佐々木はるとは11歳、小学5年生の少年である。今日ははるとの家に友人の笠原瑞樹と渡部勉の2人が遊びに来ていた。笠原瑞樹は1本のビデオテープを持ってきていた。
なんでも特撮のオリジナルビデオを手に入れて結構面白かったと言うので、はるとの家でみんなで観ようという話になったのだ。
はるとが2人を連れて家に帰ると、母親も姉も出かけているようで家にはいなかった。はるとはリビングにあるビデオで早速みんなで観ることにした。
デッキにビデオを入れてテレビを付けた。テレビには『人造人間キカイダーレディ』とタイトルが入り、オープニングが始まった。
青と赤の2色のフォルムをした主人公である女性型のロボットが黄色いサイドカーに乗り、敵組織の戦闘員を蹴散らしていく。なかなか面白そうな番組だとはるとは思った。
ロボットらしい戦闘員はキカイダーレディによって次々倒されていく。腹を殴ればパンチが貫通しそのまま敵戦闘員はダムから落ちていく。
バイクに乗ったままそのまま敵に突っ込んでいくと敵戦闘員はバイクに直接跳ね飛ばされているように見えた。スタントマンが余程上手いのか、まるで本当にバイクで轢いているかのようであった。
ダムから落ちていく戦闘員もとても人形には見えなかった。オープニングが終わるとサブタイトルが入った。
『魔性の女 モモイロアルマジロ』と出ると、崖の上に光沢のあるメタリックピンクの服を着た若く綺麗な女の人が立っている様子が映った。
ブーツやチョーカーもメタリックピンで統一したその女性は大きく脚を開き腕を組みながら、崖の下の道路を走る乗用車を蔑むような目で見つめ、妖艶笑みを浮かべている。
乗用車には家族らしい4人の人間が映っている。運転席と助手席に若い夫婦らしい人と、後部座席には姉と弟らしい子供が2人乗っていた。
後部座席の子供達は小学生の高学年らしく、ちょうどはるとと姉の理穂と同い年くらいであった。
崖の上に立っている女性は腕組みを解くと、両腕を胸のあたりで交差させながら回転させ、「クルクルクルクルクルクルクルクル・・・」と掛け声を上げた。
そして「ヤアァッ!!」と一際大きく声を上げると両手を頭上に掲げ、両脚を大きく開いたまま腰を回転させ始めた。