず、ジャマイカン・ダニンガンはただその場で瞳を瞬かせた。
『いま地球圏にあるティターンズの宇宙艦隊、一隻残らず全軍寄越せ。もっとも中身がお前らんところの案山子じゃ百隻あっても正直足らんが、まあそこまでの贅沢は言わん。
弾除けぐらいには使ってやる。ほれ、そこの眼鏡小僧。四の五の言わずにさっさと集めろ。もちろん、お前ら自前の補給艦隊と兵站も込みでな』
『……ティターンズを愚弄するか、……貴様……』
真正面から罵倒されて、バスクは瞬間的に沸騰した。隣に立つジャマイカンが、あまりの殺気に思わずひっと呻いて立ちすくむ。
バスク・オムは『暴力』の本質を知り、そして自在に使いこなす男であった。一年戦争以来の地球連邦軍を飲み込んできた混沌の渦中にあって、この男はその才によって身を立て、這い上がってきたと言っていい。
必要とあらば、バスクはいかに凶悪で非道な暴力の行使にも躊躇しなかった。彼にはそれらを可能とする、人と組織を思うがままに動かす豪腕が備わっている。
その人並みはずれた野生の嗅覚と行動力に導かれて、今日の彼はいまティターンズ実働部隊の事実上の頂点に登り詰めたのだ。
そしてP-04の二人は、そんなバスクの怒りをまったく相手にしていなかった。
ソギルは相変わらずの穏やかな微笑みを浮かべたまま、ヨランダはティターンズの二人を小馬鹿にしきった呆れ顔のまま。
『なにが精鋭じゃ、この阿呆』
そして救いようのない馬鹿者を見下ろす表情で、ヨランダが冷たく言い捨てた。
「お前んとこの案山子、まとめてあいつらに沈められとろうが」
『――何……?』
『ほれ、お前らが月軌道の哨戒に出しとった117戦隊じゃ』
ヨランダが目配せするや、モニターが再び切り替わった。月を背にしたアレキサンドリア級重巡洋艦とサラミス改級巡洋艦を映し出す。ティターンズ艦二隻と、一般部隊のサラミス改が一隻の混成だ。日付は2月22日。
『――まさか、あれは』
はっと息を呑んだジャマイカンをよそに、再び映像が切り替わる。 望遠で捉えられた粗い映像。今度は暗礁宙域で、先ほどのアレキサンドリア級とサラミス改級の戦隊が何者かと交戦している。今度の日付は2月25日――巡洋艦アバリスの撃沈と同日。
冒頭の資料映像でも見えた、ジム改もどきのエゥーゴ機が編隊を組んで迫る。
その編隊が構えた銃口から弾幕じみた圧倒的なビーム連射が放たれるや、棒立ちで反撃を試みた前衛のRMS-106《ハイザック》があっさりと撃ち負けて次々に被弾、無数の光軸に貫かれてひとたまりもなく爆散した。
ティターンズMS隊の戦列が、一方的に蹂躙されながら突き崩されていく。
BR-S85ビームライフルから連射を放って必死に抵抗するRGM-79CR《ジム改高機動型》が、速すぎる敵機の機動へまったく対応できず、コクピットを背後からビームサーベルで串刺しにされた。
リック・ドムもどきの新型に貫かれ、痙攣したように硬直する。その仇を取ろうとするかのように僚機が駆けつけるが、次の瞬間にはまた別のジム系新型と思しき敵からビームライフルを叩き込まれて爆散した。
と、暗礁宙域の奥から光芒が煌めく。艦砲射撃の太く力強い光軸の束が、数本まとめてアレキサンドリア級の艦体中央に吸い込まれた。それだけでティターンズが誇る新鋭重巡は、暗闇に膨れ上がる光熱の泡となって消えた。
瞬く間に旗艦とMS隊のほとんどを失った残りのサラミス改は、必死に急速反転して離脱を試みる。
だが、エゥーゴは逃さない。
多数のジム改高機動型やハイザックを縦横無尽に斬り捨てていたリック・ドム擬きの新型機が、足並みの揃わない弾幕の下をあっさり掻い潜って敵艦へ迫る。
二隻の艦橋を瞬く間にバズーカで爆砕して行き足を止めると、四方八方からエゥーゴのジム隊が放つビームライフルの一斉射撃と艦砲の第二斉射が、サラミス改の二隻をも火球に変えた。
時間にして、わずか三分足らず。
たったそれだけの時間で、ティターンズ第117戦隊は完全に消滅した。そして二十機以上のMSと三隻の巡洋艦を沈めていながら、エゥーゴMS隊はほとんど損害を受けていない。
それは、あまりにも一方的な虐殺だった。
鮮やかすぎる完勝を収めたエゥーゴMS隊は、次々に母艦へ帰投していく――自らの艦砲でも二隻の敵艦を屠った、戦艦ジャカルタへ向けて。
記録映像は、そこで終わった。
『お前らが言う《精鋭》とやらの一個戦隊ごとき、ダミー風船より役に立たんわ』
『そ、そんな……117戦隊が……ま、まさか……しかし、……そんな……』
『ん? まさかお前ら、こいつらがジャカルタ一隻に食われとったことすら知らんかったのか? いやぁ、さすがは精鋭ティターンズ。上が有能だと、部下どももマメに報告する優秀なのが揃っていて羨ましいのう』
数日前に消息を絶った配下の精鋭と自負する戦隊の末路を、予想外の経路から予想外の場所で知らされてジャマイカンは狼狽する。
邪悪に笑うヨランダの傍らで、ほほう、と大きく唸りながら、どうでもいい世間話のように軽い調子でソギルが訊いた。
『フム。ウォレン准将、この映像はどうやって入手されました? 暗礁宙域の全天をカバーする監視網など、貴方の部隊にもまだ無いはずですが――』
『なあに。ま……蛇の道は蛇よ』
――人的諜報網か。
ヨランダ・ウォレン准将。三十年近く前に地球連邦軍を退役し、そして数年前、齢九十を前にしながら准将の階級で現役復帰した老将。
もはや連邦軍にも再任前の彼女を知る者は少ないが、当時の噂の片鱗ぐらいはバスクも耳にしていた。
特殊戦の女帝。
地球圏の各地でくすぶる反地球連邦の火種を、火種のうちに情け容赦なく探り出しては蹂躙し、跡形もなく踏み潰してきた死の部隊を率いた女。
情報戦と諜報戦を自在に操り、ジオン公国台頭前夜まで地球圏の『平和』をほの暗い闇の底から支え続けた、地球連邦暗黒面の生ける伝説。
おそらく彼女は現役復帰後に再建したその情報網で、117戦隊とジャカルタ双方の動向を掴んだ。そこで両者交戦の気配を知るや、配下のMS隊を向かわせたのだ。そして密かに一部始終を撮影させた。
友軍を救援するためではなく、ただ情報を掴ませるためだけに。 ひらり、とヨランダが記憶媒体をその手にかざす。
『この映像、なあ。なんなら儂の伝手で、宇宙軍の全部隊に回覧させてやってもええのだぞ? 何せ貴重な、エゥーゴの脅威と暴虐を伝える資料じゃからなあ。
ククク。これを全軍で共有してやれば、さぞ反エゥーゴ感情が盛り上がろうて』
『ぐう、う……っ!』
きつく歯噛みするバスクを、ヨランダは鼻でせせら笑った。
地球連邦宇宙軍将兵の大半は、地球至上主義を掲げる現政権とティターンズを快く思ってはいない。
地球復興に偏重した政策を取る地球連邦政府によって、大半の宇宙軍部隊は十分な予算を供給されていない。今や将兵への給与遅配すら常態化しつつあるのだ。
そして対照的に優先的な予算配当を受けながら、その特権を享受し濫用するティターンズ将兵は、一般部隊から強烈な反感を集めている。
そんな状況の中、数で勝ったティターンズ部隊がこれほど無惨にエゥーゴによって殲滅される映像などが公開されようものなら、どうなるか。
ティターンズの名誉と威信は完全に失墜し、エゥーゴと連邦軍内部の反ティターンズ分子はいよいよもって勢いづくだろう。
『ティターンズ恐るるに足らず』と見れば、今まで様子見していた部隊までもが雪崩を打って一斉にエゥーゴへ参加してくるかもしれない。
まだ早すぎる。バスクが時間を惜しんで精力的に押し進めてきた数々の施策が実を結び、ティターンズが本当に圧倒的な軍事力を獲得して盤石の支配態勢を確立するまでには、まだもう少しの時間が必要だ。
今の時点でそうなってしまえば、ティターンズは――そして今度こそ地球圏は、壊れる。
『とはいえ、まあ儂も鬼ではない。お前らもいま抱え込んどる案山子どもを、今の布陣のまま雑魚の水準まで鍛え直す時間が欲しいじゃろう。
儂らの方も、いちいち案山子のオムツをせっせと換えて回っていられるほど暇でもないしな。それで、じゃ』
ヨランダの瞳が、不意に昏い光を帯びてバスクを嘗めた。
『お前らが丸め込んどる、《コンペイトウ》のニュータイプ研究所な。あそこの部隊で手を打ってやろう。ずいぶん出来のいい強化人間が二人と、――あるんじゃろ? そこにも新型の《ガンダム》が』
『……《ヘイズル》はガンダムではない』
『似たようなもんじゃろうが。ええから、四の五の言わずにさっさと寄越せ――出し惜しみは為にならんぞ』
厳重に秘匿していたはずの研究機関の存在と、ティターンズによる取り込み交渉の進捗、そしてその内実を当然のように言い当てられて、もはやバスクはじりじりと後ずさる以外になかった。
完全に圧倒されたバスクを、嘗めきった強者の圧力でヨランダが押し切る。
『しかしお前ら、本当にそこいらじゅうで余計な墓穴ばっかり掘ってくれとるのう。
ああ、そうそう。ジャミトフ・ハイマン。あいつな、この前ちょっと茶飲み相手に映像会議で呼び出してやったら、お前が宇宙でやらかしとるポカはロクに知らんかったぞ?』
『――ジャミトフ、大将……?』
ティターンズ総帥、ジャミトフ・ハイマン大将。
四年前のデラーズ紛争とコロニー落下『事故』に際し、連邦軍内部でその権力を劇的に拡大してティターンズを築き上げた男。
自ら地球連邦議会にも議席を持つジャミトフは、今や軍と政府の両面を席巻するほどの絶大な政治力を縦横に振るって、地球からその権勢を支え続けている。
ジャミトフからティターンズの実働部隊を宇宙で預かるバスクは、今まで数々の『独断専行』を繰り返してきた。中には大きな成果を挙げたものも、露見すれば政治的に致命傷となりかねないものも含まれている。
そして上官たるジャミトフが必ずしもそれらの行いを肯定していないことは、誰よりもバスク自身が知悉している。
バスク・オムとジャミトフ・ハイマン――互いの存在を不可欠とする両者は、しかし同時に微妙な緊張状態にあった。 『あの鷲鼻のクソガキ。多少出世したぐらいで今はずいぶん偉そうにしとるが、士官学校の営庭で儂に蹴飛ばされてゲロと鼻水垂れ流しとった頃から何も変わっとらんなアイツ。
ロクに部下の面倒も見きれんくせに、青臭いガキの屁理屈ばっかり捏ねくりまわしおって。五十年経って未だにアレでは、やれやれ、地球連邦軍の行く末も暗いわ』
『ウォレン准将。いくら昔の教え子でも、今は大将閣下であられますよ。そのような物言いは、いかがなものかと』
『クソガキは大将閣下でもクソガキじゃ。大体あの鷲鼻小僧、いつになったら菓子折提げて儂のところへ挨拶に来るんじゃ? おい、そこのポンコツ眼鏡。
いつまでも大恩師様に不義理な真似をさらしとると、キリマンジャロの万年雪に鼻から突き刺して逆さに埋めるぞ――あと仕事はきっちりやれ、とジャミトフの小僧に伝えろ。それからチョビ髭』
『はっ!?』
ティターンズとバスクを愚弄するどころか、総帥ジャミトフ・ハイマン大将までもをクソガキ呼ばわりし、そのうえ直接のパイプを示唆してのけた老将から、いきなり話を振られてジャマイカンはびくりと背筋を震わせた。
もはや連邦宇宙軍の全一般部隊に情報がどうの、という話だけでは済まない。この老婆の前で下手をすれば、すべての情報が直接ジャミトフの耳へ入れられてしまうのだ。
『コンペイトウからのニタ研部隊派遣の話は、今後お前が取り仕切って進めろ。部隊は今週じゅうにP-04へ寄越せ。到着が少しでも遅れるようなら、……分かっとるな?』
『そ、そこは、み、見積もりを……見積もりを、出させていただけませんと……』
『儂はお前の意見なぞ聞いておらん。儂が出来ると言うたら、出来るのじゃ。今の仕事が向いておらんようなら……そうじゃな。
静かで涼しいアステロイドベルトで、石ころの数を数える仕事を手配してやってもええのだぞ? 分かったら、やれ。……分かったな?』
『はっ、……ははぁっ!!』
完全に傍らのバスクの頭越しで命じられながら、絶大な圧力に耐えきれずにジャマイカンは腰を折った。もはやバスクもそれを制止しようとしない。
『ほほう、噂の人工ニュータイプ部隊ですか? それは心強い援軍ですな』
きつく歯噛みしながらもヨランダに抑え込まれたままのバスクをよそに、微笑みをまったく崩していないソギルが話を継いだ。
『おう。各地のニタ研はかなりの失敗続きらしいが、コンペイトウの奴はなかなかの仕上がりだと聞いておるぞ。のう、ソギル――これはお前のところの子飼いどもも、うかうかしてはおられんかもしれんなぁ?』
『ははは。新世代の精鋭諸君の足を引っ張ることがないよう、今後とも指導に全力を尽くしましょう』
傍らのソギルを見るヨランダの瞳にそのとき一瞬、剣呑な殺気が宿った。だがソギルは穏やかに微笑んだまま、モニターの向こうでぎりぎりときつく歯噛みするバスクへと視線を戻す。
『バスク君。先ほどはウォレン准将がいろいろと厳しい言葉も使われたが、どうか気を悪くしないでほしい。
ティターンズの諸君と我々は、ともに地球連邦の旗の下で、地球圏の安定と平和を願う同志だ。私とて、バスク君の置かれた難しい立場は理解しているつもりなのだよ』
傲岸不遜の極みからバスクらティターンズを嘲弄してのけた、ヨランダに対する憤怒の情に満ち満ちたバスクの意図を、勝手に読み替えながらソギルが続ける。
『そして君が戦場へ直接率いたわけではないとはいえ、数百人もの部下を失った君の今の気持ちもよく分かるつもりだ。心中を察しよう。彼らの霊の安らかならんことを』
不意に微笑みを消し、代わってソギルは神妙な表情を浮かべた。
だが今のバスクは多くの部下を失った悲しみではなく、自分の立場を危うくしかねない脅迫材料をヨランダに握らせてしまった無能な部下たちへの怒りと屈辱に震えている。
そんなバスクの内心を知ってか知らずか、ソギルは淡々と言葉を継いで尋ねた。
『だが最終的に指揮官たるものが、志半ばで倒れた兵たちに報いる術はひとつだ。……分かるかね?』
『……最終的に敵を完全に打ち破って抵抗の意志を奪い、決定的な不動の勝利を掴み取ることだろう』
『ふうむ。それもある。それもあるが……私の答えは、もっと単純だ』 『何……?』
戸惑うバスクを前に、ソギルはふっと破顔した。
『敵を殺し尽くすこと。皆殺しにすること。根絶やしにすること』
にい、と口角を釣り上げてソギルは笑う。
バスクはそれだけで、背中にナイフの刃を押し当てられたように硬直する。
それは間違いようのない、本物の悪魔の笑顔だった。
『戦いの本質とは、これに尽きる。一年戦争の最初の半月で、私はそれを身を以て学んだ。バスク君……私はね、君を本当に高く評価しているのだよ。ほら。サイド1の30バンチ――』
それは一昨年、『伝染病の蔓延』によって住民全員が死滅したコロニーだ。公式にはそう発表されている。
そしてティターンズとバスクにとっては、その背後に潜む真実を決して知られてはならない忌み名でもあった。
その名をたやすく口に出しながら、ソギルは至福の笑みを浮かべている。
『私はああいう、思い切りのいい仕事が出来る指揮官を探していたんだよ。ただ……君にはまだ、迷いが見える。
慎重になりすぎて、腰が引けてしまっている。せっかくいい素質を持っているのに、勿体ない――それでは、まだ、ダメだ』
苦笑しながら、すう、とソギルは片手を上げた。
『ダメだよ、君。もっと大勢、殺さなくては』
『…………ひっ……』
カメラとモニターと七十五万キロメートルの距離を超えて、その手がまっすぐ伸びてくる。
冷たい手だ。
生者の温もりを持たない、そして一人のものではあり得ない、信じられないほど大勢の冷たい手。
それら無数の気配が自らの喉頸に掛けられる感触を、はっきりとバスクは感じた。
ガタン、と不意にバスクの背後で椅子が音を立てる。無意識のうちにバスクは椅子を引いて数十センチの距離を逃れ、その背を壁に押しつけていたのだ。
その音が響いたときには、モニターに映るソギルの手は元の位置まで戻っていた。表情も元通りの穏やかな微笑みを浮かべている。
『――バスク君。ティターンズの居心地が悪くなったら、いつでも私のところに来なさい。座り心地のいい椅子を用意して、君をもっと、もっと強くなれるように鍛えてあげよう』
『……か、……考えて、おこう……』
バスクを誘う悪魔の手招き。ヨランダと女性士官は冷たく乾いた瞳で、それを横から見つめている。
『それとな、バスク君――身辺に気をつけたまえ』
『身辺……?』
訝しがるバスクに、うむ、とソギルは力強く頷いた。
『エゥーゴはついに戦力を整え、本格的に動きはじめた。新サイド4のジャカルタは陽動、という可能性もある。私がエゥーゴの立場なら――まず最初に君の本拠、グリーンノアを狙う』
『何を馬鹿なッ!!』
呪いのようだった何ものかが解けたことを確かめるかのように、バスクは力強く立ち上がって猛然と叫んだ。
『グリーンノアの守りは鉄壁だ! ネズミ一匹入り込ませはせん。エゥーゴがどれほどの艦隊を押し立ててこようが、すべて返り討ちにしてくれるわ!』
『ほう、それは頼もしいことだ。私の杞憂であることを祈ろう。しかし、エゥーゴは――案外もう、すぐ近くにまで来ているかもしれんよ』
にい、とソギルが笑った。
その凶相の迫力にティターンズの二人が気圧される中、ヨランダが退屈そうに時計を眺めて呟いた。
『さて、……いい時間じゃな。おいチョビ髭。コンペイトウの件、しっかり働けよ』
『は……は、ははっ!!』
『それでは、今回の映像会議を終了いたします。ありがとうございました』
ヨランダがジャマイカンを睨みつけると、すべてを無言で見守っていたブリーファーの女性士官の言葉を最後に、通信画面は閉じた。 モニターが消えたグリーンノア2の執務室には、奇妙な静寂だけが残った。静かに震えるバスクの背中に、ジャマイカンが何か声を掛けようとして果たせず狼狽する。
「た、大佐――ひいっ!」
「ぬううっ!!」
ジャマイカンの前で唐突に、執務机の天板が陥没した。振り上げられたバスクの豪腕が破壊したのだ。
バスク・オムの内心はなお、それだけでは収まりきらない激情の渦に満ち満ちていた。
「ルウムの、……亡霊どもがぁ……っ!!」
これほどまでの屈辱と憤怒は四年前、デラーズ紛争の最終局面でソーラ・レイUの照射を阻止され、北米大陸へのコロニー落着を許した時以来だ。
あのときの彼は怒りの感情に任せたソーラ・レイUの第二射で、その原因となった敵巨大MAと敵対派閥のMAを、自らの艦隊ごと薙ぎ払った。
だが、今の彼に同じことは出来ない。屈辱と憤怒の他にもう一つ別の強烈な感情を、彼は深々と刻みつけられている。
――恐怖。
まったく別々の手段で彼に今回の激情をもたらした新サイド4の准将二人は、あまりにも強大すぎた。
バスク・オムは、暴力を知る男である。
暴力で他者を屈服させる術に長けていたからこそ、彼は今のこの地位まで登り詰めることが出来た。そして同時にそれゆえ、彼は暴力の臭いに人一倍敏感である。
あの異常者たちには、いま仕掛けても勝てない――彼に残された野生の本能がそう看破し、彼の軽挙を必死に制止したのだ。
だが、とバスクは思う。それも長くは続かない。いや、続かせない。
今後すべての連邦軍MSの新基準となる、RX-178《ガンダムMkU》計画も完成間近。最新技術の最先端として研究成果を挙げ続ける、各地のニタ研も傘下に入りつつある。ジオン共和国との協力態勢も好調だ。
そしてルナツーとグリプス、ア・バオア・クーを一カ所に集中させて難攻不落の宇宙拠点とする『ゼダンの門』構想も動き始めた。その中核となるべき、グリーンノア2それ自体を用いた最終兵器の建設準備も――。
あと少し。
あと少しの時を稼ぐことができれば、ティターンズは地球圏に盤石の安定を築くことが出来るのだ。たかが旧式兵器で武装した辺境部隊など、その時になればどうにでも出来る。
そして同時に彼らは今の連邦宇宙軍では数少ない、決してエゥーゴには付かないと明言できる勢力の一つでもある。
そう――あの連中がエゥーゴに付くことだけは、ない。それだけは信用できた。そして現状では、それだけで十分なのだった。
まずはエゥーゴを潰し、連邦軍全体を呑み込む。ジャミトフも、いずれ――。
その時までは、ひたすら前に進み続ける。久々に味わわせられたこの怒りは、そのための力とすることにしよう。
「……ビダン大尉を呼べ。グリーンノア1の、ガンダムMkUの現況を知りたい」
「はっ!」
この激情を忘れるためには、また再び膨大な仕事量の中へと自らを埋没させていくしかない。
上官が落ち着きを取り戻したのを見るや、ジャマイカンは安堵とともに慌てて執務室を立ち去った。
血の巡りが止まって白くなるほど、きつく握りしめていた拳をバスクは開く。掌へ食い込んだ爪痕から、赤い血がゆっくりと溢れ出てくる。
「くそがぁっ!!」
バスクの振り上げた渾身の鉄拳が、今度こそ彼の執務机を完全に破壊した。 閉鎖型コロニー、グリーンノア2と開放型のグリーンノア1、そして宇宙要塞ルナツーが形成するサイド7。
その防空圏内に今、一隻の白い戦闘艦が侵入している。
かつて一年戦争で活躍した伝説の強襲揚陸艦《ホワイトベース》を思わせつつ、さらに洗練されたシルエットを持つ白亜の新造艦。
その艦体左右へ張り出したMSカタパルトで前傾姿勢を取っている赤い重MSが、新サイド4からティターンズへと粗い画像で提供された機体と同一のものであることを、まだこの時点で知る者はない。
『クワトロ・バジーナ。リック・ディアス、出る!』
電磁カタパルトが叩き出す強烈な加速とともに、重厚な巨体に似合わぬ軽快さでその機体は舞い上がった。後方へ付く黒い塗装の同型機二機を従え、彼らの三機編隊はグリーンノア2を目指して無尽の宇宙を進行していく。
時にU.C.0087、3月2日。
宇宙世紀の歴史は、この日をグリプス戦役開戦の日として記録している。 今回はここまでです。
昨年は>>129で三次創作まで書いていただき、本当にありがとうございました!
こちらも次回こそエロ場面をお届けいたします。
それでは本年も、引き続きよろしくお願いいたします。 フェニックステイル26話の冒頭部分を投下します。
久方ぶりにエロ入りますが、いかんせん内容がだいぶアレなので、許せる方は笑って許してください。 「キャアアアアアアーーーッ!!」
反地球連邦組織エゥーゴが誇る最新鋭の航宙戦闘艦、アイリッシュ級戦艦《ジャカルタ》。その艦内通路の一角に今、絹を裂くような娘の悲鳴が響きわたっていた。
「い、イヤーッ! け、ケダモノーッ!! ああ、誰か! 犯されてしまいますわ! ひとたまりもなく孕ませられてしまいますわ!! 誰か、誰か助けてくださいましいいい〜〜〜ッ!」
「やかましいわ!! さっきから延々と、エロい雌の身体なんぞ見せつけおって! 戦場で雄を誘う喜びを知りおって!!」
リフトグリップを頼りに無重力の艦内通路を必死に逃げ惑うのは、柔らかな栗色の髪をポニーテールにまとめた小柄な童顔の美少女が一人。若くみずみずしい四肢を、袖のないエゥーゴ制服でほぼ剥き出しにしている。
その体躯はまるでジュニアハイかエレメンタリーの学生かと見間違うほどに小さい。しかし同時にその胸元や腰つきは、豊かに成熟した女の肉感を伴っている。
ノースリーブの脇からちらつく白いブラジャーや、同じく白のサイハイソックスとミニスカートのかすかな隙間から覗く太腿の眩しさが、アンバランスで背徳的な魅力を醸し出していた。
そして必死に逃げる彼女へと通路内を追いすがるのは、濃緑色の影――ジオン公国軍の一般的なパイロットスーツ。髭をたくわえた禿頭の巨漢が、もはや狂獣じみた異様な光をその双眸に宿らせながら迫っていた。
速い。
通路内の壁や天井、リフトグリップまでをも自在に蹴飛ばして三角跳びの要領で迫る巨漢の動きは、まさに彗星がごとし。もはや人間離れした通常の三倍以上の速度で巨漢は迫り、逃げる美少女の背中へと距離を詰めて肉薄する。
「ハッ!?」
少女が振り向いて背後を確認しようとしたとき、そこに男の姿はない。その瞬間にはもう、男は少女の眼前へ瞬間移動したかのように回り込んでいたのだ。
敵戦艦のブリッジ前へ迫ったザクのモノアイのごとく、巨漢の眼光が異様に輝く。
「はッ、速いッ!?」
「なんじゃそのエロ制服はっ!? 軍艦の中でパンチラブラチラ見せつけとるような痴女はなぁ!! こうじゃッ!!」
「イヤーーーッ!!」
禿頭の巨漢がその豪腕を振り上げ、そして不可視の速度で振り下ろした。
それだけで童顔の美少女がみずみずしい肢体を包んでいた、ノースリーブのエゥーゴ制服は破り裂かれて消し飛ぶ。
ブラジャーまでもが制服もろとも千切れ飛び、幼い顔立ちや小柄さと不釣り合いにたっぷりと実った乳房が二つ暴れて弾け飛ぶ。少女の肌に残ったエゥーゴ制服と下着の切れ端も、濡れ紙のように素手でことごとく破り捨てられた。
だが白く柔らかな餅のごとき二つの乳房の頂に、桜色の可憐な乳輪を曝させられても、少女に隠すすべはない。
「ああ……! いやぁ、お願い、離してぇ……!」
巨漢は制服の切れ端を少女の両手首へ巻き付け、さらに壁面構造物に巻き付けて拘束したのだ。さらに自らの巨体で彼女の両足を押し開きながら、そのまま床へ押しつけた。
そして裸身に剥かれた少女の眼前に、血管浮き立つグロテスクな黒の肉棒が天突くようにボロンッとそびえ立つ。
「あ、ああ! く、黒い、大きいぃっ――そんなの、入らなっ」
「連邦雌の運命(さだめ)はひとつ……ワシのチンポの、専用鞘じゃあっ!!」
「んほおーーーッ!?」
あまつさえ何の前戯もなく、ぶぢゅううっ! と男は剛棒直入した。
特筆すべきはその注挿速度。巨漢は最初からトップギアだった。
犯されることを覚悟した瞬間、自身の膣を保護すべく本能的に愛液が溢れてはいたが、男が叩き込んだ剛棒の威力はさらに大きく許容量を遙かに超える。
結合部から激しく鮮血が飛び散るが、少女は最初から単なる苦痛ではなく謎の快楽に導かれていく。 「ああ、あああああ……ッ!? な、なにこれ……っ、しゅぅ……っ、しゅごっ、いいぃ……っッ……」
少女がこれまでに知るいかなる性の悦びとも異なる、生命の躍動に溢れた壮絶な交合。それはまさしく身食らう蛇のごとき、人が知るべきでない禁じられた果実の味わいだった。
「どや! 身食らう蛇のように、抉りこむ突きッ! これがジオン幻の漢体決戦性器、ヨガルンチンポじゃッ!!」
「そ、そんなぁ……っ、ぜ、前戯もなしで、こんなぁ……ッ……こんなのぉッ……!」
少女の膣内をその動きは拡張しながら確実に最深部まで抉りこみ、しかも毎回必ず最奥のGスポットを微妙に異なる角度と強さで狙撃していく。性の大量破壊兵器を無差別投入する電撃戦は、まさに一週間戦争のジオン軍のごとし。
少女の肉体は何の対応も出来ないまま、ただ快楽の波に蹂躙されていくしかない。
「やかましい! 射撃諸元なんぞ送られてくるの待っとったら、会戦なんぞ終わっしまうわ!! 男は黙って直接照準、直接射撃! これで決まりやッ!!」
言いながら男はさらに加速し、その腰の回転速度を高めていく。パイロットスーツを脱ぎ捨てた男の裸身からは大量の汗が放散され、空気中に一瞬留まっては消えていく。
巨漢の形を伴った男汗の霧は、あたかも質量を持った残像のように見えた。
「ッ!? こ、腰使いがぁっ、アムゥッ、激し、すぎてぇ……ああんッ! おじさまがぁっ、三人にぃっ、見え、るぅ……ッ!?」
「どうや!! 見たか!! これがワシの三位一体! 一本のチンポで女を三倍ヨガらせる、黒いチンポの三連性! 夜のジェットストリームアタックじゃあああ〜〜〜ッ!!」
「あああああああッ、いいいいい〜〜〜ッ!!」
回転はさらに高まる。ついにはザクマシンガンの最大連射速度にも匹敵しようかという高回転で、巨漢は少女を犯し続けた。
「フンフンフンフンフンフンッ!!」
「アッ! アッ! アッ!! アアア〜〜〜っっ!!」
二人の結合部から溢れ出る雌の愛液と雄の先走り汁が溶け合うように混じり合い、膣奥から子宮口へと突き抜けていく熱い衝撃波が少女の性感を、そしてその意志までもをぐずぐずに溶け崩させていく。
「こっ、こわれりゅっ……こわれりゅぅっ、わらくひのおまんこ、おまんここわれりゅううう〜〜〜ッ!」
「なに言うとるっ!! もうお前のオメコはぐっちょんぐっちょんじゃろがぁっ!!」
「身体が……身体が熱い……すごい……嘘、こんな……無理矢理ですのに、どうしてぇ……っ……」
「やかましいわっ!! オーストラリアは今は夏やぞ!! ここがお前のシドニー湾ッ!! これがホンマのコロニー落とし……乾坤一擲、プリ乳ッシュ作戦じゃあ〜〜〜ッッ!!」
「クッ、アウウゥッ、すっ、しゅごっ、いいい〜〜〜ッ――!」
コロニー落とし。史上最大の大量破壊兵器になぞらえた自称にも決して恥じることのない威力で男が腰を落とせば、宇宙移民の怒りを乗せた極太コロニーが恥丘を超えて子宮を突く。
そして八年前に地球へ落とされたコロニーが数千万の人間を育んでいたように、いま少女の恥丘へ落とされ続けている肉コロニー棒も、雄から雌への植民者たる数億の精子を送り込む威力を秘めているのだ。 「チンポはこのまま! 雌パイロットの膣内で出さしてもらうッ!!」
「あ、ああ! だめぇ、だめですのぉっ! なかで、膣内で射精されたらっ! わらくひっ、はらんでぇ、こどもがぁぁあ――っ」
「ソロモンの、白き子種汁! 白漏、出るゥッ!!」
「いやあああァ〜〜〜ッッッ!!」
最後の突きを膣奥で受け止めたその瞬間、少女の脳裏で閃光の嵐が溢れた。
リズミカルに突き続けるどびゅうううっ、と女の腹の奥から異音が轟く。
消化用ホースの尖端を押し込んで最大出力で放水したかのような圧力が、少女の下腹で一気に弾けた。
ジオン伝説のエースパイロットの熟練技に突かれ続けていた子宮口から、ゆうに五十億を超える精子が狩るべき獲物を目掛けてなだれ込んでいく。
そして極太のペニスに押し開かれた合体部からその周囲へと、大量の白濁液が溢れて飛び散る。その激しい精液の漏れ具合は、まさに魔法王に仕える白き狼が射精したがごとしであった。
「どうや……! ワシの特濃ジオン優良子種汁は、ティッシュの屑になど成らん! 雌の腹で成就するのや!!」
「…………あ、……あ、……う、……あ……っ……」
最後の一滴までの濃厚な膣内射精を終えた、深い満足感の中で巨漢は叫ぶ。そして犯された少女は、その意識を未知の快楽の中で真っ白に宇宙へ飛ばしたまま、放心とともに見開いた瞳から、つう、と二筋の涙を流している。
コロニー落としの衝撃は地球の地軸を歪め、自転速度という地球のリズムまでをも狂わせたと言われている。それと同様に巨漢が叩きつけた巨根と性技も少女から生理のリズムを狂わしめて、子宮からその排卵を強制していたのだ。
「…………、あぁ……っ……」
そして少女はその見開いた虚ろな瞳の奥底で、子宮口を抜いた精子の群れが通常の三倍以上の速度で迫り来て、そして無防備な卵子に次々と結合――受精する瞬間を、確かに『見た』。
それを認識した瞬間、少女の乳房に急激な変化が生じはじめる。
可憐な桜色だった乳首に色素が急激に沈着し、どす黒いほどに染まっていく。同時に乳輪に浮かぶ乳腺のひとつひとつから白い液体が染み出していた。
男のごつく大きな掌が左右の乳房を乱暴に握りつぶすように搾ると、黒い乳輪からは新鮮な母乳が無数の飛沫となって放出された。
ただ数分の交わりと一度の膣内射精だけで、ジオン残党兵の巨漢がもたらした超絶の交わりは無垢な巨乳美少女の肉体を、一瞬にして妊娠と出産を待つだけの妊婦に作り替えてしまったのだった。
「フム、……ええ乳になったやないか……!」
巨漢は強引な性交の渇きを癒すように両方の乳首を口に含むと、凄まじい勢いで蓄えられた母乳をあらかた吸い尽くした。乳
首から唇を離すとその尖端を軽く舌で突つき、さらに大きく勃起してきた乳首から、ぴゅっと母乳が一筋跳ねるのを満足げに見下ろす。
「これでお前はワシのもんや……産めよ、国民! 元気な赤ん坊、産んでもらうでぇ……!」
「……しゅごっ、……いい……ぃ……っ」
これが一年戦争緒戦からその後の掃討戦までを力強く生き延びてきた、真のジオン残党兵の生命力。
地球連邦の三十分の一とも言われた国力で五十億人を焼き滅ぼした、地球人類のより良く支配してその再生を導くべき「優良種」。自分は今、その優良種を宿す母となったのだ。
「ジーク、……ジオン……」
力なく震える唇でそれだけようやく呟くと、少女の意識はどこまでも深い闇の底へと墜ちていった。 区切りが今一つですが、あまり先延ばしするのもなんなので投下します。 「…………」
禿頭にびっしりと浮かぶ脂汗が、薄暗い照明の下で鈍く光る。
巨漢の眼前には少女趣味の手書き文字で綴られた、可愛らしい意匠の日記帳。
震える指でページを繰る端から浮かび上がる、猥雑奇怪な性妄想――その文面の一語一語から漂う言い知れぬ迫力を前に、ジオン残党兵ドッツィ・タールネン少佐は打ちのめされ、ついにその禿頭を抱え込んだ。
「なんや、……これ……」
ドッツィが巨体を丸めてうなだれているこの場所は、エゥーゴ戦艦《ジャカルタ》居住区の士官個室である。
つい数時間前、連邦軍巡洋艦《トラキア》MS隊と交戦の末に撃破されたドッツィ率いる三機のMS小隊は、あわや連邦軍による鹵獲寸前のところでジャカルタ隊の介入に助けられた。
小隊の機体はいずれも手ひどく大破し、反地球連邦組織《エゥーゴ》の擁する新型戦艦ジャカルタへと収容された。
部下も戦闘で一人が気絶したまま覚醒せず、ドッツィはやむなく残る一人に機体を託し、戦艦ジャカルタ艦長デミトリ・スワロフ中佐との会見に臨んだのだ。
そこで要求されたのは、ドッツィがいま所属するジオン残党組織《ルスラン・フリート》と彼らエゥーゴの、反ティターンズ闘争における同盟。そしてドッツィに、その交渉のパイプ役だった。
今や地球圏を席巻する巨大勢力と化した、地球連邦軍特殊部隊《ティターンズ》。ドッツィたちも今までその一部と交戦する機会は何度かあった。
しかし本格開戦ということになれば今までのように、新サイド4などという見捨てられた辺境暗礁宙域とその周辺ばかりで行動しているものとは違ってくる。
だが急激に変化していく地球圏の情勢の中、スペースノイドの大勢を基盤として台頭するエゥーゴと結ぶことで得られるだろう、外界とのパイプと新技術は間違いなく魅力だ。
うまくすれば地球圏の大勢に影響を与え、巨大な権利を手にすることすら出来るかもしれない。
その判断は無論、組織全体の運命を左右しかねない重大局面である。ドッツィは即答を保留したが、課せられた判断はあまりに重かった。
スワロフ中佐は返答の保留を受け入れるとともに、ジャカルタにおいてドッツィらに個室を貸し与え、彼ら三人を客分として遇することを約束した。
そしてドッツィはその個室まで、連邦軍との戦場で彼の機体を確保・曳航した女性パイロット、リアンナ・シェンノート少尉に案内されたのだ。
案内されたのだ、が。
「ふんふん、ふふ〜ん……」
「…………」
奥の磨り硝子の向こうに、湯煙を帯びた影が見える。未成熟なローティーン以前の少女のように小柄ながらも、その身長とは裏腹に要所要所へと豊かな量感をたっぷりと蓄えた、トランジスタ・グラマーを感じさせる女体の影。
そして響く流水音に絡み合いながら、甘く鼻にかかった少女の歌声が届いてくる。
「うふふ。おじさま、本当にいいお湯ですわよ。ご一緒いたしませんこと?」
「ファッ!?」
彼女が目の前で脱ぎ捨てていったEカップのブラジャーを握りしめながら、ドッツィはビクンとその場に跳ね上がった。
股間の息子も一緒に跳ね上がっているが、応じられるわけがない。今の彼は組織間の重大交渉を控えた身だ。 「や、やめとく……遠慮さしてもらうわ……。あのな、少尉……それより、ここから、出し……」
「あら、ご一緒しませんの? ふふ。でも、そうですわね……おじさまは汗をかかれたままの方が、残党狩りの七年間を生き抜いてこられた獣の野性を、これから存分に味わえますものね。
……うふふ……今夜は思いきり内から外から私を汚して、いちばん奥まで濃厚な、おじさま色に染め上げてくださいましね……」
「…………。……アカン……」
まったく要領を得ない受け答えに、ドッツィは頭を抱えてふらつく。この境遇で、あの幼さと豊満さを具備した背徳的な美少女と同じシャワー室に入るなど、どう考えても社会的自殺行為以外の何者でもない。
そしてエゥーゴは間違いなく、その行為の一部始終を録画するだろう。外部組織の女性と肉体関係を持った男など、誰が信用するだろう?
そうなってしまえばこのあと組織へ戻った後も、ドッツィはエゥーゴの便利な傀儡として動かざるを得なくなる。
「あ、アカン! アカン!! ワシが! ワシとしたことがっ!! 男をハメさせる罠にっ、ハメられてしもうたっ!!」
気づいたときには遅かった。リアンナはドッツィを部屋へ導き入れるや、即座に内鍵を掛けて閉じこめ、そのままノースリーブの大胆なエゥーゴ制服を一気に脱ぎ捨てたのだ。
その流れるような一連の動きは、ただ見事な早業と言うほかなかった。
美少女の汗と体温の気配を残したブラジャーとショーツが無重力の空間を泳いでドッツィの顔面へ掛かると、リアンナは惜しげもなくその美しい裸身を晒してシャワー室へ消えた。
全裸のリアンナをシャワー室から腕ずくで連れ出してドアを開けさせることも出来ず、ドッツィはただ美少女の下着を握りしめたまま震えるだけである。
傍目にはもはや単なる変態親父なのだが、その内心には組織と直属の部下たちを憂うるジオン公国軍将校としての高潔な精神と、そして本能には勝てずに勃起する股間のジャイアント・バズがせめぎ合っていた。
と、ガラスの向こうで流水音が止まった。無重力下のシャワールーム用のマスクを壁に掛け、バスタオルで髪や体を拭きはじめている。間もなくここまで戻ってくるだろう。
「あ、あああああ……! ワシは! ワシはっ……どないすればええのやぁぁぁあああ!!」
頭を抱えたドッツィは、ついにゴロゴロと床へ転がりはじめた。ブラジャーはまだ握っている。
このままリアンナの妄想日記に描かれた変態絶倫親父のごとく、開き直って彼女を犯せば良いのだろうか?
股間のタールネンJr.はその方針を熱烈支持しているが、しかしドッツィには自分を『兄貴』『兄ィ』と慕う二人の部下がいるのだ。己の欲望のために彼らを裏切る真似は出来ない。
それに、妄想日記に描かれた怪人並みの超人絶倫種付けテクニックで、あの頭のネジが外れた妄想日記を書き上げた彼女を満足させられる自信も、ない。
「うッ……うおおおおおおーーーッ!! イーデン! デティ!! マイ・サン!! ワシは、……ワシは、どないすればええのんやァーーーッ!!」
みっともなく喚き散らしながら、ドッツィは美少女士官の個室内で激しく上下左右にのたうち回る。ブラジャーとショーツを握りしめたまま。
巨漢変態中年男性が暴れ狂う、もはや動物園の檻にも等しい魔境と化した室内へと、シャワー室からドアが開く。
「ホアッ!?」
「うふふ……お待たせいたしましたわ、お・じ・さ・ま。さあ、……私を食べてくださいまし……」
溢れる湯気の中、上気した肌にバスタオル一枚だけを帯びた美少女は、獲物を狙う雌獣の表情で舌をなめずった。 『――兄ィが危ない』
『お、おう……なんや、デティ。いきなりどうした』
戦艦ジャカルタ、MS格納庫。
ドッツィからMSの見張りに残されていたデティ・コイヤー軍曹は、自らの愛機MS-21C《ドラッツェ》のコクピット内で慄然と呟いた。
連邦軍との戦闘で敵機にコクピット・ハッチを強打されたきり気絶していた相棒、MS-09R《リック・ドム》パイロットのイーデン・モタルドゥが目覚めて間もない。
彼に対する通信越しの状況説明もそこそこに、デティは顔を上げるやそう不意に呟いたのだ。苛立たしげに続ける。
『イーデン、お前には……! お前には、なんも感じられへんかったんか!? 兄ィがいま腹ン底から振り絞った、助けを求める静かな声(サイレント・ヴォイス)が……お前には、なんも聞こえへんかったんか!!』
『いや、……特に、なんも……』
イーデンは若干引き気味に答えたが、デティはひとり思い詰めた表情のまま、その妄想を加速していく。
『――アイツや……。最初に出てきたエゥーゴの、あのチビのくせに乳と尻だけデカいメスジャリや……兄ィにふざけた色目使いよってからに……!
アイツは最初から、兄ィの肉体を狙うとったんや! アイツはいま兄ィを暗がりに連れ込んで、身体を貪っとるんや……!!』
『お、おう……さ、さよか……』
ぶるぶると拳を震わせて力説するデティの瞳は、MS格納庫の外壁を射貫かんばかりに睨みつけ、遙かその先を見通している。彼が人の話を聞きそうな気配は、無い。
『星屑帰りの辻斬りドラッツェ』ことデティ・コイヤー軍曹は細面の、女性――それも美少女と見間違わんばかりの、端整な顔立ちの美少年である。
色黒で髭面強面のイーデンとはまったく対照的な容貌だったが、しかしデティはどこか独特の『スイッチ』を有しており、それが入ったときの押しの強さは圧倒的だった。こうなるともう誰の言うことも聞かない。
三人の出会いは三年前、デラーズ・フリートによる連邦軍観艦式への襲撃時に遡る。
宇宙要塞コンペイトウ周辺の戦闘で被弾損傷し、ドラッツェで漂流していたデティを、宙域周辺で火事場泥棒に勤しんでいたドッツィとイーデンが救助したのだ。
その後すぐ作戦第二段階へ向けて転進したデラーズ・フリート本隊にデティは復帰できず、以来三年、行き場のない三人は《キャリホルニヤの悪夢》として行動している。
決して楽な日々ではなかった。草創期のティターンズが主導した残党組織への激しい掃討戦で、三人は幾度となく死線を潜った。そして力を合わせて乗り越える度、戦友の絆を深めていったのだ。
だがイーデンとドッツィはその三年間で、デティのある特徴に気づいていた。
ドッツィがたまに女がらみの下卑た冗談を言うと、デティは赤面しながら露骨に機嫌を悪くした。
またデティは決して人前で肌を見せず、個室以外では共用シャワーも浴びず、不自然なほど薄着になろうともしなかった。
逆にドッツィやイーデンが鍛えられた肉体を露わに晒していると、彼はひどく居心地悪そうに意味ありげに視線を動かし、やはり赤面しながら席を外してしまうのだ。
それらの繊細な仕草は戦いの時に彼が見せる、狂獣じみた猛加速でドラッツェを操る戦闘技術とはひどくかけ離れたものだった。
ともに数々の苦闘を乗り越え、戦友としての絆が日々深まっていく中でもデティのそうした反応は続き、イーデンはある日とうとうドッツィへ疑念とともに問いかけた。 『あのな、兄貴……ワシ思うんやねんけど、……デティな、あいつは、……実は……』
『ええ。ええのや、イーデン』
重い口調で口を開いたイーデンを、ドッツィはすうっと片手で制した。すべて分かっている、みなまで言うな――そんな調子を言外に強く宿した言葉に、イーデンは静かに震える。
『兄貴は、……兄貴は最初から、分かっとったんか』
『……デラーズ・フリートは男所帯や。ガラハウ中佐みたいな指揮官級はともかく、あそこは昔の公国軍ともまた違う、徹底的な男社会や。
――そこでデティが一兵卒として生き残るために、どんだけ自分を殺さなあかんかったか――ワシはそれを思うだけで、胸が詰まる』
『兄貴……!』
同質的かつ戦闘的な環境に放り込まれた少数者が受ける、異端者としての境遇。
遠く地球のアフリカに生まれ、地球連邦からの民族独立を求めて一年戦争前に単身ジオン公国へ留学したイーデンは、そうした少数者の辛さを身に染みて理解していた。
『イーデン、ワシはデティのすべてを受け入れるで。ワシらは戦友や。戦争が終わって祖国はワシらを裏切ったが、ワシは戦友を決して裏切らん。あるがままのアイツを、ワシは戦友として尊重する』
『兄ィ、……そこまで……!!』
ドッツィの吐露した熱い想いに押され、イーデンはこみ上げるものをこらえてきつく拳を握りしめる。ドッツィはフッとニヒルに笑い、そして遠い目で呟いた。
『まあ、……アイツがどうしてもワシを掘りたい、と言うてきたら、……そん時は、……そん時、やな――』
『……お、おう……。せ、せやな……』
信じて戦場で背中を預ける美少年に寝室で組み敷かれ、半裸で背後から己を貫かれる光景を想像し、二人はぶるり、と背中を震わせた。
イーデンとしてはドッツィがエゥーゴの女とよろしくやろうが、この状況では特に問題は感じない。むしろ相手から求めてくるのなら、応じてやればよいとも思う。
エゥーゴの仕掛けたハニートラップという線は捨てきれないにせよ、自分たちが支えるドッツィの度量なら、それも巧みに巻き取り乗り越えていってくれるとイーデンは信じているのだ。
だからこそ、今のデティが示す反応は過剰に思えて、そして遠い日にドッツィと交わした会話を思い出させもしたのだった。
『イーデン……ワシは行くで。エゥーゴのクソ女の毒牙から、兄ィを守りにな! お前はここでワシらのMSを、しっかり見張っとってくれや』
そこまで思っていながらも、モニター越しに爛々と光るデティの目は獲物を狙う野獣のそれで、イーデンはきゅっと尻に力を入れて巨躯を縮こまらせてしまうのだった。
(すまん、デティ……やっぱりワシはまだ、お前に掘られる覚悟は出来とらん……!!)
『お、おう……デティ、気ィ付けて行けよ……』
『お前もな。頼むで!』
言うやドラッツェのコクピットハッチを開き、素早くジャカルタ艦内へ消えていくデティを見送りながら、イーデンは戦友を信じる覚悟を固めきれない己の浅はかさを一人呪った。
「行ってしもたか。……せやけど、兄貴……修羅場になってまうんとちゃうか、……これ……」 今回は以上です。
これよりpixivとハーメルンに26話の挿絵を多数掲載します。
そちらも合わせてお楽しみいただければと思います。 このスレを私物化してコロニー落としばりに荒廃させた
ISAPのクソ信者どもが全身から血を吹き出して死にますように… >>159
よくわからんが、このスレって荒廃してるの?
とりあえず定期的な投下はあるようだが 現状は投下してくれるのが>>158さんだけの過疎スレ
最近はほぼないけど以前はもっと昔に投下してくれてた
ISAPさんて人を引き合いに出して>>158さんを腐す奴がいただけ 『兄貴! このドラッツェの奴、まだ生きとるでっ!』
『ほんまかイーデン!』
闇の戦場。戦死者たちの呼び声が今もさざめく古戦場、かつて宇宙要塞ソロモンと呼ばれた宙域の片隅に光が瞬く。
外部操作。コクピットハッチ強制開放。
傷ついた機体でひとり漂流していた自分に差し伸べられた、ジオン軍パイロットスーツの逞しい大きな手。バイザー越しに霞んで見えた、髭をたくわえた力強い笑顔。
『み、味方か……。助けて、くれたんか……?』
『坊主、もう大丈夫やで。機体の方も――、まあ、すぐに誘爆はせえへんやろ。……動けるか?』
応急手当と応急修理。
かろうじて動けるようになったMS-21C《ドラッツェ》がMS-06F《ザクU》とMS-09R《リック・ドム》に導かれながら動き出したとき、彼らは遠く離れたソロモンに広がる巨大な核爆発の閃光を見た。
『なんや、あの光!?』
『あ、ああ……! ガトー少佐……さ、作戦の第一段階が……あかん。もう艦隊が、転進してまう……! 今なら……いま行けば……いま行けばまだ、『星の屑』に間に合う!
フリートの皆と一緒に、連邦に一太刀浴びせられる……! おっちゃん、おおきに! ワシは行くで!!』
『このアホッ!!』
『ぐっ!?』
急加速しようとした瞬間、鈍い衝撃が傷ついた体にまで突き抜ける。ザクUがドラッツェへ組み付くようにして止めていた。
『お前みたいな死にかけ坊主がっ、そないボロボロな機体と身体で何するつもりや! デラーズの旦那がこのうえ何するつもりか知らんけどなっ、こんだけ派手にやらかしてもうた後や、連邦軍はここから本気で殺しに来るで!
そないな鉄火場へ、坊主みたいなくたばり損ないが今から行っても、ただ犬死にに行くだけやぞ!!』
『せ、せやけどっ。今……今戦わな、もう連邦は倒せへん! ここで……ここで戦わんかったら……死なへんかったら……ワシは、……ワシは今まで、何のために――』
『覚えとけ坊主ッ!』
ザクUの両手がドラッツェの両肩を握って止める。モノアイの光がモニター越しに真正面から瞳を射貫いた。
『ええか。死ぬことが戦いなんとちゃう! どんなキツうてもな、苦しゅうてもな――生きることが、最後の瞬間まで生き抜くことが戦いやねん!!
その戦いの意味が、今の坊主にはまだ分からちゅうんなら……坊主のその命、……ワシが預かるっ!!』
『兄貴! それは!?』
『ええのや! イーデン、ええのや!!』
言を半ばで制止しようとしたリック・ドムのパイロットを振り切り、ザクUのパイロットは思いをそのまま吐き出していく。
『もうな、ワシは……ワシはもう、沢山やねん。こんな坊主が、わざわざ好んで死にに行くような……そんなんはな、もう、ええねん。三年前に、終わっとるねん……死ぬための戦争は……もう、終まいや』
「――おっちゃん……?」
自機の両肩を握りしめたザクUのマニピュレーター越しに、接触回線とモノアイカメラに映る装甲板の向こうで、微かに震える嗚咽の影を、そのとき確かに感じた。
同時に警報が鳴り響く。レーダーが迫る多数の機影を捉える。コンペイトウ方面から、怒濤のごとく押し寄せるMS隊――艦隊を焼き払われ、復讐の怒りに燃える連邦軍MS隊だ。まともに戦えるような数ではない。
「…………」
今あそこに飛び込めば、確実に死ねるだろう。うまくやれば、一機や二機は道連れに出来るかもしれない。
その方向へメインスラスターのスロットルを開こうとしたとき、再び衝撃がドラッツェの機体を揺らした。
ドラッツェに右手はない。整備所要が大きい脚部とともに右前腕部は省略され、40ミリ固定機関砲に置き換えられている。原型機であるザクUF2型同様に残っているのは左手だけで、ザクUがその左手を掴んでいた。力強く。 『来い! ワシらと! 戦え! 生きるために!! イーデン!!』
『応!!』
リック・ドムが二門のジャイアント・バズを両肩に構える。迫り来るジム改の編隊を目掛けて、矢継ぎ早に380ミリ砲弾を叩き込んだ。
すべてを呑むほどの巨大な閃光が爆ぜた。つい今し方、核の炎が要塞外縁と受閲艦隊を焼いたばかりだ。すわ第二の核攻撃か、と連邦軍MS隊が怯んで編隊を乱す。
『やかましいわおんどりゃあ!!』
先陣を切って突撃したRGM-79N《ジム・カスタム》が、照明弾の閃光の中から頭部を蹴り潰されて吹っ飛んだ。
『今や! 撃ちまくれ!! 退けや雑魚どもおおお!!』
『いでもうたるどごるぁぁぁ!!』
文字通りにジム・カスタムを蹴散らしながら、ザクUに続いた二機は薄れゆく閃光の中で無茶苦茶に乱射した。
ジム・カスタムは頭部を潰されながらも、それでも盾でザクUの胴を殴りつけた。だが半端な打突は撃力が足りず、盾の爪部も装甲を破れない。逆にザクU左肩のスパイクアーマーを食らって、機体ごと跳ね飛ばされた。
隊長機の頭部を潰されて混乱する連邦軍のRGM-79C《ジム改》が90ミリのジム・マシンガンで、これまたデタラメに応射してくる。
だが三機は一気に敵陣へ突き刺さっていた。連邦軍の応射は数発がジオン機を掠めてその装甲板を穿ったが、それとほぼ同じ弾数が取り囲む友軍機へと突き刺さっていた。それだけで数機が損傷し、後方へ沈んで戦列を離れる。
『アホが見るぅぅぅ、豚のケツぅぅぅぅぅッ!!』
指揮系統の混乱と同士討ちに怯んだ連邦軍MS隊のただ中を突き抜けて、三機は暗礁宙域を全速力で突破していく。
編隊にスナイパータイプのジムがいたらしく、数発のビームが機体の真横を追い抜いて掠めた。回避が一瞬遅れれば爆散していただろう。
ビームの追撃もやがて途切れ、追いすがる熱源も消えた。助かったのか――誰もがそう思いかけたとき、ザクUが不意にガクンと速度を落とした。編隊から脱落していく。
「なっ!?」
『あ、兄貴!?』
『――アカンな、これは。どうも、さっきの打たれ所がアカンかったらしいわ』
連邦軍が乱戦の中で叩き込んできた、90ミリ弾幕。その一弾が超硬スチールの装甲を破り、機体内部の流体パルス構造を傷つけていたのだ。
『ああ。これは、もう――アカンかもわからんのう』
コクピットであらゆる緊急対処手段を試しながら言ったその声は、ひどく平板なものに聞こえた。 そして同時にザクUから、機銃弾の破孔が火を噴いた。脚部推進材タンク付近。ザクUはそこからパイロットの操縦を無視して最大出力を全開、軌道を大きく捻って明後日の方向へ飛び去っていく。
『兄貴! 脱出してくれ!!』
『いや、これもアカンな……さっき盾でブン殴られたとき、ハッチの装甲が歪んでしもうたんやの』
「そんな――」
『まあ、ええわ。最後の最後に、坊主を一人拾えたしな――ま、こんなもんやろ。ほな、達者でな』
ドラッツェは、その瞬間にスラスターを開いていた。
簡易MA級とも言われる巨大な加速力を全開し、制御を失ってネズミ花火のように暴走するザクUへ一気に食らいつく。同時に左腕部の小型ジェネレータが唸り、固定式のビームサーベルを発現させた。
一撃離脱、光刃一閃。
ドラッツェのビームサーベルは一刀にして、正確にザクUの胸部装甲を焼き切っていた。そのまま飛び去っていくドラッツェの後ろへ追従し、リック・ドムがその手を開く。
『兄貴、今やッ!!』
『――!』
ボルト爆砕、座席射出。
サーベルが切り裂いたギリギリの隙間を縫って、射出座席が吹き飛んだ。相対速度を合わせたリック・ドムがその掌中に収めるや、機体を回してザクUに背中を向ける。
ついに機体中枢まで火が回ったザクUが爆散したのは、まさにその瞬間だった。
破片と爆熱がリック・ドムの装甲を叩き、跳ね返っては冷たい宇宙へ拡散していく。
『兄貴……?』
リック・ドムの十字レールを動いたモノアイが、恐る恐るに自らの掌中を覗き込む。
『――やれやれ、イーデン。どうやらワシは、また死に損ねてしもうたらしいのう』
『兄貴!!』
『いやあ、助かったわ。九死に一生得てしもうた。坊主――いや、もう坊主とは呼ばれへんな。やるやないか。名前、なんちゅうのや』
「……デティ。……デティ・コイヤー軍曹や……」
『そうか、デティ。ようやってくれたの。ワシはドッツィ。ドッツィ・タールネン少佐。人呼んで《キャリホルニヤの悪夢》や。せやけど、階級はええねん。もう、ええねん』
ドラッツェがリック・ドムと機体を並べる。リック・ドムの誘導に従って彼らの母船を目指しながら、今まで感じたことのない不思議な安らぎを覚えていた。
『デティ。ワシら、もう兄弟やで。桃の畑はあらへんけど、今日からお前も義兄弟言うやつや。イーデン、ええな?』
『おう。なんも異論ないで』
「――兄弟……?」
『せや。これからは、兄弟のために生きる。デラーズ・フリートのデティ・コイヤー軍曹は、今日で戦死や。今日からお前は、キャリホルニヤの悪夢の末弟、デティ・コイヤー軍曹なんやで』
「兄弟、か……」
次第に爆光と火線の勢いも静まって遠のいていくソロモンと、未だ青い光をたたえる地球を交互に見ながら、デティは解き放たれたようにふっと優しく微笑んでいた。
「……おう。分かったわ、……兄ィ」 デティ・コイヤー軍曹のヘルメットは、あの日からずっと同じものを使い続けている。膝の上でバイザーに映りこむ自分の姿も、三年前と同じに見える。
だが、違うのだ。
三年前の自分に無く、今の自分にあるもの。
自分は今から、それを守りに行く。
「イーデン……ワシは行くで。エゥーゴのクソ女の毒牙から、兄ィを守りにな! お前はここでワシらのMSを、しっかり見張っとってくれや」
『お、おう……』
勢いよく啖呵を切りながら、デティは自身の足下を見下ろした。行動方針は決定した。勢いに任せた激情から、冷静さを取り戻しながら呟く。
「さて、……どうするか、やな」
連邦軍との戦闘に敗れてから収容されるまでの間に、デティは戦艦ジャカルタの威容をその目に留めていた。ジャカルタはマゼラン級をも上回るであろう大型艦である。極端な省人化が進んだ形跡もない。
つまり全体の乗員は相当数に達しており、なおかつ誰もが互いに顔見知りというわけではないということになる。
「こいつの出番やな……」
愛機のリニアシート下からデティが取り出したのは、地球連邦軍の制服一式だった。少し嫌そうな顔でデティはそれを見る。
万一の潜入工作用に常備していたものだ。ジオン出身者も少なくないとはいえ、それでもやはりエゥーゴは連邦軍系の組織らしい。格納庫内にも連邦軍の制服姿がちらほら見える。これで紛れ込むのは容易だろう。
艦内へ潜入さえ出来れば勝機はある。
だが当然ながら、ジオン残党軍のMSパイロットとして損傷機に残された自分たちは注目の的だ。監視も付いているだろう。まさか連邦軍制服のままここから飛び出し、そのまま監視を誤魔化して潜入するわけにも行くまい。
どこかコクピットの外で着替えて、しかも監視を誤魔化しきれるほどに印象を大きく変える必要がある。
「…………」
思案の末、デティが次にごそごそとシート下から取り出したのは、長い赤毛のかつら――女性用ウィッグだった。
先ほど連邦軍制服を取り出したときよりも、さらに嫌そうな顔をしながら、それでもデティは意を決したように顔を上げた。 湯煙の中を熱いシャワーが、白い女体のみずみずしい肌に弾け散っては流れ去る。
湯浴みするのは金髪の美しい娘だ。均整の取れた長身はよく鍛えられて引き締まり、それでいて女体の要所要所には、余りあるほどに豊かな雌の甘みを蓄えている。
殊にひときわ目を引くのが、胸元でたわわに実る巨大な乳房だ。文字通り男の手にすら余るその巨乳に、いま彼女自身が自らの手を掛けていた。
女性としては長身である彼女の掌であっても、乳房はさらに大きく重く、とうてい包みきれず両手に余る。
その白い柔肌の巨大な乳房に、彼女自身の十指が重く沈み込んでいく。
「……んっ、……」
張りのあるたっぷりの乳肉が歪み、わずかに甘い痛みが乳房の芯から彼女を刺した。だが彼女は構わず、己が双球を握りしめていく。
彼女の乳房をその見事な大きさよりも際立たせているのは、白肌と鮮烈なコントラストを成す黒褐色の乳輪だった。
ほんの昨日までみずみずしい桜色をたたえていた左右の頂は、今や黒々とした褐色に染まっていた。あまつさえその全体にぶつぶつと浮き上がった腺の数々が、わずか一夜の情事が彼女にもたらした決定的な肉体の変化を何より雄弁に物語っている。
それはあたかも胎内に子を宿した、妊婦の乳首のそれだった。
握力を強めるに従い、黒い乳輪の中にぷつぷつと何か、白い汁が滲み出てくる。
「……んっ、……」
彼女がさらに掌へ力を込めると、ついには張りつめた果実を握りつぶしたかのように、黒い乳輪から白い母乳が噴き出した。
堰を切ったように溢れる母乳が、乳輪から迸ってはシャワーに洗い流されていく。自らの乳房を強弱を付けながら何度も握り、尽きることなく溢れる母乳をただひたすらに搾り出しながら、金髪の美女はひとり呟く。
「……ちくしょう」
彼女の脳裏に蘇るのは、魂にまで焼き付いた二つの光景。
憎き地球連邦軍の標準的量産MS、RGM-79R《ジムU》。その一機とビームサーベルを抜き払っての格闘戦の最中、彼女をコクピットもろとも貫いたメガ粒子の奔流。
灼熱の中で塵も残さず蒸発したはずの彼女は、無傷で目覚めた。そしていけ好かない男と思っていたMS隊長と、自ら望んで男女の交わりを果たしたのだ。
それは彼女にとって鮮烈な恐怖と、そして何よりも屈辱の記憶だった。それ以外の何者であるはずもない。
だがそれらの瞬間を思うとき、彼女の股間で女陰が甘く疼いて啜り泣くのだ。
本来であればその圧倒的な物理力で、彼女の肉体と生命を宇宙の塵に還していたはずのメガ粒子の暴威。
確かに彼女のパイロットスーツを瞬時にすべて焼き尽くした閃光の中で、そして処女を奪われながら膣内で爆ぜるように放たれた大量射精の中で、彼女は確かに絶頂を迎えた。
倒錯した、究極の快楽。
あまりに鮮烈なその残滓が、今も彼女の雌を疼かせるのだ。
対流のない無重力空間でシャワーを循環させる風圧の中で、青い瞳の眦に光る滴も流れ去っていった。魂の奥底から、彼女の搾り出す言葉とともに。
「ちくしょう――」 中途半端な位置での停止、申し訳ありません。
しばらく投稿しない間にまた連投規制が強化されたようで、現状ではお手上げです。
そろそろ2chでのSS投下も潮時なのかもしれません。 マイン・ハフナーが目覚めた場所は、戦艦《ジャカルタ》に複数存在する医務室の一つらしかった。戦闘後に艦内へ収容され、そして隊長との情事の後、再び気絶した自分はここへ搬送されたようだ。
彼女が気づいたとき、すでに室内は無人だった。体調も悪くはないように思えた。どす黒く変色して母乳を滲み出させる乳輪と、飲ませる赤子のあてもない母乳をひたすら作り出しては溜め込むように変わり果ててしまった乳房以外は。
備え付けのシャワー室で母乳の処理を済ませたマインは、誰かが室内へ用意してくれたらしい衣服を身に付けた。
下着にはご丁寧にブラジャーもあった。ただしMSパイロットである彼女が常用するスポーツタイプのものではない。妙にパッドの分厚いそれは授乳期の母親向けのそれだったが、あらかじめ測っていたかのようなジャストサイズでマインの乳房を包み込んだ。
ただし上着として用意されていたのは、意匠が気に食わず、彼女が今まで決して着ようとしなかったノースリーブの女子エゥーゴ制服だ。
少し嫌そうな顔をした後、他に選択肢がないことを確認してから、やむなく袖を通す。とにかく人前に出られる格好になったマインは部屋から出ようとした。
医務室のドアを開けた瞬間、目の前に若い女が立っていた。
「おはよう、ハフナー少尉。意外と早いお目覚めね」
「――シャノン……っ」
視界へいきなり飛び込んできた女の顔を、マインはきっと睨みつけた。
額できれいに切り揃えた黒い前髪と眼鏡の下の、冷たい知性を宿した青い瞳は鉢合わせに驚いたような様子も見せない。ただ、どこか突き放すような距離感を持ってマインを見つめている。
単純に上の視点から人を見下すだのといったものともまた違う。マインにとって彼女のそれは、実験動物を見る研究者の無感情な視線に思えた。
シャノン・ヒュバート少尉は、リアンナ・シェンノート少尉率いる戦艦ジャカルタ第二MS小隊所属の女性パイロットである。そして彼女はMSパイロット資格と同時に医師資格を持ち、戦艦ジャカルタの軍医を兼務するという異色の才媛であった。
年はマインとそう大きく離れていないはずだ。しかしその感情を他者に感じさせないほどに抑えた仕草が、マインをしてシャノンをいけ好かない女に思わせていた。
そしてビームサーベルにコクピットごと貫かれながら生還したマインを診断したのも、彼女だった。マインの肩越しに室内の机上を見やり、シャノンはそこに置かれたままの診断書に大げさなため息を吐いてのける。
「『2月26日から三日間は面会謝絶で絶対安静』……私はそう診断書を出しておいたはずだけど?」
「はっ。三日だぁ? おいおい勘弁してくれ、あたしはそんなに寝てたのかよ。道理で体が鈍ってるわけだ。先生どいてくんな、リハビリにちょっくら一汗流してくるよ」
そう軽口を叩きながら脇を抜けようとしたマインの前を、無言のままでシャノンが塞いだ。面倒くさそうにマインが睨む。
「ハフナー少尉。今日はまだ2月26日よ」
「あたしの三日は早いんだよ」
二人はそのまま温度の噛み合わない視線で睨み合う。痺れを切らしたマインが次の動きへと移る手前で、シャノンが腕組みしながら身を引いた。
「止めないのか?」
「止めて聞きそうな気配がないもの。私もここで病院送りにされたくはないからね」
「――そうかよ」
道を開けたまま肩を竦め、くすり、と微笑むシャノンを、マインはいっそう強く睨みつけた。勢いよく床を蹴り、リフトグリップを掴んで身を委ねる。 無重力の通路を泳いで流れ去りながら、しかしマインは次に行くべき場所を決めかねていた。
指揮系統上の上官であるMS隊長、ベリヤ・ロストフ大尉への報告は必要ないだろう。彼とはつい先ほど最低の形で言葉と、そして肉体と欲望を交わしたばかりだ。
自身の膣奥深くに放たれた、白く粘ついた熱い欲望。それを子宮で受け止めながら達した、精神を狂わせるほどの快楽の極致。その片鱗を思い出してマインは震える。
――少なくとも今はまだ、あの男と会いたくない。
会えば自分がどうなってしまうのか、マインはそのときの自分の姿がまったく想像できなかった。それは彼女に芽生えた、また新たな恐怖だった。
といって、ティターンズと連邦軍の攻撃で壊滅した故郷の資源衛星から一緒にエゥーゴへ参加した、彼女を『姉御』と慕う二人の舎弟のところへ行くのもはばかられた。
マインら三人は同じく復讐を誓う同郷の同胞として団結し、ベリヤ率いるジャカルタMS隊主力に対抗心を燃やしていた。
だが連邦軍ジムUとの一対一の戦いで無様に敗れたうえ、自ら望んでベリヤに犯され、あまつさえ昨日まで処女であった自分が乳房から母乳を噴き出す体にされてしまっているのだ。
合わせる顔がない。
今の自分にはどこにも行くべき場所がないことに気づきながら、しかし一カ所に留まることも出来ず、マインはただ人の気配を避けるようにジャカルタの艦内を漂っていく。
そんな彼女のくすんだ視野に、見慣れない女性士官の姿が不意に飛び込んできたのはそのときだった。
長い赤髪を泳がせる、地球連邦軍制服の可憐な美少女だ。程良く膨らんで制服の上衣を押し上げる胸元といい、しなやかに伸びた健康的な四肢といい、男たちの視線を集めるには十分以上の魅力を発揮している。
だが何より強く男たちを魅了するであろうものは、その可憐な仕草だった。
いかにも自信なさげに伏し目がちな表情、震える睫毛、弱い自らをなんとか守ろうと抱きしめるような腕の動き。
それらは強い男たちの庇護を必要とする、か弱い女のアイコンをひどく直接的に表現しており、それゆえ目ざとい男たちを惹きつけずにはおかない。
それらすべてが、現状に直結していた。
「君さ、ホントに可愛いねー。この艦にまだ君みたいな美少女がいるのを見落としてたなんて、俺らもほんとチェック不足だったって言うか、申し訳ないねー」
「あ、あの……っ、こ……困り、ますっ……わ、わたし……今から、行かなきゃ……いけない、ところが――」
「へー、どこ行きたいの? 俺らが連れてったげるよぉ」
「…………」
マインの視線の先で、その美少女士官に二人の男が絡んでいる。彼らも連邦軍士官制服だが、こちらも見慣れない顔だ。少なくともMS隊の所属ではない。
二人は彼女の退路を塞ぎながらパーソナルスペースを潰して大きく押し込み、少しでも顔を背けて逃れようとする彼女に、耳元へ息のかかる距離から話しかけている。
「じゃあさ――ちょっと俺らの部屋、寄っていこっか」
「――えっ」
笑顔のまま、男たちが切り出した言葉。その裏に潜む意味を悟って、少女がさっと青ざめる。咄嗟に逃げようとした彼女の退路を、一人が即座にさっと塞いだ。
「俺らの部屋、すぐそこだから。熱くてクセになるドリンク出してあげるよ。ちょっとだけ、ちょっとだけ休憩していこうよ」
「やっ、やめっ――」
一人が手首を掴んで拘束し、一人が手際よく部屋のドアを開ける。彼女が恐怖と絶望に涙を浮かべたとき、マインは一歩を踏み出していた。
「おう。お前ら、ドコの者だ?」
「――何?」
「あっ――」
長身の金髪美女から凄みを乗せて話しかけられ、男たちは明らかに鼻白んだ。目を瞬かせた後、一人が相方に耳打ちする。
「マイン、……マイン・ハフナーだ。第三MS小隊長の」
「じゅ、『十人殺しのマイン』か!? さっきの戦闘で、死にかけてたんじゃ――」
編成間もないジャカルタ隊にあっても、マインたちの無鉄砲なまでの喧嘩っ早さは広く知れ渡っていたらしい。二人が怯んだところへ間髪入れずに畳みかけた。
「あっ!?」
マインはぐい、と少女の腕を掴み取るや、自分の方へと奪うように引き寄せる。彼女を抱き寄せながら、ドスの利いた声とともに男たちを睨んだ。
「ウチの者に訳の分からんちょっかいかけてんじゃねぇよ。失せろ」 「い、嫌だなハフナー少尉、……MS隊の子だったんですか……早く言ってくださいよ」
「知るかよ、阿呆。おい、行くぞ」
「あ、――は、はいっ」
あっさりとマインの眼光に押し負けて、男たちが道を譲る。少女の手を強引に引きながら角を曲がるとき、彼らの悔しげな舌打ちが遠く聞こえた。
「クソッ。なんだよ、見ない子だなと思ったらMS隊かよ」
「でも、だったら逆に良かったな。だってMS隊の女って、全員『大尉のお手つき』なんだろ。そんなのへうかつに手出しせずに済んで、命拾いだぜ」
「…………」
「……あ、あの――っ」
「――ん?」
その声も遠ざかって聞こえなくなった頃、少女が上目遣いに見つめているのにマインは気づいた。たどたどしく話しかけてくる。
「た、……助けてくださって、ありがとうございます。は、ハフナー少尉? が、助けてくださらへんかったら、……私、今頃――」
「もう普通に喋っていいぞ。あたしは別にジオンなんざ何とも思ってないからな。そのジオン訛り、無理に消そうとしなくていい」
「あうっ……!」
必死の演技もマインにたやすく見破られて、少女は涙を浮かべたままきゅっとその場に縮こまる。
「お脳とチンポが直結してる猿でもなけりゃ普通に分かる。お前、さっき収容したジオン残党のパイロットだろ。なんで連邦の制服なんか着て、こんなところをうろついてる?」
「あ、あの、……その、こ、これは――」
「ハッキリ喋れや!!」
「はううぅっ!!」
はっきりしない仕草で、我慢の限界へたやすく達したマインの拳が壁を叩く。少女は自分が殴られたように縮こまった。
「あたしはなぁ! お前みたいな、いちいちハッキリしない女が一番嫌いなんだよ!!」
「う、うう……堪忍、……堪忍や、お姉さん……ぶたんといて……ぶたんといて……」
「分かったよ。殴らねえから、さっさと言えって。……言えっつってんだろうが!!」
「ひっ――ひいいっ!! あ、あんな……う、うち、実は――」 「――なるほどな。長年世話になった隊長のオッサンが、ジャカルタの艦内でどうも危ない。そういう虫の知らせがあったと。んで、チビのくせに乳だけデカい栗毛の女が怪しいから、まずはとにかくそいつのところに行きたい。
それでわざわざ連邦軍に変装したうえ、さらに女装してまでやってきた、と」
「……せ、せや……」
「そうか。……まったく、義理堅いこったな」
マインが受けた説明をまとめたところ、デティ・コイヤー軍曹と名乗った連邦軍女性士官の正体は、ジオン残党軍の男性パイロットらしい。連邦軍装も女装も、艦内への潜入工作のための偽装だそうだ。
ただ連邦軍装の方はともかく女装の方は、顔立ちも体格もすべてがあまりに自然すぎて、まったく変装に見えないのだが、本人がここまで必死に言うのだから女装なのだろう。
とりあえずそういうことにしておける度量の広さがマインにはあった。
「よし。とにかく分かったぜデティ。お前が言ってるのその女ってのは、ジオン残党のむさいおっさんに興味津々な変態マニアのエロ女なんだろ? そんな救えねえ奴、ジャカルタ広しといえど一人しかいねえ。案内してやるよ」
「え、ええの……?」
「おう。任しとけ」
どうせ他に行くところもないしな。
言葉の後半を飲み込みながら、マインは目的へ向かって身を翻した。
「こっちだ。来いよ」
「おおきに、……おおきに、姉さん!」
「いいってことよ。気にすんな」
涙混じりに微笑むデティへさっぱり笑って手を振りながら、ところで今、マインが気にしていることが一つある。
涙を拭きながら可憐な希望の笑顔を浮かべる、女装美少年コイヤー軍曹の顔面から、マインはそっと視線の高さを下げる。
「…………」
連邦軍制服上衣の胸元でたゆんと揺れる、二つの膨らみがそこにある。
上官をしてジャカルタ最大級とまで言わしめた、マインの巨乳に比べれば二周りは小さい。それでも一般的な尺度にすれば、男の掌に包んでもたやすく溢れるだろうその大きさは、見事な実りであるに違いなかった。
こんな余計な主張をするものさえ胸にぶら下げていなければ、先刻の男二人に捕まることもなかったのでは、とも思えるほどだ。
――だが女装ってことは、これも作り物なんだよな。パットか?
「あ、姉さん? ――ひあうぅっ!?」
だからマインはデティが通路の交差点で止まったとき、背後からその二つの膨らみを両手に大きく握りしめていた。
「…………」
生っぽい。柔らかい。もちもちの弾力がぎっしり詰まったたっぷりの肉感が、人肌の温もりを添えながら食い込む指を跳ね返してくる。
制服の下にはブラジャーのたぐいまで身につけているらしい。本格的だなと感心しながら、マインは手を休めることなく二つの膨らみをさらに揉みしだいていく。
つい先ほど、マインが自らの巨乳から母乳を搾り出していた時の手つきで揉み搾る。本物の乳房なら乳首があるはずの位置を探ると、確かにそこには小指の先ほどの突起を捉えた。
マインはそこを指先の腹で擦りあげ、摘みあげるようにして指で左右とも責めたてる。耐えかねたように切なげな声を上げながらデティが左右に身をよじった。
「あッ――あ、ああ……っ、あああああ……っ! あ、ふぅ……ッ。あ、あかん……お姉さん、あかん……こ、こんなん……っ、うち、うち、もうあかん……! 堪忍や……堪忍してぇな、……いやぁ、やめてぇ……!」
「ん、……んん? おう、悪い悪い。でもな、これパットだろ? なんでお前が変な声出してんだよ――あ」
言いながらマインは、自分の巨乳もデティの背中で大きく潰れていたことを思い出す。
今はこんな見た目でも、彼は男――なるほど、こっちか。
「悪かったな。その偽乳がどういう風になってんのか、ちょっと気になっちまったもんでな。しかしそれ、ずいぶん本格的な質感と感触だな」
さっと身を離したマインの前で、半ば膝から崩れながらデティは喘いだ。焦点の合わない瞳にいっぱいの涙を溜めて、怯えきったように説明する。
「……せっ、せ、せやろ……? あ、あんな。うちもな、変装用にな、……よそのサイドでそこらじゅう探してやっと、この偽乳パッド見つけてきたんやねんで……?」
「へえ、そんなにか。すげえ情熱だな」 真っ赤に赤面して少し涙目になりながら、それでも必死の早口でデティはまくし立てた。だが、デティの胸の膨らみを貪り尽くしたマインは素直に納得してただ頷く。
「そうか、最新技術はすげえな。それ、あたしの本物の乳と大して変わらねえぞ」
あたしの乳を背中から押しつけただけでここまで興奮するような童貞じみた反応をするようでは、その偽乳も普段はさぞ良からぬ別目的で使っていたのではないかともマインは思ったが、わざわざ口には出さないことにした。黙って認識を書き換える。
デティ・コイヤーとかいうこのジオン兵は、相当重度の女装マニア(童貞)なのだな。
世の中にはいろんな人間がいるのだ。そしてこちらに害がない限り、マニアと変態は放置するに限る。
しかし、となれば事は変態対変態である。こいつならあのリアンナとも、案外いい勝負が出来るのでは無かろうか。残念ながら、自分はそんな戦いには到底ついて行けそうにないが。
それにしても。
「最近の女装道具ってのは、ずいぶん出来が良いんだなあ」
どうでもいいことに感心しながら掌をにぎにぎと動かすマインは、きゅっと肩を縮めて胸元と股間を守ろうとするデティを連れて、リアンナの私室方向へと流れていった。 カールルイスで髪コきって物理的に出来るの?
かなり短髪だったような気がするんだが お久しぶりです。
連投規制でどこまで投下できるか分かりませんが、ひとまずやってみます。 「さて、――仕上げですね」
多数のモニター群が一面の壁を埋め尽くす密室。そこに余すところなく映し出されているのは、エゥーゴ戦艦《ジャカルタ》艦内の各所だ。
通常であればここは、艦内の保安警備要員によって操作されるべき場所に思える。
しかし今それらのモニターを見つめているのは、ジャカルタ本来の保安警備要員ではない。
ここにいるのは、思い思いの姿勢を取ったMS隊のパイロットたち――それも、全員が若く美しい女性たちだった。
そもそもこの部屋自体が正規の《アイリッシュ》級戦艦の規格に含まれておらず、艦内図にも載せられていない。
ここはジャカルタ乗員の中でもごく一部の限られた者たちだけが存在を知る、言うなれば秘密の小部屋であった。
「あらあら、メイヴ。またリアンナの悪い癖ですか」
真っ直ぐの豪奢な金髪を靡かせながら呟いて、華やかな影が室内前方をすうっと過ぎる。
均整の取れた肢体に豊満な甘みを宿した美女は、画面群の一室に蠢く二人の影を眺めて悪戯っぽく微笑んだ。
二つ連なった画面には、ブラジャーを掴んだままプルプル震える旧ジオン公国軍パイロットスーツ姿の巨漢と、
その磨り硝子のドアひとつ隔てた向こう側で気持ちよさそうにシャワーを浴びる童顔の巨乳美少女が映し出されている。
「――彼女が志願してくれたおかげで、我々は《ルスラン・フリート》と交渉するための『裏口』を容易に入手できます。
リアンナの奇矯な趣味も、今回ばかりは我々の利にかなうということですよ、ルチア」
室内後方のコンソールに付いていた、メイヴと呼ばれた褐色の女性が口を開いた。
その胸元は慎ましやかだが、すらりとした群を抜くほどの長身と、南方系の涼やかな美貌は同じく目を引く。
メイヴは何の感情を見せることもないまま、ただ画面群をじっと見ている。
いずれ劣らぬ美女美少女たちの中、輝くばかりの金髪に豊満な女体を併せ持って正面に立つルチアと、黒髪黒肌にすらりとした長身で陰に控えるメイヴ。
二人の美女はさながら、ジャカルタMS隊に輝く太陽と月である。
寡黙で感情と存在感を表に出すことは少なくとも、彼女ら一党の背後で必要な動きをことごとく掌握しては細やかにこなすメイヴが、
半ば畏敬を込めて『メイド長』と渾名されているのも、至極もっともな説得力があることだった。
そしてメイヴが『メイド長』なら、ルチアはたとえ直接にそう呼ばれることはなくとも、間違いなく『第一夫人』だった。
この一室に集う女たちの間で、その序列は鮮烈に刻みつけられている。
ジャカルタ軍医を兼務する第二小隊パイロット、シャノン・ヒュバート少尉はそんな二人を視界の隅に留めつつも、画面の中で沈痛な面持ちのまま通路を流れていく戦友、マイン・ハフナー少尉を追っていた。
マインは二人の舎弟を従えてエゥーゴに参じた、旧ルウム宙域の鉱山衛星出身の荒くれ者だ。
顔立ちは整ってはいるがとにかく目つきと態度が悪く、それでいていっそ下品なほどに乳房は大きい。
ルチアの豊満なバストをも上回るそのインパクトで、艦内の男たちから下賤な話題を一身に集めていたのがマインだ。
もっともそんな軽口が本人の耳に入れば、胸倉を掴み挙げられ、物陰へ連れ込まれて痛い目に遭わされることになっただろうが。
そんな彼女は先日のMS戦で、自機のコクピットを敵機のビームサーベルに貫かれた。
機体の誘爆こそ免れたものの、リニアシートを含むコクピット主要部は完全に蒸発。通常であれば金髪の爆乳美女の肉体は、メガ粒子の奔流の中で骨も残さず塵に還っていただろう。
だが、そうはならなかった。
マインに秘められたとある特殊な因子の発動が、彼女の肉体と生命を、ガンダリウムγ合金すら蒸発させる超高熱の中で守り抜いたのだ。
そして、その反動で彼女は発情し――嫌ってさえいた男に自ら懇願して処女を貫かれ、さらに想像を超える快楽の絶頂で、その膣内へと大量の射精を受け止めた。
シャノンはその情事の一部始終を観察し、記録し、分析していた。何の感情もなく、ただ淡々と――その事後の状況も含めて。それが彼女の使命だからだ。
そんなシャノンの柳眉が、ぴくりと動く。薄い唇が言葉を紡いだ。
「ん、……あの連邦制服の少尉、――見ない顔ですね」
マインの行く手でジャカルタの男性士官二人に絡まれていた、長い赤髪の少女だ。連邦軍士官制服を着ている。彼女もまた、この部屋に集った女たちに劣らぬほどの美貌を備えていた。
マインは男たちから彼女を助けて連れ出し、二人はそのままリフトグリップで流れていく。 「確かにそうですね、シャノン。密航者? ――いや、……」
言いながら端末を操り、メイヴはMS格納庫を拡大する。満身創痍で収容されたジオン残党MS三機のうち、コクピット内にパイロットを残すのは一機だけになっていた。
電話を取って現場の整備兵に聞いてみれば、ドラッツェのパイロットがどうも腹の具合を悪くしたという。
そして少し目を離した間に、マインと謎の少女士官は意気投合したらしかった。二人揃って再びリフトグリップを握り、進路を変えながら移動していく。
その二人が向かう先に、リアンナの居室はあった。メイヴはひとり得心し、静かに頷く。
「――なるほど。繋がりましたね」
「どうしますか?」
話の流れを読んだシャノンが、素直にメイヴへ質問を投げる。
保護したジオン残党兵の少佐を色仕掛けで落とす、などというリアンナの計画は馬鹿馬鹿しくなるような代物ではある。
だがその手の技能は彼女の十八番でもあり、また古典的なだけに一定の効果は確実に期待できる手段だ。
ここで邪魔を入れられるのは、決して面白い話ではない。
さて、どうするか――
ルチアの口元に不敵な笑みが浮かんでくるのを横目に、シャノンはふっと息を吐いた。 「ふふ、おじさま。いいお湯でしたわ――」
「は、はおっ。はおおおおおーーーッッ!!」
剥き出しの肩から湯気を溢れさせながら、栗毛の美少女は禿頭の巨漢を狙って迫り来る。
幼ささえ感じさせる肢体へアンバランスに、そして豊かに実った胸元の果実がふたつ、歩を進めるたびたわわに揺れる。
白い肌を湯上がりの熱に火照らせながら、無防備な女体にバスタオルひとつ巻き付けて迫り来るリアンナへ、ドッツィは両手を振り回しながら悲痛に叫んだ。
「あ、アカン!! 頼む、服着て! 後生やから!! まず服着てや!! 湯冷めして、風邪っ! 風邪引いてまう!!」
「あら? おじさまの方こそ、殿方の大切な部分が、こんなに大きく熱くなってしまっておりますわよ。
いけませんわ、お風邪を召されてしまわれたのではなくて? ああん……早く、何とかしませんと……」
リアンナは蠱惑的な視線を向けつつ、今やノーマルスーツの上からもその存在を確認できるほどに堅く盛り上がったドッツィの巨砲に舌をなめずる。
互いに息のかかる距離まで追いつめ、そっと手を伸ばしてきた。
「ハオーーーッ!!」
「あぁんっ!?」
蛇に睨まれた蛙と化したドッツィは、それでもその手を跳ね除けた。声を絞り出しながら、迫る少女を押しとどめる。
「あ、アカン! アカン……こ、こんな、会うたばっかりのオッサンに、いきなり……いきなりは、アカンっ。
あのな。お、女の子は、もっと、自分を大切にせなアカン……!! せ、せやないと。せやないとな……」
「くすくす。そうでないと、――どうなりますの?」
「……せ、せやない、と――」
そうリアンナが問うた瞬間、風が揺れた。
巨獣のごとき身のこなしで跳躍するや、ドッツィは瞬時に少女を壁際へ組み伏していた。巧みに関節を極めて完全に動きを封じ、彼女の死命を制する位置を確保している。
ドッツィはその耳元から、今までの狼狽具合が嘘のようにドスの利いた声を吹き込んだ。
「世の中、まともな男ばっかやあらへん。――何されてまうか、わからへんのやで」
「あら、あら。うふふ――」
「一年戦争の時分、ワシは地球方面軍におった」
腹の奥底深くで澱のように溜まった、決して溶け出すことのない何かを搾り出そうとするかのようにドッツィは言った。
「北米や。荒れ果てた戦場で生きる術をなくした地元の女の子が無理に稼ごうとして、荒んだ兵隊にほんまに惨い目に遭わされるところも、嫌っちゅうほどなんべんも見たわ」 乾いた大地に広がる爆撃の瓦礫。コロニー落としが遙か高空まで巻き上げた塵に覆われ、晴れることのない曇天。
HLVから荒野に降り立つ軍靴。故郷を遠く離れた地球の重力、コロニーの人工環境とはかけ離れた荒れ狂う天候に戸惑う公国兵たち。
敵地。
ゲリラ化した連邦軍の残存部隊と、市民に溶け込む地元民兵の抵抗。突然の狙撃で倒れる戦友、脈絡なく炸裂する仕掛け爆弾で消し飛ぶ車列。見えない敵が神経を苛む。
自宅も家族も失い、焼け出された少女たちが夜の街頭に立つ。傷ついたジオン兵たちへ向けられる、強ばりを隠しきれない笑顔。兵士たちに誘われ、一人二人と連れ立っては闇に消えていく。
そして風の冷え切った夜明け頃にもまだ、路傍に姿を留める少女たちがいた。
ある者は廃屋に高く吊され、またある者は裏路地に捨てられたまま冷たくなって。
大地へコロニーを落とした侵略者に媚びる売女。もしくは物陰から自分たちをつけ狙い、情報を聞き出すゲリラの一味。
あるいは、理由など何でも良かったのかもしれない。弱く孤立して狙いやすく、壊して楽しい手頃な獲物でありさえすれば。
そうして少女たちを殺し続けていた自軍兵士のひとりを、かつてドッツィは追いつめた。銃撃戦の末に横たわった彼の死に顔は、まだ幼くあどけない少年のそれだった。
戦場という状況の巨大さを前にして、たかが一士官に出来ることなど何もなかった。だからただ、彼はそれを見ていた。その狂気に呑まれぬよう、必死に自分を保ちながら。 「――せやから、な。後生やから、そういうの、やめや」
無重力ゆえドッツィの巨体に伸し掛かられても、リアンナがその体重そのものに圧されることはない。それでも彼女は必殺の位置を取られたまま、身じろぎひとつも出来ずにいる。
「あら。私、殿方に無体に嬲られるのは、慣れておりましてよ?」
そしてリアンナは、にっこり微笑んで話し始めた。
「だって私、もとから箱入りの性奴隷でしたもの」
「――は?」
居室の窓から覗く暗礁宙域。一面に漂うスペース・コロニーのデブリ雲から照り返す月光の下で、リアンナは今までと寸分変わらぬ笑みを浮かべていた。
「宇宙移民から一代でのし上がった、立志伝中の実業家。彼が自身の欲望を満たし、そして権力者たちの欲望までをも抱き込んで己の権勢を拡大するために築いた、最高級の性奉仕に勤める少女たちを箱詰めで育てる学園。物心付いた頃には私、もうそこにおりましたの」 すえた臭いの広がる、コロニー内の裏通り。ゴミ箱を漁る幼い孤児たち。
その一人の幼女の腕を、不意に男が高く引きずり上げた。汚れた顔を値踏みするようにまじまじと見て、合格、と呟いてニヤリと笑う。
彼女が男にそのまま荷物のようにエレカの荷台へ放り込まれても、気にする者は誰もいなかった。そういう場所だった。
『学園』へと拾われてから、少女の生活は一変した。
清潔な衣服、温かい食事と寝床。まだ両親が生きていたときですら、これほどの贅沢は味わえなかった。
洗練された知的な女性を育て上げるための、充実した教育。各種の学問、高度な礼儀作法――そして大人たちと密室で肌を合わせて喜ばせるための、様々な技術と実践。
それらの中でも何より重視されたのは、『先生』の偉大さだった。
『先生』と呼ばれる創業者にして学園創始者がどれほど慈悲深く、学園へ集められた少女たちにとって、心より深く感謝しなければならない絶対の存在であるか。
幼い心へ無条件に刷り込まれた絶対の忠誠の中で、『先生』から『夕食会』に呼ばれることは少女たちにとって最大の名誉であり幸福であり、彼女たち自身の序列を決定するものだった。
『夕食会』の相手は『先生』本人ではないことも多かったが、『先生』が選んで示した相手を全力で喜ばせることも、また少女たちにとって無上の喜びであるとされていた。
たとえ夕食会の夜を共にした大人から、どれほどの苦痛と暴力を恐怖とともに刻みつけられるとしても。
夕食会に連れ出されたまま二度と帰らず、そのまま存在そのものを消される少女たちがいても。
ここは変だよ――そう言った少女がいた。
何がきっかけだっただろうか、その頃に仲良くなった少女だ。心の底からは周囲に馴染めなかった少女に、初めて出来た友達。そう。友達、だった。
大人たちが近くにいない時、彼女はいつも学園の外の世界の話をしていた。決して越えられない学園の壁の向こう、もう戻れない世界の話を。
そして初めて呼ばれた『夕食会』の後、二人だけになったとき彼女は泣き出し、少女の手を強く掴んでそう言い出したのだ。
――逃げよう。
だが少女は、彼女のその手を握り返せなかった。
泣いた彼女は、その翌日に姿を消した。
人づての噂で『再教育』と称して、校舎や寮から遠く離れた建物の一室へ閉じこめられたとも聞いた。学園を囲む森の中で、野犬のように殺されたとも。
真相は分からないままだ。
少女の隣にぽっかり空白を残したまま、何事もなかったように、日々は続いていく。
繰り返される夕食会。全身を這い回る舌と手。打擲。首を締め上げる手。薄れる意識。侵入と汚濁。
「でも、――そんな日々は突然に終わりましたの。あの日。U.C.0079、1月15日――」 ルウム戦役。
艦隊戦が始まる前からすべてを呑み込んでいた大混乱の中、本社からの連絡も途絶して、ただ右往左往する学園の教師たち。
理事長ら学園幹部はお気に入りの少女たちを連れて、とうの昔にコロニーから逃げ出していたらしかった。残されたのはコネも権限のない、見捨てられた大人たち。
そして教師たちからの指示なしでは自ら避難することすら出来ず、ただ呆然とコロニーの河から見える光の瞬きを見上げることしかできない少女たち。
そんな箱庭の世界を貫く、巨大な火柱。コロニーの外壁を撃ち抜いたメガ粒子砲の火線だ。吸い出されていく空気に、遠く離れていても学園の木々がざわつき、あざ笑うように窓が鳴る。
戦闘中にも関わらず破孔を塞ごうと、コロニー公社の作業ポッド群が必死に作業するのも間に合わないまま、艦砲射撃はなおもコロニーへ弾着し続け、その一弾がついに学園の本部校舎を直撃した。
孤児だった少女をこの学園に拾い上げて衣食住と教育を与え、何度となく性の奉仕を求めて幼い心身を貪り、外の世界での自由を求めた少女たちを厳しく罰してきた大人たちは、灼熱の劫火に焼かれて一瞬にして塵に帰った。
今までずっと手足を、そして魂までをも戒めていた、見えない枷が燃え尽きたことを少女は知った。
そして風が激しさを増した空を見上げたとき、少女は破孔の先で宇宙に浮かぶ単眼の巨人を見た。
肩に負った重厚な砲身を彼女へ向けて身構える、緑色の機体。その力強く神々しいまでの美しさに、ああ、そうか、と少女は悟った。
やはり『先生』よりも偉大な『神様』は、この世に在るのだ。
MS-06C《ザクU》はコロニー外壁に開いた破孔を精確に狙い、ザク・バズーカから280mm径の核砲弾を発射した。
箱庭は消えた。
同じ軌道でその日同じように燃え尽きた、二十億の人間と同じように。 「ジオンのザクは、私の解放者でしたわ」
華やかな満面の笑みを浮かべ、リアンナは恍惚と語る。
「ジオン軍はあの腐りきった世界を焼き払って、私を解き放ってくださいましたの。――そうして世界の汚れた半分を焼き滅ぼした後も、おじさまは戦い続けた。
やがてザビ家の公国が敗れても、連邦が放った無数の追っ手を討ち平らげながら、絶えることのない戦いの中を生き延びてきた……」
ドッツィに手足を戒められたまま、リアンナは唇に舌をなめずる。獲物を狙う蛇のように。
「あの破壊と殺戮と闘争の中で、極限まで研ぎ澄まされてきた戦士の魂が放つ、溢れんほどの生命力。私は何よりも、それが欲しいんですの。
金と権力だけが取り柄の、薄っぺらな男たちとは違う――あの戦争に磨き抜かれた本物の『男』だけが持つ力と欲望を、……私のいちばん奥に刻みつけて、……私を完全に、壊してほしいんですの……」
「…………」
「おじさまなら、今の私を壊してくれる。そのためでしたら私、何でもいたしますの。何をされても、構いませんわ……――おじさま?」
「すまんな」
くすくすと笑うリアンナの四肢を戒める力が、不意に緩んだ。それと同時に、ドッツィの巨体が彼女に重なる。リアンナを力強く抱きしめていた。
ようやく、始まる――今まで何度となく重ねてきた、しかし待ち望み続けてきた初めての情事を思って微笑みかけたリアンナの耳に、耳慣れない音が聞こえた。
それは巨漢が全身を震わせて泣きむせぶ、嗚咽だった。
「すまんなあ、――すまんなあ。ワシら大人が、不甲斐ないばっかりに。お嬢ちゃんみたいな子らに、……えろう辛い思いばっかりさせてもうて……」
言葉を何度も詰まらせながら、ドッツィはリアンナをその腕の中へと抱きすくめる。
「辛かったやろ。怖かったやろ。堪忍な。堪忍してや、……ほんまに、すまんなあ……」
「……おじさま? 嫌ですわ。私、辛いことなんか、何も、……何も――」
言葉のやりとりは、そこで止まった。
身動きも出来ないまま、ただドッツィの嗚咽と互いの呼吸と心音を聞くだけの時間が流れる中でリアンナは不意に、その懐かしい感覚に気づいた。
ずっと遠い昔。まだ彼女が物心つく前に死に別れた――父親の、記憶。
学園で過ごした日々も、その後の八年間も、一度も得られることのなかったもの。
啜り泣くドッツィの腕の中、その懐かしく暖かな温もりのなかで、リアンナは戸惑う。巨体を押しのける力もなく、何よりもその意志が出ないことに。
そんな彼女たちの頭上に、間の抜けた呼び鈴が鳴る。
最初の一度から少し間を置き、続けて何度も。
それでも二人がそのまま動けずにいると、異常に強烈な金属質の打撃音が、二人の背後――部屋のドアから響きわたった。 「オラァーーーッ!! 出てこいリアンナァァァーーーッ!!」
ガゴーン! ガゴーン! と戦艦ジャカルタ居住区の回廊に炸裂する、工事現場のごとき破壊的騒音。
その正体は長身の金髪爆乳美女が鉄パイプを振り上げて繰り出す、異様に腰の入った強烈無比なフルスイングだ。一撃ごとに火花が飛び散り、頑丈そうなドアが凹む。とんでもない腕力だった。
「居留守ブッこいてんじゃねぇぞオラァ! いるのは分かってんだよ! 観念しやがれ、出てこいリアンナッ!!」
「ご、後生やから止めてっ、止めてや姐さん! なんか、ウチが思ってたんと違う!! こんなん、ポリが! ポリスメンが出てきてまうッ!!」
「じゃかぁしぃッ、何がポリだ! ポリ公で済むならエゥーゴは要らねェんだよ!! あたしは今最高にムカついてんだ!
オラァ、いつまでも暢気にシカトぶっこいてんじゃねぇぞリアンナァ!!」
「あ、ああ……っ、あああああ、あああああああ〜〜〜!!」
自信満々の態度で、目指すこの部屋までデティを導いてきたマイン。
彼女は秘密の合鍵を持っているなり、あるいは巧みに交渉するなり、いずれにせよもっとソフトでスマートな方法を用意しているものとばかりデティは想像していた。
だが今のデティはあまりに原始的かつ衝撃的な光景を前に、もはや為すすべもなくか弱い乙女となって立ち竦むだけだった。
到着当初に数回ほど呼び鈴で穏便に呼びかけた後、内側からの反応なしと見るや、マインはどこからともなく取り出した謎の鉄パイプで猛然と破壊工作を開始したのだ。
デティが止めに入れる暇など、無かった。
(終わった)
極めて的確に現状を把握しながら、さりとてもはやデティに出来ることは何もなかった。
下手をすれば、いやしなくとも、もはや現状は既に艦内破壊工作である。こうなれば破壊工作共犯の罪状までは被るとしても、当初の目的であったドッツィの救出だけは完遂するしかない。
というか本当にもう、それ以外にない。
ここまで来ればデティとしては運を天に任せて、マインが扉をこじ開けてくれるのを待つほか無いのだった。
今はただ、せめて艦のMP(ミリポリ)が殺到する前に、ドアが叩き壊されることを祈るのみ――
「ドラアアァーッ、――おおおッ!?」
その猛然と乱打していたマインが鉄パイプを振り上げたきり、突如として破壊の手を止めた。
ドアが開いたのだ。
打撃でフレームが歪んでいたためかドアはレールの途中で止まったが、とにかく人が通るには十分だった。
「あっ、兄ィーーーッ!!」
「ケッ、手こずらせやがってっ」
デティは思わず叫びながら、それでも咄嗟に室内へ飛び込んでいた。マインも悪態を吐き捨てながらそれを追う。
「――ひッ……きゃっ、きゃあああああーーーっ!!」
「おい、どうしたデティ――おおッ!?」
そして真っ先に飛び込んだデティは、絹を裂くような悲鳴を上げて立ちすくんだ。瞬時に沸騰するように真っ赤になった顔面の前を両手で隠す。
追ったマインが何事かと見れば窓の下、全裸のリアンナを禿頭巨漢の中年男性ジオン兵が組み敷いていた。
どう見ても強制性交罪による現行犯逮捕待ったなしの事案だったが、ドッツィはなぜか赤く泣き腫らした顔をしており、リアンナの方も涙の粒を浮かべたまま、狐に摘まれたような顔で二人の乱入者を見ている。
「あ、あの、ど……どちらさん、ですやろか……?」
鉄パイプを肩に背負って睨みつけてくる凶暴そうな金髪の長身爆乳美女と、きゃあきゃあと叫びながら赤い長髪を振り乱して恥じらうだけの、見慣れない連邦軍士官の美少女。
いずれとも面識のないドッツィは、すわ美人局ヤクザの襲撃かと身構えつつも、美しい娘二人の微妙な場違い感と『らしくなさ』に気圧され、リアンナを守るように抱きしめたままその場に竦む。
そんなドッツィの戸惑いをよそに、リアンナが平然とした口調で問いかけた。
「――あら? マインさん。どうされましたの? ずいぶん乱暴なノックですこと」
「うるせえよ。お前のお目当てのオッサンの子分が、兄貴を助けてくれってうるせえからよ。ちいっと手伝いにきてやったのよ」
「あ……っ、あ、兄ぃ……な、なんも、されとらへん? え、……えっちぃなこと、……まだ、なんも……されとらへん……?」
マインに紹介されながら、しかしデティはまだ両手を顔の前にかざしたままで、あられもない二人の現状を直視できずにいる。 「え……? お、……おまえ、まさか、デティ、……か……?」
「あ、……あううぅ……っ……」
ドッツィの目の前に現れた気弱でいっそ儚げな美少女と、命知らずの義兄弟の印象はまったくと言っていいほど一致しない。
しかしよくよく見てみれば、その顔立ちは確かにデティのような――
「あああああーーーっ!!」
まじまじと見つめられたデティは内股でもじもじした挙げ句、急に奇声を発して近くのトイレへ飛び込んだ。
呆気に取られた一同が見守る中、ガタガタと狭い空間で暴れるような騒々しい音がしばらく響き、やがて再びドアが開く。
「フッ、……ハハハハハッ! 待たしたな兄ィ! デティ・コイヤー参上や! 助けに来たでぇッ!!」
そして勢いよく飛び出てきたのは、ドッツィと同じジオン軍パイロットスーツ姿の美少年――デティ・コイヤー軍曹だった。ビシイッ、とリアンナの顔面を力強く指さして挑発する。
「もう大丈夫やで兄ィ! このワシが来たからには、もはや淫乱ロリ乳クソ雌ビッチ風情の好きにはさせへんで!!」
「おおおおお……? おい、デティ……お前ってこっちの、……こういうのが素なの……?」
今までの気弱さが嘘のような豹変ぶりにマインは一瞬戸惑ったものの、すぐにただただ感心し、その豊かな胸を持ち上げるように腕組みした。
「ヘッ、やるじゃねぇか……お前、なかなかの役者だな。気に入ったぜ!」
「おう、世話になったわ姐さん!! ほんじゃあの、ビッチ姉ちゃん。うちの兄ィは返してもらうで!」
二人の闖入者は互いにニヤリと笑い、サムズアップを交わし合う。
置いていかれたままのドッツィはぐいぐい押し込んでくるデティ相手に、それでも必死に説明を試みようと口を開いた。
「お、おい、デティ。なんかいろいろ誤解しとらへんか? ちゃうねんで。この子はな、シェンノート少尉はな――」
「結構ですわ」
だがドッツィが試みようとした弁明を、リアンナが横からぴしゃりと断ち切った。にべもない口調で、誰とも視線を合わせずにデティへ続ける。
「残党軍の方ですのね? お望みでしたら、このまま連れ帰ってくださいまし」
「ぬっ……?」
「おい。いいのかよリアンナ?」
どこか拍子抜けしたように怪訝に睨むデティの脇で、リアンナの執着を知るマインが質しても、彼女の態度は変わらなかった。
「ええ、結構ですわ。興醒めですもの。私――もう、その方には興味ありませんの」
ドッツィから解放されて立ち上がるや、リアンナは髪をいつものポニーテールにまとめていく。
「しょ、少尉!」
その裸身をかろうじて隠すバスタオルが剥がれ落ちそうになるのを、ドッツィが慌てて押しつける。
だがリアンナはそれにも興味なさそうに受け取るだけで、淡々と着替えの下着を取り出しにかかりながら言い捨てた。
「お返ししますわ。お引き取りくださいまし」
「少尉……」
「はっ、そうかよ。そりゃあ良かったな。お前の吠え面が見れただけでも、あたしは今夜の飯がうまいぜ」
何か言いたげなドッツィをよそに、マインは機嫌良さそうに笑ってみせた。デティの肩をばんと力強く叩く。
「良かったじゃねぇかデティ。お前の大事なおっさんは傷物にされずに済んだってよ」
「おおきにな姐さん! ほな、兄ィ。行くで!」
リアンナの知己らしいエゥーゴの爆乳美女と親しげに渡り合いながら、デティは未だ状況へ追いつけないままでいるドッツィの手を取った。
「い、いや、行く言うてもなデティ。人様の艦で勝手に、どこ行くいうねん――」 「あ、あの――」
「ん?」
そのとき半開きのドアから、室内へと新たに声が掛けられた。
立っていたのは赤毛を後ろで短く一本に括った、エゥーゴ制服の少女だった。
リアンナほどではないが小柄で、その胸元は慎ましやか。マインやリアンナのような華やかさには恵まれずとも、素朴な清純さがある可愛らしい少女だった。
おずおずと小動物のように室内を覗き込んでいる。
「あぁ? なんだケイティ。お前、何しに来た」
「は、ハフナー少尉……」
マインから苛立たしげにその名を呼ばれて、可憐な少女はひっとその場に立ち竦んだ。それでも勇気を振り絞るように室内へ入ると、ケイティはドッツィへ向き直った。
「ど、ドッツィ・タールネン少佐と、お連れの方でいらっしゃいますね……? 本艦第二MS小隊所属、ケイティ・ブラウン伍長と申します。本艦MS隊長、ベリヤ・ロストフ大尉より伝言です」
「!」
その名にマインの肩がぴくん、と跳ねるのも構わず、ケイティは恭しく続けた。
「たいへん申し訳ございません。お部屋の手配に手違いがございました。新しいお部屋をご用意させていただきましたので、そちらにご案内させていただきます」
「さ、さいでっか……え、えらいとこに来てもうて、すまんのう……」
「おう、大儀じゃのう」
常識人然とした少女を混沌とした状況で迎えて申し訳なさげに答えるドッツィをよそに、デティは腕組みしながらさも偉そうにふんぞり返る。
そんな二人に苦笑しながらも、ケイティは次に視線をマインへ移した。
「あ、あははははは……それと、――ハフナー少尉。今の体調と、その、ドアの件で……隊長のところまで、私と来ていただけますか」
「――あん?」
マインは恐ろしげな表情でケイティを睨みつけたが、少女はその圧力をぐっと堪えた。しばらくガンを飛ばしたのち、マインは舌打ちして自身の金髪をくしゃくしゃとかき回した。
「あー……、ちっ。わーったよ。いいぜ、野郎の面ァ拝みに行ってやる。ちょうどスッキリしたとこだしな――あたしもいろいろ言ってやりたいことがある。ありがとよ、デティ」
「姐さん……! なんや、出入りか? 大丈夫なんか! 加勢しよか!?」
「バーカ、要らねえよ」
マインはさっぱりとケイティへ答えると、肩を回しながら血気盛んに詰め寄る、もはや誰の舎弟なのかもよく分からなくなってきたデティを軽くいなして笑った。
「だがありがとよ、お前のおかげで元気が出たぜ。オッサンもこれに懲りたら、もう悪い女に引っかかんなよ。また後でな!」
「お、おう……」
「で、では皆様、こちらへ……私がご案内いたします。シェンノート少尉、失礼します」
わいわい騒ぎながら狭いドアから一人ずつ退出していくと、闖入者たちの気配はすぐに遠のいた。
遠隔操作でドアを閉めきり、再び一人だけになった自室の中で、リアンナはベッドにうずくまりながら、監視カメラの死角で小さく呟く。
「――おじさま」
ドッツィの匂いと体温がわずかに残るバスタオルを裸身に強く抱きしめながら、リアンナはそっと瞼を閉じた。 今回は以上です。
挿絵の準備完了後、pixivとハーメルンにも投下します。
次回は濡れ場になる予定です。 pixivに書いた作品を投下します。
この板の他スレで書いてる作品が完結してないのが申し訳ないのですが見守ってやって下さい。
ガンダムOOのマリナがガンダムファイターになっている話です。
細かい設定としては、人が住むコロニーは存在せずあくまでも人は地球にのみ住んでいます。
つまり、ジャパンはあってもネオジャパンはないという状態です。 個人的な話ですが、スマホのメール機能が不調でそこにあった保存データを取り出せなくなったので、pixivの作品編集ページから直にコピペします。
時間かかってしまいすいません。
世界各国で長年病のように続いた戦争が4年に一度行われる新たな制度「ガンダムファイト」によって終わりを告げた。
初回の今年、2307年は中東の国家アザディスタンも同様にエントリー。
更にその代表は皇女であるマリナ・イスマイール。
雅で大人しい彼女が格闘家=ガンダムファイターになるギャップに誰もが驚いた。
しかし、彼女は10代の時に親の英才教育の一環として始めた槍と弓の分野でずば抜けた才能を発揮。
だがマリナの興味は昔から続けていた音楽に向けられ、両親を必死に説得しそれらの競技はあっさりと辞めてしまった。
まさかそれが革新的な制度に活かす時が来るとはマリナ本人思ってもみなかった。
「戦い」を徹底して嫌う彼女だが、命を奪うことのないこの「闘い」には自ら名乗りを上げた。
国民の幸せの為にできることに突き進む理念がこのような形で実現しようとしている……
とは言え肉弾戦をしたことのない彼女には基本的にガンダムファイトは不利。
スタンダードな身体捌き、走り込み、筋力トレーニング、最低限の格闘訓練……
それらを行っても基礎的な身体能力では他のファイターに一歩譲る形になる。
巧みな槍術と弓術で数人のファイターを倒してきたのだ。
これは皇女にしてファイターであるマリナとある少年の一日を描いた物語…… 「すごい、ガンダムめっちゃデカイ!」
「負けるな、皇女さま!」
ここは、中東のアザディスタンのとある町にある孤児院ーーー
子供達はこぞってテレビに釘付けになっているが、アニメではなくスポーツの特集。
それも、先日ノルウェーで行われたガンダムファイトの映像だ。
まだサバイバルイレブンの段階だがこの手の番組の視聴率は高い。
司会者はテンション高く実況を続けている。
「さあ、始まりました!我れらがノルウェーと中東のアザディスタンとの試合!
我らが代表、広大な炭鉱を有するキルステン・バルグの駈るガンダムブラース
対するはアザディスタンのファイターにして皇女でもある……マリナ・イスマイールの駈るガンダムファーラ!!
一体勝利の女神はどちらに微笑むのか!
ガンダムファイト!レディ……ゴー!!」
ノルウェー代表はハンマーを持つガッシリとした神話のドワーフのようなガンダムブラース……
キルステンは立派な髭を生やした大男。
青銅のような暗いスーツに身を包んだ筋肉質な姿。
対するアザディスタンは、細身の青紫のガンダムファーラ。女性的なしなやかなラインは正に皇女専用と言った趣だ。
画面に映ったその乗り手に子供達は目を奪われた。
皇女にしてファイター……マリナ・イスマイールは長く豊かな黒髪、白い肌、澄んだ水色の目の女性だ。
普段から国の安定や貧困に喘ぐ各地の慰問に力を入れているので、今は眼前の敵を厳しく睨んでいてもその優しいイメージは国民から消えることはない。
格闘家らしからぬのは顔だけではない。
スラリと伸びた手足、ほっそりした胴体。
しかし鍛えられているので程好く引き締まったシルエットと筋肉の切れ込みが青紫のスーツから見える。
テレビの前の女子はその雰囲気に、そして男子は美貌とスタイルに各々釘付けになっていた。
特に、このアクバルという少年は一番目を輝かせている……
彼はやんちゃで孤児院の職員が手を焼いていた。 「行け!皇女さま!!」
「おい、アクバル。落ち着けよ!」
振り上げた腕を友達に退かされても画面に魅入るアクバル。
マリナは右手には槍を構え、走ってくる相手を静かに待ち構えている。
「一撃で勝つ!」
ドワーフ宛らに体格の良いファイターの力強いモーションから繰り出される攻撃。
次の瞬間には皇女の機体の小さな頭部は破損するだろうと思われたが……
「なに?!」
すんでのところで相手を見失い戸惑う。
……次の瞬間
「どこだ!いきなり……あ……」
突如感じる腹部の痛みに仰け反るファイター。
マリナのファーラが持つMFサイズの槍が機体に命中していた。
倒れるキルステン。
瞬時にしゃがみこみ素早い一突きを食らわせたのだ。
「勝者、マリナ・イスマイール選手!」
圧倒的な勝利に驚きと興奮を隠せない子供達。
「すげえ、細いお姉さんが一発で相手を!」
「女性ファイターいるって聞いてたけど、ホントに勝てちゃうなんて、あたしも自信持っちゃったぁ。」
「おまえ、ファイターにはならないだろ。でも速攻で勝っちゃうんだから凄いよなあ!」
口々に感心を表す中、いつもは賑やかなアクバルは興奮のあまり何も語らず、笑みを浮かべて画面のマリナを見つめるだけ。
(す、すげえ……あんなに綺麗で強いなんて……
それに、あのスーツテカっててハッキリとスタイルがわかってそそるよな……)
10歳程の少年の関心事はやはりそこだった。
そこへやってくるシスター達。
「みんなー、今日はお客様が来ておりますよ!さあ、どうぞ。」 「皆さん、こんにちは。マリナ・イスマイールです。」
子供達は呆気に取られた。さっきまでテレビに出ていた姫がここに立っている。
控えめながら雅な佇まい。そしてフランクで優しい笑顔に誰もが目を丸くした。
身に纏うのは流石にあのピッチリスーツではなく、白い上着に紺色の膝丈スカートというシンプルな姿。
職員が企画した子供達への一大サプライズで、話を聞いたマリナはファイトのテレビ放送とタイミングを合わせるというアイディアに戸惑っていたが、子供達の励みになりたいと承諾した。
今日も他の国でファイトをした帰りに寄ったのだ。
孤児院から少し離れた場所に今日だけ置かせてもらっているガンダムを後で子供達に見せるサプライズも用意している。
「え、えーすごい!ホントにマリナ様?」
「信じられない!今テレビ見てたとこだよ?」
皆沸き立って彼女を取り囲む。
「ええ、前回の闘いよね?何だか恥ずかしいわ。でも、皆に元気を少しでも分けられたみたいで良かった……」
はにかみながら談笑を続けるマリナ。
やがて彼女は皆が戦争や犯罪が原因で家族を失っていた話を聞いて慰めたり、得意のピアノ演奏で楽しませたりしていた。
そんな時……
「ターッチ!」
「キャッ……!」
小さな手がマリナの胸を豪快に触った。
やったのはいたずらっ子のアクバル。
「ちょっとアクバルー、皇女様になんてことをー!」
「全くホントにこの子は…!こういう時に……!」
赤面しながらアクバルを戸惑いの目で見続けるマリナ。
「……んーテレビで見たけど、思ってた以上に小さめだなー
ここのシスターさんの方がでかかったぞ?」
「……わ、私は鍛えてるからそんなに大きくならないだけで」
初めて触れられた驚きでスムーズに話せないマリナの代わりにシスターが捕らえようとするが、少年らしい俊敏さで建物を出ていくアクバル。
「小さいけど、柔らかくていい感じ……
鍛えててもやっぱり女の人だな。」
掌を見つめながら広い空地に行くと、彼は一気に目を丸くした。
「これは……あの、マリナ様のガンダム!?」 大木や簡素な滑り台やジャングルジムという日常的な光景の中に一際目立つ鋼の塊が片膝を着いてそこにあった。
さっき皆でテレビで見て盛り上がっていた自国の守り神・ガンダムファーラ。
頭部や腕部、脚部は殆どのガンダム同様に純白。
胴体と肩はマリナが演説や国内各地への訪問時に着ている正装宛らの鮮やかな青紫。
新聞等で見た他国のガンダムよりずっと華奢で格闘用機体というイメージはかなり薄れるが、やはり巨大人型マシンなので間近で見た迫力はかなりのもの。あんぐりと口を開けてしまう。
「……マジか?信じられねえ……あのMFがここにあるなんて……」
グルリと回り様々な角度から機体を鑑賞していくと、男特有のメカへの憧れが刺激される。
「実際に見るとでけえな……ん?」
背中から入る方式なのだろうが、肝心の背中ハッチが少し空いている。まるで入ってくれと言わんばかりの様子。
しかもそこから太いワイヤーが垂れ下がっている。いつもこれで乗り降りしているが、今日は仕舞い忘れたのだろう。
それを見て好奇心と悪戯心に溢れた彼に大人しくするのは無理だ。
「……やってみっか。」
グリップに付いたボタンを押すと背中の位置にスルスルと上がっていく。
「この高さ、何か不思議な感じだな……遊具の上に上がるのとは何か違う。
しかしマリナ様、意外と不用心だな。そこが可愛いか、フフッ。」
綺麗な皇女の「一人部屋」に侵入するようなスリルを持ってにやけながらコクピットに入ると、そこにはテレビで見たのと同様殆ど何もない、しかし真っ暗な空間が広がっていた。
手探りで探し当てた壁のライトを付けると無機質な壁に周囲の見慣れた町の風景が写し出され、天井と床に一つずつ設置されたリングが見えた。
「おー、テレビと同じだ!よく映ってるじゃん!
この高さだと色々イメージ違うなー。絶景かな、ってな。
取り合えずマリナ様ビックリさせたいから待ってるか!」
コクピットの隅にドカッと座る。 それとほぼ時を同じくして、上空には一体の剛健な外観のガンダムが飛んでいた。
メキシコ代表のガンダムスティンガー。手足に付いた複数の棘、サイズは大小様々。
乗っているのは荒れくれ者のバイス・アリアス。元野盗・名うてファイターの一人だ。
180強の身長のガッチリした身体。日に焼けた肌に僅かな顎髭を蓄えている。
「ここか、アザディスタンの姫が来ている場所は。腕が立つようだが叩きのめしてやるぜ!」
掌に拳を当てて意気込む。彼は元野盗だけあり、手段を選ばず卑怯で荒っぽい戦術を好むファイター。
自国からも色々問題視されているが一番の適任者ということで御上が目を瞑っているのが現実。
何人かの柄の悪い男達が町の至る場所から出て来て旗を振っている。
「バイスの兄貴ー待ってましたぜ!」
「よお、お前ら!ん、あそこにあるじゃねえか。ターゲットのガンダム。暢気なものだぜ。」
ファーラを見つけると重々しい音を立てて降り立つ機体。
駆け寄ってくる柄の悪い男達。
彼らはバイスの盗賊時代の手下で、彼の為に暗躍する時がある。正にどこまでもダーティーなファイターだ。
「おい!皇女のファイターはあんただな!俺はメキシコのバイス・アリアスだ。
ファイトを始めようぜ!」
アクバルはその大声に驚きスクリーンに映る仁王立ちするガンダムに度肝を抜かれる。
しかも手下達がライフルを持ってこちらや近隣の建物を脅すような素振りを見せている。
やんちゃなアクバルも普通の子供。犯罪者や荒くれ者には耐性なんてなく、出るに出られない。 「やばい、どうしよう……てかここで降りても危ねえし。
そういや、あの機体前に中継で見たけど、結構おっかない奴だったような……手下も従えてるし……
早く帰ってきてくれーマリナ様……」
しゃがみこんで怯えるのも無理はない。勝つために民間人を盾にしようとしたこともある極悪非道な相手だ。
近隣の住民も震えて黙り混んだり隠れたりしている。
「私に用!?」
そこに聞き覚えのある女性の声がして顔を上げる。
周りの連中も一斉にその方向を向いた[newpage]
「え……本当に来た……?」
「随分騒がしいわ。あなたの相手は私だけでいいでしょう。場所を変えましょう、ここにいる皆さんの迷惑になるし。」
そこにいたのは誰もが待っていたマリナ・イスマイールだ。服はあの時と全く同じだがファイトの時に見せた厳しい表情で強靭なガンダムと周りの犯罪者を睨んでいる。
「よく来たな、姫さん。でも、俺は人に従いたくねえんだ。俺が態々来たんだし、どうしてもってんなら上空でやり合おうぜ?
……その前にこいつらでウォーミングアップだ!やっちまえ、お前ら!!」
彼の一声で一斉にライフルをぶっぱなす男達。
「あぶね、マリナ様……って……アレ?」
アクバルの心配は無用だった。しなやかな動きで銃弾のパレードを避けると、男達を一人ずつ殴り、蹴り、投げ飛ばし全員をのしてしまった。
「いいぞ、姫!やっぱり、生身でも凄いんだ!……」
「……あっさり倒すとは……あいつらファイター程じゃねえが相当強いってのに……
やっぱ本物のファイターには勝てねえのか……」
「あなた、国の代表として恥ずかしくないの?」
「勝てりゃいいのさ!早く始めなきゃ町の奴らどうなるかわからねえぞ!」
ワイヤーを掴むと背中のハッチを開けっぱなしにしているのに気付いて頬を染めるマリナ。
「私のミスだわ……気を付けなきゃ……」
ハッチを開けると皇女とご対面。苦笑いしながら出迎える少年。
「ど、どうもマリナ様。凄かったぜさっきの闘い……」 「アクバル!ここにいたの!」
怒りながら近付く彼女の迫力に圧倒され俯くが……
「……本当に心配してたのよ。あそこにいる皆も何かあったら悲しむわ……」
格闘家とは思えない優しい力で頭を撫でられ、赤面するアクバル。
「ごめん、俺面白そうだからここに入っちゃって……
邪魔にならないように下りるよ……」
「……だめ!あいつは有名な悪漢よ。いきなり出てきたあなたを人質にするかも知れないし……」
「じゃあどうすりゃ……」
事実過去の大戦で使われていた緊急脱出用戦闘機は配備されていない。こうなれば……
「……そうね、壁にあるバーに掴まっていて。大丈夫、必ず勝つわ。
皇女の誇りにかけてあなたを無事に皆の元に帰すわ……
……だから、目を瞑っていてもらえる?」
「……わかった。」
口を閉めて覚悟を決めるアクバル。しかしこの年の少年特有の高揚が生まれて、いてもたってもいられなくなる。
(でも、あの姿になるってことだよな……
おい、ヤバイって……!)
興奮する彼をよそに静かかつ素早い動作で衣服を脱ぐ音が聞こえる。
それらを手慣れた動きで畳むと、床リングの中央に立つマリナ。
「バイス、今から始めるわ。モビルトレースシステム起動。」
(マジで始まるのかよ……あのスーツを着るのか……) (……うーん、我慢できねえ、許してくれよ。姫様。)
恐る恐る目を僅かに開けるとその光景に息を飲んだ……
幸いにもというべきか?目を閉じながら少し脚を広げ、祈るように両手をそっと握るマリナ。
これから闘うには相応しくない、寧ろ神を無垢に信じる聖女のよう。
柔らかさと優しさに溢れていた。
(ひめさま……邪魔しちゃいけない雰囲気だな
でも見ちゃう、ごめんな)
大人だろうと子供だろうと男であるのに変わりない。視線はその人並外れた美貌だけでなく、体にも注がれていた。
想像通りのスラリとして、同性の中でも華奢な体つき。
しなやかに伸びた長い手足。
どう見ても格闘には似合わない、寧ろ一流の女優やモデルのような姿。……但しシルエットだけなら。
手足は細い形を保ちながらも、程よい深さの切れ込みがあった。肉付きの薄い腹部にも腹筋のうっすらとした横ラインがいくつか走っており、縦ラインは比較的深々と主張している。
正に女性らしさと格闘家らしさの融合と言うに相応しい完璧なバランスだった。
……とは言えまだ子供のアクバルにはこの状況でここまで深く見る余裕はなく、全身の素晴らしさに驚愕し、男心を揺さぶられるしかなかった。 (すごい、マリナ様……
見ちゃった……姫様の裸を見ちゃった……
俺もしかして重罪?)
様々な考えが頭の中にとっちらかって、眼前の光景を目に焼き付けるしかない。
そして天井のリングから薄い布が力強い勢いで降ってくる。
彼女が王宮にいる時と同様、鮮やかで品のある青紫と、雪のような純白の二色に彩られたスーツ。
一気にマリナの肩から足元まで降り立つと、彼女は無表情から一転、目を閉じたまま苦しみ始める。
「う、ああ、……うう……!」
伸びやかな手を重々しく揺らし、激しくスイングすると両腕は一気にスーツに包まれる。
「が、頑張れ。マリナ様。」 初めて見る、皇女の苦労に思わず呟いてしまう。[newpage]
「う、ああああぁぁぁ……」
小振りな胸や細い鎖骨を覆うスーツ。
細く引き締まった胴体を大胆に反らして、体を柔らかいモーションで捻り続ける。
しかし、次が色んな意味で問題だった……
控え目な毛で守られた秘所に当然の如くスーツが食い込む。すると……
「お、おおお……や、く、くす……」
(……?お、おい何を……)
いきなりそそるような声を出すマリナ。しかも、今度は体を反らす代わりに尻を突き出している。
アクバルも反応してこれまで以上の視線を注いでしまう。
「く、くすぐったい……あ、あ……」
男の好奇心が煽られたのかマリナの背後に回るとやはり、小さくも美しく引き締まった上向きの尻がスーツに包まれながらこちらに突きだされている。
尻を振って何とかスーツを体にフィットさせようとしているのを知って尚興奮するアクバル。
前後の秘所に与えられるスーツの摩擦と闘うマリナ。
「……!」
(マリナ様、くすぐったいって……てかこのポーズ相当ヤバイんじゃ……
俺ケツ触っちゃいそう……いや、ダメだ。んなことしたら処刑もんだ!)
子供なりに理性を働かせ、伸ばした手を慌てて引っ込める。
「……ふー、はあああぁぁぁ……!」
脚を含め下半身を激しく動かして全身にスーツを纏うマリナ。
一回のファイトや訓練毎にスーツは入れ換えられるので、前後の秘所は新品の冷たさが与える心地よい刺激に少しの間耐えることになる。
「色々、大変なんだな……ファイターって……」
背後のバーに掴まりながら呟く少年に対し、ニコリと笑顔で首を横に振る皇女。
「ひめ……」
もはや彼はマリナのことしか考えられない。
「さあ、やりましょう。」
互いに上空に浮かび上がる両雄の機体。
「ガンダムファイト! レディ……ゴー!!」 ここまで投下して思いましたが、これからは純粋にバトルオンリー(少年とマリナの接触シーンが少しある位)なので勝手ながら割愛させて下さい。
因みに書き忘れましたが、ファイティングスーツのデザインは腕と下半身が青紫、胴体が純白で青紫の模様が入っています。
それでは失礼しました。 またマリナのファイター小説を書いたので前半だけ投下します。
エロそのものの比率は前作よりも少し多目でシリアスな凌辱ものとして書きます。(快楽を与えるのではなく、ガチのものです)
その為、ノリは180°違うものになります。
主役は同じですが、淑やかな闘士とはなんの繋がりもない別作品です。
また、彼女の戦闘スタイルやスーツは共通になりますが、システム関連は原作のGガンダムとは少し違います。
モビルトレースシステムは、ファイターの動きだけでなく武器関連もトレースする。全てのMFのコクピット内にはその機体が使用する武器を人間が使用するサイズに縮小したものが設置されている。
つまり、剣を使う機体に乗るファイターはコクピット内で普通のサイズの剣を振るいながら戦います。
一言で言うと、前作と繋がりがなく、システムが少し別物ということ以外は、基本的な設定は同じです。 アザディスタンの皇女・マリナがガンダムファイターになって数ヵ月。
最初は戦闘経験のない彼女が代表ファイターになるのに異論を唱える者もいたが
非力であっても、弓と槍の卓越した技術で目覚ましい活躍をしたことで自国のみならず他国からも評価の声が上がっていた。
……そして復讐を望む者もいた……
凄まじい怒号と爆発音が響くアザディスタンの首都……
サバイバルイレブンも後半になる今日、武装集団が首都に攻め入ってきたことで、本国の軍は急遽戦闘を迫られることになったが殆ど防戦一方。これを皇女が見逃すはずもない……
「……あの人達、あんなことを……!私が行きます。」
「気を付けて下さいね。もうすぐガンダムファイトの決勝ですから……」
「大丈夫。救助活動の要請をお願い。」
手を怒りで震わせて王宮の地下に進むマリナ。
そこに佇むのは彼女の愛機ガンダムファーラ。今の彼女の正装宛らに白と青紫に彩られた細身のガンダムだ。
他のファイターに比べ肉弾戦を不得手とするマリナの為に槍による中距離、及び弓による遠距離戦を主軸にした機体設計をされている。
MFとしては変わり種だ。 「……みんな、今行くわ……!」
ワイヤーでコクピットに乗り込むと丁寧かつ素早く服を脱ぐと、生まれもっての細くしなやかな体が表れる。
一見ファイターらしくないが、全身はさりげなく引き締まっている。
床中央のリングの中に音もなく座り細長い脚を伸ばす。
目を閉じて祈るように両手を握る。
これがマリナのスーツ装着における精神統一スタイルだった。[newpage]
「モビルトレースシステム起動。」
天井のリングから純白と青紫のスーツが降りてくる。
強烈な圧力を伴いながら、一気にマリナの首から脚までを大雑把に覆い尽くしてしまう。
「うっ、うっ……!いやぁぁ……!」
苦しみながら体を捻り、スーツを馴染ませようとする。
訓練によって更に小さくなった美乳を反らしながら握り締めた両手を伸ばし、上半身の力を総動員する。
「うっ……あぁぁっ……」
艶のある黒髪を振り乱し、強かに揺らした細長い腕を布の余剰部分から引き離す。
細いウエストに捻りを効かせて胴体にもスーツを纏う。
「このぉぉっ……!!」
布のプレッシャーに逆らいながら、ゆっくり立ち上がろうとする下半身。
いつもの習性から力を入れたアナルはギュッと締まる。愛している国民や他国のファイターには絶対に見られたくない姿だった。 すいません、長すぎました。
立とうとする程女性の秘部にしつこく食い込んでくる布……
「いやぁぁ……!!もう、こんなの……」
冷たく柔らかいそれは、同時にアナルにも刺激を与えていた。
「……うう……!」
腰を突き出し、小さく上向きの尻を世話しなく上下にスイングする。
摩擦音が余計に彼女の羞恥心を誘ってしまう。
……ギュ、ギュギュ……!!
「はや、く!……はぁぁぁ!」
頬や耳を赤らめて思いきり腰を曲げる。手が爪先に届く程に。
ヒップに布が定着したのを感じると上体を起こして、長い脚を片方ずつ思いきりハイキックの如く蹴り上げ布を千切る!!
「はぁ、はあ、はぁぁぁ……!!」
スーツを装着し終えた彼女は、コクピットに設置されていた槍を弓に変形させ戦火の盛る場所に飛んでいった。 街では武装集団のMSが大量に暴れ、火の海を作っていた。
MSは戦争が廃止された今ではやや古い扱いを受けるが、これらのものは違法改造で内部をチューンアップしている。
無論、並みの武力では歯が立たない。
……そんな時、鋭く強靭な矢が複数の機体の頭部を撃ち抜いていく。メインカメラを破壊されて倒れていくMSの集団。
「止めてください!戦争は終わったのに何故このようなことを……!
テロなど無意味です!」
そこに降り立つ矢の主……即ちマリナのファーラ。
戦いを嫌う彼女の切なさと憤りの籠った声が大火の中、通信によって響いていく。
「テロ?何いってんだ!?俺達は金で雇われただけだ!」
「……何ですって……?」 すぐに飛んでくる援軍の銃弾をファイターらしい鋭敏なセンスとモーションで避けると、彼らの機体頭部、及び武装を見事な射撃で破壊していく。
こっそり近付く機体を察知すれば華麗な足払いとしなやかなチョップで破壊し戦闘不能にしていく。
マリナは弓と槍の技術に長ける反面、ファイターとして非力ではあったがそこいらの軍人を凌ぐ身体能力を持っていた。
しかも、このように相手を殺さずに戦闘力を奪う力の加減も心得ていた。
「無駄な殺しはしたくありません!もうこれ以上は……!」
切実に呼び掛けた途中で……
「キャア…………!!」
鋭い一撃を肩に浴びて膝を着く。
振り返ると、一体の鋭角的なガンダムが巨大なバスターソード片手にマリナを見下ろしていた。
「……あなたはあの時の……!」
遠くない記憶の既視感が彼女に去来する。 「覚えていたか、お前に数ヵ月前に倒されたファイターだ。」
やけにプライドの高そうな口調の男は冷たく非情な目をマリナに向けている。
大剣にかけては右に出るものはいない実力者。
しかし人質を取るなど手段を選ばないスタンスから悪評な選手だったが、ギリギリでマリナに負かされた。
その時の報復に犯罪者達を金で雇ったというわけだ。
「相変わらず、このようや真似を……国民達は無関係でしょう!」
「俺はただあの時のリベンジがしたいだけだ。」
次の瞬間、相手機体の肩から放たれた強力なミサイルが腕に直撃、弓は地面に落ちていった。
同時に彼女が直接持っていた弓も足下に落ちる。
「しまった!」
拾うとした瞬間、敵の大剣が胸を鋭く斬り裂いた。
「きゃあぁぁぁ!」
そのまま連続で斬られ倒れるマリナ。
「う、うう……」
男は大剣を捨てると、彼女の弓を拾い槍状に変形させた。
「愛用の武器でされるのはどんな気分だろうな……」
「何を…………!」
いきなりファーラを俯せにすると槍のロッド部分でそのリアアーマーを殴り始めた。
「きゃぁぁぁ……!」 勿論ダメージはマリナ本人の尻に伝わってしまう。
金属がぶつかる音がする度に上向きの美しい尻が揺れ動き、皇女が悲鳴を上げる。
「私のことはいい……み、皆には、手を出さないで…………」
「流石皇女だな。だがいつまで喋っていられるかな?」
今度は槍の刃をリアアーマーに思いきり突き刺した。
「きゃぁぁぁぁ……!!」
直接刺されてはいないものの、トレースシステムにより感覚が繊細に伝達されるのでその痛みはかなりのものだ。
血液こそ流れなかったが直腸が裂かれるような痛みに襲われ尻を痙攣させる。
炎と瓦礫に包まれた街に響く姫の叫び。ファイターを含め、他の者達にも刺激を与えていた。
「さて、本題に入ろうか……」 痛みによって体を震わせるマリナ。
自分の武器で襲われたことはショックだが、痛みの中で逆転の為に考えを巡らせていた矢先、胸が凄まじい痛みに襲われ仰向けになる。
「うそっ……!そんなことって……」
ダメージだけでなくコクピットが抉じ開けられ敵のファイターが堂々と入ってきたのだ。 はい、今日はこういう感じです。
また近い内に後半を書きますね。それでは。 どうも、マリナ 犠牲の皇女の後編を次レスから投下します。 愛機と同型の大剣を携えたファイターが苦しむマリナをニヤニヤと観察しながら襲いかかってきた。取ろうとした足元の弓をコクピットの隅に蹴飛ばされ、腹を殴られる。
「ぐ……!」
刃の鋭い閃光が走ったと思った瞬間、鮮やかに彩られたスーツの胴体部分の中央がハラリと落ちて、褌のように垂れ下がる。
マリナの程よく鍛えられた胸と腹筋が晒される。これで胴体を守るスーツは脇腹と下腹部、背中部分だけになった。
咄嗟に胸を覆い相手を睨むマリナ。
「どこまで卑劣なの……」
「それは昔からさ。」
更に腹を剣の柄で殴り、その隙に彼女の愛弓を手にし槍モードに変形させ近付いてくる。
生身での格闘が不利なマリナにとって絶望的な状況だ…… 「きゃあ!」
逃げようとすれば脚を捕まれ倒されると、俯せにされてしまう。
「……私に復讐したいなら構わないわ……でも国の皆には……」
男のしたがっていることは薄々気付いて多少の不安もあったが、国民を慮る感情は本物だった。
「ご立派だな。なら……」
「いやっ……!!」
体の一部がやけに冷たいのは気のせいだろうか。スーツの腰から尻部分を繊細な剣捌きで斬られ、臀部を丸ごと暴かれてしまった……
今まで強敵との闘いで弱気になりながらもすぐに自分を奮い立たせて立ち向かってきた皇女もこの状況には耐性がなく、不安の色を雅な美貌に滲ませる。
「いい眺めだ、皇女様……今度はあんたの大事なものを返してやろう。」[newpage]
彼女の槍の柄をそのアナルに豪快に突き刺した!
「いやぁぁ…………!!やめて、痛い……!」
「いい声だ。声楽をやっていただけある……
しかし、そんなに嫌がってるとタメにならんぞ……?」
促されてモニター越しに街を見ると、ある若い女性が暴漢の一人に服を剥ぎ取られ泣いていた。
「あの女を助けたかったら、俺に逆らわないことだな……できるよな、優しい皇女様なら。」
「……っ……わかったわ。その代わり絶対にあの人には手を出さないで。」
震える声で条件を飲むマリナ。暴漢が一旦動きを止めて女性を拘束するに留まったのを見届けた矢先……
「きゃあぁぁぁ…………!!」
絹を裂くような悲鳴を上げてしまうマリナ。
敵のファイターが槍の柄をグリグリと乱暴に回しアナルに衝撃を与えていた。
勿論、これで国を救えると信じて愛用していた槍で弄ばれるのがファイターとして、皇女として、何よりも女として凄まじい屈辱だった。
「ハハハ、相当効いたようだな!!一国の代表もこうなればただの女か!」[newpage]「はあ、はあ…………」 引き抜かれぐったりしたマリナの尻を掴む男。
「いや、触らないで!!」
「いいのか、あの女がどうなっても……」
「…………」
無言で自らのアナルを開いて喉元を震わせる皇女。
「そうだ、お前は逆らえないのさ。」
「……っ!」
国は比較的貧しくとも、王族だけあり経済面・衛生面で庶民より恵まれているマリナのアナルは想像以上に綺麗だ。
それに感心すると、男は自分のスーツ股間部分を破り、大きく達したぺニスの先端を勿体つけながら入れた。
「…………っ!」
ビクッと肩を震わせて汗を垂らす皇女。
「ふふっ、育ちの良いあんたはこういう下品な遊びは知らんか。力を抜かなければ裂けるぞ。」
そして根本まで容赦なく入れると激しい躍動で腰を叩きつける。
「い、いやぁぁぁ……!!」
抉じ開けられたコクピットを通し街中に響く悲鳴。人質として捕まった女は耳を塞げず唇を噛み締めて目を閉じるだけ。
「マリナ様……ごめんなさい……」
「い、いたい、いたい…………きゃぁぁぁ!!」
涙を浮かべて叫ぶマリナ。しかし人質がおる以上、止めるのを懇願する言葉を無理矢理抑え込む。
それが却って男を刺激した。
硬く熱いぺニスは摩擦を何度も腸内に与え、鮮血に染まっていく。
招かざる客の襲撃に何も受け入れたことのないアナルはパニックで反射的に締め付けていく。
擦りきれる痛みが皇女を追い詰めていく。
「よし、健気に耐えた褒美にいいものをくれてやろう……」
「……ひぃっ…………!!」
咄嗟に許しを乞いそうになった自分を押さえつけ、それでも恐怖の声は漏れ出る。
「……受け取れ、マリナ皇女!!」
「いやぁぁぁ…………!!」
アナルに大量の白濁を流していく。
男に引き抜かれ、俯せに倒れるマリナ。
ファイターのスーツは大事な場所を破られ、精液が不浄の穴から逆流していく……
「よく頑張ったな。素晴らしい具合だったぞ……」
頭を撫でられても無反応のまま涙を流すマリナ。
「さあ、この後はわかるよな?」
「…………いや、もう、もう、やめて……」
反射的に上体を起こして首を横に降りながら逃げようとする。 「そうか、ならば仕方がないな……」
男の合図を受け、地上にいる例の暴漢は人質の女性を押し倒し、手慣れたモーションで男根をあれよと言う間に突き入れた。
絶叫する女性。それを目にして青ざめるマリナをニヤニヤと見ている敵のファイター。
「……やめ、やめてください……!もう絶対断ったりしません!!
だから、あの人を離してあげてください!!」
泣きながらすがるマリナの肩をポンポンと叩く男。
「そうだよな、国民第一だもんな……
それではメインディッシュといこうか。……但し、条件付きでな。」
「…………!?」
自分の痛み、国民の痛みに押し潰されそうな彼女は混乱のあまり、平時なら浮かんでくる疑念も持たずそれを受け入れてしまった……
そして、街の破壊活動は敵ファイターの一声で簡単に止んだ…… 凄惨な殺戮が終わってから30分後、アザディスタンの王宮前にやってきた敵のガンダムと雇われ兵達。
彼らが勝手に設置したモニターに二人のファイターが映し出されていた。
「お前ら!よく聞け!この国の皇女・マリナ・イスマイールは自らの身を守る為、お前らを見捨て、俺に身を捧げる道を選んだ!」
敵のファイターは自分のガンダムの肩に乗り、恐ろしいことを叫んでいる。
彼の隣に立っているのは以前の通りボロボロのスーツを身に付けたマリナ本人。
彼女は何かを決意した顔でマイクに叫んだ。
「国民の皆さん、私は取り返しのつかない裏切りをしてしまいました!
私は、戦いに破れたのみならず、この男から、…………体を弄ばれ我が身可愛さに奴隷になるのを決めました……
私を今まで信じてくれた皆さんを売る形で……
……これから、本格的に、玩具にされるつもりです……」
国民達から怒号と嘆きが滝のように降ってくる。
「どういうことだ!俺達を救うと散々言ってきただろう!あれは嘘だったのか!!」
「あなたが敗北するなんて……!!」
マリナはただ沈黙の中で唇を震わせるしかない。
あの時出された条件は、「マリナ自身が凌辱を受け続けることで、自分の命だけは見逃してもらう決心をしたフリ」を国民の前で見せること。
そのようにマリナ一人が裏切り者を演じなければ国民を解放しない、というものだった。
本来ならこんな誓いは反故にされるのはわかるのだが、今の彼女にはその判断ができなかった……
この取引で最初から明るみになっている真実はマリナが一生性奴隷になることのみ。
「…………!みんな、あと少しの辛抱だから……」
それは消え入りそうなマリナの声だった。
(私さえ、私さえ【裏切り者】になれば……私だけが奴隷になれば……この国はきっと……!)
小さな拳を握りしめる彼女を優越感で一瞥する敵の男。 「さあ、始めようか!!」
ガンダムの肩と言う不安定な足場で始まる凌辱。
マリナはスーツの股間部分を破られ、女の秘所を晒されると、はしたない体勢で体を抱えられた。
俗に言う駅弁ファックの格好でいきり立つぺニスが男を知らない花園に入り込む。
愛撫やローションで一切濡らされていないそこにはかなりのダメージだ。
「…………っ、きゃぁぁぁぁぁ!!」
凄まじい悲鳴を上げるマリナ。
本来男と繋がる場所とは言え、強烈な痛みだけを伝えるピストン運動。
破瓜による流血が隙間から白い太股に流れていく。
民衆の怒りと悲しみが混ざった大音響は凌辱者を更に昂らせる。
「……ふふ、素晴らしい締め付けだ……
どうだ、マリナ。愛する民共に罵られながらされるのは!
もはや皇女の威厳は地に墜ちたな!」
「……きゃ、い、いた、いたい…………!
……でも、これで、みんな、助かるなら……!」
「ふ、そんなこと本気にしたのか?愚かだな。」
「……な、何ですって……!?」
一気に凍てつくマリナの表情。 次の瞬間、王宮の敷地に次々と爆発が起こり、人々は恐怖の叫びを上げる。
ファイターの命令で悪漢達が爆弾を作動させたのだ。
誰もが逃げ惑い、ある者は炎の中で消えていく。
「みんな…………!!!ねえ、これはどういうこと!?約束が違うわ!」
取り乱したマリナから肩を揺さぶられた男はニヤけながら
「誓いはな、破るためにあるんだよ!態々こんなことまでしてご苦労なことだったな、甘ちゃんの皇女さま!!」
「…………!……いやぁぁぁ…………!!」
苛烈に突かれた末に熱い精液を奥に出されて泣き叫ぶ皇女。
とは言え、一生慰みものにされ続け国民を救えないのは変わりない。
炎に蹂躙される国の中で、取り返しのつかない後悔に一人苛まれていった。 以上です。
前作はライトなノリでしたが、今作は重い感じにしました。
暗い話なので、比較的原作のマリナっぽい雰囲気が出せた手応えもあります。
でも思い返すと、重要なレイプシーンは短いなと反省してますorz
ただ、前作との繋がりがないのでモビルトレースシステムにオリジナル設定入れたり思うようにアレンジできました。
マリナがファイターとして格闘苦手なのは変えなかったんですけどねw
また何かしらの新作ができたら投下するかも知れません。
それではノ マ・クベってやっぱり中国系なんかな
だとしたら漢字でどう書くんだろ ナ・カムラとかナ・カジマみたいな名前もあるしなぁ。 以前書いた『マリナ 犠牲の皇女』の後日談です。まだ一話だけですが……
予め書いておきますと、今回スカ要素があります。
マリナが敵に敗北し、アザディスタンも無惨に破れ去り1ヶ月が過ぎた……
敵ファイターの国の謀略により、正体不明の武装組織の仕業だというデマを世界中に発信された。
アザディスタンの物資や金銭は次々と件の敵国に秘密裏に奪われていった。
そして、何割かの国民もその敵国に奴隷として売られたので、労働力が減少したアザディスタンは再び地獄の日々を送ることとなった……
ここは例の敵国、あのファイターの自宅である屋敷。
多くの関係者がそこでパーティーに興じる中、奥の私室では凄惨な遊びが行われていた…… 「や、やめて!これ以上は……」
「やめるものか!お前のような上玉、手放すわけがないだろう。」
壁際の手錠で繋がれたアザディスタン元皇女にして元ファイター・マリナ・イスマイールが館の主であるファイターにアナルを犯されていた。
鍛えていたとは言え筋力の差は歴然、抗うこともできずに為されるがままだ。
それに手錠は特別に拵えたもの、ファイターの彼女ですら破壊できない頑丈さだ。
毎日女性器だけに飽き足らずアナルまでも凌辱され心身共に追い詰められていたマリナ。
生来の美貌こそ健在だが、少し頬が窶れて肌も蒼白くなっている。
服はあの時ボロボロにされたファイティングスーツのままだ。
「しっかり受け止めろ!!」
「いやぁぁぁぁ!!」
大量の精液が彼女のアナルを満たしていく。
引き抜かれれば何度も犯され広がったアナルから血と白濁液が溢れてくる。
満足した男はそのまま私室を出て鍵を掛ける。
「酷い……神様は私達を見放したのかしら……」
涙を流して天井を見上げるマリナ。
最初にあの男に犯された時はそのショックと国民を救いたい感情でパニックになり、甘言に乗ってしまった。結果、それは守られることはなく国は蹂躙され、自分もこの状態。
凌辱の後に思うのは国を救えず弄ばれる屈辱と国民の現在だ。
卑劣な男と政府のこと、無事な筈はないのはわかっていても願わずにはいられない……
「みんな、お願い、生きていて……」[newpage]
同じ頃、夜空を舞う多くの飛行型MS。フラッグとイナクトのカスタム機が高速で小型ミサイルを館に発射。
大量の客が逃げ、怪我人も10数人出た。
「一体、何だ!?」
館主のファイターは例の大剣を持ったガンダムで応戦するが、新型のスピード・ビーム・煙幕の前に成すすべがない。
そして同時にその部隊は地面を、いや地下を襲撃。地下に保管されていたガンダムファーラを強靭なワイヤーでホールドすると猛スピードで何処かに去っていった。
そして時を同じくして監禁されたマリナも……
憔悴しながらも外の騒ぎに反応したマリナに声が届く。
「アザディスタン皇女、マリナ・イスマイール様ですね?」
「誰!?」
窓の外には鋭く巨大なゴーグルがこちらを見ている……ブルーに塗装されたイナクトだった。
「あなたを助けに来ました!」
部屋の一部を小型爆弾で破壊し、マリナの手錠を繊細かつ迅速に壊すと、彼女をコクピットに乗せて飛んでいった。
中には彼女が以前何度も見たアザディスタン用ノーマルスーツを来たパイロットの姿があった。
「あ、ありがとうございます……しかしあなたは我が国の……」
「はい、我々はレジスタンスを結成したのです。アザディスタンを救うにはやはりあなたのお力が必要です……!」
「レジスタンス……わかりました。私も、取り戻したい……みんなを……」
「全く、何処のどいつだ……!マリナまで奪われた……」
敵のファイターが辺りを見回した時にはレジスタンスは全員姿を消していた。 コクピット内で既にフラフラだったマリナ。何とかイナクトのパイロットに連れられてアザディスタンに帰国。
国内でも人口が休僅かしかいない辺境の村にあるアジトに案内してもらった。
ボロボロにされたファイティングスーツから緑のワンピースに着替えて彼らの元に。
そこでこの組織の沿革を聞いて驚愕した。
戦争廃止及びガンダムファイト制定と同時に所謂自衛隊的なポジションに変わったアザディスタンの軍隊。
しかし、政府に極秘で海外に留学し、更なる軍事科学を得て帰国した一部の科学陣・再び戦争が起こり得る可能性を危惧した一部の政治家によって作られたレジスタンスだ。
命の奪い合いを嫌うマリナは難しい顔を浮かべた。
平和を目指しながらも彼らの行動に気付かなかった自分を皇女として歯痒く思った。
しかし、苦しめられている国を救うには彼らの後ろ楯が必要。
幸い自分をファイターとして鍛えてくれたトレーナーもここに身を寄せていた。
迷うことなど何もない。
「皆さん、今日は本当に感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。
……私は敗北した時、皆さんを裏切った発言しましたが、あれは嘘です。
決して言い訳のつもりはありません。
今国がこんな状況になっているのに今更ですが、私はある女性を人質に取られて……私自身弄ばれ、国を救う条件としてあの発言を……」
彼女の真摯で切ない様子にレジスタンスのメンバーは信じてくれた。
「私は……もう一度戦います!皆さんがファーラも奪還して下さいました。後は修理して頂ければ……」
忘れもしない、愛する国民の前での凌辱後、ファーラはマリナの眼前で敵によって無造作に傷つけられた。
以前自分を負かしたマリナに対するあの男の執念はかなりのものだった。
レジスタンスの技術が必要。メカニック達は腕の見せ所だと快く承諾してくれた。
そして、それまでの間彼女はこの組織が開発した新型イナクトで訓練に励むことになった。 レジスタンスがモビルトレースシステムを取り込んだ白銀色のイナクトは勿論可変式。
マリナ救出後に彼女用に作られた機体なので、弓による射撃の為センサーが発達。
主な武装はファーラ同様、弓に変型する槍・ボーガン・改造型リニアライフル。
本体の出力、頑強さと飛行スピードは本家イナクトを圧倒的に凌ぐ。
フラッグ・イナクト特有のディフェンスロッドを初めとした各種装備の性能も同様である。
ここはレジスタンスアジト地下にある訓練所。
「それでは皆さん、今から始めます。」
スタッフが見守る中、ワイヤーでコクピットに入るマリナ。
一ヶ月程の凌辱され続けたので動きは以前より少しだけフラフラしているが意思は本物だ。 内部は細身のイナクトだけありガンダム系の2/3程の広さだったが、それ以外は全く同じ造りだった。
天井と床には懐かしいリングが彼女を待っている。
服を丁寧に脱いで収納ケースに入れると、祈るように手を握り床リング中央に立つ。
「必ず、取り戻す。ファイターとしての強さも、国も、みんなも……!!」
天井リングから降りてくるのは白と銀に彩られたスーツ。
久々の装着故に沸いてくる緊張を解すように冷静になろうとする。
「うぐっ……!!」
柔軟な感触も、全身を圧迫するあの感覚も全て再現されたスーツ……
既に装着にはある程度慣れたものの、僅か一ヶ月のブランクが空いただけで苦しさを感じる。
何度も凌辱されたので体もまだ疲れが取れていない。
胸を押し潰されそうな感覚に耐え、体をできるだけ強くしなやかに動かした。
「キ、キツイ……!!でも、負けない……!!」
力を込めて腕を広げて布を千切ると腕にフィット。
(そう、この調子よ……!!センス、失ってなかったのね……) 汗を流しながら自信を取り戻しかけたマリナの笑み。
胸や胴体をしきりに動かし定着させていく。
「う、うぐ……キ、キツイけど、このまま……いける……!!」
下半身にもしっかり纏わせようと尻を突き出し、男に玩具にされたアナルに布が食い込んでいく……
ここに来てから塗り薬を使ったばかりで完治はしていないため、布の圧力と無機質な質感、冷たさがとても堪えるのだ……
「……い、いたい!!……でも、何とか……!」
尻をせり上げ尚もアナルにフィットさせる。
そして、股間に侵入する痛みと刺激に抗う。
「あ、あ……負けない……!!絶対に……!!」
何とか上体を起こして両足を蹴り上げると全身にスーツを纏った。
「はあ、はあ……何とか、終わった……!!」
額から落ちる汗を拭うマリナ。
全身を見ると、ボディの殆どが純白だが、脚の付け根と尻の真上からアナルにかけて銀色のV字型のラインが入っている。
正に雪原が似合う美しいスーツだった。
「それにしても、凄いわ……戦争は反対だけど、ここまでスーツを再現するなんて……
…………な、何!?」[newpage]
突如驚愕するマリナ。
ブリブリッ……ブリリ!!
はしたない音と共に熱く重いものが尻から出ていくのがわかる。
ショックになりながら臀部を触ると、柔らかいものがそこにある……
「そ、そんな……私……!!」
そう、してしまったのだ。排泄を。
この一ヶ月、ずっと敵のファイターに性器のみならずアナルも無理矢理入れられ裂けていたのだ。
排泄物を留めて耐える力は徐々になくなり、今のスーツがアナルを刺激したことで完全に失われてしまった……
雪のように白い布に覆われた臀部は、茶色いものに侵食されていた。
余りのショックにペタンと座り込めば、スーツ越しに糞がぐちゃりと潰れて広がるが、今のマリナにはそれに気付かない程茫然としている。
「……そ、そんな、こんなことに……なるなんて……!」 ヨナとリタの純愛も良し、小説版ミシェルの処女喪失、それをヨナと慰めックスするというのもありだな 暗いと不平を言うよりも
進んで明かりを灯しましょう お久しぶりです。
長らくスランプに陥っており、かつ一話分にまでまとまっておりませんが、ひとまず投下いたします。
直接の濡れ場はありません。 暗礁宙域に影が走る。光が奔る。あらぬ方向からの一閃に胴を貫かれたRMS-106《ハイザック》の緑色の機影が、次の瞬間には膨れ上がる火球に変じて弾け飛ぶ。
友軍前衛のハイザック隊を流れるように縫っては矢継ぎ早に撃ち抜いて、爆光と化しては消える友軍機の合間を抜いて、重厚なシルエットの黒い敵機が迫り来る。
『連邦軍最高のエリート部隊』を自称し豪語していたティターンズMS隊による前衛は、敵の初弾から数秒持たずに壊滅した。
『奴らは速い! ケイティ、下がれッ!!』
「で、ですが小隊長――突出した! 単機で来るっ!?」
ティターンズの指揮下に組み込まれて行動する連邦軍一般部隊、そのRGM-79CR《ジム改高機動型》のコクピットで、つい先日に部隊配属されたばかりのパイロットの少女は声を震わせる。
前衛を突破し、敵編隊から頭一つ抜けながら肉薄してくる黒い機影は、ジオンの重MSを思わせるマッシブさと、同時に連邦系を思わせる直線的なフォルムを備えていた。センサー有効範囲に捉えても、データベースに照合しない――新型機だ。
衰えることなく迸る噴射炎が、その新型機を躍進させていく。速すぎる。自分が乗るジム改高機動型の『高機動』とはいったい何だったのかと喚いてやりたい気分になった。
それでも少女は己を奮い立たせ、小隊長のRGM-79N《ジム・カスタム》と僚機に合わせて、ビームライフルの火線を開いた。途切れることのない推進焔を曳いて自在に加速し続ける敵機は軽やかに回避しつつ、なお猛然と迫り来る。
「このおっ!!」
数機のハイザックを立て続けに屠ってきた機体は、3機のジムから降り注ぐビームの雨を圧倒的な加速力で掻い潜る。
その手の小型ビームライフルから、ぱっと銃口が閃いた。だが狙われた僚機はティターンズ機のように即座に受けず、高速の光弾を巧みに回避する。
だがその回避先へ、未来の機動を読んだかのような敵弾が来た。
事前にその回避機動先の一点を狙って放たれていた新型バズーカの砲弾が、吸い込まれるようにジム改高機動型の胴体を直撃する。コクピットブロックを砕かれた機体が、瞬時に原形を止めず爆散した。
「曹長!?」
『こいつッ!!』
少女は着隊からわずか数日。それでも今まで厳しくも優しく指導してくれていた先輩が、目の前で死んだ。
その一年戦争時代からの友人だったという小隊長が、敵機との間合いを詰めて巴戦に入る。距離が詰まって角速度が激増し、小隊長のジム・カスタムはもつれ合うように弧を描きながら、Eパック式の試作型ビームライフルを連射する。
少女は二機編隊を崩さないよう必死に追従しながら、高機動の振動でまともに定まらない照準から闇雲に射撃を放つ。
『ぐっ!』
敵機の反撃が小隊長機のシールドを穿つ。チタン・セラミック合金製シールドの防御性能は、標準仕様の対ビームコートを施されていてもなお心許ない。
小隊長が巧みに角度を付けて弾いても、敵の連射をわずか数発受けただけで溶けてひび割れ、そして無残に砕け散る。
『おおおおおおーーーッ!!』
「隊長ッ!!」
ジム・カスタムはバレルロールを打って軌道上に『置かれた』バズーカ砲弾を掻い潜り、シールドを失った左手でビームサーベルを抜き放った。右手構えのビームライフルに、頭部バルカン砲の火線を加えながら小隊長が迫る。
もつれ合う両者の距離が近すぎ、もはや少女は援護射撃をすることが出来ない。少女は次に取るべき行動を逡巡し、そして次の瞬間には決着が付いていた。
左手のビームサーベルでジム・カスタムの斬撃を受け止め、敵機は小型ビームライフルの銃口をコクピットハッチに押し付けながら連射していた。
「あ、」
これまで数機のジオンMSを撃墜してきたという小隊長は機体もろとも、あっけなく一瞬の火球となって消滅した。
そして少女はそこで気づく。
次に狙われるのは、自分だということに。
「き、消えた!? ど、どこ――ひっ」
だから一瞬の空白を見逃した少女はその光景を、全天周モニターの正面に開いたカットイン画面の内側に見た。
小隊長機の爆光に紛れた敵機が自身の背後へ回り込み、その手に握ったままのビームサーベルから、再び破壊の光刃を閃かせる瞬間を。
「ヴッ!!」
ジム改高機動型のバックパックを貫いた光は、狙い過たず少女の肉体をその背中から直撃した。
全天周モニタとリニアシートが燃え上がる間もなく蒸発し、メガ粒子の熱はパイロットスーツを業火に炙られた薄紙のように溶かし、小柄な少女のやや未成熟な肢体を破壊の中に暴露した。 全天周モニタとリニアシートが燃え上がる間もなく蒸発し、メガ粒子の熱はパイロットスーツを業火に炙られた薄紙のように溶かし、小柄な少女のやや未成熟な肢体を破壊の中に暴露した。
チタン・セラミック合金の装甲を瞬時に蒸発させる超高熱の中で、人体などは瞬時に骨まで焼かれて消え去るはずだ。
蒸散するスポーツブラジャーの内側から、小振りだが弾力のある乳房が弾け出て、やや大きめの乳輪が顔を出す。
少女はそんな超現実的な光景を、死の直前に時間がコマ送りになるのってこういうことなのかな、とどこか他人事のように考えた。
バカバカしい。もっと思い出すべきことが他にあるはずなのに。それとも――空っぽの人生を生きてきた自分には、こんな最期が相応しいということなのか。
そして裸身に剥かれた少女に、熱の暴力が襲い来る。
「アアアアアアアアーーーッ!!」
装甲を、座席を、宇宙服を焼き尽くした炎が、次は少女の肉体を貪り喰わせよと押し寄せる。
無数に伸びた炎の舌が、白い柔肌を破ろうと嘗め回す。しかし荒れ狂う灼熱は彼女を包む光に阻まれたきりそこを破れず、少女の肉体に火傷の一つも負わせられぬまま、その神経へ被虐の悦びばかりを深く刻みつけていく。
うなじを、耳を、乳首を、陰核を、尻穴を、柔肌のありとあらゆる性感の源を、余すところなく炎の舌に責め尽くされる。乳首は勃起し、秘裂からはどろりと愛液が溢れ出る。
まだ男と交わる悦びも知らぬ少女は瞬時にオーガスムの頂点へ達してそのまま突き破り、快楽の許容限度をその一瞬だけで振り切った。
(――いクウっ――)
真っ白な光に染まりきったまま少女は絶叫し、その意識はそこでふつりと途切れた。
『流石です、大尉。手慣れたものですこと』
連邦軍とティターンズのMSをあらかた片づけて追いついてきたRX-107《ロゼット》が、RMS-099《リック・ディアス》に肩を並べた。艶のある女の声が、接触回線越しに笑っている。
リック・ディアスは背後から刺し貫いたジム改高機動型のバックパックから、ビームサーベルをゆっくりと引き抜いた。
どろりと溶けた装甲材が急激に冷え固まっていく中、リック・ディアスが機体を片手でどんと押すと、その破孔から、光をまとった少女の裸身が流れ出てきた。
『あら、幸先いい。――早速『当たり』を引きましたのね』
『情報部に感謝しないといけないね。事前情報で敵追跡部隊の新兵に、ルウム出身の女子がいると知れて良かった』
リック・ディアスのパイロットは言いながら不適に笑う。裸身のまま漂う少女をマニピュレータに掴むと、機体首元のコクピットハッチを開いてそこへ放り込む。その光景はさなら、生贄に捧げられた乙女を貪り食う異形の巨人のごときであった。
コクピット内に空気を満たすと、少女の全身を覆う光が消えた。顔色に血の気が戻り、静かに呼吸を再開する。
その上下する二つの乳房を満足そうに見つめながら、パイロットの男は彼女に手枷足枷を填めていく。慣れた手つきだった。
いつの間にか到着していたMSA-003《プロト・ネモ》がロゼットとともに油断なく周辺警戒する中、悠々と少女の拘束を終えたパイロットは、MS隊を失って逃げゆく敵艦隊へ視線を戻した。
「用件は済んだ。では、あれらに消えてもらおうか」
『了解』
『承知』
含み笑いと感情のない、二人の女の声が響く。エゥーゴ戦艦《ジャカルタ》MS隊の中核を成す三機は、そこでようやくスラスターを全開した。
足並みを乱して相互支援も出来ないまま、暗礁宙域を這う這うの体で逃げる敵艦隊が放つ、おざなりな対空射撃をあっさりと抜いて砲口を向ける。
ティターンズ第117戦隊は全滅した。 「ん、――」
身体が熱い。下腹が疼く。股間から腿へと何か、熱い滴が広がっていく。
少女が目を開くと、薄暗い一室の中だった。手足には枷が填められ、天井と床に繋がれている。身動きが出来ない。
「ここ、は……?」
その密室で、少女は裸身のままだった。全身が火照っている。
少女は渇いていた。喉が、ではない。もっと下の、いま夥しい愛液を垂れ流している、まだ一度も本来の目的で使われたことのない桃色の裂け目が――
その空白を埋めてほしい、熱いほとばしりを奥までどっぷりと注いでほしいと、その燃え盛る雌の欲望と衝動が、少女の思考を一色に塗りつぶしてしまっているのだ。
今や軍人として挑んだ初陣の帰趨も、共に戦った戦友の無事よりも、自身の置かれた境遇も省みることなく、少女は何より強い自身の肉欲に囚われてしまっていた。
「ぐっ……!」
身をよじっても拘束は堅く、とても抜け出せそうにない。戒められた手首と足首ばかりに痕が滲む中、少女は闇の片隅に佇む気配に気づいた。
「だ、……誰……? おとこ、……おとこの、ひと……!?」
欲望に濡れた瞳が、熱い吐息に乗せて言葉を唇から吐き出す。闇に立つ男は少女の視線を受け止めながら、ニヤリと笑ってみせた。 今回は以上です。追ってハーメルン、pixivに挿絵付きの修正版を投下します。 ケイティ・ブラウン伍長が、エゥーゴへ――戦艦ジャカルタMS隊へ加入したのは、つい先日のことだ。
エゥーゴのいわゆる『急進派』を中心としての部隊編成を終えた戦艦ジャカルタは、つい先週、地球に背を向ける月の『裏側』、月面都市グラナダを発した。
そして最初の目的地たる新サイド4暗礁宙域へ入る直前、彼らは月軌道から彼らを追尾していたティターンズ艦隊を待ち伏せた。
敵は新鋭のアレキサンドリア級重巡洋艦を旗艦に、随伴のサラミス改級巡洋艦が二隻。最近のティターンズでは標準的な戦術単位だ。MS隊は少なくとも二十機近く。
実に倍近い戦力を誇る優勢な敵を、しかしジャカルタ隊は暗礁宙域へ入るや勇猛果敢に襲撃したのである。
結果は一方的な圧勝だった。
殊にMS隊長ベリヤ・ロストフ大尉が操るエゥーゴ最新鋭機、RMS-099《リック・ディアス》の威力はまさに絶大だった。
さらに僚機を務める副隊長ルチア・ルッカ中尉のRX-107《ロゼット》、メイヴ・クラータ曹長のMSA-003《プロト・ネモ》の最新鋭機が脇を固めて襲いかかれば、地球連邦軍のエリート部隊を自称するティターンズMS隊など、もはや棒立ちの案山子に過ぎなかった。
三機が一発撃つたびに一個小隊が蒸発した。先陣を切って飛び込んだベリヤと彼の直属小隊はたった三機で敵陣中央を縦横無尽に駆け抜け、据え物斬りとばかりに引き裂いていった。
そのまま鎧袖一触と、三機でティターンズ機の半数近くを一方的に撃墜したのだ。
その破壊力は凄まじく、主力部隊として後続したマインとリアンナらのRGM-79R《ヌーベル・ジムU》小隊が中央突破された敵MS隊の『落ち穂拾い』をこなしながら主戦場へ到達したときには、もはやまともに敵MSなど残ってはいなかった。
小隊編成を突き崩されて逃げまどうわずかな敵機をなぶり殺しにした後は、わけも分からずめくら撃ちの弾幕を撒き散らしながら逃げまどうだけの敵艦を囲んで沈める以外にやることもなかった。
その一方的すぎた戦闘の欲求不満と鬱憤が、そのあと遭遇した連邦軍一般部隊のサラミス改級巡洋艦――《トラキア》とかいう艦のMS隊と遭遇してドッツィやデティらジオン残党兵の身柄を奪い合ったとき、マインに無謀な突撃を判断させた遠因のひとつでもあるのだろう。
いずれにせよティターンズ追撃艦隊は一隻残らず轟沈し、MS隊も一機残らず爆散した。
ケイティ・ブラウンは、そのとき殲滅されたティターンズ部隊――より正確には、ティターンズに協力していた連邦軍一般部隊――の唯一の生存者であり、ジャカルタ隊が得た捕虜だった。戦場で漂流していた彼女を、ベリヤが自ら拾ってきたのだという。
拘束後しばらくの間は治療と尋問を受けていたらしく、マインと会うこともなかったが、やがて彼女はMS隊副隊長ルチアによって皆へ紹介された。
そしてケイティは、地球の重力に魂を曳かれた悪しき人々の私兵たる、ティターンズに支配された地球連邦軍の過ちを正すため、エゥーゴMS隊の新たな一員として迎えてほしい、と宣言した。
連邦軍そのものに良い感情を持っていないマインと舎弟たちはその場での態度を保留したが、戦艦ジャカルタ乗員の大多数は、万雷の拍手をもってケイティの転向を受け入れたのだった。
ケイティはリアンナ率いる第二小隊へ配属され、その乗機としてマインらと同じヌーベル・ジムUの予備機が宛てがわれることになった。
一度は敵同士として戦ってから、恐ろしく短時間での戦力化である。エゥーゴという組織は、よほどお人好しの性善説で動いているのに違いない――そのときのマインは、すっかり呆れかえってあざ笑ったものだった。
そしてマインは今、その真実を知ることになる。 「オラ、来たぞ。マイン・ハフナー、お呼びに預かり参上だ」
ドアを開けたケイティが何か言うより前に、ずかずか進んで入室する。マインは室内を眼光鋭く睨みつけながら言い放った。
彼女が呼び出された広大なブリーフィングルームの奥には、いつものように落ち着き払った様子で立つMS隊長ベリヤ・ロストフ大尉。
その傍らには長い金髪を輝かせる副MS隊長ルチア・ルッカ中尉が控え、長身褐色のメイヴ・クラータ曹長がやや離れた位置で影のように付き従っている。
そして遠巻きに、MS隊のその他の女パイロットたち。要するに、いつもと同じ面子だった。
「調子の方は良さそうだね。安心したよ、ハフナー少尉」
「ああ、おかげさまでな。丈夫に産んでくれた親に感謝してるぜ」
端整な顔立ちに浮かぶ薄い微笑みから淡々と放たれたベリヤの言葉も、マインは臆さず強い眼力で跳ね退ける。
だが強気の態度と裏腹に、ベリヤのその目を視界に入れただけで、マインの下腹には甘い熱量が疼いていた。
「そうかな。君を回収した直後は、ずいぶんとうなされていたようだったがね。誠心誠意、君からの『要求』に応えた甲斐があったというものだよ」
「……ッ!」
男が遠間で囁くだけで、マインの脳裏に稲妻のような何かが走る。思わずよろけそうになるところを必死でこらえた。
体が熱い。
股間の奥から溢れた蜜が、下着を濡らしていくのがわかる。シャワー室で入念に搾り出したはずの母乳が再びにじみ、ブラジャーのカップの内側へと染み込んでいくのを感じる。それと呼応するようにマインの奥から、淫らな邪念が膨らんでくる。
男が欲しい――いや、ただの男では、ダメだ。
あの理性など蒸発する異常な熱量の中で、自分の女をはじめて奥まで貫き通し、その内面のかたちを完全に変えてしまった、この男のものが、欲しい。
靴裏の磁石で身体を床に固定した無重力環境の中、マインはただベリヤの眼前に立たされているというだけで、そのまま全身が遠く宇宙空間まで浮かび上がって二度と戻れなくなってしまいそうな感覚に陥っていた。押し殺そうとしても息が上がり、動悸が早まる。
「フム……だが見たところ、まだ火照りが冷めていないようだね?」
そんな彼女を見透かすように、ベリヤの眼鏡が怪しく輝く。
「君にはまだ、『レクリエーション』が足りないようだ」
「――あァ!? 勘違いしてンじゃねェぞ、隊長さんよ――」
自らを乗っ取ろうとわき上がってくる熱を力で押さえ込むように、マインはきっとベリヤを睨み据えながら傲然と吠えた。ベリヤを拒むようにその手を大きく払う。
「あの時は危うく切ったはったで死にかけたばっかりで、あたしもどうかしちまってたがな、勘違いするんじゃねぇぞ。
ジム一機、土手っ腹をぶち抜かれちまった罰だかなんだか知らねェが――たかが一回ヤられたぐらいでお前みたいな男のモンになるほど、あたしは安い女じゃねェ!」
マインが勢いよく切って落とした啖呵に、その場は一瞬静まりかえった。だが、その静寂はすぐに崩れる。
嘲るような哀れむような、そして同時に慈しむような――くすくすとさざめく、女たちの笑い声によって。
その直中に囲まれながら、苛立ちを隠しもせずにマインは吠えた。
「なんだ、お前ら……何だコラ。言いたいことがあるんなら、言えってんだろうが!!」
「あら、驚いた。あなた、まだ勘違いしているのね」
「あァ!?」
上品に口元に手をやって隠しつつ、くすくすと微笑みながらルチアが再び進み出た。慈愛すら感じさせる優しげな瞳でマインに言う。
「大尉の寵愛は私たち『姉妹』にとって、至高の悦楽。それが『罰』として下されることなど、あり得ない」
そしてルチアは微笑みながら、ただ無言で静かに状況を見守っていた少女の後ろへ回った。その小さな背中をそっと押す。
「さあ、ケイティ。今回の『レクリエーション』の主役はあなた。――大尉の寵愛は今夜、あなたのものよ」 「えっ……? こ、ここで……、ですか……?」
「嫌なの?」
「――そ、そんな!」
金髪の美女に耳元で優しく囁かれて、少女は不安げに室内の女たちの顔を見渡す。しかしマインひとりを除く彼女たちから、肯定を示す沈黙と微笑みを返されて、ケイティの可憐な面差しに悦びの色が浮かび上がっていく。
「いいのよ、ケイティ。さあ、……行きなさい」
濡れた瞳で、ケイティはそっと男の前へ進み出た。
「は、はい……! た、大尉、……ご寵愛を……」
そして少女は意を決するように言いながら、自らエゥーゴ制服の正面をはだけた。
恥じらいながらの仕草の中で、やや控えめながらも形の良い胸の膨らみと桃のような臀部を包む下着姿が、ベリヤと周囲に侍る女たちの眼前へとさらけ出されていく。
控えめな面差しは期待に染まりながら、それでも自信なさげに、ベリヤへ媚びるような上目遣いを寄せていた。
「綺麗だよ。――ほら、おいで。ケイティ」
「――はいっ!」
ベリヤがそっとその手を差し伸べる。するとケイティはその表情をぱっと明るい悦びに染めあげながら、手招く男へ向かって歩み寄りはじめた。
少女が恥じらいつつも自ら衣服を脱ぎ捨て、周囲に半裸を見せつけていく。その異様な光景にマインはただ呆気に取られていた。一拍遅れて、ひとり抗議の声をあげはじめる。
「お、……おい。おい、コラ、ケイティ……お前、人様の前で何してくれようとしてんだよ!?」
だがケイティはもはや、マインの叱責などに耳を貸そうとしない。下着姿の少女は馬耳東風と聞き流して、ベリヤの腕の中にその身を委ねていた。
「あらあら、ハフナー少尉。そんなに大尉に抱かれるケイティが羨ましいの?」
「あァ!?」
マインが咄嗟に吠え返したとき、ルチアは彼女へと向き直っていた。再び妖しい微笑みを浮かべていく。
「でも、ダメよ。あなたはまず、自分の立場から理解しなければならないの。だけど安心して。今夜のあなたの相手は、別に用意してあげたから」
「何っ……?」
ルチアが目配せすると、唐突に部屋の扉が開いた。数人の男たちが入室してくる。
「――あぁん? なんだてめぇら――何しに来た?」
ずかずかと侵入してくる男たちの何人かは、マインにも見覚えがある。パイロットの過半を女性が占めるジャカルタMS隊において、マインの舎弟二人以外のわずかな男性パイロットと、整備要員だった。
彼らは全員がその欲望を隠すこともなく品定めするような目で、エゥーゴ制服の上から激しく自己主張するマインの豊満な肉感を眺め回していく。
普段のマインがそんな不躾な視姦などを受ければ、即座に相手の胸ぐらを掴んで啖呵を切っていただろう。
だが今のマインは身体へ漲っていく熱に冒されたまま、これから自分の身に訪れることになる『何か』を期待するように、ごくりと唾を呑んで立ちすくむだけだった。
「ハフナー少尉。君はまだ疲れが抜けきっていないようだ。レクリエーションを楽しむといい――彼らに手伝ってもらってね」
ベリヤは肩越しにマインへそう言いおきながら、男たちの乱入でわずかに気を取られかけていたケイティの腰を抱き寄せ、その唇を奪った。そのまま舌を侵入させる。
「……!」
ケイティは驚きの表情を見せたが即座に応じ、すぐにその目を蕩けさせる。二人の舌が互いを求め合うように、口腔内で絡み合う。粘つく唾液の音を衆人環視に響かせながら、ベリヤは巧みにケイティの背中でスポーツブラジャーのホックを外した。
そのまま片手で脱がされたブラジャーは投げ捨てられて、ケイティの控えめだが形の良い乳房を衆目に曝け出しながら宙を漂う。 「お、お前ら……な、何おっぱじめようってんだよ……!」
愚問と知りながら、それでもマインは言わずにいられなかった。
清純可憐といった雰囲気のケイティが、ベリヤと女たちの前で脱いだ。これだけでもすでに常軌を逸してはいるが、感覚的には理解できてしまっていた。
何よりもまず、どれだけ理性で否定しても、マインはベリヤに犯されることを望んでしまっている。
ケイティはそれに先行した。マインはあまつさえ、あの少女に嫉妬さえしてしまっている自分の存在を理解してしまっていた。
だがこの場には今、第三者が――その他の男たちがいるのだ。
どうなっている? これからどうなる? どうすればいい?
混乱し、その場で立ちすくむマインの傍らへ静かに忍び寄った男の一人が、その手を閃かせた。
「なっ!?」
慣れた手つきでエゥーゴ制服のベルトが素早く外され、ワンピースの女子制服が背後から別の男にあっさりと脱がされる。
そしてさらに一人の男が背中から組み付き、ブラジャーもろともマインの巨大な双乳を握りしめた。
「くっ!?」
男の大きく堅い手指が、マインの乳房へ深く沈み込む。これほどの無体を許しながらあり得ないことに、マインはまったく男へ反撃することが出来なかった。
「あ、ふう……ッ! や、やめ……ッ!」
乳首を探るようにカップの表面で男の指先が動き、マインは甘い悲鳴をあげながら、びくりと背筋を震わせる。
男に揉まれながら、マインの乳首はブラジャーの下で母乳を分泌していた。溢れる母乳はさらにカップの内側を濡らしていく。すぐに染みがブラジャーの表面にまで達するだろう。
男に手指で感じ取られてしまうかもしれない。
このままでは自分の乳房が、まだ出産経験もないのに母乳を噴き出すことを知られてしまう。
一刻も早く、この男たちを払いのけなければならない。だが、マインにその力は沸いてこない。力が抜けていく。
その豊満な乳房を包むブラジャーの上辺に、男の両手指が掛けられた。
「この胸が苦しそうですね、少尉――」
「あっ――!?」
「いま、楽にして差し上げますよ」
そのまま無情にも、マインのブラジャーは剥き下ろされた。
カップの束縛を逃れた爆乳が二つだぷんと弾けて飛び出し、封じられていた汗が靄となって溢れ出る。尖端にぷっくりと膨らみながら黒く変色した乳輪が、その勢いで母乳を飛沫き散らした。歓声が沸き上がる。
「おお……!」
「素晴らしいモノをお持ちですな少尉……いつもスーツの上からでも大きい大きいとは思っておりましたが、これほどとは」
「白磁の肌と裏腹の、この黒く染まりながら乳を出す乳輪の下品なこと。乳房の大きさに見合って、乳の出も実に景気が良い」
男たちが感嘆の声を上げつつ、今や衆人環視の下へとさらけ出されたマインの乳房を好き勝手に品評する。
しかしマインはこの異常な状況の中で、男を殴り倒すこともその乳房を隠すことも出来ずに、ただ立ちすくむしかなかった。
「あ、ああ……み、見るな……やめろ……やめろぉ……!」
マインは呼吸ばかりを荒げて上気した頬で、男の腕の中からただ男たちを眺め回すばかりだった。
「良いモノを見せていただいた……では我々も、貴女を楽しませて差し上げなくては」
そしてマインを取り巻く男たちは、次々にベルトを外しはじめた。躊躇なく下着も下ろし、屹立した自らの逸物を彼女目掛けて突きつけていく。
黒く反り返る肉槍の群れが亀頭をもたげて、巨大な乳房から母乳を滴らせる金髪の美女に狙いを定めた。
「あ、ああ……あっ、あああああああ……っ……」
突如としてそんな異常な環境に置かれながら、裸身のマインの脳裏を最初に過ぎったのは、抵抗でも逃走でもなかった。 それはこれから自身へ訪れることになる、未知の快楽への期待だった。
マインの乳房からブラジャーの殻を剥いた男はそのままホックも外すと、カップの裏側から母乳を滴らせるブラジャーを部屋の片隅へ投げ捨てる。
次にショーツの内側へと強引に指を入れると、早くも濡れそぼっていたその秘唇へ押し入り、くちゃくちゃと掻き鳴らした。
「あっ!? あっ、あうううううーーーっ!?」
同時に陰核を攻められたマインは体勢を保てず、がくんと大きく崩れてしまう。彼女が次に顔を上げたとき、目の前には三本の男根がそそり立っていた。
「……あ、ああ……っ……!!」
「では、ハフナー少尉……失礼。犯らせていただく!」
男たちが笑い、マインの両手を戒めた。長身のマインよりも屈強な男たちが数人がかりで彼女を床へ組み敷き、欲望のままに彼女の肉体を貪りはじめる。
握りつぶされた乳房が変形して乳輪から勢いよく母乳を噴き出し、反対側の乳輪に男が吸いついてはごくごくと母乳を飲む。
子を産み育てた経験をまだ持たないマインは、その無遠慮な搾乳と授乳に母乳を吸い出されて軽くなっていく乳房の快感に抗えないまま、ただ幼児のように泣き喚いた。
「おっ、おっぱい! おっぱい嫌ぁ! 吸われてるぅ……搾られてる!! ああぁぁ……あたしのおっぱいが、からっぽに、からっぽになるぅ〜〜〜!!」
「ハフナー少尉の母乳、甘くておいしいですよ……」
「地球圏最高のミルクサーバーですな」
巨乳に二人の男がむしゃぶりつき、金髪や筋肉質な太腿をいいように撫で回されるなか、一人の男がその巨大な逸物にコンドームの装着を終えていた。
「あッ!? そ、そこはっ。やめろッ!!」
「フフ……では、お留守の本丸をいただく!」
甘い悲鳴など意にも介さず、ずむぅっ、とマインの奥まで男が突いた。
「あおおおおおぉぉぉ――ッ!!」
「おおッ、良い……締まる……ッ!」
野太く猛った肉棒に、男を待ち望んでいた深い洞窟を奥まで一気に満たされる。子宮を突き上げられるその快楽は、マインに喉奥からの嬌声を響きわたらせた。だが、
――違う。
群がる男どもに容赦なく全身を犯され、荒い息づかいで必死に欲情混じりの熱い空気をむさぼりながら、マインはかすむ瞳で天井を、室内を見つめていた。
火照りきった身体に叩きつけられる男たちの欲望が、膣を押し広げながら侵入してくる逸物の滾りが、マインにまったく快楽を与えていないわけではない。
だが、違う。それでは、届かないのだ。
――あたしが望んでいたのは、これじゃない。
無限にも思えるほど遠い数メートルの向こうで、ケイティがベリヤに抱かれていた。
マインに比べればずっと小さく控えめな乳房をベリヤの掌がぎゅっと揉むと、ケイティの甘く高ぶる嬌声とともに、黒く染まった乳首から幾筋もの母乳がほとばしった。
マインはその光景を見て、初めて理解した。
――ああ、そうか。そうだったのか、ケイティ――あいつも、……アイツに、やられてたのか。。
男たちの隙間から遠く見えるケイティの表情は、完全に蕩けきっていた。マインの方など一顧だにしない。目の前の男に溺れきっている。 そして、マインは唐突に理解する。
戦場でMSのコクピットをビームに貫かれ、パイロットスーツをメガ粒子に蒸発させられ全裸に剥かれていく中で感じた、あの「死」を裏返したように倒錯しきった絶頂。
MSの装甲を瞬時に蒸発させるあの熱量へ裸身を曝し、荒れ狂う爆炎に揉みほぐされて準備を整えた女体は、雌の欲望に核爆発級の熱量を蓄えていた。
逃れられぬはずの死から反転した劣情は、浅はかな理性などたやすく振り切る。
そして灼熱に蕩けた女陰をはじめて貫いた男の陽根は、抜挿を繰り返す中で女の内面を自らの存在なくしては決して満足できないかたちへと、永遠に作り替えてしまったのだ。
――あたしは、もう――アイツのでなきゃ、ダメな身体にされちまったんだ。
猛然と腰を振っては叩きつけ、乳房を貪って全身を犯す男たちの中で、マインはその残酷な現実を理解した。
この男たちがどれほど自分に欲情し、どれほど献身的に奉仕したところで、それらはすべて無駄なのだ。
いまショーツを脱がされていくケイティ・ブラウンの濡れ光る股間に、ゆっくりと宛てがわれていくベリヤの逸物――もう忘れもしないあれでなければ、自分はもう、永遠に満たされることはなくなってしまったのだ。
「おホアアアァァァーーーッッッ!!」
そして、ずぶう、とベリヤを呑み込んだ瞬間、ケイティは魂消るような絶叫を放った。全身をびくびくと震わせている。
脳のすべてが焼ききれるほどの、核爆発級の性感絶頂。
マインにも覚えがある。
そう。最初にベリヤに犯され、膣内射精を受けた瞬間だ。あの一瞬、マインの意識は宇宙の彼方まで吹き飛んだ。
あの膣内射精で――自分の乳房を変質させ、ぶざまなミルクタンクへと変貌させたあの一撃で、その男こそが自らの「主人」であると、自分は遺伝子レベルで認識させられてしまったのだ。
あれを知ってしまった後ではもはや、こんな有象無象の男どもとの性交など児戯にも等しい。だからマインは叫ばずにいられなかった。
「ちんぽ、……おちんぽほしい……っ、おまんこにほしいのおおおっっっ!!」
「ああ? なんだよ……ちんぽなら今、あんたのおまんこに入れてやってるじゃねぇですか……!」
「ちがううっ。これじゃっ、これじゃないいっ。あいつの、ベリヤの、隊長のおちんぽでなきゃ、いやなのおおおっっっ!!」
自らの肉体と男根に絶対的な自信を持っているのであろう男が、頑是無い幼女のように泣きわめくマインを犯しながら、やや不機嫌そうに吐き捨てた。乳房を揉み搾る男がたしなめる。
「しょうがねえんだよ。いっぺん大尉の『お手つき』になっちまった女は、もう二度とほかの男じゃ満足できねえ。お前のモノがお粗末ってわけじゃねえから、気にすんなよ」
「だけどよ……」
「へッ。イヤなら戦場で落としたての女を拾って、手前の種を付けるしかねェな!」
「ま……ここじゃそんな抜け駆けは御法度だし、大尉の前じゃあ出来もしないが」
最後の一言だけ声を落とすと、男たちは再びマインの女体へ没頭していく。自らの実力で屈服させることが出来ずとも、ただ一方的に汚すだけでも満足できるだけの美しさと野卑な気高さがマインにはあった。
「ふふっ。かわいいわね、ケイティ……」
無様に輪姦されるマインを視界の端に留めつつ、自らも衣服を脱ぎ捨てたルチアが、貫かれたまま意識を半分以上飛ばしていたケイティの背中に付いた。
その乳房を優しく揉むと、マインの巨乳にも負けないほどに勢いよく、母乳がびゅうっと遠く飛び散った。慈愛に満ちた瞳で少女の横顔を見つめながら、その耳元に優しく囁く。
「避けられぬはずの死の運命に抗い、そして打ち破った。おめでとう、ケイティ。あなたは運命に選ばれたの」
「……う、……あ、あ……。……副、隊長……?」
ようやく意識を戻したケイティが、うつろな瞳でルチアを見る。 「ふふ、ケイティ。ここではルチア、でいいのよ。だって私たちはみんな大尉の寵愛で結ばれた、姉妹なんですもの……」
「姉妹……」
「そう。あなたと、それからあそこのマインも、私たちの新しい末の妹。歓迎するわ、ケイティ。死の運命を乗り越えて大尉に抱かれることは、地球圏の女にとって最高無上の快楽。その悦びを分かち合いましょう――」
「動くよ、ケイティ。いいね?」
「あ、はいっ……あむッ!!」
ベリヤは言うや彼女の腰に添えた両手で、引き寄せながら少女を奥へと突き上げる。雌の魂魄へと灼きつけられた陽根をリズミカルで巧みに突きこまれ、ケイティはたまらず悶え狂って絶叫する。
「ああ! あああああ、ああっ、あうほおああああーーーッ!!」
体位を変えながら執拗に繰り出される巧みな腰使いの前では、少女の意識など風前の灯火であった。
ルチアはそれを満足そうに間近で見つめ、遠巻きに女たちが羨み自慰するような視線を向ける傍らで、マインは決して絶頂まで届くことのない愛撫と凌辱に悶えていた。
「うっ……ケイティ、行くよ……」
「ああっ、きてっ、きてください、たいい、わたしのなかにきてっ、だしてえっ、わたしのおまんこのおくにいいいっ、たいいのこいのだしてぇぇぇっっっ!!」
「ああっ……ああああああ……っ!!」
ベリヤとケイティが絶頂へのラストスパートを駆け上がっていくなか、その絶叫を聞かされながら犯されるマインも煩悶していた。その切なげに喘ぐ仕草が、群がる男たちの欲望を刺激していく。
「うっ……嫌がってても締まりは上々っ、俺もここらでイキそうだ!」
「かわいいよ、そのイキたいのにイケない今の表情、マインちゃん最高に可愛いよッ!」
「へへへ……ここいらで出させてもらう!」
そして速まっていくベリヤの抜挿が頂点を迎える瞬間、ケイティの狂ったような嬌声に導かれるように、マインを犯す男たちも連鎖的に絶頂に達していった。
「たッ……大尉ぃぃぃっっっ!!」
「射精(で)るッ!!」
「んほおあああゃぁあああああーーーっッ!!」
ベリヤの陽根がひときわ大きく膨れ上がり、ケイティの膣奥から子宮口を狙って熱い白濁液を一気に吐き出す。その怒濤はコロニーレーザー級の威力で、少女の意識をまたしても一瞬のうちに蒸発させた。
「イクうッ!!」
「あヴァあああああーーーっ!!」
そしてマインを囲む男たちもコンドーム越しの膣内で、あるいは金髪へ、巨乳へ、顔面へしごき上げ、あらゆる場所へと射精した。
粘ついた精液の弾幕が次々と女体へ着弾し、白い肌を汚していく。乳房では間欠泉のように乳首と乳輪から噴き出す母乳と精液が混じりあい、ぬらつく粘液の異様なカクテルを形成した。
意識の灯火を吹き消されたケイティが、瞳から光を失って崩れ落ちる。びくびくと震える彼女の股間からベリヤが逸物を引き抜くと、混じり合った精液と愛液が別れを惜しむように長く糸を引いた。
「あら、可愛い。ケイティ、もう落ちてしまったのね」
目を見開いたまま気絶したケイティの頬を、ルチアが優しく撫でる。
「かわいそうに、ケイティ。せっかくの寵愛日なのに、今日はもう無理そう……。大尉はまだ収まらないでしょう? このあとの寵愛、……誰にお授けになるのかしら?」
ルチアの言葉に、取り巻く女たちが色めき立つ。
一度味わえばもはや一生忘れられない唯一無二の快楽を思って、ケイティの痴態を見せつけられてひどく高ぶった女たちが、妖しく媚びた目をベリヤへ向ける。一片の可能性にすがるように、マインも虚ろな瞳を向けた。
「いや、ルチア。次の相手は、実はもう決めてあるんだ」
「あら?」 「リアンナ。君にしよう」
「……!」
射貫くような視線でベリヤが指し示したのは、性の宴も酣のころに遅れて入室し、そのまま女たちの背後へ隠れるように佇んでいた童顔の美女――リアンナ・シェンノート少尉であった。急に注目を浴びた彼女は、怪訝そうに声を上げる。
「あら……。本当に私でよろしいんですの?」
「いいんだ。今日は無性に、君を抱いてみたい」
「あらあら。それは光栄ですこと」
くすくすと微笑みながら、リアンナは進み出た。そのリアンナの耳元に、裸身のままで寄ったルチアがそっと囁く。
「羨ましい。リアンナ、大尉は貴女に妬いてるのよ」
「妬いて……? 大尉が、私に?」
そしてベリヤは無言のまま、荒々しくリアンナからエゥーゴ制服を剥いた。ブラジャーに包まれたまま大きな乳房が弾み、ベリヤはさらにその乳房を掴んでブラジャーをむしり取る。
「あん……っ!」
マインの巨乳に比べれば小ぶりではあるが、ケイティよりはずっと大きな乳房が露わに弾けた。小柄なリアンナの体格と合わせて見れば、どこか背徳感すら与える見事さである。
ベリヤは依然として平静なままの表情でその乳房を乱暴に握って大きく変形させながら、外見相応の可憐な少女のようにびくびくと震えるリアンナを見下ろしていた。
「可愛いね、リアンナ。君は変わらない――あの頃のままだ」
「……あら。そうかしら……少なくとも大尉の制服とお名前は、あの頃とはずいぶん変わってしまったのではなくって?」
「私の話じゃない。君の話だ」
あくまで柔らかく微笑みをたたえ、しかし反論を許さない強さを秘めてベリヤは迫った。
7年前。ルウム戦役。
華やかな大艦隊戦の傍らで軽やかに宇宙を駆け抜け、レーザーとわずかな固有兵装を放って空しく抵抗するサイド5のコロニー群を、次々と核バズーカで粉砕していくMS-06C《ザクU》。
艦艇のメガ粒子砲や通常弾頭のミサイルの火力など、コロニー相手ではドラム缶を針で刺すに等しい。多数のコロニーを大破分裂させて今日に至るまで広がる暗礁宙域を作り上げ、二十億人を虐殺した最大の功労者が、MS隊による近接核攻撃であった。
そして単独で数千万人を虐殺するコロニー潰しという、誰もが良心の咎めるはずの任務を淡々とこなしていった、ジオン公国軍とその残党たちが黙して語らない、知られざるエース・パイロットが存在した。
その中の一人、ルウム戦役だけで五基のコロニーを潰した「コロニー・エース」――史上最大の戦果を挙げながら、それゆえ決して歴史の表舞台に出ることを許されなくなった究極のエースパイロットは、そのとき奇妙な漂流物を拾い上げた。
核弾頭を撃ち込まれて一千万人を超える住民ごと内側を蒸発させながら、膨れ上がって破裂したコロニー。その爆炎から流れ出てきたそれは、淡い光に包まれた、傷一つない少女の裸身だった。
「ここ最近、君とは少しご無沙汰だったね」
「そう……でした、かしら……。ごめんなさい。今日、あまり上手にお相手出来ないかもしれませんわ」
「そんなことはないさ」
ベリヤの手指と舌先が、リアンナの小さな身体を這いまわる。
そんな責めに苛まれれば、幼少時から男を愉しませる房中術を「学園」で仕込まれ、つい少し前まで歴戦のジオン残党兵を女の武器で手玉に取っていた美少女の妖艶な仮面は、形を保てずに溶けていく。
さらにショーツを乱暴に引き下ろされて、すでに愛液を溢れさせていた女陰に指を差し込まれる。
「ん……ッ……」
「準備万端だね……」
くちゅくちゅと水音を立てて掻き回されながらも、リアンナはまるで気のない素振りを保とうとした。 リアンナが平静を装えたのもそこまでだった。
ベリヤがリアンナの腰に両手を添え、軽々と持ち上げる。そして反り返ったままの肉槍を、手指に代わって濡れそぼる秘所へ添えた。
絶対の快楽を約束する至高の陽物からリアンナは必死に目を逸らすが、合体の予感を受けて裸の乳房の頂は、可憐な桜色の乳頭が堅く立ち上がらせていた。
ケイティを犯したばかりの逸物に、ずむぅっ、と女陰を一気に貫かれれば、それだけで彼女は稲妻に撃たれたように反り返った。
「あふうううぅっ、あああぁぁぁ……っっっ!!」
「無駄だよ。あの日に君を見つけて拾い上げ、そして犯したときからすべてが始まった。君は永遠に私から逃げられない。今までも、これからも……ね」
「んむうううぅぅぅっ!!」
今やリアンナは巧みな腰使いを受けては情けなくよがり狂い、甘い嬌声を上げながら男の腕の中で溶けていくのみ。なすすべなくベリヤに圧倒されて喘ぐリアンナの痴態は、先ほど犯されたケイティと大差ない。
ドッツィの前で見せた男を弄ぶ妖女の仮面はもはや、溶鉱炉に投げ込まれた飴細工のように消え失せていた。ベリヤの囁きを理解する知性すら失われている。
それでもリアンナは心の奥までは犯されまいと、声にならない悲鳴を上げて最後の抵抗を試みる。そんな彼女に容赦なく腰を叩きつけながら、ベリヤは耳元で甘く囁いた。
「忘れなさい――すべてを果たすその日まで。君を満たしてあげられるのは、私だけなのだから」
「――ッ!!」
どぷぅっ、とリアンナの膣奥と意識を、ベリヤ二射目の白濁液が染め上げる。
この七年間で何度となく受け入れてきた、しかし、決して慣れることのない膣内射精。
その威力はあの日、少女の暮らす箱庭のような閉じた世界を焼き尽くした核弾頭の威力で、今も彼女の理性を焼き尽くすのだ。
――おじさま
リアンナの目尻に涙が浮かび、無重力空間へ流れ去っていく。
「あら。リアンナも、もう落ちてしまったの? 『墜としたて』でもないのに、ずいぶん早かったのね」
「内に抱えた強い想いも、良いスパイスになると分かった。今後の楽しみに使えそうだ」
「ふふ、大尉。悪そうな顔をしているのね……?」
ルチアが微笑む。ベリヤが気絶したリアンナから逸物を引き抜くと精液が溢れ出た。その間も男たちの獣欲の餌食にされ続けていたマインが虚ろな瞳で、せめてその精液だけでも口にしようと物欲しげに見つめる中、ルチアはベリヤへ直接腕を絡めた。
豊満な乳房を背中に押し付け、勃起した乳首で弧を描きながら、甘い声色で求める。
「お願い、大尉。もう、我慢できないの……。次は、私と……ね……?」
「仕方のない副隊長だ……」
気絶したケイティとリアンナを手際よくメイヴが搬送する傍ら、ベリヤはルチアをその腕に抱いた。マインは犯され続けている。
戦艦ジャカルタの淫らな狂宴は、未だ終わりの気配を見せようとしない。 今回は以上です。次からトラキア隊へ戻る予定です。
もう少し内容を整理して、ハーメルンとpixivに挿絵込みで掲載します。 今度やる閃ハサでいい感じの女性パイロットとかは居るのかな… 読んだの遙か昔なんで女パイロットがいたか覚えてないがトップレスのメカニックがいたような気がする。 一年近く空いてしまいましたが、投下します。
今回はエロ無しです。 生命の名残が、冷たい宇宙を流れていく。
コロニーの外壁。ビルや家屋だったものの一部。氷塊。土砂。枯れ木。エレカ。椅子。本。衣服。人形。
そして、
「――船?」
暗礁宙域を低速で行くサラミス改級巡洋艦『トラキア』の前部上甲板に立ち、ビームライフルとシールドを手にして対空監視に当たるRGM−79R《ジムU》。
そのコクピットで全天周モニターに映った生命の灯を目に留めて、パイロットの少女兵は惚けたように声を上げた。
彼女たちがつい数時間前にジオン残党軍、そしてエゥーゴと激しい戦闘を繰り広げた宙域からは、すでに遠く離れている。目指す拠点は近い。
ミノフスキー粒子の濃度も薄まりつつあり、レーダーも一定の機能を回復していた。それでも暗礁宙域に漂う無数の物体から早期に脅威を識別するには、最後は光学系の観測手段に頼らざるを得ない。
ジムUは頭部を巡らせ、その方向へとメインカメラの望遠を掛ける。拡大された視界へ飛び込んできた船は一隻だけではなかった。その周囲を探ればすぐ近くに、同じ航路を進む他の船舶が続いている。
先ほど接触した不審船と同じ、コロンブス級輸送艦が成す船団、あるいは艦隊だった。
《トラキア》が属する第223戦隊と同様の方向を目指しているように見えた。操縦桿を握るノーマルスーツの手袋の下に、冷たいものがにじんでくる。
それらの船団の周囲に小さく煌めく光条を見つけて、その急激な動きに少女――アイネ・クライネ伍長ははっとした。
「モビルスーツ!」
こちらへ向かってくる。速い。アイネは思わず機体にビームライフルを構えさせつつ、迎撃すべく甲板を蹴って発艦しようとした。
『いいよ、アイネ! アレはほっといていい』
「ミケリヤ少尉?」
だが武器を構えて飛び出しかけたアイネのジムUは、ともに警戒任務に就いていた指揮官機――RGC−80S《ジムUキャノン》に制止された。トラキアも砲塔や機銃塔を回して反応を示してはいるが、どれも発砲はしていない。
同時にモニター上に、識別情報が弾け出る。
『連邦宇宙軍新サイド4駐留軍 第411MS中隊(予備役)』
「――友軍?」
『そこのジム・キャノン、ミケリヤの姐さんですか?』
惚けたように呟いたアイネの耳へと、迫る機影から残留ミノフスキー粒子を超えて、いくらかノイズ混じりの音声通信が届く。アイネとそう変わらない年頃と思しき、若い娘の声だった。
『ん、トモエ? あんたらの船団、いま帰ってきたの?』
『やっぱりっ。お久しです、姐さん! それに――このサラミス改、トラキアじゃないですか! 懐かしい組み合わせですねっ』
通信回線に人懐こそうな声を弾ませながら、発信源は見る間に大きく近づいてくる。軽快な機動を見せるパブリク改級哨戒艇と、その上下へそれぞれ張り付いた二機のMS、RGM−79GSR《ジム・ゲシュレイ》だった。
ジオン残党軍との大乱戦で大いに暴威を振るったゲンナー・ウェズリー少尉機と同型の、RGM−79GS《ジム・コマンド宇宙戦仕様》の近代化改修機たる二機は、パブリク改の艇体を蹴って軽やかに発進。
トラキアと相対速度を合わせて空中で並んだ。
ゲンナー機同様に、ビームガンとシールドの標準装備――そしてシールドの裏に見慣れない格闘兵装らしき長柄を搭載したゲシュレイは、バイザー越しのモノアイ・センサーでトラキア艦上のサブリナ機とアイネ機を一瞥する。
『あれ。マコトさんは?』
『マコトなら、今は下で整備と休憩中。さっき残党軍と派手にやりあってね』
『ええ。戦闘光、こっちも望遠で見ましたよ。で、あっちで溶けたり凹んだりしてるのは『マカッサル』ですか……ほーん。派手にやられたみたいですね』
『……ま、痛み分けさね』
『姐さんとゲンさんが、マコトさんとリンさんに加勢してですか? エグい獲物だったんですね。残念ですよ。こっちの帰りがもうちょい早けりゃ私らの加勢で、そいつら跡形もなくツブしてやれたのに』
先頭を行くトラキアに並行しつつ、ゲシュレイは後続する同級の戦隊旗艦『マカッサル』とサラミス改級駆逐艦の僚艦『アルマーズ』、そして『大ジオン仏道』に襲撃されてからトラキアに同行している貨物船『リバティ115』を見下ろす。 それからゲシュレイの少女兵は、何気ない風を装うように聞いてきた。
『あと、そういや……シュンの奴、どうしました?』
『トモエ。あんたさっきから、それが一番気になってたんでしょ。ピンピンしてる。ローテーションで今は中だよ』
「!」』
因縁浅からぬ僚友の名を不意に出されて、会話の脇に押しやられていたアイネが顔を上げる。トモエと呼ばれた若い女性パイロットは、含み笑いでサブリナへ告げた。
『いやー、この前の寄港時にうまいこと誤魔化された続きって言うか……。この様子だとトラキアも、しばらくはP−04にいるんでしょ?
なら、シュンの奴に自分の立場を『理解(わか)らせ』てやるための時間は、たっぷりあるってことです――なぁに、今度は逃しゃしませんよ』
『ま、別に野暮いことは言わんけどね。若いの同士、その辺は適当にうまいことやんなよ』
狩りの獲物についてでも語るようにしながら、ゲシュレイの少女兵は不穏に笑う。息を呑んだまま、知らずその機影を睨みつけていたアイネへ、不意に新たな音声通信が入った。
『あら。そっちのジムU、新しい人?』
『!』
余裕を持って語りかけてきたのは、こちらも若い女の声だった。
アイネが自機の頭部ユニットを向け返したレーザー通信の出所は、トモエと呼ばれた少女兵の機体のやや後ろに控えるようにしながら並航する、もう一機のジム・ゲシュレイからだった。
『はじめまして。私はリタ・ブラゼル伍長。ルウム農協の予備役兵なの。ハヤカワ准尉とアーデル曹長、ミケリヤ少尉、ウェズリー少尉にリンリー少尉にはずいぶんお世話になっているわ』
そして音声通信を入れてきた相手はアイネに対し、さらに映像回線の権限を要求している。
『挨拶させてよ、新顔さん』
『予備役……』
サブリナが制止してくる気配もない。一瞬迷ったあと、アイネは映像回線を開きながら名乗った。
『――現役兵、アイネ・クライネ伍長です。ブラゼル伍長、よろしくお願いします』
現役兵、の部分へ無意識のうちにアクセントを付けながら、改めて堂々とアイネは名乗った。リタのゲシュレイは距離を保ったまま、トラキア甲板上のアイネを見下ろすように浮かんでいる。
全天周モニターへ小窓が開く。ノーマルスーツがヘルメットからバイザーを上げると現れたのは、大粒の黒真珠のような瞳に妖艶な光を湛えた、褐色の肌の美少女だった。
年齢もアイネとそう変わらないだろう。だが彼女には自分とは異質な系統でありながら、しかし一目でその美貌を思い知らせられてしまうだけの『力』があった。
そして同時に、アイネは気づく。彼女が相手の美貌に息を呑むのと同時に、リタもまた、自機コクピットの小窓に開いたアイネの容姿を、上から下まで値踏みするように見つめていたことを。
『へぇ。ここへ来て急に、まさかの伏兵出現かぁ……』
『何を……?』
『あ……? あ、ああ!? こ、こいつッ!?』
嘆息しながら思わせぶりに呟くリタの思惑が読めず、訝しむように呟いたアイネにそのとき突然、サブリナと話していたもう一人の少女兵が叫んだ。
全天周モニタにいきなり新しい小窓が開いたかと思えば、割り込むように映った少女が人差し指を突きつけながらアイネを睨みつけてくる。
『テメー! いったい誰の許可取って、マコト先輩よりデケェ乳ぶら下げてんだッ!!』
『――へっ……?』
開口一番に少女が叫んだ、あまりにもあまりな暴言。とうてい軍用回線を使って発された言葉と思えないそれは、あっさりとアイネの思考を停止させてしまっていた。
サブリナからトモエと呼ばれていた少女兵は、マコトと同じ東アジア系の、少年的な中性さを帯びた顔立ちの美少女であった。
リタとはまた大きく系統が異なるが、彼女もまたアイネを圧倒しうるだけの、研ぎ澄まされた刃のような美貌を備えている。
だが今、トモエの鳶色の瞳は敵の新兵器に直面した兵士のように見開かれ、同時にその口元は溢れ出る戦意を殺しきれないと言わんばかりに固く食いしばりながらわなわなと震えていた。
そして少女が突きつけた指先と、射殺すような視線の先は――アイネのパイロットスーツをふたつ大きく突き上げる、暴力的なまでに巨大な丸みを隠しもしない双丘であった。
もっともアイネが見る限り、リタとトモエもその胸元で相当に豊かな膨らみを見せつけている。サブリナ以上、マコトに匹敵するだろう。
身体の線を出すパイロットスーツの胸元からその形と質量を十分に誇示する二人の乳房は、世間一般なら十分以上に巨乳とされて強く目を引く大きさだ。 だが、それでもアイネの胸元に育った規格外の爆乳との間には、マゼラン級戦艦とサラミス級巡洋艦の違いをも大きく超える、圧倒的な格差が厳然と存在していることも理解できた。
『アイネ、とか言ったか……? 私はトモエ。ルウム農協予備役、斬り込み屋のトモエだ。覚えとけ。今に見てろ……ゼッテー負けねぇ。その澄まし顔、吠え面掻かせてやるからな……!』
『どうして』
映像回線を開いただけなのに。
他には本当に何もしていないのに、初対面の美少女二人の一人から、なぜここまで露骨な敵意を向けられなければならないのか。
『それではミケリヤ少尉、私たちはそろそろ』
『おう。揉んでやるからさ、また遊びに来なよ』
散歩中にいきなり興奮して通行人へ吠えかかった犬のリードでも取るようにして、リタ・ブラゼル伍長が何事もなかったかのように話しかけると、サブリナも軽い調子でそれに応じた。
トモエが最後までアイネへめんちを切ってから小窓が閉じると、二機のジム・ゲシュレイはスラスターを噴いて軽やかにパブリク改へ飛び乗る。
上下にMSを載せた哨戒艇はそのまま加速して旋回、鮮やかな軌跡を曳きながら元来た船団の方へ姿を消していった。
それを見届けながら歩み寄ってきたサブリナ機が、アイネ機の肩へ左手を置く。
『ごくろーさん。いやー、悪い娘たちじゃないんだけどさぁ。女の世界って、面倒くさいよねぇ』
『明らかに、そういう次元の問題じゃなかった気がするんですが……』
『ま、あの子たちも腕前と根性、それにジオンの残党どもをぶち殺して自分の村を、P−04を守りたい、って思いは本物だから。あの二人とも、私やマコトたちが鍛えた弟子みたいなもんなの。
あいつらと訓練するのは、アイネにとっても悪い話じゃないと思うね』
『ハヤカワ准尉の――』
大ジオン仏道の襲撃で最初の母艦もろとも撃墜され、漂流していた自分を回収したマコト。シャワールームで目覚めた自分の目の前にいた、強く凛々しい美女。
それほど年が離れているわけではないはずなのに、彼女はあまりにもアイネの理想を形にしてしまっていた。何か得体の知れない運命的な力さえ感じさせるほどに。
厳しくも力強く自分を鍛え直してくれた彼女の導きがあったからこそ、アイネはその後に重なった数度の戦闘を生き残ることが出来た。そう自負している。マコトの名前を口にするだけでも胸が高鳴る。
この短期間に、マコトはアイネの心の中のもっとも大きな部分を占めるようになってしまっていた。だから確かめた。
『あの二人は、ハヤカワ准尉とも長い付き合いなんですか?』
『そりゃもう。去年あの因業ババァに母港を宙域外に移されるまで、トラキアもP−04を拠点にしてたからさ。マコトの家も大事な人も、ずっとここなの。そうだよ……アイツ、もう半年ぐらい会えてなかったんだよね』
「…………。……『大事な人』……?」
ハヤカワ准尉の?
――誰?
何気なくサブリナが呟いた中に出てきたその一言だけで、頭の中からその他のすべてが消し飛ぶ。それきりアイネの動きは停止した。
『おっと、前方に機影――ハイザックだな。今日の防空警備は中央派か……どうやら農協の船団よりは先に入れそうだね』
皮肉げに言うサブリナの視線の彼方で、第223戦隊のP−04への進入を誘導するべく、RMS−106《ハイザック》の3機小隊が接近してくる。
周辺航路には、回収してきたデブリやジャンクと思しき何かをいくつもの網に包んで満載し、頂部に低反動砲を残したままで作業機として運用されているらしいRB−79《ボール》数機を搭載した、浚渫船と思しき船舶の姿も見えていた。
今やP−04は眼前にあった。
港湾施設や居住区が遠目に見える、資源採掘用であろう小惑星。全長2kmほどだろうか。
そして、そこからはルウム戦役で破壊されたスペースコロニーから回収・改造したと思しきフレームが周囲に伸びて、多数の農工業用プラント群を円環状に繋いでいる。そのプラント群は大抵のコロニーよりずっと数も多く、また密集しているように見えた。
一年戦争緒戦のルウム戦役で完全に破壊された、新サイド4暗礁宙域の復興拠点P−04。
ジオン残党が跳梁する魔の空域に穿たれた、地球連邦軍の前哨へと、アイネは足を踏み入れていく。 今回はここまでです。もう少しエロ無しが続きますが、そこを抜ければ凌辱監禁系に入ります。 ども、pixivに書いてる者です。
向こうで書いた作品をここに載せてみます。
ガンダム00のマリナがガンダムファイターになった作品です。 前にこのスレでフォーミュラという名前で書き込みました。
当時のトリップが使えるかテストします 上のトリップは当時使用したトリップを失念した時に新たに作ったものでした。
よって最初のトリップはないという結果になりますね……💦
気を取り直して、pixivに書いたのをここに載せてみます。 ずっと昔に書いたものですが……w
『マリナ 闘いの始まり』
戦いを知らぬ皇女が闘士になる決意をしたあの日から……
アザディスタンのガンダムファイト推進委員会の前で、弓と槍の卓越した技術で同国の候補に勝ち、代表選手になったマリナ・イスマイール。
その日から槍と弓は勿論、ファイターとしての格闘や身体能力を高める訓練を続け、他国には負けるが格闘家として十分な基礎能力を身に付けていった。
そんなある日、彼女自身の訓練と同時進行で行われていたMF製造が遂に完成した。
その名はガンダムファーラ。
彼女に合わせ、弓と槍による遠距離・中距離に長けた機体だ。
それを操縦するためのファイティングスーツ装着訓練が始まった。これに成功しなければファイターとしての闘いは始まらない。
「それでは皆さん、今から始めます。」
開発陣やマリナの秘書など、大勢の関係者が見守る中マリナはワイヤーでファーラの中に入っていった。
今の彼女はシンプルな白い訓練用の制服姿。上は長袖、下はズボンというオーソドックスな出で立ちだ。
「これがMFの中……ここが私の戦場なのね……」
一人が入るには広く、大勢が入るには狭い、そんなコクピットで拳を握りしめるマリナ……
天井と床に設置されたリング。
[newpage]
衣服を丁寧に脱ぎ、畳むとそれは収納ボックスに入れると、リングの中央に立ち祈るように手を握り目を閉じた。
全裸の彼女は生来の華奢で均整がとれた体型に加え、程よく引き締まっていた。
控えめな美乳はもう少し小さくなり、小振りな尻は上向きに、肉付きの薄い腹部は更に括れて縦に筋肉のラインが入っていた。 「モビルトレースシステム、起動。」
その声を認識したコンピューターによって、上のリングから清涼感ある彩りの布がマリナを包みながら降りてきた。
全身を圧迫する苦しみに捕らわれるマリナ。
「ぐっ、これは……」
柔らかい見た目に反して凄まじい力で拘束する布製スーツ。
胸も、胴も、尻も圧迫され身動きが容易に取れない。
「キ……、キツイ…………!!
でも、わ、私は、ファイターだから……!」
歯を食い縛りながら手足を力一杯動かせば布が伸びていく。しかし、中々千切れない。
ファイターならば誰もが通る道だが、非力な彼女にとっては尚更至難だった……
「……あれは……!」
その時、偶然目についたのは一本の鉄棒だった。
長さは彼女より頭一つ短い程。
どうやら作業員が最終点検で使ったものを置き忘れていたらしい。
「……あれを……!」
一旦屈んでそれを手にするマリナ。
床に立てたロッドを軸にすがるような体勢で全身を少しずつ回していくマリナ。
幸い体が他のファイターより柔軟な彼女はそれを頼りに全身に布を巻き込んでいった。
「い、いやぁぁぁ……!で、でも、ここを……乗りきれば……」 胸は尚も締め付けられ、小刻みにプルんと震える。
胴体にもグイグイと音を立てながら拘束する。
「ぐっ、このぉぉぉ……!は、早く、しないと……!!」
性器には恐ろしい程食い込み、痛みにも似た衝撃に腰が卑猥に震える。
アナルにはより深く侵入していく布。
女性特有の恥ずかしさを身に染ませて悲鳴のように声を上げる
「く、このぉぉぉ……!!」
これ以上ないくらいに布に包まれると、軸代わりに抱きついていたロッドから全身に力を込め、勢い良く離れた!!
「きゃああぁぁぁぁ…………!!」
ロッドはコクピットの隅に投げられ、布はブチブチと甚だしい音を響かせ破れていく。
「うぐっ……!」
自分もリング外に尻餅をついて、臀部を擦りながらリング内に戻るマリナ。
「…………これって……?」
全身の感覚がやけに軽やかだ。
身体にあの布が完全にフィットしている。
装着は成功だ!
自分の手を見つめるマリナの動きをガンダムファーラもトレースしている。
見守る関係者からも歓声が上がっている。
「わ、私、ついに……!」
嬉しさで顔を綻ばせるマリナ。 スーツは胴体は雪のような純白、腕と下半身は彼女の正装宛らの青紫。
そして、股部分には濃い紫のV字型切れ込みが堂々と入っている。
細い下腹部とスラリとした脚の境界線が強調された形になっている。
しかも、尻の真上からアナルにかけても同色の切れ込みが入っているので上向きの小さなヒップも目立つ。
普段のマリナにとっては恥ずかしいがそれを感じる暇もないくらい喜びに溢れていた。
あれから2週間、生身での戦闘訓練とスーツ装着・MFに乗っての戦闘訓練を繰返した結果、装着時間短縮を果たしたマリナは遂にサバイバルイレブンに臨むことになった。
しかも、筋力アップしたことでロッドに頼らずとも装着できるようになっていた。
誰もいないアザディスタンの砂漠に立つ二人のファイター。
一人はマリナ。相手はギリシャ代表ディノス・サマラス。直々にファイトを申し込んできた男だ。
日に焼けた肌、ギザギザの黒みがかった紅い長髪を縛っている。
搭乗機はガンダムアレキサンダー。
古代の王のような豪奢な外観の機体だ。
金色の王冠に、彫刻のように筋肉を象った白銀のボディ。
深紅のマントは滑らかかつ強靭な盾代わりになる。
右手には大剣を構えている。
両者示し合わせたようにワイヤーでコクピットに入り込む。
「とても威勢の良い人だったけど負けられない……!」 衣服を収納ボックスに入れ、全裸になる。
初のファイトで緊張しながらもリングの中央に立つ。
両手を握り締め、脚を内向きに開き、目を閉じる。
だがそれは最初の時のような、ただ祈るだけの姿とは違い、もっと強い意思を秘めたものだった。
ただ手を握っただけではなく、丁度あのロッド一本が入る程の余裕を設けている。
一言で言うと、見えないロッドを持っているかのようなポーズだった。
(ただ祈るだけじゃだめ、もっと自分を信じて、力を込めて……!!)
そんな思いからくるものだった。
上からくる布の圧迫に負けぬよう、全身の力を入れたり抜いたりを繰返す。
それでも、いつもの癖でアナルには常に力が入ってしまう。
やがて身体は布に包まれ、ギュ……と締め付けていく。
「や、やっぱり……キ、キツイ……!!
でも、負けない……ッ!!」
口を閉め歯を食い縛るマリナ。
見えないロッドを軸にまるでポールダンスをするような動きでゆっくり回転するマリナ。
小振りなヒップを突きだし、足元をメインに回り布を身体に巻き付けていく。
鍛えた甲斐があり、その衝撃にも耐えられ何とか動きを取れるようになった。
「このっ…………あつい……!」
腕をしなやかに動かし、これ以上ない程布が摩擦する。
擦れた熱に苦悶の色を滲ませるが、それに負けず腕を振るう。 ブチッ!バチッ…………!!
鼓膜に強い刺激を残すような音と共に布は千切れ、両腕にスーツが定着する。[newpage]
「まだ、まだキツイ……キ、キツイ…………!!」
腰を突き出したまま上体を反らし、細いウエストを捻る。
強烈な摩擦に襲われながら程良くフィットしていく。
綺麗なお碗型の美乳が白いスーツに浮かび上がり、引き締まってより細くなった胴体も包まれていく。
最後の難関は局部……
性器とアナルを同時に締め付けられ、頬を赤らめながら苦悶する。
「う、うぐっ……!いやっ……!!」
脚を大きく開き、下腹部に力を入れて耐え抜く。
やがて程よくフィットしたのを見計らい、長い脚を片方ずつハイキックして、布を身体から切り離す。
ブチッ、ブチチッ……!!
「ふう…………!はあ、はあ……!!」
遂に皇女はファイターの衣を身に纏い敵を見据え、両者の声が重なり合う。
「ガンダムファイト!レディ……ゴー!!」
「皇女様の実力、見てみたかったんだ。楽しませてもらうぜ!!」
大剣を掲げ意気揚々と挑むディノス。
邪気のない好青年といった面持ちだ。
マリナは槍を斜め上に構えて走っていく。 「はあっ……!」
ぶつかる刃同士。
弾かれそうになったのはマリナの方だ。
痺れる腕に耐え、ぐらつきそうな足を踏みしめ、スライディングしながら相手の背後に回る。
「危ないところだったわ……!」
「すばしっこいな、こりゃ楽しめそうだ!」
「はあっ……!」
姿勢を屈めて突撃しようとするが、ヒラリと視界を軽やかに遮るアレキサンダーのマント。
貫こうにも柔らかいそれは刃を通さない。
「これは……一体……?」
「これは柔軟な繊維でできてるんだ!簡単には破れないぜ!」
そのまま大剣がファーラの胸を斬る。
真昼の砂漠に鋼の白い欠片が舞い散っていく。
「きゃぁぁぁ…………!」
倒れつつも得物は離さず持ちながら、相手のモーションの一つ一つに隙を探しながら槍を突き出す。
しかし、マントに守られていない場所にかすり傷を付けるのが精一杯で中々決め手が見つからない。
「駄目だわ、これじゃあ……」
「こうなったら……」
少し距離を置いて、槍を弓モードに変形させ大量の矢を放つ。
夥しい鋼の矢をマントで防ぐディノスのアレキサンダー。
マリナは自分の姿勢や方向を変えながら打ち続ける。 目を素早く動かし探しているのだ、マントに守られない箇所ができるのを……
「このっ……こんな機能があったなんて!」
しかし、胴体や頭部が防御されている以上どれも決定打にはならずディノスの突進を許してしまう。
「これで止めだ!!」
「こうなったら……!!」
マリナは諦めなかった。まっすぐ弓を構えた状態で立ち上がり、相手を見つめる。
迫る剣が触れる間際、紙一重でジャンプ。
雲一つない青空に舞うファーラ。
瞬時に相手を見下ろし、矢を乱れ打つ!!
「ぐっ、ぐわああぁぁぁ……!!」
土砂降りのようなそれらにマントによる防御モーションはできず、頭部を始めとした幾つかの箇所に傷ができる。
すぐに着地するファーラ。
「終わりよ!!」
咄嗟に槍に変形させた得物を振り上げ、アレキサンダーの頭部を攻撃。
そこを破壊され、砂の山に倒れていく。
数分後、コクピットから出てくるディノス。
頭を擦っているが鍛えているためかダメージはそれほどでもないらしい。
「いやあ、あんた強いな、想像以上だぜ。」
「いえ、私もかなり苦戦したんですよ?」
負けても屈託ない彼の態度に緊張が綻ぶマリナ。
「あなたにファイトの厳しさを教えてもらったんですから。」
そう言って皇女はこれからの闘いに希望を持ち、アザディスタンの空を見上げた。 続けていきます。
『マリナ 淑やかな闘士』
世界各国で長年病のように続いた戦争が4年に一度行われる新たな制度「ガンダムファイト」によって終わりを告げた。
初回の今年、2307年は中東の国家アザディスタンも同様にエントリー。
更にその代表は皇女であるマリナ・イスマイール。
雅で大人しい彼女が格闘家=ガンダムファイターになるギャップに誰もが驚いた。
しかし、彼女は10代の時に親の英才教育の一環として始めた槍と弓の分野でずば抜けた才能を発揮。
だがマリナの興味は昔から続けていた音楽に向けられ、両親を必死に説得しそれらの競技はあっさりと辞めてしまった。
まさかそれが革新的な制度に活かす時が来るとはマリナ本人思ってもみなかった。
「戦い」を徹底して嫌う彼女だが、命を奪うことのないこの「闘い」には自ら名乗りを上げた。
国民の幸せの為にできることに突き進む理念がこのような形で実現しようとしている……
とは言え肉弾戦をしたことのない彼女には基本的にガンダムファイトは不利。
スタンダードな身体捌き、走り込み、筋力トレーニング、最低限の格闘訓練……
それらを行っても基礎的な身体能力では他のファイターに一歩譲る形になる。
巧みな槍術と弓術で数人のファイターを倒してきたのだ。
これは皇女にしてファイターであるマリナとある少年の一日を描いた物語…… 「すごい、ガンダムめっちゃデカイ!」
「負けるな、皇女さま!」
ここは、中東のアザディスタンのとある町にある孤児院ーーー
子供達はこぞってテレビに釘付けになっているが、アニメではなくスポーツの特集。
それも、先日ノルウェーで行われたガンダムファイトの映像だ。
まだサバイバルイレブンの段階だがこの手の番組の視聴率は高い。
司会者はテンション高く実況を続けている。
「さあ、始まりました!我れらがノルウェーと中東のアザディスタンとの試合!
我らが代表、広大な炭鉱を有するキルステン・バルグの駈るガンダムブラース
対するはアザディスタンのファイターにして皇女でもある……マリナ・イスマイールの駈るガンダムファーラ!!
一体勝利の女神はどちらに微笑むのか!
ガンダムファイト!レディ……ゴー!!」
ノルウェー代表はハンマーを持つガッシリとした神話のドワーフのようなガンダムブラース……
キルステンは立派な髭を生やした大男。
青銅のような暗いスーツに身を包んだ筋肉質な姿。
対するアザディスタンは、細身の青紫のガンダムファーラ。女性的なしなやかなラインは正に皇女専用と言った趣だ。
画面に映ったその乗り手に子供達は目を奪われた。
皇女にしてファイター……マリナ・イスマイールは長く豊かな黒髪、白い肌、澄んだ水色の目の女性だ。
普段から国の安定や貧困に喘ぐ各地の慰問に力を入れているので、今は眼前の敵を厳しく睨んでいてもその優しいイメージは国民から消えることはない。 格闘家らしからぬのは顔だけではない。
スラリと伸びた手足、ほっそりした胴体。
しかし鍛えられているので程好く引き締まったシルエットと筋肉の切れ込みが青紫のスーツから見える。
テレビの前の女子はその雰囲気に、そして男子は美貌とスタイルに各々釘付けになっていた。
特に、このアクバルという少年は一番目を輝かせている……
彼はやんちゃで孤児院の職員が手を焼いていた。
「行け!皇女さま!!」
「おい、アクバル。落ち着けよ!」
振り上げた腕を友達に退かされても画面に魅入るアクバル。
マリナは右手には槍を構え、走ってくる相手を静かに待ち構えている。
「一撃で勝つ!」
ドワーフ宛らに体格の良いファイターの力強いモーションから繰り出される攻撃。
次の瞬間には皇女の機体の小さな頭部は破損するだろうと思われたが……
「なに?!」
すんでのところで相手を見失い戸惑う。
……次の瞬間
「どこだ!いきなり……あ……」
突如感じる腹部の痛みに仰け反るファイター。
マリナのファーラが持つMFサイズの槍が機体に命中していた。
倒れるキルステン。
瞬時にしゃがみこみ素早い一突きを食らわせたのだ。 「勝者、マリナ・イスマイール選手!」
圧倒的な勝利に驚きと興奮を隠せない子供達。
「すげえ、細いお姉さんが一発で相手を!」
「女性ファイターいるって聞いてたけど、ホントに勝てちゃうなんて、あたしも自信持っちゃったぁ。」
「おまえ、ファイターにはならないだろ。でも速攻で勝っちゃうんだから凄いよなあ!」
口々に感心を表す中、いつもは賑やかなアクバルは興奮のあまり何も語らず、笑みを浮かべて画面のマリナを見つめるだけ。
(す、すげえ……あんなに綺麗で強いなんて……
それに、あのスーツテカっててハッキリとスタイルがわかってそそるよな……)
10歳程の少年の関心事はやはりそこだった。
そこへやってくるシスター達。
「みんなー、今日はお客様が来ておりますよ!さあ、どうぞ。」
「皆さん、こんにちは。マリナ・イスマイールです。」
子供達は呆気に取られた。さっきまでテレビに出ていた姫がここに立っている。
控えめながら雅な佇まい。そしてフランクで優しい笑顔に誰もが目を丸くした。
身に纏うのは流石にあのピッチリスーツではなく、白い上着に紺色の膝丈スカートというシンプルな姿。
職員が企画した子供達への一大サプライズで、話を聞いたマリナはファイトのテレビ放送とタイミングを合わせるというアイディアに戸惑っていたが、子供達の励みになりたいと承諾した。
今日も他の国でファイトをした帰りに寄ったのだ。
孤児院から少し離れた場所に今日だけ置かせてもらっているガンダムを後で子供達に見せるサプライズも用意している。
「え、えーすごい!ホントにマリナ様?」
「信じられない!今テレビ見てたとこだよ?」 皆沸き立って彼女を取り囲む。
「ええ、前回の闘いよね?何だか恥ずかしいわ。でも、皆に元気を少しでも分けられたみたいで良かった……」
はにかみながら談笑を続けるマリナ。
やがて彼女は皆が戦争や犯罪が原因で家族を失っていた話を聞いて慰めたり、得意のピアノ演奏で楽しませたりしていた。
そんな時……
「ターッチ!」
「キャッ……!」
小さな手がマリナの胸を豪快に触った。
やったのはいたずらっ子のアクバル。
「ちょっとアクバルー、皇女様になんてことをー!」
「全くホントにこの子は…!こういう時に……!」
赤面しながらアクバルを戸惑いの目で見続けるマリナ。
「……んーテレビで見たけど、思ってた以上に小さめだなー
ここのシスターさんの方がでかかったぞ?」
「……わ、私は鍛えてるからそんなに大きくならないだけで」
初めて触れられた驚きでスムーズに話せないマリナの代わりにシスターが捕らえようとするが、少年らしい俊敏さで建物を出ていくアクバル。
「小さいけど、柔らかくていい感じ……
鍛えててもやっぱり女の人だな。」
掌を見つめながら広い空地に行くと、彼は一気に目を丸くした。
「これは……あの、マリナ様のガンダム!?」 大木や簡素な滑り台やジャングルジムという日常的な光景の中に一際目立つ鋼の塊が片膝を着いてそこにあった。
さっき皆でテレビで見て盛り上がっていた自国の守り神・ガンダムファーラ。
頭部や腕部、脚部は殆どのガンダム同様に純白。
胴体と肩はマリナが演説や国内各地への訪問時に着ている正装宛らの鮮やかな青紫。
新聞等で見た他国のガンダムよりずっと華奢で格闘用機体というイメージはかなり薄れるが、やはり巨大人型マシンなので間近で見た迫力はかなりのもの。あんぐりと口を開けてしまう。
「……マジか?信じられねえ……あのMFがここにあるなんて……」
グルリと回り様々な角度から機体を鑑賞していくと、男特有のメカへの憧れが刺激される。
「実際に見るとでけえな……ん?」
背中から入る方式なのだろうが、肝心の背中ハッチが少し空いている。まるで入ってくれと言わんばかりの様子。
しかもそこから太いワイヤーが垂れ下がっている。いつもこれで乗り降りしているが、今日は仕舞い忘れたのだろう。
それを見て好奇心と悪戯心に溢れた彼に大人しくするのは無理だ。
「……やってみっか。」
グリップに付いたボタンを押すと背中の位置にスルスルと上がっていく。
「この高さ、何か不思議な感じだな……遊具の上に上がるのとは何か違う。
しかしマリナ様、意外と不用心だな。そこが可愛いか、フフッ。」
綺麗な皇女の「一人部屋」に侵入するようなスリルを持ってにやけながらコクピットに入ると、そこにはテレビで見たのと同様殆ど何もない、しかし真っ暗な空間が広がっていた。
手探りで探し当てた壁のライトを付けると無機質な壁に周囲の見慣れた町の風景が写し出され、天井と床に一つずつ設置されたリングが見えた。
「おー、テレビと同じだ!よく映ってるじゃん!
この高さだと色々イメージ違うなー。絶景かな、ってな。
取り合えずマリナ様ビックリさせたいから待ってるか!」
コクピットの隅にドカッと座る。 それとほぼ時を同じくして、上空には一体の剛健な外観のガンダムが飛んでいた。
メキシコ代表のガンダムスティンガー。手足に付いた複数の棘、サイズは大小様々。
乗っているのは荒れくれ者のバイス・アリアス。元野盗・名うてファイターの一人だ。
180強の身長のガッチリした身体。日に焼けた肌に僅かな顎髭を蓄えている。
「ここか、アザディスタンの姫が来ている場所は。腕が立つようだが叩きのめしてやるぜ!」
掌に拳を当てて意気込む。彼は元野盗だけあり、手段を選ばず卑怯で荒っぽい戦術を好むファイター。
自国からも色々問題視されているが一番の適任者ということで御上が目を瞑っているのが現実。
何人かの柄の悪い男達が町の至る場所から出て来て旗を振っている。
「バイスの兄貴ー待ってましたぜ!」
「よお、お前ら!ん、あそこにあるじゃねえか。ターゲットのガンダム。暢気なものだぜ。」
ファーラを見つけると重々しい音を立てて降り立つ機体。
駆け寄ってくる柄の悪い男達。
彼らはバイスの盗賊時代の手下で、彼の為に暗躍する時がある。正にどこまでもダーティーなファイターだ。
「おい!皇女のファイターはあんただな!俺はメキシコのバイス・アリアスだ。
ファイトを始めようぜ!」
アクバルはその大声に驚きスクリーンに映る仁王立ちするガンダムに度肝を抜かれる。
しかも手下達がライフルを持ってこちらや近隣の建物を脅すような素振りを見せている。
やんちゃなアクバルも普通の子供。犯罪者や荒くれ者には耐性なんてなく、出るに出られない。 「やばい、どうしよう……てかここで降りても危ねえし。
そういや、あの機体前に中継で見たけど、結構おっかない奴だったような……手下も従えてるし……
早く帰ってきてくれーマリナ様……」
しゃがみこんで怯えるのも無理はない。勝つために民間人を盾にしようとしたこともある極悪非道な相手だ。
近隣の住民も震えて黙り混んだり隠れたりしている。
「私に用!?」
そこに聞き覚えのある女性の声がして顔を上げる。
周りの連中も一斉にその方向を向いた
「え……本当に来た……?」
「随分騒がしいわ。あなたの相手は私だけでいいでしょう。場所を変えましょう、ここにいる皆さんの迷惑になるし。」
そこにいたのは誰もが待っていたマリナ・イスマイールだ。服はあの時と全く同じだがファイトの時に見せた厳しい表情で強靭なガンダムと周りの犯罪者を睨んでいる。
「よく来たな、姫さん。でも、俺は人に従いたくねえんだ。俺が態々来たんだし、どうしてもってんなら上空でやり合おうぜ?
……その前にこいつらでウォーミングアップだ!やっちまえ、お前ら!!」
彼の一声で一斉にライフルをぶっぱなす男達。
「あぶね、マリナ様……って……アレ?」
アクバルの心配は無用だった。
しなやかな動きで銃弾のパレードを避けると、男達を一人ずつ殴り、蹴り、投げ飛ばし全員をのしてしまった。
「いいぞ、姫!やっぱり、生身でも凄いんだ!……」
「……あっさり倒すとは……あいつらファイター程じゃねえが相当強いってのに……
やっぱ本物のファイターには勝てねえのか……」 「あなた、国の代表として恥ずかしくないの?」
「勝てりゃいいのさ!早く始めなきゃ町の奴らどうなるかわからねえぞ!」
ワイヤーを掴むと背中のハッチを開けっぱなしにしているのに気付いて頬を染めるマリナ。
「私のミスだわ……気を付けなきゃ……」
ハッチを開けると皇女とご対面。苦笑いしながら出迎える少年。
「ど、どうもマリナ様。凄かったぜさっきの闘い……」
「アクバル!ここにいたの!」
怒りながら近付く彼女の迫力に圧倒され俯くが……
「……本当に心配してたのよ。あそこにいる皆も何かあったら悲しむわ……」
格闘家とは思えない優しい力で頭を撫でられ、赤面するアクバル。
「ごめん、俺面白そうだからここに入っちゃって……
邪魔にならないように下りるよ……」
「……だめ!あいつは有名な悪漢よ。いきなり出てきたあなたを人質にするかも知れないし……」
「じゃあどうすりゃ……」
事実過去の大戦で使われていた緊急脱出用戦闘機は配備されていない。こうなれば……
「……そうね、壁にあるバーに掴まっていて。大丈夫、必ず勝つわ。
皇女の誇りにかけてあなたを無事に皆の元に帰すわ……
……だから、目を瞑っていてもらえる?」
「……わかった。」
口を閉めて覚悟を決めるアクバル。しかしこの年の少年特有の高揚が生まれて、いてもたってもいられなくなる。
(でも、あの姿になるってことだよな……
おい、ヤバイって……!) 興奮する彼をよそに静かかつ素早い動作で衣服を脱ぐ音が聞こえる。
それらを手慣れた動きで畳むと、床リングの中央に立つマリナ。
「バイス、今から始めるわ。モビルトレースシステム起動。」
(マジで始まるのかよ……あのスーツを着るのか……)
(……うーん、我慢できねえ、許してくれよ。姫様。)
恐る恐る目を僅かに開けるとその光景に息を飲んだ……
幸いにもというべきか?目を閉じながら少し脚を広げ、祈るように両手をそっと握るマリナ。
これから闘うには相応しくない、寧ろ神を無垢に信じる聖女のよう。
柔らかさと優しさに溢れていた。
(ひめさま……邪魔しちゃいけない雰囲気だな
でも見ちゃう、ごめんな)
大人だろうと子供だろうと男であるのに変わりない。視線はその人並外れた美貌だけでなく、体にも注がれていた。
想像通りのスラリとして、同性の中でも華奢な体つき。
しなやかに伸びた長い手足。
どう見ても格闘には似合わない、寧ろ一流の女優やモデルのような姿。……但しシルエットだけなら。
手足は細い形を保ちながらも、程よい深さの切れ込みがあった。
肉付きの薄い腹部にも腹筋のうっすらとした横ラインがいくつか走っており、縦ラインは比較的深々と主張している。
正に女性らしさと格闘家らしさの融合と言うに相応しい完璧なバランスだった。 ……とは言えまだ子供のアクバルにはこの状況でここまで深く見る余裕はなく、全身の素晴らしさに驚愕し、男心を揺さぶられるしかなかった。
(すごい、マリナ様……
見ちゃった……姫様の裸を見ちゃった……
俺もしかして重罪?)
様々な考えが頭の中にとっちらかって、眼前の光景を目に焼き付けるしかない。
そして天井のリングから薄い布が力強い勢いで降ってくる。
彼女が王宮にいる時と同様、鮮やかで品のある青紫と、雪のような純白の二色に彩られたスーツ。
一気にマリナの肩から足元まで降り立つと、彼女は無表情から一転、目を閉じたまま苦しみ始める。
「う、ああ、……うう……!」
伸びやかな手を重々しく揺らし、激しくスイングすると両腕は一気にスーツに包まれる。
「が、頑張れ。マリナ様。」
初めて見る、皇女の苦労に思わず呟いてしまう。
「う、ああああぁぁぁ……」
小振りな胸や細い鎖骨を覆うスーツ。
細く引き締まった胴体を大胆に反らして、体を柔らかいモーションで捻り続ける。
しかし、次が色んな意味で問題だった……
控え目な毛で守られた秘所に当然の如くスーツが食い込む。すると……
「お、おおお……や、く、くす……」
(……?お、おい何を……)
いきなりそそるような声を出すマリナ。しかも、今度は体を反らす代わりに尻を突き出している。
アクバルも反応してこれまで以上の視線を注いでしまう。
「く、くすぐったい……あ、あ……」 男の好奇心が煽られたのかマリナの背後に回るとやはり、小さくも美しく引き締まった上向きの尻がスーツに包まれながらこちらに突きだされている。
尻を振って何とかスーツを体にフィットさせようとしているのを知って尚興奮するアクバル。
前後の秘所に与えられるスーツの摩擦と闘うマリナ。
「……!」
(マリナ様、くすぐったいって……てかこのポーズ相当ヤバイんじゃ……
俺ケツ触っちゃいそう……いや、ダメだ。んなことしたら処刑もんだ!)
子供なりに理性を働かせ、伸ばした手を慌てて引っ込める。
「……ふー、はあああぁぁぁ……!」
脚を含め下半身を激しく動かして全身にスーツを纏うマリナ。
一回のファイトや訓練毎にスーツは入れ換えられるので、前後の秘所は新品の冷たさが与える心地よい刺激に少しの間耐えることになる。
「色々、大変なんだな……ファイターって……」
背後のバーに掴まりながら呟く少年に対し、ニコリと笑顔で首を横に振る皇女。
「ひめ……」
もはや彼はマリナのことしか考えられない。
「さあ、やりましょう。」
互いに上空に浮かび上がる両雄の機体。
「ガンダムファイト! レディ……ゴー!!」 向かい合う二人のガンダム。
「俺が倒すのはあんたで10人目だな!」
鋭い棘の付いた肩を向けショルダーアタックを仕掛けるバイスのスティンガー。
「ハッ!」
マリナはファーラのリアアーマーに付いた、特殊金属製の伸縮式ランスを手にするとそれを伸ばし、鋭い刃で棘を粉々にしてしまう。
「何だと!」
咄嗟のことに驚く相手に構わず肩、手足、胴体に次々と槍の刃を突き刺し、時にはロッド部分で殴打しダメージを与えていく。
スティンガーの全身の棘は見る見る内に砕けて落ちていく。
悔しがるバイス。
「おのれ……甘く見ていたか……!」
「すげえ……マジでできるんだな……」
関心のあまり唖然とするアクバル。
槍を直に盛っているのはガンダムだが、それを操るマリナの構え・全身の動きを直で見て高揚する。
背後から彼女の様子・モーションが全て丸わかりだ。興奮しない方がおかしい。
真後ろから見る皇女の華奢な肩、手足はしなやかに動く。
長く豊かな黒髪は活発に靡く。
スーツ装着に必死になっていた小振りな尻の穴を戦闘開始からギュッと締めているのもアクバルを熱くさせた。
「力、入ってる……」
思わず呟いた声と視線に一瞬振り返った皇女の頬は紅かった。
「見ないで、癖なの……」
「ああ、失礼しやした……(試合中ずっと締めてたのか。やべえ、ドキドキするじゃん。)」 バイスは歯軋りしつつコクピット内のとあるボタンを押すと、スティンガーのバクパック(コアランダー式ではない)が開き、チェーン付きの鉄球が飛び出してきた。
慣れた構えで手に持つバイスのスティンガー。
更にグリップ部のボタンを押すと、幾つかの棘が鉄球から顔を出す。
「こいつは避けられねえぞ?」
豪快なスイングによって、巨大な蛇の如く宙を舞うチェーン。何度もマリナを襲い来る鉄球。
「ごめんなさい、さっきより揺れるわよ?」
「またか!?」
激しいモーションで避け続けるマリナのファーラ。
必死さの為か、子供の握力で耐えられるのが不思議な程、バーに掴まり続けられるアクバル。
「ホラホラ、どうした!この武器じゃ手も足も出ねえか!?」
「はぁはぁ、正直、不利だわ。ああいう重い武器は……」
何とか背後に回ると、あの鉄球が入っていたバックパックを思い切り蹴って距離を置くマリナ。
「はあはあ、きついな……このスピードで毎回闘ってるのか、マリナ様……」
「ええ……私は慣れてるけど、あなたには堪えるわよね、ごめんね……」
憂いを帯びた顔で言われて言葉に詰まりながらも「いや、んなことねえよ。俺は大丈夫だからさっ。」
無理矢理笑顔でガッツポーズを取って見せる。
「諦めな!姫さん!?」
意気揚々と飛んでくるバイスの機体。
「どうする!このままじゃ……!」
「いえ、この距離ならいけるわ……!」 微笑みながらランスの小型スイッチを押すと、刃パーツが収納され、ロッドが真っ二つに割れてアーチ状に変形した。
サイドアーマーに複数収納されていた矢をセットするマリナ。
彼女のもう一つの戦術だ。
「これって……」
「弓よ。これで決めるから、ね。」
ニッコリするマリナに素直な笑顔で笑い返すアクバル。
アクバルはマリナの左側に移動してその横顔を覗き込む。
いつもは柔和な水色の瞳は鋭く敵を狙う射手そのもの。
スラッとした脚を凛として開き、右腕を一点の緩みもなく、後方に力一杯引く。
「ハッ!」
細く優しい声は低い叫びに変えて、一本の矢を放つ。
回避を試みたバイスはギリギリで肩に刺さってしまう。
「このっ……!」
鋭い痛みに顔を歪めるバイス。
「よし!」
拳を握り興奮する少年。
手慣れた動きで複数の矢をセットすると目にも止まらぬ速さで撃ち抜いていく。
「町の人達を脅かしたこと、反省して……っ
これで終わりよ、ハッ!」
真空波のように飛び掛かる矢の雨。
「手こずらせやがって……って、何だありゃあ!?」
矢を引き抜いた直後のバイスは鉄球を持った腕で頭部を庇うが、当然のように腕、腹、脚に刺さっていく。 「うわあああ!!こ、この、小娘にぃぃぃ……!!!」
比較的頑丈な装甲だったが一定のダメージが至るところ刺さり、悲鳴を上げる悪漢。
ガッシリした機体はバイス本人と共にワナワナと揺れている。
「やりぃ!!姫さますごいじゃん!!」
はしゃぐアクバルに静かな声で諌めるマリナ。
「ありがとう……でも前に出てきちゃだめでしょう?
お願いだから下がっていて。
それに……まだ終わってないわ。」
「?」
実際スティンガーの頭部は無傷だった。そして、そこを守った鉄球も……
ガンダムファイトは頭部を攻撃され破壊されない限り敗北扱いにはならない。
そしてこの闘いで最も厄介なのはあの強靭な鉄の塊だ……
「……姫さん、やってくれんじゃねえか……
こうなりゃ本当の怖さを教えるしかねえな……」
ニヤリとすると鉄球を支えるチェーングリップのボタンを押すバイス。
瞬時にその塊はチェーンから離れ、まるで意思を持ったかのようにマリナ目掛けて飛んでいく。
「そんな!?」
驚きながらも矢を放つマリナ。
しかし、流石スティンガー本体以上の防御力を誇るだけありビクともせず、進んでいく。
「まさかあんな機能があるなんて!」
「ど、どうしよ。マリナ様!?」 「怖がらないで……勝って見せるわ……皇女だもの。」
優しく微笑みながらも激しい射撃を繰り返すがビクともせず突き進む鉄球。
「ハハハ!どこまで耐えられるかな!!」
まるでバイスの嘲りに呼応するようにそれはマリナの腹部に当たる。
「きゃああああ!!」
棘と鉄の重量、そしてかつてないスピードを一気に受けて、マリナのスーツと体に鈍く重い痛みが走り、細く高い声を上げる……
ファイターと言うよりは暴漢に教われる乙女のようだ。
ただヒットしただけではなく、腹部に接触したまま、マリナを後方へと押しやるように飛行し続ける鉄球。
もはや永続的に続く拷問のようなもの。
「うわあ!いてえ!」
勿論彼女の背後にいたアクバルも安全バーを握ったまま、壁とスーツ姿の皇女にサンドイッチされた状態になってしまった……
(姫様、やばいんじゃあ……
あのトゲボールやり過ぎだろ……ルールよくわかんないけど
……にしても姫様とこんなに密着できるなんて……オレまじでラッキーじゃねえ?)
不謹慎だが年頃の少年なので仕方ない。
マリナのしなやかな筋肉に覆われた体(それも全身ピッチリスーツ)に押し付けられているのだ。
興奮しないのは至難の技というもの……
お陰で年相応のアレが逞しくなってマリナのお尻に当たっている。
(もう少しこうしてもいいかも……あのファイタームカつくけど今は感謝だな……アハハ……) 「ア、アクバル……ごめんなさい……ケガはない?……」
「お、おれだったら平気だよ……」
(姫様、オレのアレに気付いてねえのかな……でもその方がいい)
痛みを押さえて向き直るマリナ。
(この鉄球……どうにかしないと……どこかに策はあるはず……)
自分を押しやる鉄球を苦しみながらも見つめると一ヶ所に細く深い穴が見つかった。
(そうか……あの時連続で射撃したからなのね……)
「どんなに硬くても勝機はあるわ!」
「えっ!?」
突然の言葉に思わず自分の股間を触ってしまうアクバル。
(おいおい、硬くてもって……
やっぱりオレのことに気付いて……なわけないか。)
「随分苦戦してるな!俺が引導を渡してやる!挟み撃ちだ!」
後ろからいつの間にかやってきたバイスのガンダムスティンガー。
辛うじて残っていたトゲの付いたナックルをマリナの背中に向けて迫ってくる!
しかし、皇女は苦しみに汗を流しながらも珍しく強気に笑った。
「イチかバチかよ……!」
腹部は鉄球の摩擦と硬度を食らい、背中はスティンガーのニードルに狙われている。
「ど、どうすんのさ、マリナ様!?」
心配するアクバルをよそにマリナは刻が来るのを待った。
「覚悟しろ!」 迫るバイス。しかし……
「ハッ!!」
ギリギリのタイミングでバイス機の肩を踵で蹴り上げ上空に飛んだ!
その衝撃で彼女から離れた鉄球はその主であるスティンガーの腹部に激突した!!
「ぐああああ!!」
凄まじい叫びを上げるバイス。
「すげえ……マリナ様、こんなことできるんだ!」
はしゃぐアクバル。
一方自由落下で誰もいない山に落ちていく鉄球に目にも止まらぬ連続射撃を浴びせるマリナ。
あれ程彼女を苦しめた鋼の怪物は無惨に粉々に砕け散った。
「ちくしょう……マリナ、てめえ……!!」
悪漢は腹部を押さえて歯を食い縛り皇女の機体を見上げながら、相手と同じ高度まで飛翔する。
同じ目線で睨み合う両者。
マリナに数発矢を放たれ勢いを徐々になくすバイス。
「バイス、ここで終わりにするわ。
町の人達を脅かした罪、反省しなさい……」
弓を凛々しく構えるマリナ。しかし……腹を押さえて膝を着く。
やはり短時間とは言えダメージの蓄積はかなりのものだった……
鋼による圧迫と猛スピードの為に全身に疲労も溜まり、狙いを定めるのが難しいのだろう……
「うぐっ!……」 「マリナ様?!」
「……はあ、はぁ……ねえ、アクバル。
お願い、聞いてくれる……?」 「うん!何でも聞くよ!」
「それじゃあ……」
彼女の求めに少し頬を赤らめるがすぐに頷く。
片膝を着いて狙いを定めるマリナ。
後ろ側で何と彼女を羽交い締めにするアクバル。
上体を安定させる為とは言え、彼女の背中とお尻にイヤでも密着して動揺を抑えられない。
このまま胸を触りたい衝動に駈られるがグッと堪える。
「これで終わりだ!」
「いえ、あなたの方よ!」
光の速さで射たれた矢がスティンガーの頭を撃っていく。
「ぐわああああ!!俺が、小娘に……やられるだと……!!」
無人の山に落ちていく悪漢とスティンガー。
「ねえ、皇女様……」
「なにかしら?」
「今日は、色々と……ごめんなさい……」
「いいわ、謝らないで。私はこの国が、あなた達が好きだから闘ってるの。ただそれだけよ。」
頭を撫でる皇女はとても優しかった。
その後、孤児院に無事帰還するマリナのガンダムファーラ。
ワイヤーで降り立ち、ファイティングスーツ姿の皇女と手を繋ぎながら歩むアクバル。
「もう!本当に心配したのよ!!」
「やんちゃだからってまさかここまでとはな……」 真剣に怒ってくれる孤児院のシスター。呆れながらも帰宅を喜んでくれる友達。
「ごめんごめん。でもマリナ様凄かったんだぜ!!
テレビで見るのとは比べ物になんねえよ!
やっぱ本物は違うよな!」
拳を振り上げて皆に自慢するアクバル。
それをクスクスと微笑みながら見守るマリナ。
「今日は本当に申し訳ありませんでした!!家の子がとんでもないご迷惑を……!」
「いえ、気にしないで下さい。アクバルは立派に私を助けてくれましたから。
あんな子がいるんですから私は絶対勝って見せます。」
「マリナ様……」
憧れの目で見つめるアクバルの耳元に語りかけるマリナ。
「ねえ、アクバル……?」
「何?」
「あなたあの時……熱くなってたでしょ?」
「そ、そんなことないよ!」
「ねえ、何?何なのー!?」
アクバルは他の子達に聞かれて頬を赤らめながら苦笑いするしかなかった。 スパロボとかでプル・プルツーが救われる(仲間になる)話はよくあるが
フォウ・ロザミアが救われる話は少ないような…
何故だ。 需要はあると思うけど、その二人は劇中のストーリーが悲惨すぎてハッピーエンドにどうもっていいのかわからないから、な気がします。
原作のプルツーも悲しかった。
ゲーマーではない自分の意見だけど。
ただ、プルは大好きなジュドーと一定期間同行できたから比較的幸せだと思います。
まあ自分は原作で殴り合いなんて全く経験無さそうなマリナとシーリンに格闘させてますがw 『マリナ 新たなる戦術』 EP1
アザディスタン代表のガンダムファイター、マリナ・イスマイールは都市から離れた荒野に敵ファイターと向かい合っていた。
相手はエジプト代表、レザー・クルスーム。185センチの大男でいかにもパワーのありそうな風体をしている。
「闘いにゃ似つかわしくねえ姉ちゃんだ。皇女様がよくやるぜ。
楽しめるんだろうな?」
どこかサディスティックな笑みを見せるレザーにマリナは静かに、だが毅然と答えた。
「……私にとっては楽しむものではありません。ただ、国の為に闘うだけです。」
「まあいいさ、精々泣かないようにな。ガンダム!」
レザーの大声と共に大地は割れ、ガンダムグレイブは姿を表した。
マッシブな人型ではあるものの、ピラミッドの頂点を思わせる尖ったパーツが複数付いている。
「ガンダム。」
対して静かに呟くマリナに答え、大地から現れるガンダムファーラ。弓と槍の闘いに適した純白の機体だ。
コクピットに入っていくマリナ。
皇女としての紫の衣装を丁寧勝つ素早く脱いで、一糸纏わぬ姿になる。
均整の取れたスマートな身体。それと同時に、訓練により程よく筋肉のついていた。
腹は比較的深い縦線が入っていて、臀部は上向きで無駄な肉がなく、柔らかさと締まりを両立させる見事なものだった。
もし少女時代しか知らない亡き両親が見れば娘の成長?ぶりに驚くこと受け合いだ。
「モビルトレースシステム機動。」
青紫のスーツが凄まじい圧力とスピードを伴い降りてくる。
祈るように両手を握りしめ、脚をそっと開いて待つマリナ。 間もなく、胸元から爪先までを完全に覆い尽くす大きな布の固まり。
遠目に見れば美女を襲うスライムのように見えるかも知れない。
「はぁぁぁぁ……!!何度も、したから……これくらい……」
声を絞り出し耐えるマリナ。
少し小振りな胸を反らせば、テカる布は嫌と言うほどその美しい輪郭を際立たせ定着していく。
爪先立ちになりつつ、両腕を鶴のように広げると、甚だしい音を立てながら布は破れ纏われていく。
「うっ、……あ、あ……キ、キツイ……!!」
何度やっても慣れないのは股間とアナルに侵入する布。
まだ女の喜びを知らない膣は柔軟なそれが与える摩擦に翻弄され、無言の悲鳴を上げる。
そして、禁所とも言えるアナルは深々と入っていき、清潔なそこを満たしていく。
「くぅ、……いやぁぁ……はぁ……はぁ!」
尻を上下左右に振りながら定着し、馴染ませていく。
どこか一ヶ所でも定着しなければ、機体に自分の動きをトレースさせられない。
普段の彼女を知る周囲からは想像できない姿だ。
長い両脚を片方ずつ掲げて、全身スーツに覆われた。装着完了。
細い胴体は青紫、長い四肢は純白、足の付け根とアナルにはV字型の暗紫が同等と主張していた。
二人のファイターの声が重なる。
「ガンダムファイト!レディーゴー!!」 「喰らいな!」
「なんの!」
グレイブの全身に付いた突起から繰り出される大きな砲弾を得意の弓術で破壊していくマリナ。
「この調子で勝てれば……」
冷静に素早く近付くマリナ。しかし……
「どうかな!?」
突如猛スピードで迫るグレイブ。砂を掻き分けスムーズに走るその様に驚くマリナ。
「これは……!」
「この機体は様々なフィールドに対応できるように換装式になってんだ!
アマゾンなら湿地、海なら水中、砂漠ならホバータイプだ!」
瞬時に接近を許してしまい、弓を叩き落とされるマリナ。
「そんな!」
「非力な姫様には勝機はねえぞ!」
片腕を捕まれ抵抗できなくなるマリナ。
必死で外そうとするも相手は動じない。
それもそのはず。グレイブはパワーに長けているのもあるが、そもそもマリナは他のファイターに比べ非力。よってパワータイプを操るのは負担になる。
それを補う為の槍と弓だったが落とされ身動きできなくなったとあれば勝ち目はない……。
皇女の戦況は絶望的だ……! 「まだ、諦めない……」
サイドスカートから取り出したスペアアロー……
しかしそれさえも叩き伏せられてしまう。
やはり遠距離でこそ輝く武器。至近距離ではどうしようもない……
「ほら、喰らいな!姉ちゃん!」
「きゃああぁぁ!!」
肩、腰、脚に砲撃を受ける。ファイトのルール上、コクピットを狙うわけにはいかないので必然的に食らうのはそれらの場所になる。
「さあて、頭を狙わせてもらおうか……」
「……!」
ファイターとしての本能とでも言おうか、瞬間的に精神がクリアになったマリナ。
恐れも焦りも心の奥に沈み、反射的に片足を上げて思いきり敵の片目にキックを直撃させた!
「ぎゃぁぁぁ!!」
一瞬の強い攻撃に悲鳴を上げファーラを離すグレイブ。
砂の上に尻餅を着いて何とか距離を取るマリナ。
「やろう、目を……ファイトはお預けだ。また一週間後に来るぜ!」
飛び去っていくグレイブ。
「はぁ、はぁ…………私の武器が通じない……」
汗を拭いながら飛んでいく巨体を見つめるマリナ。
そこに一体の小型飛行機が降り立った。
中から現れた女性を見てマリナは驚いた。
ウェーブのかかった短いブルネット。
眼鏡の奥に光るクールな瞳。年はマリナより少し上だろうか。 「あなたは……シーリン?」
「久しぶりね。マリナ。」
マリナは機体から出ると飛行機にいる彼女に駆け寄った。
マリナの秘書をしていた女性、シーリン・バフティヤール……
外交の為、暫く国を留守にしていたのだ今日戻ってきたのだ。
皇女は頬を染めながら……
「あの……今のファイトは……」
「ええ、見ていたわ。一国の代表としては少し酷いわね……」
「言い訳はできないわね。でも、後一週間しかリミットが……」
「そう、それなら私に良い提案があるわ。ここで挽回できなければ……わかるわね?」
「…………」
マリナは首を縦に振った。 EP2
「きゃっ!」
床の上に倒れ込むマリナ。シーリンはいつも通りの冷静な顔で彼女を見下ろしていた。
「いたた……あなた、いつの間にこんな技を……」
立ち上がる彼女にシーリンは告げる。
「外交中に日本で教わった合気道というものよ。殴らずに相手の勢いを活かして倒す、古くから伝わる武術よ。」
「そんな武術があったの……空手や柔道しか知らなかったから……」
驚くマリナの前にしゃがむシーリンは側近と言うよりは家庭教師という顔だった。
そう……昔彼女に教えていた時のように、政治に携わる今よりは幾分親しみやすい雰囲気だった。
そっと手に触れる。
「私も始めて知ったけど、マスターすればかなり有効な武術。
あなたは努力を重ねてここまで成長した。それでも唯一他のファイターに届かないのはフィジカル……
器用に武器を使いこなしても腕力では敵わないでしょう。
でも、合気道ならその差を埋められる。あのパワーやスピードを兼ね備えた敵にもね。」
「…………期限は一週間だものね。わかったわ。私に教えて頂戴。」
シーリンは首を静かに縦に振った。 そして数時間後……
「私の動きを少し見切れるようになったみたいね。」
「はあ、はあ……!それにしても、シーリンの、手捌き、すごいわ……
対応……精一杯だもの……」
フラフラになりつつ汗を流すマリナ。
彼女が立っている場所を中心に汗が滴り落ちている。
「MF用の訓練室に行きましょう。見せたいものがあるわ。」
「?……」
不思議に思いながらも付いていくと、応急修理を終えたガンダムファーラにワイヤーを使い入っていくシーリン。
前方には、各国のMFを元にした無人の訓練用ダミー機が複数待機している。
「まさか……」
「ええ、今から合気道のファイトを見せるわ。よく見ていて。」
コクピットに入ったシーリンは慣れないその場所を見回す。
旧友にして皇女、そしてファイターであるマリナの居場所。
ファイトにかける想い、焦り、不安、そして勝利の喜び。
マリナが持っているありとあらゆるものがこの戦場にひしめき合っているような気がして、普段冷静な彼女も息を飲む。
「最初会った時は少し危なっかしい所もあると思っていたけど、ここまで強くなるなんてね……」
緑の外交スーツから布製のケースを取りだし、服と下着をパサッと脱ぐと、それは粒子となり消えていく。
マリナより数センチ背の高いシーリンはパッと見彼女より威圧感を与えるかも知れないが、身体は同じくらい細かった。
一言で言うと、適度に軽い運動を嗜む女性と言った趣の体型。
皇女より少し大きい平均サイズの胸。 ファイターでないのでマリナ程でないが、一般人の女性より幾らか引き締まった身体。
艶のある肌は色気を引き立てるのに充分だろう。
流れるような線を描くシルエットも男を昂らせるだろう。
リングに立ち脚を閉じて、両腕をスーっと広げる。
「デミモビルトレースシステム機動!」
叫んだ瞬間にケースから取り出したのはサイズの違う二つの半透明の布。
その内大きい楕円形のものを胸にピタリと吸着させる。
「く、うううぅぅぅ…………!いやぁぁぁ……!!」
いつもの凛とした揺るがない態度からは想像できないあられもない声。まるで痴漢や強姦に遭ったような悲鳴と共に身体を反らす。
布は大きく広がり、見る見る内に胸から鎖骨、腹、背中と両腕を包んでいく。
デミモビルトレースシステムとは、最近開発されたモビルトレースシステムの簡易版である。
必要以上に負担のある正規版に比べ1/3の疲労で済むもの。
巨大なスーツが上から降りてくるのではなく、二つの伸縮式布で上半身と下半身に纏う。
云わば訓練生とファイターに憧れた一般人のためのもの。
その分、人間の動きをガンダムにトレースさせる効果は正規の1/3程。
特定の武術やスムーズな動きに長けていれば、性能以上のトレースができる者もいるが稀である。
「マリナの、苦しみに、比べれば……!!」
正規程手はないにしろ、全身にかかる圧迫を跳ね退けるように握り拳を作り、両腕を広げる。
そして、シーリンはもう一つ、小型カプセル状の布を性器である谷間に差し込んだ。 「い、いやぁぁぁ……!!」
いつもの凛としたものとは違う声色を上げてしまうシーリン。
布はやはり性器の比較的奥まで吸着する刺激を与えながら、下腹部、性器周り、尻、脚を包んでいく。
「キ、キツイ……!!」
深いアナルにも行き渡るスーツに腰を揺らしながら、全身に力を込める。
「時間が、ないわ!!マリナの、為に……」
吸着に耐えながら正面にいるダミー達を見据えるクールな瞳。
衝撃は徐々に消えていく。一般人に取っては有り難いシステム。
半透明の美しい、だがどことなくぼやかした色のスーツに包まれたシーリン。
通信機を作動させマリナに呼び掛けるシーリン。
「よく見ていてね。これが合気道よ。」
首を縦に振り旧友が乗ったガンダムを見つめるマリナ。
「はあっ!!」
簡易版とは言え、走り込みと合気道に慣れたシーリンはスムーズに、正確に自分の動きを反映させている。
ファイターではないが一般人としてはかなりのものだ。
ダミーの振り降ろす腕を掴み、瞬く間に投げていく。
バランスを崩した機体は次から次えと間接を初めとするパーツを破壊されて倒れていく。
「凄いわ……こんな戦い方があったなんて……」
その鮮やかさに魅入るマリナ。
皇女は友によって新たな希望を感じていた。 EP3
訓練開始から三日経ち、マリナは苦労しながらも生来の才能ゆえに合気道の技を身に付けていった。
今は晴天の昼下がり、気晴らしに街を歩く。道行く人に挨拶をして、時には軽く談笑すると、人通りのない原っぱに出た。
街の治安が守られていることを皇女として嬉しく思う。
およそ十年前には考えられなかったことだ。
「これも国のみんなが協力してくれたお陰ね……」
(絶対にあんな人に負けはしないわ……シーリンの為、みんなの為にも……!
…………!?)
上空から自分目掛けて何か大きなものが勢いを付けて降ってくるのを感じ、ファイター故の反射神経で素早く身構える。
棍棒を持った長身の男。
「ハッ!……」
瞬時に相手の腕を掴んで捻り、投げ飛ばした。
「いてて……てめえ、避けやがったな……」
背中を強かに地面に打ち付けた男はダメージに痙攣している。
この近くの土は柔らかいとは言え、マリナの今までの訓練で培った腕力と合気道の訓練成果によって、相当の痛みがあるらしい。
棍棒を奪って槍の構えのように突きつけるマリナ。
「エジプトのファイター・レザーの命令?
」
「けっ、誰の命令だろうが関係ねえ!」
男が痛みに耐えながら指を鳴らすと、複数の男達が茂みや木から姿を現す。 殆どは嫌らしい顔でマリナを見ている。
相手を痛め付けたいだけでなく、性的なことを考えてもいるのだろう。
それは対面している皇女自身にも伝わっており、ファイターになってからある程度の覚悟はしていた。
皆腕利きの格闘家や元軍人……レザーが雇った相手だろう。
シーリンが言った通り、マリナの弱点は筋力。武器の扱いやスピードはともかく、純粋なパワーだけなら彼女を越える者も二、三人は混じっているかも知れない。
「マリナよ、悪いがここでシメさせてもらうぜ。」
一斉に襲いかかる男達。
戦闘体勢に入ったマリナは次々と相手を殴り、蹴り飛ばしていく。
ガンダムファイターとして非力でも、それ以外の格闘家や軍人を圧倒的に凌ぐパワーと格闘センスを持っている彼女は純粋にパワーだけで片付けられる。
そして敵は残り僅かになったのだが……
向かってくる一人の男は凄まじい腕力でマリナのパンチを弾き返す。
一気に原っぱに倒れ込むマリナだがすぐに立ち上がる。ファイターにしては小さい拳は痛みにジンジンとしている。
「キャッ……!」
「フッ、応えたらしいな。俺は腕力に関しちゃ自信があってな。」
その男はテクはイマイチだったのでガンダムファイターの適正はなかったが、パワーはかなりのものだった。
この世界の格闘家の中ではトップクラスまでいかずともかなりのものだろう。 「くらえ!」
更に何発もキック、パンチをマリナの腹、腕、脚等に入れていく。
乱れ内に少しずつ赤くなる皇女の皮膚。
「うぐっ……!(もっと冷静に……敵の動きを読まなきゃ……)」
ふらっよろめくマリナ。周りの男達は手を出さずにいやらしく囃し立てる。
金で雇われたであろうそいつらは暴力に飽きたらず性欲まで強く持っている。
今マリナにダメージを与えた男も同類の表情だった。
「いい格好だな、皇女さまっ!これが終わったら俺達楽しめるな!!」
「はぁ……はぁ……誰があなた達に……
(ここで負けては国を救えないわ……
怖い敵なんて、誰もいない……!)」
心を鎮めて雑音をシャットアウトすると、どこか精神が白く透き通ったような心持ちになる。
自ずと今握った拳は開かれて、身体全体にかかる力は抜けて軽くなったような心境だ。
彼女には怪力の男しか見えていない。
大きな拳が見せる軌道……それを鋭く見つめると、痛む身体を押して腕を掴み、捻り混んだ!!
「ハッ!」
「うわぁぁぁぁ!!」
そのまま更に捻ると、男の腕の間接が脆くも外れる音がした。
「ひいぃぃぃ!!」
男はそのまま痛みに苦しみながら汗をドッと流していた。
皇女はそれを冷静に見下ろすだけ…… 今日はここまでですね。
『新たなる戦術』も既にpixivに書いたものですが、一気にガーッと載せるのもあれなので少しずつにします。 エロとバトルと、時々リョナと
EP4
そして他の男達もマリナに投げられ、間接を捻られた。
全員が彼女の通報で逮捕されたが、敵ファイターの住むエジプトと問題を起こしては国の安全に関わると言うマリナの判断で密かに独房行きになった。
マリナはあの頭が冴え渡るような感覚から元の状態に戻っていたが、何分初めての体験なので混乱しつつ帰路に着いた。
街の人達や通報を受けた警官からは軽い土汚れや痣を心配されたが、本人は笑って心配をかけないように努めた。
ここはアザディスタンの城の皇女専用の個室。少し脚の長いベッドには皇女の純白の下着が丁寧に畳まれて置かれている。
マリナは椅子に座って一糸纏わぬ姿でシーリンのお世話になっていた。
両手を膝に置き真っ直ぐに姿勢良く座っているが、桃色の薄い唇を少し強ばらせている。
控え目な美乳・括れていながらも引き締まった腹・しなやかな手足……痣のできた体の各部に塗り薬が染み渡る。
「いっ、いたい……」
「全く無理をするんだから。たまにそういうところがあるわよね、昔から。」
シーリンは呆れながら出来るだけ優しく薬を塗ってくれていた。
「ありがとう、シーリン。でも不思議なのよ。冷静になろうとしたら頭が冴えたような、余計なものが消えちゃった状態になって……」
シーリンは少しの間考えていたが直に顔を上げると
「それはもしかすると、明鏡止水というものではないかしら……」
「め、明鏡止水……?」
聞き慣れない言葉に首を傾げる皇女に旧友は続けた。
「一切心が荒まずに、澄み渡った……そうね、とても落ち着いた安定状態というのかしらね。日本で聞いた言葉よ。」
「私が、その状態に……?」 「私が、その状態に……?」
「ただ、誰でもいきなりなれるわけではないわ。もしかしたら……その前段階かも知れないわね……」
「じゃあ、いつもその状態を保っていられれば……」
「そう、だけど決着までに後四日しかないわ。確かに大切な言葉だけど、新しい概念に心を奪われていたらそれこそ元も子もないわ……
言い出した私が言うのも何だけど、忘れて訓練に励みましょう。ただ冷静さだけを心掛けるしかないわ。」
「そうね、ありがとう。シーリン……」
それでも、その言葉はマリナの心を掴んで離さないのを自身が一番わかっていた。
望みと不安を同時に見せる澄んだ水色の瞳……
それは旧友に親愛の微笑みをさせてしまうものだった。
「マリナ、あなたって人は……
……所で何か感じない?」
「何って?」
「この部屋、私達だけじゃないわよ?」
「……!?」
敵の襲撃後なので、立ち上がり構えるマリナ。
シーリンはベッドの脚に触れると諭すように「出てきなさい。」
「な、何?」
「あちゃー、ばれちゃったかー、ハハハ。」
ベッドのやや長い脚と床の間から這うように出てきたのは見覚えのある少年……アクバルだった。
前に孤児院で出会い、コクピットに入りマリナの戦いを目の当たりにしたあの少年……
「アクバル!あなた、いつからそこに……
ずっと、見てたの!?ひどい……」
マリナは立ち上がり、胸と局部を両手で隠す。 子供とは言えスケベな男子。女としては反射的に防御せざるを得ない。
スラリとしつつ引き締まった、つまり二重の意味で美しさを兼ね備えた女体を震わせる。
少し衝撃を与えればすぐに体制を崩して大事なところを公開しかねない危うさ。
普段ファイトで落ち着いた構えを見せる彼女とは別人のようだ。
ただ、それはファイトの訓練と経験によって積み上げられたもの。
今の姿は生来の彼女らしさかも知れない。
実は彼に裸を見られたのはこれで二回目。最初の時は目を瞑るよう頼んでから、脱衣してスーツを装着したので恥はあまりなかった。
…………と思ってるのはマリナだけで、アクバルは(ある意味では)勇気を振り絞ってこっそり目を開け、皇女の裸体とスーツの装着に苦しむ様をまざまざと脳裏に焼き付けたのだ。
まだ小さい彼には相当の刺激と高揚を教えてくれたので、それを一人アソビの助けにしているのは秘密だ。
その思い出を孤児院の男子達に語れば相当の反響を呼び、女子達はそれに対し所謂「男子サイテー!」というリアクションを見せ、従業員は青ざめながら説教をしていた。
この孤児院始まって以来の大騒ぎだった……
「いや遊びに来たんだよ。マリナ様にあったことあるって言ったら城の警備の人が入れてくれてさ。
でも、酷いな、今回ヤバいやつらだったんだろ!?
ファイターにも色んなタイプがいるんだな……」
アクバルが心配そうに手を触れようとするのを反射的に武道宛らのモーションで避けるマリナ。
「もう、酷いのはあなたよ……
……でも、ここまで来てくれて嬉しい……ありがとう……」
マリナは呆れながらも険悪な感じはなかった。寧ろチラリと向けた水色の瞳には喜びが見えるので、少年は素直に笑った。
「気付かないなんてまだまだね……皇女様も形無しね……」 「シーリン、からかわないで!
……あっ」
言った拍子に手を広げて、股間を見せてしまうマリナ。
「…………」
時が止まったようなムード。鳩が豆鉄砲食らったような顔になるアクバル。
「いやっ……!!」
「うわぁぁぁ!」
少年は目にも止まらぬ速さで腕を捕まれ床に転んだが悪びれる様子もなく背中を擦る。
「いてて、流石、マリナ様か……」
「ほら、行くわよ。」「はい……」
シーリンに連れられて部屋を後にするアクバル。
着替えたマリナはまた二人を部屋に入れてお茶を人数分淹れた。
「院のみんなは元気?」
「うん、みんなマリナ様が来てからもっと元気になったよ!」
「そう、良かった……私が少しでもみんなの力になれるなら……」
少年の言葉には二重の意味があったのを彼女は知らない……
シーリンだけは何かを察したのか黙ってお茶を啜っていた。 EP5
マリナがアクバルと和気藹々と過ごしている頃、城の別室では何人かの大臣が集まっていた。殆どは年輩で、中には中年も混ざっていた。
アザディスタンは元々女性に参政権のない国。
しかし、ガンダムファイトが制定されたことで戦争は終わり、政治家の尽力により国の経済力も少しずつ上がっている。
皇女となったマリナがガンダムファイターになり、二重の意味で国の代表になったことで、国内の女性の地位も上がり女性政治家も増えた。
それを快く思わないのがここにいる彼らである。
「しかし、参りましたね。ここ最近のマリナ皇女の活躍ってやつは。」
一人が皮肉っぽく告げる。
「全くだ。しかし、遂に完成したじゃないか。新型の《スーツ》が。
何も知らずに開発の話を喜んでいたな、皇女は。
これで彼女の信頼は終わりだろう。」
自信ありげに話す男は中心人物らしい。
すると、隣にいた男は手を上げた。
「しかし、そうなっては国民からの我々の評価も危ないのでは?」
メインの男は首を横に振り
「いや、大丈夫だ。優しい皇女とその直属の部下達なら甘い処罰を選んでくれるだろう。
今回の失敗を糧にこれからもお願いします……という言葉と共にな。」
「確かに。それにエジプトのファイターがこのタイミングに我が国に勝負を仕掛けたのもラッキーですね。
敵に感謝することがあるとはね……」
個室で談笑するマリナ達の元に先程集まっていた大臣の何人かがメカニックスタッフ数人を連れてやってきた。
「マリナ皇女。実は新型のファイティングスーツが完成致しました。」 「本当ですか?それではすぐにテストしましょう。」
嬉しそうに立ち上がるマリナ。
少し不安げに男達を見つめるシーリン。アクバルは好奇心の目でマリナを見つめる。
シーリンとアクバルを連れ立ってガンダムの格納庫に行く一同。
「新しいスーツというのは?」
「これです。」
パッドに映ったデータのイラストを見たマリナは苦笑いして固まる。
脇から覗いたシーリンも絶句した。
そこには「リキッドメタルスーツ」という文字があった。
「こ、これですか……」
「ええ、以前のものとは違いますが軽量なのですよ。エジプトとの闘いも迫ってますし……」
例の一番メインの大臣が説得すると応じるマリナ。
「……そうですね。時間がありませんからね。」
「どれ、どんなの?」
パッドを奪おうとするアクバルを止めるシーリン。
彼女は男達に疑惑の目を向けたが、その視線はテストに臨むマリナの方を向けばすぐに心配の眼差しに変わった。
「あなたが見るものではないわ……
(しかし、こんなものを……彼らは一体何を……)」
緊張しつつガンダムファーラのコクピットに入るマリナ。いつも通り全裸になるが新たなシステムに不安で内股になり、普段の祈るポーズもする余裕がない。 「大丈夫なのかしら……でも、闘えるのは私しかいないから……!
モビルトレースシステム起動!」
恥じらいを消すように発した声と共に天井から降りてきたのはスーツの布ではなく、掌サイズの銀色の液体だった。
それは液体金属……リキッドメタルスーツというものだった。
「新型スーツの話は聞いていたけどこれはどういうこと?」
静かに、しかしそこはかとない厳しさを見せるシーリンにリーダー格の大臣は落ち着き払って応えた。
「その名の通り液体金属を使ったものですよ。軽量ですし、新技術を使えば他国への優位性のアピールにもなります。」
「…………」
「ねえ、ホントに大丈夫なのか?」
シーリンは不安がるアクバルの肩に手を置きながらも、大臣達への疑惑の目を向け続けた。
一方マリナは……
「な、何?これが液体、金属?キャアッ!なに、これ……!」
重力や引力に逆らう技術が使われているのだろうか……
銀色のそれは首や肩ではなく、いきなり形の整った胸元に圧迫するようにへばりついた。
更に胸を揉み解すようにモゾモゾと動きながらその面積を広げていく。
「い、いやぁぁ……!キ、キツイ……!!
それに、柔らかくて、ヒンヤリしてて、何だか、こわい……」
あっという間に肩甲骨まで包んでいくと、まるで生き物のようにそこと胸を前後からグイグイと圧迫していく。
「い、いやぁぁぁ!!い、いた、く、苦しいぃぃ……!!」
柔らかいが、同時に強靭な締め付けでマリナを苦しめるメタル。 何度も揉まれていく度にそこを中心に、真っ白かった肌が少しずつ紅くなっていく。
理不尽で未体験の衝撃と羞恥によって……
徐々に固まり、銀の硬質なブラジャーのような形になるメタル。
すると、新たにもう一つの掌サイズ液体金属が降ってきた……[newpage]
シーリンとアクバルは心配そうにガンダムに目を向けていた。
「マリナ様……どうなるんだ……」
「今は信じましょう……」
少年の肩に置いた手は心なしか力が入っていた。
液体金属に戦くマリナ。
「また一つ?今度は何!? ……まさか……」
予感は的中した。それはマリナの胸を通過し下腹部に触れるとジンワリと陰部、尻にその侵略を進めていく。
「いや、やめて、そこだけはぁぁぁ!!」
怯えて悲鳴をあげる姿は皇女ファイターとは思えず、寧ろ怪物に襲われる女性のようだ。
今までずっとスーツの与える羞恥と苦しみと戦い、耐性もかなり付いてきた。
しかし、新しく見たそれは生物のようにマリナに迫る。恐れない方が不自然。
冷たい質感と共に下腹部を全て覆われると、誰も誘い入れたことのない女の場所にグイッと入り込み、深いところまで入っていく……
バイブと圧迫を同時に与えて、マリナはあられもない声をあげる。
腰を上下に揺らす姿は見たものを驚きと邪な感情に駆り立てるかも知れない。
「いやぁぁぁ……何だか、くっつかれてる、みたい……」
下半身をメインにガタガタと震えるマリナをよそに、会陰を伝ってアナルにまで入っていく。
「ひゃ、だ、だめよ、そこは!そんな!」 「ひゃ、だ、だめよ、そこは!そんな!」
実際に清潔なのだが場所が場所なので、自分の秘密を見られたような気分になってアナルに手を伸ばそうとするが既に遅い。
深々と入ったそれの与える冷たさに尻を突き出して背中を反らし、天井を仰ぎ見る。
「いやぁぁぁ……!!わたしの、そんなところ、やめて……!!
国の、みんなに、見られたら……」
なぜかふとアクバルの悪戯そうな顔を思いだし赤面する。
アナルに入ったそれは更に小振りな美尻を入念に包んでいく。
腰全体を苦しめるように揺れながらプレッシャーをかける液体金属。
やがて固まり、銀色のパンツになった。
同時にマリナの体にかかる苦しみも少しずつ軽減していく。
「はぁ、はぁ……!……これが……スーツ……!?」
金属が包んだのは全身ではなく、胸と腰だけ。下着のようなアーマーといった方が正しいかも知れない。
データを先に見ていたが、いざ着ると衝撃と恥ずかしさは並みではない。
「あの人達は何を考えているのかしら……!?」
決着まで後僅か。皇女は漠然とした不安を募らせていた。 EP6
「はぁぁぁ!」
訓練場で無数のダミー機体を蹴散らしていくマリナ。
あるものは槍と弓で、あるものは合気道の投げ技で次々と破壊されていく。
一見格闘とは無縁そうなビキニ状スーツはマリナのモーションを見事機体にリンクさせて滑らかなモーションを実現させてくれる。
「すごい、前のスーツを格段に進歩させてる。」
あまりの成果に自身が纏っている金属の胸当てとパンツを繁々と見つめる。
大臣達の求めにそのままの姿でゆっくりとワイヤーで降りるマリナ。
その場にいる誰もが息を飲んだ。
元々持つ雅な美貌。訓練によりスレンダーさが増した抜群のスタイル。そこに際どい場所だけをメタルに守られている。注目を集めるのは無理もなかった。
「むう、素晴らしいですな、マリナ皇女。」
「スーツを使いこなしていますね。」
大臣達は口々に誉めるがそれは半分おだて。それを知った上ではにかむ皇女。
「いえ、皆さんの力あってですから……
…………何をしているの、アクバル?」
「……え、これは……?……うわぁぁ!」
お尻に手を伸ばそうとするアクバルの腕をさっと掴んで軽く投げるマリナ。尤も、手加減していたから大丈夫だったが。
「ホントに困った子……」
「いてて、流石だな。マリナ様。」
シーリンはフフっと笑い
「段々勘が鋭くなっていったみたいね、マリナ。」 その日から三日間、新型スーツでのガンダムの操作と、スーツを着ながらの生身の訓練に力を注いだ。
アクバルもそれを見学したいからという名目で城に泊り、マリナの姿を脳裏に焼き付けるのに注力した。
決着は明後日となったこの日、いつも通りシーリンから合気道を教わった。
「中々の性能ね、そのスーツ。見た目通りかなり身軽になってるわ。」
「ええ、姿は恥ずかしいけど動きやすいし、次の戦いが終わったらデザインを変えてもらわなきゃね……」
その語尾は相当強いものだった……
「全身金属というのも中々斬新よね。他のファイターからの視線が凄そう、色んな意味で……」
「ちょっとやめて、シーリン。全部金属は困り者よね……もっと目立たないようになれば良いんだけど?」
その後、マリナはシーリンと自室に戻ると訝しい顔をした。
「あれ?ない、ないわ。」
「どうしたの?」
「ビキニスーツの解除用リキッドがないの。」
解除用リキッドは、その名の通り金属でできたスーツを溶かす液体。
但し純粋に溶かすだけなので、人間の皮膚には何ら影響はない。
不思議がる二人。
そしてマリナは人差し指を口元に触れて…
「それに、アクバルもずっと帰って来ないのよね…」
「こんな時に人の心配?でも確かに気掛かりね。やんちゃな子だから…」 一方アクバルはまた戻ると言い残し長い間城の近くをブラブラしていた。
20人程客がいる酒場に行くと、早くも皇女のスーツの話を自慢げに切り出した。
様々な年齢の男達が目を輝かせて話に聞き入った。女達は苦笑いしたり、眼前の男達に不快感を示したりして正に十人十色だった。
「……というわけなんだ、すげえだろ!?」
「まじですげえ、ボウズ、いいもん見たな!」
「こぉの、幸福者ぉ!」
しかし、中には無法者もいた……
スキンヘッドの男は王宮の警備員として相当の強者だったが飲酒や暴力などの素行不良でクビになって荒れた生活をしていた。
逆恨みで何をするかわからない……!
彼は近付いてくると、好色な顔をズイッと寄せた。
「おい、姫様は今でも城にいるか?何なら今からでも会いに行きてえと思ってな。」
悪い予感がしたアクバルは自分の軽率さを悔いながら首を横に振った。
「いや、今はもういないと思う。……他に用事があるらしいから……」
「どうだろうな。まあ行ってみるさ……」
(この荒くれたやつ、マリナ様になにするかわからない。今大事な時だし……!
絶対に会わせちゃいけない!!)
「やめなよ!今姫様は大変なんだ!国の未来がかかってんだ!……あんたも国の一員なんだからわかるだろ?」
少年にとって精一杯の説得だった。しかし、元々血の気が多くて最近はそれが酷くなった男は聞くわけがなくアクバルの胸ぐらを掴む。
酒場の店員や他の客は何もできずじっとしていた。
「ガキが何言ってやがる!こっちはクビになってから毎日悲惨なんだ!一泡吹かせなきゃ腹の虫が収まらねえ!!」
「こいつ……!!」 「私に一泡吹かせたいならその子を離して。」
向かい合う二人が振り向くとそこには当の本人、マリナが白いコートを着て立っていた。
馴染みの少年を脅す男に怒りの炎を燃やす水色の目は、宛ら蒼い炎のようだ。
「マリナ様……」
「アクバル、中々帰ってこないから探してたわ。」
「そっちから来てくれるなんて丁度いい……まずはこれを喰らえ!」
襲いかかる男の猛烈なパンチ。それに動じず腕を掴むとそのまま相手を床に倒してしまう。
「この野郎……」男はタフなのか立ち上がってくる。
「ここでは皆さんの迷惑になるわ。どうしてもと言うなら誰もいない場所で…… アクバル、あなたは早く帰りなさい。」
「ありがとう、マリナ様……」[newpage]
少し離れた空き地に向かい合う二人。
「ファイターになったからって自惚れんじゃねえ!!」
「あなたのような人、クビではなく警察に渡すべきでした。今終わりにします!」
(感情に流されちゃだめ。落ち着いて……今ここには誰もいない、存分に戦えるわ。)
自分に言い聞かせると、原っぱの時のように頭が冴え渡ってくる。
この数日であの冷静さをマスターしつつあった。それでもまだ明鏡止水まではいかないが……
「さっきは油断したがこれで終わりだ!」
男の方も少し落ち着いてきたのだろう。
いくら腕っぷしが人並外れて強いとは言え相手はガンダムファイター。一筋縄ではいかないのを実感していた。 ナイフで襲いかかる男、その手はマリナに払われ地面に落ちる。
それからも男の攻撃を受け流し、地面に倒し続けるマリナ。
時にはパンチとキックを交えて柔軟に戦うが、何回も攻撃の応酬を繰り返す度に少しずつ疲れが出てきた。
時が経つ毎にそれは顕著になっていく。
(はあ、はあ……おかしいわ。こんなに早く疲れるなんて……訓練より激しく動いているから……?)
疑問と疲労を頭の中で振り払おうとするが、一瞬のモーションの鈍さを男は見逃さなかった。
「もらったぁぁ!!」
「しまった!」
男は逆にマリナを投げ飛ばすとナイフを拾い、コートを縦一閃に切り裂いた!
「いやぁぁ!」
「ほお、皇女、いいもん着てるじゃねえか。」
コートの下にはあのビキニ状スーツを来た姿。 アクバルが心配で急いでコートを羽織ってきた。
「どれ、どんなかんじなのかねえ、マリナ様の素肌……」
「いや、やめて!」
震えている様は普通の女だった。もはやあの冷静さは吹き飛んでいる。
体力の減少も止まらず、息が激しくなっている一方だ。
「はぁ、はぁ……」(さっきより疲労が酷くなってきてる……)
「やめろ!マリナ様に酷いことするな!」
そこにやってきたのはアクバルだった。
「アクバル、なぜここに!?」 「俺を、助けようとして戦いになったから気になって……お前、やめろよ!」
「ほお、ガキがいい度胸だな、まずはお前からだ!」
アクバルに襲いかかる男。
咄嗟に少年の前に出るマリナ。
勢いで放ったキックが相手を吹っ飛ばすが、体力の消耗は誤魔化せず、フラフラしている。細い肩を揺らして息をする。
疲労を現すように何滴もの汗が大地に滴り落ちる。
「はぁ、はぁ、負けるわけには……」
(これではアクバルを守りきれない。もっと冷静に……
明鏡止水は……)
疲労と焦燥を無視し、あの原っぱでの戦いを思い出し、再び頭が冴え渡る皇女。
全身に意識を集中させ、頭に幸せな思い出を浮かべる。
今は亡き家族との日々、シーリン達友人との思い出、ファイターに合格した日、喜んでくれる国民の顔。
その全てが彼女を落ち着かせ、穏やかにしてくれる。
そして、身軽さのためにコートを脱ぎ捨てたその体は少しだけ淡い色に輝いていた。
日の光に照らされた麦のような薄い金色……
銀色だったビキニまでも同じ色に変わり輝きを放つ。
「お前……一体……?」
「マリナ、様……?」
他の二人はただ驚き目を見張るしかない。 「この、早く倒れろ!」
飛んでくる拳を俊敏な鳥のように軽々と避けて、腹に凄まじいパンチをぶつける。
「うわぁぁぁ!!」
そしてよろめく相手の肩を掴み、大地に投げ飛ばす。
その音に木々に止まっていた鳥達は逃げ出す。見守るアクバルは茫然とする。
男は強かに打ち付けて気絶してしまった。
「あの、マリナ様!!ついにやったね!!」
「……アクバル。」
駆けて寄ったアクバルが手を伸ばした時、マリナの全身から光は消えて、力なく少年の上に倒れていった。
「うわ、マリナ様!ちょっと……!!」
金属のビキニに包まれた肢体は汗を大量に流しながら少年の真上で眠りについた。
どこか苦しみを見せる表情で…… EP7
「マ、マリナ様……」
いきなりのことに驚くアクバル。
彼より背が高いとは言えマリナは軽かった。重みは感じない。
(な、なんか前にコクピットに入った時も思ったけど、肌柔らかいな……
でも体型は締まってるし……
元々いい匂いがするし、今は汗かいてるけど嫌な感じはしないし。ドキドキする……)
「いけね、なに考えてんだ俺は。」
不謹慎さに気付いて首を横に振ると、彼女を肩に担いでさっきの酒場に入り、そこの電話で王宮と警察署に報告した。これで敵の男は逮捕され、気絶したマリナはアクバルと共に王宮に運ばれた。
王宮の医務室にあるベッドに横たえられるマリナ。
シーリンは解除用リキッドがなくなったのを医師達に告げると、メタルスーツを開発推進した大臣達を電話で呼んだ。
その間、念の為医師はメタルのスーツを外そうとするが
「取れないっ……並大抵の人間の力では無理か……ファイターでなければ。
……もしかして、皇女の疲労はこれが原因なのでは?」
心配するアクバルの隣にいたシーリンは不穏な表情で頷く。
程なくして、スーツ装着テストにマリナを読んだ大臣とメカニック達を連れてくるシーリン。
彼女は疑惑と嫌悪に満ちた目を彼らに向けていた。 中心的な大臣は普段の落ち着いたムードを崩さないながらも申し訳なさそうに
「いや、このようなことになるとは。
メタルスーツの開発は完璧だった筈ですが……
危険性に気付かず我が皇女にこんな苦しみを……
本当に面目ない。」
彼の目配せでメカニックがマリナのビキニ部分に液体を垂らした。
皮膚を傷付けずに少しずつ溶けていく液体。いざという時のスーツ解除用のリキッドだった。
「マリナの部屋にあった解除リキッドがなくなっていたんですよ。
心当たりありません?」
それとなく尋ねるシーリンを見て首を横に振る大臣達。
「皇女を初めとした皆さんに御迷惑を御掛けしました。私達は一旦引き上げます。」
帰っていく一同をシーリンは厳しい目で見つめていたが、直属の部下に目配せする。彼は大臣達とは距離を取りながら後を着けていった。
部屋の内側と廊下にはボディーガードを数名付けてある。
そしてシーリンは医師からマリナの着替えを受け取ると、静かな声でアクバルに
「あなたも一旦借りている部屋に戻って。」
「うん……」
脱力したように戻るアクバル。
やがて全て溶けて消えてしまうと、一糸纏わぬ姿になったマリナの汗を冷たいタオルで拭き服を丁寧に着せた。
「ごめんね、マリナ……」
横たわる彼女の手に自分の額を重ねた。その目には雫が…… 「シーリンさん、わかりました。やはりあいつら仕組んでいました!」
一時間程してシーリンの部下がRCレコーダーを持って戻ってきた。
いつになくガタッと立ち上がるシーリン。マリナを起こしたかと思い、まだ寝ている彼女を見て安心すると部下に向き直ると、ボディーガード達にその場を任せて部屋を後にした。
「そう、それでは私の部屋に行きましょう。」
二人は録音を真剣に聞いていた。
あの大臣達とメカニックの声が聞こえてくる。
彼女は部下に命じて、彼らの仕事部屋のドアに盗聴機を付けさせた。
例え外側に付けても部屋の内側の音声を録音できる性能だった。
『極度の感情の昂りにより疲労を与える金属。メカニックさんは目の付け所が違いますな。』
『しかし、上手くいきましたな。皇女の汗のかきよう。あのスーツかなりのものですね。
目の保養にもなりますし。メカニックのあなた方のお陰ですよ。』
『お褒めに預り光栄です。それにしてもあなた達はそんなに女性の王様がお嫌いなのですね。
私は報酬をもらえば良いですし、男女どちらでも気にしないのですが。』
『ええ、ずっとアザディスタンは男が強い力を持っていた。それをあの娘が皇女になっただけでなく、ガンダムファイターにも……
男の立つ瀬がないと思いましてな。あのシーリン達の一派からは保守派などと言われ嫌われてますがね、ハハ。』
『まあ、そのお陰で新しいスーツの研究費も頂きましたしウィンウィンですがね。
そう言えば、彼女が次のファイトに負けても新しい男性のファイターを用意していると聞きましたが、その時は是非とも私を頼ってください。
私が彼に新しい装備を作りますから。』
『お願いします。』
シーリンは腕を震わせた。国のためにずっと歯を食い縛ってきたのに、男のプライドの為に国の足を引っ張るばかりかマリナを苦しめたのだ。 「こいつら……本当に……」
部下はその様子を見守っていたが、そこにもう一人部下が現れUSBメモリを出した。
「ここには、あのスーツのハッキングデータがあります。保守派大臣の差し金でしょうが、とんでもないカラクリがありました。」
「……どんな?」
PCに接続すると、詳細データが表示された。
「……シーリンさん、落ち着いて聞いてください。
このスーツはユーザーの極度の闘争心を関知すると、その体力を減少させるスチール効果があるのです。
……だからその、冷静さや明鏡止水の状態になっても闘う意思が強過ぎれば危険なことになります。
訓練では問題なくても、いざ実戦になるとスチール効果が発動するというものです。」
「……あいつら、よくも……」
ガタッ……!
その時、ドアの向こうに音がした。用心深く開けると……
「誰……マリナ?」
服を着た皇女がボディーガード数名と共にそこにいた。
まだ疲労は完全に取れたわけではないが、顔色は少し良くなっている。
彼女の顔は悲しさと悔しさで溢れていた。
「シーリン……全部聞いたわ……あの人達、私を陥れようと……」
「シーリンさん、マリナ様がどうしても言うので……」
「ええ、私も大臣達が怪しいと思って、シーリン達が調べてくれていると聞いて、無理を言ってボディーガードの人達に連れてきてもらったの。」
シーリンは全員を部屋にいれると、旧友をそっと抱き締める。 「……今回のことはスーツテストを止められなかった私にも責任があるわ。
ごめんなさい。」
「いいのよ……私も気付かなかったし……あなたはいつも通りでいて、お願い。」
そのやさしい声に鉄の女と一部から噂されたシーリンは唇を噛み締めて、重く頷いた。
涙が流れるのを止められず顔を反らす。
泣いているのを見られるのに慣れていないのだ。
マリナは旧友のブルネットを優しく撫でて頭に顎をそっと乗せていたが、やがて上げた顔は「指導者」のそれになっていた。
シーリンも雰囲気の僅かな変化を察知してマリナを見つめる。
「皆さん、お願いがあります。録音テープにあった新しいファイターの存在、もしかしたら新型のMFも用意されているかも知れません。
だから……」
その願いを否定するものはいなかった。 EP8
マリナが医務室に運ばれた翌日、大臣達一行は首都の外れにある中型の研究施設、そこの格納庫に集まっていた。
誰も住むものがいない寂しい場所にある。
彼らの前にはマリナと同い年ほどの体格の良い青年が立っていた。
その隣には数人の男達。殆どがメカニックらしき男達、そして格闘のトレーナーという感じの男が一人。
更にその背後には巨大な何かが布に被せられていた。
「どうも視察に来ました。機体とファイターの調子はどうですか?」
メインの大臣に尋ねられると、トレーナーとチーフメカニックは声を合わせて
「両方順調ですとも。それに彼もとても腕を上げましたから。」
トレーナーに視線を向けられた体格の良い青年はコクリと自信ありげに頷き、声を発した。
「俺は早く闘いたい。今の皇女様ともな。」
ワインレッドのストレートヘア、黒い切れ長の瞳。
背はマリナより10センチ高い程であり男性ファイターとしては大きくはないが、筋肉と体から発する闘志は彼を大きく見せていた。
大臣のリーダーは手を上げると
「マリナ皇女は体力を消耗して昨日から休養だ。
明日のエジプト代表との決着は怪しいものだね。しかし、念には念をだ。
彼女は今までも強敵との闘いに勝利してきたタフな女だ。
最後の一押しといこうか。切り札は君だよ。
但し、ガンダムは使うな。今の段階では目立ちすぎる。
生身で暗殺……という形にするしかないな。」 「そうだな、残念だがそうするか。それに、あんたらと同じなのさ。……今の国には不満がある……」
「まあ、君の父上のことは残念だった……」
トレーナーは青年を心配そうに見つめ、メカニックチーフはスッと手を上げる。
「事情は全て聞かせてもらったわ。」
もう一つの声はシーリンだった。彼女と数人のボディーガードは銃を構えてこちらを睨んでいる。
彼女はRCレコーダーを再生させると、先程の会話が流れていく。
リーダーの大臣は悔しげに拳を握る。
「調べられていたか……」
次の瞬間、マリナはしなやかな動きで大臣の腕を掴み、一瞬の内に地面に叩き伏せた。
「ぐわぁ!!」
皇女の水色の瞳は落ち着きと共にどこか哀しげに見つめる。
「残念でした……みんなの力で国をされない発展させてきたのに……
あなた達が歓迎してくれないなんて……」
「当然だ、ずっと男が国をまとめてきたんだ。最近現れた小娘に……ぐぅぅ……」
マリナは冷然とした態度で腕を捻った。
「私は国のみんなが好きです。
それに、女性も含めて社会で活躍できるようになった現在(いま)も……
でも、このように邪魔をする人達には断固戦います……ファイターである前に皇女として。
」
「ほう、いいねえ。その気合い。何も恐れてない瞳。倒し甲斐があるぜ。」
前に出てきたのはワインレッドの髪をした青年だった。 「……あなたですね、新しくファイターになるのは。」
「ああ……ギルガメッシュ・サムーンだ。覚えておけ。」
両者の間に冷たい熱気のようなものが走った。
次の瞬間、二人の拳がぶつかり合う。
そして、猛スピードで戦いを始める二人。
ギルガメッシュのパンチが飛んでくるが、マリナはそれを受け流し投げ飛ばす。
次の瞬間、ギルのキックが目にめ止まらぬ速さでマリナを蹴る。
技の応酬だった。
一方、こっそり逃げようとする他のメカニックや大臣達。
「逃がさないわ。」
シーリンは敵のボディーガードの銃弾を素早く避けて、急所を避けつつ射撃をして攻撃。
大臣達に素早い動きで追い付くと、彼らを合気道の投げで叩き伏せていく。
「ぐわぁっ」
「……マリナの痛みはこんなものではないわ。しっかり感じなさい……」
更に腕を捻り上げると、ギルガメッシュのトレーナーが襲いかかる。
しかし、その動きを避けて倉庫の壁に向かって投げ飛ばす。
「このっ、女に負けるとは……」
「女を甘く見るからでしょう。私も一応トレーナーよ……!」
そして、マリナを見つめるシーリン。
(きっとあなたなら勝てるわ……!私たちの希望だもの…… そして、マリナとギルガメッシュは互いに力をぶつけ合い少し息が荒くなっていた。
「中々だな。でもあんた、昨日もっと疲れてたんだろ?回復が早いなんて恐れ入るぜ。」
「……ええ、あれくらい簡単に復活できなければファイターの資格はないわ。
あなたも相当タフね……」
男は演技ががった喋り方で挑発的に続けた。
「疲労が溜まるビキニスーツならもっといやらしい息づかいが聞けただろうな。おしいぜ。」
一瞬怒りが湧きそうになるが瞬時に冷静になり、キックを繰り出す。よろめいて後方に下がるギルガメッシュ。
「……っ、あのシステムは外したわ。」
「そうかい、それじゃあ皇女がいつもの調子に戻った祝いに始めるとしよう。メインディッシュをな。」
ギルガメッシュが携帯型起動スイッチを押すと、自動的に倉庫から飛んできたガンダムオーレス。
「ええ、終わらせるわ。」
マリナもガンダムファーラに乗り込む。[newpage]
身に付けていたものを全て脱ぎ、全裸になるマリナ。
(シーリンも、みんなも私のために力を尽くしてくれている。
国がまた男性中心になれば、誰もが輝ける社会ではなくなってしまう……
絶対に、あんな人達に負けない……)
ってところ次の瞬間、心を落ち着かせ目を閉じる。今胸の内にあるのは闘いだけ。それ故に冴え渡る心。
胸に手を添えて、ほんのりと脚を開いてコクピット中央に立つ。
「モビルトレースシステム起動。」
布が凄まじい勢いを伴い降ってくる。 肩から腕、胸、脚……ありとあらゆる場所を瞬時に覆い尽くす巨大な布。
冷静な顔は圧迫に対し悩ましいものになり、豊かな黒髪を柳の葉のように揺らす。
「キィ、キツイ……でも、みんなのためを思えば……」
亡き家族、守るべき国民達、慕ってくれるアクバル、支えてくれるシーリンと家臣達……
みんなのことを思い浮かべると自然と身体に力が入り、両腕を鶴のように広げる。
「う、うぐっ……このぉぉ……!」
布を千切り纏わせる。
「はぁぁぁぁ!」
身体を反らし、まるで空気椅子でもしているかのように腰と膝を曲げて力を込める。
「いやぁぁぁ!!」
尻を突きだしアナルにグイッと遠慮なく入っていく布。
「はぁぁぁぁ……!!」
膣にも入り込む布。前後からぐいぐいと刺激されるが、下半身に力を集中させ、
目をカッと見開くと両足を股が割けると思わせるほど、交互にハイキックをして布を千切る。
こうしてスーツなら装着を完成させた。
「さあ、いきましょう。国のために絶対に負けないわ。」
「いいね、楽しませてくれよ。皇女さん。」
装着を終えた二人は機体越しに睨み合う。
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 「ハアァァッ!」
槍で襲いかかるマリナのファーラ。それを太い棍棒で受け止めるギルガメッシュのオーレス。
「甘い!!」
ギルの操作で棍棒のスイッチを押すと先端から斧の刃の形をしたビームが発生し、槍の先端を焦がす。
瞬時に後ろに下がるマリナ。
「斧……それがあなたの武器なのね。」
「そうだ、幾多のファイターに勝利するため。そしてお前に勝つためにな!!」
凄まじいギルの猛攻にも動じずに敵の刃を避け、槍と合気道の投げ技・捻り技を駆使して反撃するマリナ。
一連の体捌きに何とかついていけるギルの反射神経とスピード。
正に競り合いといった光景だった。
「やるじゃねえか!大臣達が見せてくれた映像で知ってたが、実物ともなると違うな!」
その声にどこか好戦と憎しみを感じずにはいられないマリナ。
「どうしてあなたはそこまで戦いを……
あなたのような人にはこの国を代表する資格は感じられない……」
「資格、あるさ。男であることと、力と目的があること。それだけで十分だ!!」
想像していた通りの言葉に嫌悪を感じながらも淡々と、しかし真剣に返すマリナ。
「男も女も関係ないわ。大切なのは国の未来よ。」
「関係ない、か……あるんだよ。おれにも、親父にも……」
「……?」
苦虫を噛み潰すような物言いに違和感を覚えながらも素早く槍でオーレスの腕、脚、時には後ろに回って背中を攻撃するマリナ。
「ぐはっ!……この……舐めるなよ!」 頭に血が登ったような物言いをすると、オーレスの肩、腕、胸、脛、それらの各部からミサイルが発射されファーラの全身を狙う。
「きゃぁぁぁ!!」
体にミサイルの与えた衝撃と熱さを禁じるマリナ。
「はぁ、はぁ、……危険だわ。距離を取らなきゃ……」
弓矢でオーレスに激しい攻撃を加えてから一旦一キロ程離れるマリナ。
心を落ち着かせ目を閉じる。冴え渡っていく感覚。
頭が澄んで白くなるようなあの状態になり弓を構える。
「この射撃武装にはこんな機能もある。もっと食らえ。」
再び発射される複数のミサイル。しかし今回は一つ一つが異なったベクトルに舵を切りながら向かっていく。
まるで群れを離れて巣立っていく鳥達のようだ。
あるものはマリナの右に、あるものは左に、背中や斜め上に移動して飛んでいくものもあった。
「囲むつもりね……」
あらゆるベクトルから狙う戦法。遠距離戦としてかなりの効果を持つものだ。
それでもマリナは表情一つ変えない。
寧ろ獲物を狙うハンターのように弓を携えたまま。
「ホーミング、タップリ味わえ、センパイ……」
目と鼻の先にあるミサイル達。
それらを素早く撃ち抜くマリナ。時に撃ち損ねるが、武器を持ったまま肘で払い落とした衝撃で破壊した。
合気道の訓練の傍ら、学んだ戦法だった。
「やるな……だが……」 ギルは猛スピードで斧を振りかぶり突進する。荒々しいだけではなく、マリナの微細な動きを観察し予測している。
「……させない……」
すっと目を閉じて集中力を高めるマリナ。
心の底から真っ白に、クリアになると槍を脚目掛けて突き出そうとする。
「この!」
ギルがキックをする直前、マリナはすっとガゼルのようにジャンプして重火器が入った肩を槍の先端で突き刺した。
「ぐ、おのれ……!!」
そのまま敵の肩を勢い良くキックして頭上に飛ぶ。
「よくも、踏み台に……!!」
「覚悟しなさい!」
雨のようなアローの嵐。それを幾つかが降りかかるが傷付いたのは肩と腕大半。
失格を避けるためか他国以上に頑丈に作られた頭はほぼ無事だった。
そして、斧を回転させ矢の幾つかを弾き返すギルのオーレス。
パワフルさと繊細で柔軟なモーションが合わさった見事な斧捌き。
「きゃぁぁぁ!!」
ダメージ受けつつも体勢を立て直し弓を槍にチェンジさせ突撃するマリナ。
斧で受けとめるオーレス。互いに一歩も引かない鋼の攻防。
「なぜだ、お前はそこまでして闘う?女であるのに……!」
「関係ないわ。私は皇女として皆に幸せになって欲しくて……」
「その言葉、鼻につくな。俺には、国よりも、負けていった男の方が大事だ……!」 「負けていった男……」
次の瞬間、マリナは戦場の空気が一瞬で変わったのに気付いた。
何か鬼気迫るものが張り詰めて自分を捕らえるような気がした。
金縛りではないが、敵の男にはそれを感じる。
ギルの息は上がり、声はまるで地の底から出すような低いものになって……
「俺の親父は、ファイターの選考で女に負けた……
アザディスタンはずっと男が英雄視される国だったのに……!
怨みは俺が晴らす……!!」
「…………」
何も言えずに黙っているマリナ。
アザディスタンでのファイター選考は、国の発展のため女性の活躍を目指す改革派の力も大きかったので、候補者には女性も数人いた。
彼女は元々性別に拘らなかったので、男だけが持て囃される状況が哀しかった。
だからギルの言葉にも哀しみと呆れを覚えていた。
「はぁぁ!!」
「!?」
次の瞬間、一糸乱れぬ速さで猛禽類のように襲いかかるオーレス。
彼の言葉によって反応が遅れたマリナはギリギリで斧を受けとめるも、パワー不足が祟って押し返される。
「親父は、あれからも格闘家を続けながらも落ち込んだまま、だから俺が、屈辱を晴らす……!」
「……ずっと、そういう気持ちで戦ってきたのね……。でも、苦しいだけだわ……」
マリナは意識を集中させると目を閉じた。 (私が選考で勝ってきたファイター達も同じ気持ちだったのかしら……
悔しがっていたのは目にしたけど、ここまでだったなんて……
それなら私は絶対に……)
「終わりだ!!」
ギルの猛攻に身動ぎしないマリナの身体は少しずつ白金色に輝きを増して、ガンダムファーラも同じ色になっていく。
「何だ、これは!!」
突然の事態に驚くギルに構わず、凄まじいスピードで向かうファーラ。
地上で見守るシーリンも叫ばずにいられない。
「あれは、明鏡止水……!マリナ、貴女って人は……!」
「はぁぁぁ……」
「うぐっ!」
槍の攻撃に押され圧倒されるギル。
パワーもスピードも、精度も段違いだ。
「ギル、眠りなさい……」
どこか優しさを含んだ声で告げるマリナ。
槍はガンダムオーレスの頭部を貫き、その機体は誰もいない地上に落下していく。
「ぐわぁぁぁ!!」
悲鳴を上げるギル。遂に激痛と衝撃で意識を失う。
それを察知するとマリナとファーラから輝きは消え、元の状態に戻った。
ギルとそのトレーナーを含む保守派の大臣達は反逆罪で逮捕された。
こうしてマリナ達のファイトを邪魔する者はいなくなった。 「貴女、ああいう風になれるのね。マリナ。教えた側の私も驚いたわ。」
「……ギルガメッシュの気持ちを知った時、ああなったの。
シーリン、私明日もこれからも勝ち抜くわ。そうすれば皆が男女問わず前に進めるようになるわ、きっと……」
マリナの目元は穏やかだった。 EP10
決戦の日、砂漠で向かい合う二人。
眼帯をしたレザーはボキボキと拳を鳴らしているが、対するマリナは落ち着いた佇まいで相手を見ている。
「姉ちゃん、あれから疼くんだよ。あんたにやられたこの片目が。」
「……あなたをそうしたのは私です。しかし勝たなければいけません。」
二人ともガンダムを呼び出すとコクピットに入った。
レザーはニヤニヤと笑っている。
「あの姉ちゃん、今頃目茶苦茶驚いてるだろうな……」
一方マリナは素早く全裸になると、コクピット中央に立った。……その瞬間……
「きゃあっ!!」
真空刃のようなものがマリナを襲った。
程好く引き締まった腹から血が流れる……
不幸中の幸いか、ギリギリで頭への攻撃は避けられたが、傷付いたそこを押さえて見つめた先には細身の黒装束を身に付けた男が立っていた。
手には彼女の鮮血に染まった刃物が握られている。
「あなたは……」
「俺はエジプトの殺し屋。レザーに雇われたエジプシャン忍術の使い手
しかし美味しい仕事だ。皇女様の、それも素肌を拝めるなんてな……」
「殺し屋……どこまでも卑劣ね……」
卑劣という言葉の意味には勿論、自分の産まれたままの姿を見られた恥辱も含まれていた。
胸と股間を隠し、白い肌を赤に染めて唇を噛んでいる。 「と言っても殺しはしない。レザーにもファイターとして止めを刺したいプライドがあるからな。
少しでも弱らせて欲しいって話だ。」
「そんなもの、プライドではないわ!」
珍しく語気を強める自分に気付き頭を冷やすマリナ。
(いけない……ここで怒っては相手の思う壺だわ……
私と、みんなの努力が水の泡になってしまう。)
少しずつ赤みが引いていく皇女の柔肌。
向かってくる相手の動きをかわして肘にチョップしてから投げ飛ばす。
「ぐはっ!」
衝撃で気絶する殺し屋。
「闘いを汚さないで……」
そのまま合気道の要領で相手を砂漠に放り投げると、完全にハッチを閉めた。
「……忘れなきゃ。モビルトレースシステム起動!」
凄まじいリングが下りてくる。
全身を覆うように張り付いていくスーツ。これがマリナの羞恥を忘れさせてくれる気がした。
しかし性的なことには潔癖で繊細な彼女。
見知らぬ暗殺者の視線に照らされた体はスーツの与えるいつものプレッシャーに一層ナイーブに反応してしまう。
控え目な美乳を布でホールドされて、小刻みにピクピク動く華奢な全身。
「い、いやぁぁぁ!!」
乳首は自ずと激しく主張するのを自覚して頬を赤らめる。 「キ、キツイィィィ……!でも、負けない……!!」
既にいない暗殺者を殴るつもりで、握り拳を宙に振り上げて布を千切る。
「いたい、このぉぉ…………!!」
切られた腹部から出血が滲み、蒼系スーツと混ざり合い、赤みの強い紫色になる。
それでも耐え胴体を激しく動かし、布を上半身に定着させた。
見られた羞恥は未だ僅かに残り、スーツに股間とアナルを締められれば、脳と下腹部から熱が込み上げるような感覚を禁じ得ない。
「ここも、見られたのよねぇ…………!
でも、切り替えなきゃ……
ハッ……!」
グイグイと食い込み摩擦を無遠慮に与えるスーツ。
僅かに汁が漏れて、スーツを濡らしたのを知るが構っておれず両足を強かにスイングして布を千切る。
「ふぅ、何とか終わったわ……!
正直お腹の傷が少し気になるけどあの時に比べればどうということはないわ……」
彼女の頭を過ったのは、あのビキニスーツで苦しんだ記憶。
ファイターとしてあんなことになるとは思っても見なかったが、あれ程の疲労を思えば今のダメージをあれこれ言ってはいられない。
「さあ、いきましょう。」
二人の声が重なる……
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 EP11
時は少し遡り、マリナが砂漠に出撃した少し後……
アザディスタンの少年アクバルはマリナの王宮にある小さな部屋でパソコンを開いていた。
彼はマリナと会った以降プログラムやカメラ機能の勉強を少ししていた。
(皇女のスーツ装着を目の当たりにしてから……というのが正確だが。)
それを活かしてやはり個人的にファイトのサポートをしようとしていた……はずだった。
「俺もマリナ様の力になるからな。」
少年らしくエッチに笑う彼。
実はマリナの乗ってきた小型飛行船とガンダムファーラに小型発信器と小型カメラを付けており、いつでもパソコンを通して彼女の様子を見れていた。
「一国民としてマリナ様の様子を見守らなきゃな。……とその前に……」
言い訳のように言うと、キーを操作してもう一人の女性ファイターの姿を拝み始めた。
実はマリナの機体だけでなく、彼女のものにも同じ装置を付けていたのだ。
「あの人のことだからマリナ様を気遣ってるはずだし。
それに……皇女様と甲乙着けがたいスタイルだからな。」
件の彼女は純白のイナクトに乗っていた。
それもモビルトレースシステムを搭載したタイプ。
「さて、行きましょうか。」
(今のマリナならきっと……
だけど敵はあの男……卑劣な罠があるに違いないわ……!)
マリナの秘書・シーリンはワイヤーで登っていった。
鋭く冷静な目にはマリナへの友情と心配の念が込められていた。 いつもは滅多にその思いを口にすることはないが、今回の一連の出来事があったのだ。今回のような影のサポートに及ぶのも無理はない。
……で、それを知りつつも男子特有のエッチな気持ちに駈られて彼女の様子をパソコンで盗み見るアクバル。
「許してくれよシーリン。俺は皇女様のサポーターだから、秘書のサポートも必要だからさ。
……どれどれ?シーリンさんの勇姿は、と。何だこれ?」
アングルやズームを巧みに使いながら、画面に食い入るように迫る少年。
しかし彼女が持った薄いケースに首をかしげる。
「まあいいや。それはともかく始まった♪」
普段着ているグリーンのスーツ、白い下着をアッサリ脱ぐと、スマートな肢体が姿を見せた。
ファイターのマリナ程ではないが、僅かに引き締まった体。
モデルのような細いボディー。
軽いスポーツを嗜む女性といったスタイルだった。
「おお、流石シーリン♪抜群のスタイルだよな〜眼福眼福。
皇女様より胸大きくて背が高いから迫力あるな〜」
昂り始めるアクバル。アソコも大きくなりピクピクしている。
然程筋肉がないこと以外は、マリナよりいくらか迫力のあるボディーをしている。
(外交相手の政治家とは違った意味で)王宮と多少の縁を持ったことは年頃の少年にはかなりのメリットだろう。
そして例のケースから取り出したのは半透明の布二枚。
MFとトレースシステムに明るくない彼は不思議がる。
「あれは一体……?」
「デミモビルトレースシステム起動!」 コクピット中央に立つと凛とした低い声と共に布の一枚をその豊満な胸に貼り付けた。
それは見る見る内に面積を拡大し、彼女の腹、腕に広がっていく。
「う、いやぁぁぁ……」
「な、どうしたんだ。呻いちゃって。
いつもはあんなにしっかりしてるのに。
……それにしても、あれがスーツ?」
広がるだけでなく、キュウキュウと彼女の上半身を締め付けながら纏われていく布。
下腹部を覆えば当然の如く女性器にも伸びて入り込んでいく。
デミモビルトレースシステムとは、いざという時の為に、ガンダムファイターに準ずる力を持つ者や装着に不馴れな軍人に用意されたシステム。
小型布製パッドにより、あまり大きな負担をかけずに纏えるものだ。
スーツはファイターの性器を守るため、そこに徹底して密着する必要がある。
しかしそれが偶然にも、苦しみと同時にある種の喜びを与えてもいるのは否めない。
「い、いやぁぁぁぁ!……ううう……!」
思わず内股になりワナワナと震える才女を見て、アクバルは興奮を禁じ得ない。
我慢の証がズボンにシミを作る。
そして思わず股間に手が延びる少年。
「あの冷静なシーリンがあんなに興奮してる……
シ、シーリン……俺もやばいよ……!」
今の彼女をガードするのは、両腕と胴体、女性の秘所。
素肌を晒している背中や下半身は心なしか震えている。
これからのことを思い羞恥しているのか期待しているのか…… 負担の少ないスーツの性質上、すぐに苦しみは消えるともう一つのパッドを見つめるシーリン。
「はあ、はあ……!あとはこれね……」
それをゆっくりとアナルに嵌め込むと、キュウウウと音を立てて谷間に吸い込まれていく。
「き、きゃぁぁぁ!」
いつも動じない彼女の悲鳴に益々エキサイトするアクバル。
「す、すげえ。マリナ様も凄かったけど、シーリンも凄い……」
アナルにピッタリ張り付いたそれは勝手に尻全体を覆い、しまいには背中と両脚に延びていく。
美しい肩甲骨も、スラリとした脚も覆われて装着を終えた。苦しみもなくなり汗を拭うと……
「アクバル、見てるんでしょ?」
「え、何でわかったのさ!?」
いきなり焦り出すのを尻目に彼女は淡々と続けて。
「小型のメカがあったから。あんなの簡単にわかるわよ。」
怒るでもなくクスッと笑う彼女にはマリナにはない余裕が見てとれた。
それがまたアクバルをこそばゆい気持ちにさせて頬を赤らめさせる。
「さあ、今から行くわ。」
既に表情を切り替えて勢い良く出撃するシーリン。
そこにはまだ見ぬ敵を探し求めるハンターの色があった。 EP12
シーリンはイナクトのコクピット内のモニターからマリナの様子を見守っていた。
アクバルのサポートの下、ハッキリとした解像度だった。
ファイトの場所を目指す飛行船内のマリナの姿が見てとれた。
それはいつもの健気さだけでなく、今までのファイトに裏打ちされた自信が感じ取れて旧友としてフフッと笑みを漏らした。
そこには生来の淑やかさだけではない強さがあった。
「こんなに強くなって……」
「おっ、シーリンもそういう顔するんだね。」
アクバルの言葉に一瞬顔を強張らせて、どこか凄みのある笑顔を作ると……
「アクバル、ありがとう。あなたのお陰で助かるわ。
でも、彼女にあなたの覗きを知らせるら……」
「わ、わかったよ。」
黙り込むアクバル。
(スーツ装着を見られてもビクともしなかったのに、笑顔見られただけでこれだもんな……
よくわからないや……)
一見冷徹に見えるシーリンは自分の役目だけでなく、友人を助けるのにも全力を尽くし集中力を傾ける。
だからこそ、スーツ装着を見られても動じないのだが、普段の自分とは違うギャップを見られるのが恥ずかしいのだろう。
マリナを乗せた小型飛行船と並んで飛行する自動操縦モードのガンダムファーラ。
しかし、何か細いワイヤーがどこからともなくガンダムの胴体にマウントされると、細い人影がスルスルと内部に入っていった。
「あれは一体……? マリナ、聞こえる!?今あなたの……
…………何? 通信がジャックされてる……」 急いで通信で声をかけようとするが、シーリン側の画面は砂嵐。一向に繋がらない。
マリナのガンダムコクピットにも通信しようとするがやはり繋がらない。
「どうしよ、シーリン……」
「落ち着きなさい、アクバル。今国の自衛隊に救援信号を送ったわ。」
(あの敵パイロット、やはり卑劣ね。
スパイを送ったのね……)
少し時は流れてマリナはエジプトのファイター、レザー・クルスームが駆るガンダムグレイブと対戦していた。
「どうだ!」
レザーが放つ大型の砲弾。
それを時に交わし、時に手で払うマリナ。勿論弓矢で貫くのも忘れてはいない。
素早く近付き、ランスモードに変形させた武器を向ける。
(暗殺者にやられたお腹は痛むけど、今は大事になってないわ……)
傷付いた腹部に意識をある程度傾けながら闘うマリナ。
「この、噂には聞いていたがこの短期間に新しい武術をマスターするとは!」
「覚悟!」
「この!」
回転させた槍で突撃するが、交わされる。
「そんな!」
「強くなったのはお前だけじゃねえ!俺もお前にやられた片目を補うために動きを見切るテクを覚えたのさ!」
そして砂漠用のホバー機能を活かしてマリナの機体に突き進むレザーのガンダム。
ライトブラウンの砂塵をマリナに吹き掛けながら迫り行く鋼の巨人。 しかしマリナも負けてはいない。
この一週間に身に付けた冷静さを発揮し、ホバーの駆動音から正確に位置を割り出し槍を突く。
だが、ダメージは少しだけ。固い装甲に手こずり中々決定打を与えられない。
防御力もアップしたのだろう。
短期間にあらゆる面をアップさせるのは至難。
パワーやスピードよりも優先事項だったようだ。
「手応えが違う……なら、速さの源を!」
後退し距離を取ると、アローを放つ。
鋼の鳥のようにホバーの至る箇所に見える機械同士のジョイント部を撃ち抜くマリナ。
しかし、弾き飛ばされた無数のアローがマリナの元に飛んでいく。
「やはり全てタフなのね。」
手捌きで凪ぎ払った瞬間……
「喰らえ!」
「きゃあ!」
レザーのラリアットがマリナの腹部に決まった。
暗殺者にやられた腹部は少し開いて血が少しずつ流れていく。
「こんな時に……!」
しかし経験は裏切らない。すぐに頭をクリアにすると、迫るグレイブの腕を掴んで見事に投げ飛ばす。
「ぐわあ!!」
ホバー時とは比較にならない程の砂塵を四方に飛ばしながら熱砂に倒れるレザーのグレイブ。
「この……!」 何とか立ち上がり殴りかかるレザー。そこには最初に見せた見切りのテクはない。
更に腕を掴んでは投げ、倒れる直前にまた投げるマリナ。
砂漠に点在する岩場に当たった傷も手伝って、グレイブのホバー部分は破壊されていた。
脆くなったホバーを弓で跡形もなく撃ち抜くマリナ。
「もうすぐね……うっ、……」
弓を落としてしまうマリナ。
暗殺者にやられた傷はやはりファイトの妨害になっていた。
「あいつを雇って良かったぜ……」
ニヤリとするレザー。そして、巨大な鋼のケースを吊り下げたジエットがレザーの隣に降り立った。
「さて、換装型の本領発揮といくか……」 EP13
突如現れた箱に驚くマリナ。
「これは一体……?」
得意気に語るレザー。
「これはな、新しい戦場だよ。いや、あんたにお披露目するステージだ。」
「新しい?まさか……」
マリナは思い出した。レザーは初対戦で語った、ガンダムグレイブは様々なエリアでパーツを換装する特徴があるのを。
ホバーを破壊されたなら、それに替わる装備で対抗するということを悟った。
そして巨大な鋼のケースは砂漠の中にあって、砂漠ではない「ドコカ」……
レザーはグレイブの砂漠ホバーをパージすると、ファーラに掴みかかり怪力でケースに落としてしまった。
「きゃあ!ここは……水?」
ケースの底にはぶつからなかった。寧ろ冷たい水の中でプカプカ浮いている自分と機体。
「水中戦ね……」
「その通り、そしてこれがマリンタイプだ!」
ケースを運んだジェット機から射出されたパーツを装備したグレイブ。
背中にはエネルギータンクを内蔵したパックパック。
砂漠用に替わるパーツとして、水中用軽量エンジンを秘めた新たな手足。
薄いマリンブルーのモードだ。
勢い良く水中にダイブしてタックルするグレイブ。 「きゃぁぁぁ!!」
(何て突進力なの!それに水中は初めて……)
生身では泳げるがガンダムを用いた水中行動は未経験。
地上や空中とは違い、水がスムーズな動きを妨げている。
腹の傷も痛む。
吹き飛ばされた勢いを利用して壁際を蹴り飛ばし、水中で体勢を建て直す。
(冷静に……)
頭をクリアにして冷静になるが、初めてのシチュエーション。パーフェクトな冷静さではなく、明鏡止水には遠い。
(もっとメンタルトレーニングが必要ね……)
(このままでは外にある弓を拾えことも難しいわね。合気道だけでなんとかしないと……)
「あんた水中は慣れねえみたいだな。これがデビューにしてラストだ!」
「そうはいかないわ。ハッ!」
猛スピードで繰り出される砲弾をいなし、時にチョップやキックで破壊しながら接近するマリナ。
そして、腕を掴んで数回投げる。
「うわっ……!!」
と言っても壁や大地のある他のフィールドとは違い、ただ投げるだけでは意味がない。
できるだけ腕の捻りとベクトルを意識してケースの壁や床に叩きつける。
レザーとしては、ケースという鋼で囲われたフィールドを選んだのが裏目に出た。
マリナの技とケースの硬さが与える衝撃によりグレイブは所々傷付き、機体のシルエットは歪んでいく。
砲弾の発射口も幾つか破壊されていた。
「流石合気道をマスターしただけのことはあるな……!だが切り札があるぜ!」 グレイブが腰にマウントしていたライフルを構えると、放たれたのはビームでも砲弾でもなく、「水」だった。
今までの攻撃とは比較にならないスピードで鮫のように狙ってくる「水」。
「きゃぁぁぁ!」
ファーラの腹部にヒットすると、自身の腹の傷に応えて悲鳴を上げるマリナ。
「これは、一体……!!」
息を強めてフラッとする皇女。決して傷が広がったわけではないが、モビルトレースシステムは機体のダメージがファイターにも伝わる仕組み。
腹を押さえて傾けるしなやかな体。
「これはな、ウォーターガンだ。圧縮した海水を高速で打ち出す為のな。
皇女様にはキツいだろ。」
「本当に、卑怯ね……!」
沸き上がる怒りを押さえて何とか頭をクリアにしようとするマリナ。
一方シーリンのイナクトは確実に近付いていた。 EP14
暗殺者がマリナに倒されても、彼が仕掛けた通信妨害は解除されずに残っていた。
不安を抱えたままイナクトで飛んできたシーリン。
「マリナ!
レザー、相変わらず卑劣ね……!」
敵のやり口に怒りを燃やす彼女の近くに何体かのイナクトが現れた。
エジプト政府が雇った、ファイト開始以前に軍事や格闘に携わった者達が操る機体のグループ。
勿論、シーリン同様デミトレースシステムを使っている。
「やはりサポートがいたのね。来て正解だったわ。
しかし、ファイトに他人の手出しは御法度。
私はただ、レザーが用意しそうな邪魔物を倒してマリナを勝利に導きたいだけ。」
「あんたと皇女の関係は調べがついてる。
親しい間柄らしいからな、サポートに来ると思ってたぜ。
レザーのやり方は好きじゃないがこっちにも生活があるんでな。
サポーター同士のファイト、勝たせてもらう!」
「その言葉、そのまま返すわ。」
凄まじいスピードと合気道の洗練された技量で敵を倒していくシーリン。
鋼のオアシスに目を向ければマリナは苦しみながらも闘っている。
気付けば硬く手を握っている自分がいた。
(ファイターには手を貸すのはルール違反。でもあなたはきっと……!) 腹部に受けた海水の痛みに耐えている時、親友の機体を偶然目にするマリナ。
「シーリン!私のために……負けていられないわ!」
既に冷静さを意識し始めていた彼女のメンタルはポジティブさを増し、少しずつ生まれる余裕……
クールさを取り戻し、痛みを堪えてジャンプ!
咄嗟にグレイブの背後に回り、ウォーターガンを手刀で叩き落とす!
素早く構えるマリナにレザーは焦る。
「しまった!アジな真似を……!」
「お返しよ!」
「ぐわあぁぁぁ!」
弓と銃では僅かに勝手が違うが、普段のファイトで射撃はお手の物。
手足のパーツを装甲と手足に設置された銃口が破壊され、グレイブのモーションは鈍くなっていた。
マリナのような傷はないとは言え、圧縮・高速の海水に痛みと戸惑いを隠せないレザー。
「よくも……」
「エネルギー切れ?、仕方ないわ。」
心をクリアにしたとは言え偽れぬ息切れ。それでも力を振り絞り水槽の壁を蹴ってジャンプ。
それを背後から追うグレイブ。
「逃がすか……!!」
外に落ちた弓矢を拾うと水槽ごとグレイブを高速で撃ち抜いていった。
「ぎゃぁぁぁ!」 当たり一面金属と爆炎、そして水満たされた砂漠。
「はあ、はあ……!勝ったのかしら……明鏡止水になれなかったのが残念だわ。
……!」
爆炎からゆっくり立ち上がるグレイブ。
「まだまだだぜ。俺は終わっちゃいねえ……」
更に新たな飛行船がやってくる。
そこから射出されたのは、豪腕と両脚。
中破した水中装備をパージすると、新たなそれらを瞬時に装備したグレイブ。
その姿は最初の砂漠用装備とほぼ変わらない形状。
脚にホバーは付いているが、色はホワイトなので少し軽量なイメージを受ける。
「また同じ……」
「いや、一味違うぜ。野性動物の如く鋭いセンサーを備えたモードだ。
お前の明鏡止水とやらに対抗するためにな。」
「……いいわ。続けましょう。(ここまで来たらお腹の傷なんて気にしていられないわ。)」
ゆっくり立ち上がり、今までの幸せな出来事を走馬灯のように素早く思い返すと、次第に黒い髪は黄金色に、肌とスーツは薄い金色……所謂プラチナブロンドに染まっていた。
腹の痛みはあってないようなもの。 互いに迫っていく二体。
それを見つめるシーリン。
「マリナ、遂にやったわね……
あら?アクバル。通信接続直してくれたの?
ありがとう……助かったわ。」
シーリンのコクピットの右側スクリーンに映るアクバルの顔。
「ああ、俺もこれでもメカを多少は知ってるからね。あ、シーリンやばいよ!」
その声に反応すると、また数台のイナクトが飛んできた。
エジプトからの援軍だ。
「また何体も……いいわ、来なさい。ここはマリナの正念場なのだから。」
果敢に向かっていくシーリンの機体。 EP15
「邪魔はさせないわ!」
華麗な合気道と射撃で敵を撃破しようとするシーリンのイナクト。
しかし、敵のモーションはかなり繊細かつ正確。
しかも、機体のパワーも少し以前のものより上がっている。
「きゃあ!」
「今度の敵は更にファイト慣れしてるわね。エジプトの代表候補だった格闘家達かしら……」
腹部を殴られて砂漠に落ちるシーリンの機体。
ファイターほどの筋力はないので痛みはかなりのものだ。
落ち着いた美貌を歪ませつつ救援信号を送るシーリン。
いざという時の二段構えだ。
その間、砂漠の地面に射撃して、砂塵を飛ばし敵を翻弄するシーリン。
当たりを逃げつつサポートが来るのを待って一分もしない内にもう一機のイナクトが来た。
「何だ。たったの一体じゃねえか。」
「その一体が侮れないわ。」
瞬時に今の機体を捨て、新たなイナクトに乗り込むシーリン。
自動操縦させた状態で遠くに飛ぶ新型イナクト。それを敵も追う。
アクバルは通信でその一部始終を息を飲んで見守った。
(シーリン、また……)
突如今まで来ていたスーツを破り生まれたままの姿になるシーリン。
先の戦闘で美しい華奢な身体は汗に濡れて、少年を一層興奮させた。
「き、今日は何て日だよ……」 一方少しふらつきながらコクピット中央に立つと凛とした声で……
「モビルトレースシステム起動!」[newpage]降りてきたのはスーツの布ではなく、銀色の無機質な物体……リキッドメタルスーツだった。
マリナが以前付けたそれをイナクトに装備したものだ。
より自分のモーションを機体に反映させる、謂わば切り札。
但し、感情が昂る程ファイターの体力が減少してしまう諸刃の剣。
マリナの苦しみを目にした彼女は覚悟を決めながら臨んだ。
(マリナが明鏡止水を会得した今、私も感情に振り回される訳にはいかない……
いつも通りに闘って、素早く勝つ。)
「うぐっ……!」
冷たい金属はシーリンの胸に張り付き、肩甲骨までその面積を拡大していく。
より良いフィットを実現するため、正規のスーツ同様圧迫が凄いのだが、これはシーリンの為にかなりマイルドな強度に設定されている。
従って傷や骨折の心配はないが、今まで素人や準ファイター用のデミスーツしか着ていない彼女にはやはり負担だった。
「ひ、冷える……それにキ、キツイ……!!」
歯を食い縛るシーリン。苦しさゆえに少しずつ赤みを差す肌。
金属特有の冷たさにより一時的にできる鳥肌。
胸を覆うと、シーリンは膝に手を着いて息切れしていた。
「だ、大丈夫か、シーリン!!」
「ええ、何てことはないわ……」
思わず声を出すアクバル。それに苦し気に微笑んで応えるシーリン。
そして第二波が来た。新たなリキッドがシーリンの会陰にフィットした。 「あああぁぁぁ……!」
その冷たさにナイーブなそこはピクンとして、霰もない声を上げる。
会陰をセンターにして、膣とアナルに延びるそれに女特有の高揚を隠せないシーリン。
爪先を伸ばし、尻を突きだし下半身全体を震わせる。
「ぐぐっ、ぐ、やはり、キツイ……
でも、マリナの苦しみに比べれば……」
下腹部と尻を覆って装着は完了した。[newpage]振り替えって追ってくる敵を滑らかなモーションで翻弄し、時に投げ飛ばし、時に撃ち抜くシーリン。
「……流石ね、このスーツ。かなりの反映だわ。作った大臣達は酷い連中だったけど。」
残り三体になった敵。
彼等は相手のコクピット内をモニターで見ると目を輝かせた。
「うひょー、めっちゃ別嬪じゃねえか!」
「しかもあのスーツ、戦闘用とは思えねえ!」
「これは色々使えそうだな。」
口々に交わされる言葉を通信で聞いたシーリンは「やっぱり」という態度で呆れていた。
「終わらせるわ!」
しかし、今の敵は何れも熟練。ファイターの候補の中でも特に強いのだろう。
シーリンの攻撃を何度か受けつつも、基本的に隙のない攻撃で追い詰めていく。
「きゃぁぁぁ!」
ライフルによる射撃、パンチやキックを受け次第に消耗するシーリン。
凡そそれが10分程続くと、さしものクールな彼女も冷静さを欠いてくる。
「はあ、はあ……手強いわね。敵が送り込んだだけはあるわ。」 やはり準ファイターには敵わず、加えてビキニスーツはファイターの昂りによって体力を奪う仕様。
その弱点を科学技術で取り除く時間もない。
足元に滴り落ちる汗。疲労は徐々に、確実に溜まっていく。
このピンチは覚悟していたが……
通信で語りかけるアクバル。
「シーリン、無理だよ。こうなったらマリナ様の救援を」
「ダメよ!今は大事な時よ!
それに、今のアザディスタンには今の敵に敵いそうなファイター候補はいないわ……
誰も危険にさらす訳には……」
咄嗟に砂漠の砂にライフルを打ち込み砂塵を飛ばして逃げるシーリン。
「はあ、はあ……!
マリナからできるだけ離れた位置に逃げなければ……!
体力の回復も……」
スーツがかける負担、戦闘のダメージにより体力の消耗により、汗の水溜まりができた床。
呼吸は荒くなる一方だ。
大きな岩場に隠れると
コクピットに備えられたカプセルから出した液体。それを胸に塗るとビキニスーツの胸部分は溶けて大きな胸が露になる。
疲労が半減したので幾らか楽になったが体力はまだ戻らない。
「後はこれを……」
液体を股間に塗れば、パンツ部分も溶けて一糸纏わぬ姿になる。
モデルのようにスラリとした長身は、全身赤みが差し、汗に染みれている。
コクピットの壁ボタンを押せば、粒子かして消えていた彼女の私服が現れた。 やはり準ファイターには敵わず、加えてビキニスーツはファイターの昂りによって体力を奪う仕様。
その弱点を科学技術で取り除く時間もない。
足元に滴り落ちる汗。疲労は徐々に、確実に溜まっていく。
このピンチは覚悟していたが……
通信で語りかけるアクバル。
「シーリン、無理だよ。こうなったらマリナ様の救援を」
「ダメよ!今は大事な時よ!
それに、今のアザディスタンには今の敵に敵いそうなファイター候補はいないわ……
誰も危険にさらす訳には……」
咄嗟に砂漠の砂にライフルを打ち込み砂塵を飛ばして逃げるシーリン。
「はあ、はあ……!
マリナからできるだけ離れた位置に逃げなければ……!
体力の回復も……」
スーツがかける負担、戦闘のダメージにより体力の消耗により、汗の水溜まりができた床。
呼吸は荒くなる一方だ。
大きな岩場に隠れると
コクピットに備えられたカプセルから出した液体。それを胸に塗るとビキニスーツの胸部分は溶けて大きな胸が露になる。
疲労が半減したので幾らか楽になったが体力はまだ戻らない。
「後はこれを……」
液体を股間に塗れば、パンツ部分も溶けて一糸纏わぬ姿になる。
モデルのようにスラリとした長身は、全身赤みが差し、汗に染みれている。
コクピットの壁ボタンを押せば、粒子かして消えていた彼女の私服が現れた。
いざという時の為に持ってきた服だが……
次の瞬間、イナクトはビームを受けてよろめいた。
「うぐっ……敵襲……?」
倒れるシーリンの前にコクピットハッチが轟音と共に歪んで破られていく。
疲労に包まれた彼女は抵抗できない。
そして入ってくる敵の男達。
「どうする、この女。ここで……」
「いや、お楽しみはちゃんと人質として利用してからだ。」
それが意識を手放す前に聞いた最後の言葉だった。 EPファイナル
いくつもの矢をグレイブに放つマリナ。
明鏡止水故のエネルギーにより、鋼のそれらは熱い光に包まれ凄まじいスピードを伴い遅い来る。
対する相手は持ち前の高精度センサーを活かして回避するが、半分は命中しダメージを負っていた。
それでもタフさがウリの名うてのファイターと、防御に長けた機体。
簡単には折れずにいた。
「明鏡止水……なんつうもんをマスターしやがった……」
機体をセンサーモードにしたことで明鏡止水状態のマリナに対応し、五分五分のファイトができるレザー。
しかし、彼本人は会得しておらず、感覚もマリナ程クリアではない。
よって機体とファイターのバランスが取れているのはマリナの方。どうしても疲れが出てしまう。
「はあ!」
「……はっ!」
いくつものミサイルを機体から発射するが、それらを槍で破壊しながら進むマリナ。
グレイブの腹に膝蹴りを食らわせ、よろめいたところを投げる。
「うわぁぁぁ!!」
砂の中に倒れ込みながらも起き上がるレザー。
(前よりもパワーが上がっている……!
明鏡止水が身体能力をアップさせるのは聞いていたが、非力なマリナをここまで強くするたあ……)
「ここでケリをつけるわ。シーリンを探さなきゃいけないし。
……この音は?」
上を向くと三体のエジプト用イナクトが飛んできた。 モニター操作でアップにすると黄金の皇女は我が目を疑った。
「シーリン……!!」
一体のイナクトの肩に設置された木製の十字架。そこに縛られているのは一糸纏わぬ姿のシーリンだった。[newpage]しかも先程の戦いで疲労して気絶しており、クールで知的な顔には苦しみが見える。
更にこの熱い砂漠によって大量の発汗、更に上空で飛んでいる機体に捕らわれている。
熱で体力を奪われているシーリンは危険な状態だ。
「あなた達、シーリンに何を……!?」
シーリンを捕まえているパイロットがモニター通信に顔を見せた。
「この女には人質になってもらったのさ。
お優しい皇女様には親友を無視できねえだろ?
それともファイト優先するか?」
「……どこまで卑劣なの……!」
今まで見せたことのない怒りの表情……空色の穏やかな瞳は宛ら青い炎のようにユラユラと……
マリナとファーラの黄金色は光をなくし元の色に戻っていく。
ファーラが握った弓を思わず壊しそうな程力を込める拳。
不自然に熱い汗が頬を、喉を、胸元を伝えば己の思いに気付く。
「…………」
(ここで感情に任せればシーリンは犠牲になってしまう……ならば私にできることは……)
汗に濡れながらも鎮める心、そこに浮かべるのは今シーリンと共に過ごした数えきれない日々。
二人で微笑んだこと、そして厳しい言葉をかけられながらも支えてくれたこと。
ずっと一緒だった時間…… 「…………」
再び輝く彼女と機体。
さっきよりも眩しく、淡い金色に包まれると、レザー達の視界から一瞬姿を消した。
「……どうなって……!?」
全ての敵が驚いた次の瞬間、ファーラはイナクトの腕を優しく捻りシーリンは零れそうになる。[newpage]…………しかし、すぐに彼女を鋼の掌で掬い光のような速さで何処かに飛んでいった。
同時に凄まじい閃光がレザー達を襲い、それが治まった時には再び皇女は姿を消していた。
「……何だ、一体何が起きた!?」
あまりの早さにグレイブのセンサーも反応できなかった。
一方ここはある岩場。
マリナはそこに隠れると、シーリンを丁寧にコクピットまで運んだ。
悲しそうに、慈しむように親友の顔を撫でるマリナ。
「シーリン……私のために……ここまで傷付いて……
今、終わらせるからね。
そこで見守っていて……」
熱と疲労に包まれたその裸体に布をかけ、コクピットに設置された安全ベルトで固定した。
「漸く見つけたぜ!覚悟しろ、皇女。」
上空にいるのはレザー達。
相手を見据え飛んでいくマリナ。
「ハッ……」 呟いて放った矢によって打ち砕かれるイナクト達。
瞬時に落下して見えなくなる。
それらの内、シーリンを人質にしていた男が機体から投げ出されると、ファーラの手がスッとその体を叩いた。
「うわぁぁぁ!!」
男は凄まじい絶叫を上げて砂漠に激突した。
仇討ちとは言え、人殺しを望まないマリナは手加減を心得ている。
しかし、大きなダメージだ。
「この……やってくれるじゃねえか!!」
接近するレザー。しかし、内心後悔していた。
ガンダムグレイブをセンサーモードに切り替えたとは言え、自分の予想を上回るマリナは驚異。
明鏡止水を会得しないで、ほぼ機体性能に頼ったことを悔いるが後の祭。
(しかし、ここで俺も相手を見極めなきゃいけねえ!)
瞬時に冷静になり殴りかかるが、マリナは何食わぬ顔でその豪腕を受け止め、捻って投げる。
「ぐわぁぁぁ……!!」
青空に昇る大男の悲鳴。
しかし、上空からいくつもの矢が雨のように降り注ぐ。
敢えなくボロボロになるグレイブの装甲。
「ぎゃぁぁぁ!!」
光のような速さで降り立つファーラ。
「シーリンの痛みはこんなものではないわ……!」
更に投げ飛ばすと、あまりの衝撃にグレイブの頭部は歪んでいき、その動きを止めた。 「…………?……マリナ……?」
ゆっくりと開かれていくシーリンの視界。
そこには見慣れた華奢なシルエット、しかし見たことのない輝きを放つ友がいた。
ゆっくりと振り向いたその顔はいつもより柔らかく、喜びに満ちていた。
「シーリン……良かった、気が付いたのね……」
「マリナ、あなた、その姿……」
「みんなが、そしてあなたがいてくれたから勝てたのよ。
ありがとう、一緒に戻りましょう、シーリン……」
金色の皇女は友を優しく抱いた。 《P−04》。
それはルウム戦役で放棄された全長数キロメートル級の資源衛星を刳り貫き、新サイド4暗礁宙域に築かれた地球連邦軍の要塞基地である。
だが要塞基地とはいえ、連邦宇宙軍最大の拠点であるルナツーは言うに及ばず、一年戦争末期における最大の戦場となった旧ソロモンや旧ア・バオア・クーに比べても、その規模は遙かに小さい。
もっともP−04には、それら数十キロメートル級にも達する名だたる大要塞に対して、明らかに異彩を放つ特徴があった。
衛星の岩肌から伸びた数本の支柱と、その各支柱の間を結ぶ円環軌条へ多数が連なって各個に回転し続ける、半径300メートルほどの円筒状構造物――農工業用プラント群の存在である。
ルウム戦役で破壊された各コロニーのプラント群を修復整備して回収、資源衛星から延びる軌条に移設することで、要塞基地と一体化させつつ再稼働させているのだ。
その巨大な生産規模は、通常型スペースコロニーのゆうに数基分にも匹敵する。軍民一体の拠点であった。
とはいえ宇宙における要塞基地の要塞たる所以とは、何よりもまず、厚い岩盤によっていかなる砲火にも悠然と耐える堅固な防御力である。
だが剥き出しになって広がるプラント群は当然ながら、その恩恵など受けられない。もしメガ粒子砲やミサイルの攻撃による砲火を受けてしまえば、要塞本体はまだしも、無防備なプラント群などひとたまりもないだろう。
結合しても無益、通常であれば遠く離して配置されていてしかるべきとも思われる両者であったが、このP−04にあっては、一見すれば奇妙なその組み合わせが自然なものとなっているのだった。
そしてプラント群に囲まれた要塞基地の厚い岩盤の最奥に、P−04の管制司令室は位置していた。
張り巡らされた多数のモニターに映し出されているのは、暗礁宙域内の各地を睨む監視カメラの映像と、そして各種センサー類が捕捉した軍民のMSや作業ポッド、艦船を模式化した航路図だ。
今その両者には、進入軌道に入った艦隊と船団がそれぞれ一つずつ捉えられている。そのいずれにも、すでにP−04を発した防空MS隊が接触していた。
ひとつはこのP−04に連なる多数の農業プラントで生産した食料を積み出し、他サイドへと輸出してきた帰路の農協船団。
そしてもうひとつが地球連邦宇宙軍新サイド4駐留艦隊所属――そうでありながら拠点を宙域外に移されていた、第223戦隊である。
「――久しいな、トラキア」
顔面の半ばまでをも覆うような巨大な古傷で、右の眼窩と義眼を大きく露出させた将官が静かに笑う。
筋骨隆々たる偉丈夫は、その凶相に懐かしげな表情を浮かべながら、第223戦隊の先陣を切る巡洋艦の望遠映像を見つめていた。
一年戦争緒戦、地球連邦軍が大敗したルウム戦役。瀕死の重傷を負ってルナツーへ後退し、同地で就役したばかりのサラミス級巡洋艦を受領した日のことを、彼は昨日のように思い出す。
大手術から奇跡的に復活したばかりの彼が、新型兵器MSを擁する圧倒的に優勢なジオン公国軍に対抗するために自ら提唱した、宇宙ゲリラ戦術。
旧来の連邦軍部隊では成し得なかったその戦術を実現するため、彼はルウム難民志願兵を主体に兵を集め、にわか仕込みの戦闘団を編成した。
未曽有の大損害に硬直しきっていた地球連邦軍の人事制度が狂乱する中で、彼が拾った艦長候補は新品少尉の若者だった。
トラキア。あの艦こそが、すべての始まりだった。
「副司令。昔を懐かしまれるのは結構ですが」
鋭い女の声が追想を断つ。
ゆっくりと振り返ると、若いアフリカ系の女性佐官が長いブルネットを靡かせながら、鋭く挑むような瞳で彼を見ていた。 「トラキア艦長への聴取には、私も同席させていただきます」
「フム。久々の古巣に、おかしなことを吹き込んでくれるな……ということかね?」
彼が笑うと、彼女は無視するように後を続けた。
「『アバリス』襲撃からエゥーゴ艦による接触、そして今回の大規模戦闘に至るまで、トラキアはこの一週間で劇的に進展した一連の事態において、常に第一線にありました。
その報告内容は我が艦隊、ひいては地球連邦軍全体で共有すべき価値があるものと考えます。一部のみで独占されるべきものではありません」
「その通りだ、中佐。我々の肩には、あまりに多くの人命が懸かりすぎている。市民を守ること――8年前のような破滅が決して二度と起こることのないよう回避することが、我々のすべてだ」
8年前。その言葉を発する前後だけ、わずかに言葉と、二人の温度が変わった。だが異相の将官はすぐに元通りの、穏やかな調子で言葉を継いでいく。
「そのためには何事も、決して私物化して抱え込んではならない――ウォレン准将にもお伝え願いたい。我らは危機にある。
同じく地球連邦に奉仕し宇宙市民の安寧を守護する者として、新サイド4、そして地球圏のため、ともに力を合わせて参りましょうと」
「言われるまでもなく。――願わくば副司令ご自身も、そう仰られた通りに努めていただけますよう」
穏やかなまま彼が笑うと、中佐は一礼して踵を返した。
人は変わる。立場も変わる。
かつて腹心の部下であった女性士官の後ろ姿を背中で送りながら、ソギルは再び望遠映像のトラキアを見つめた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています