「はあ!……はあっ!…」

 息も絶え絶えに屋敷の廊下を走る怜。自身の胸の豊かさが、今ばかりは口惜しい。

 今しがた、射影機のフィルム枚数の残りを遂に使いきってしまい、
今の彼女はこの「お屋敷の方々」の誰とも戦う事は不可能な状況にあった―

 (フィルムごとに強さに違いがあるってのは、書かれてた数字や実際使用したから
よく分かっていたつもりだったんだけど、ね…)

 「後少し…出入り口になってた「玄関」まで行ければ!…」

 怜はここ数日、頻繁にお屋敷へ出入りを繰り返していたせいもあって、
自身の目的の品物を探索したり、そこへ向かう事自体は、実にスムーズにこなせる様に
なっていた。

 それが仇となった―

 「え?―あッ!?」

 頭に近道を想い描き、扉を解放した次の瞬間―

 全く予期せぬ場所から「お屋敷の方々」が沸いて出たのである。
 (な?!……こんなところにはいつも誰もいな――かっ!?―…)

 ざっくり、と。

 怜の背中に、燃える様な感触と痛み。

 「ぐ!…ああっ!!」

 怜の背中に、鎖鎌の鎌が生えたように突き刺さっていた。
 そしてそれを皮切りに、次々と怜に被さる様に襲い来る白装束の男たち。
 
 (…う、うそ……)

 振り払う事もかなわず。
 さりとて今更逃げる事などとうに不可能。

 迫る数多の手が。

 怜の肉体を徐々に、そして次々に蹂躙しはじめていた。