重い足どりのまま近くの公園まで来た金原は悶々としていた。
金原(あんなことさせられるなんて……)
自分の演じた痴態は、操られていたとはいえ受け入れられるものではなかった。
金原(でも……)
俯いた先には報酬の入った封筒が。
中身を確認すると間違いなく3万円入っていた。
金原(やったことといえば女の子としてではあるが男とカラオケに行っただけ。それでこんなに貰えるなら……)
金原(それに久しぶりに楽しかった。こんなに楽しい気分になったのはいつぶりだろう?)

結婚当初は楽しかった。それも数年経てば新しい刺激もなくなってしまった。
沙耶が産まれてからしばらくして香織は俺のことをパパと呼ぶようになると俺の方を向く時間は減っていった。
親が子どもの面倒を見ることは当たり前だ、それに腹を立てたりはしていない。
ただ日々の生活に潤いや刺激が欲しかった。
家族のためにがむしゃらに働いて昇給もした。
沙耶が大きくなって習い事を始めるとそのよりお金がかかるようになって俺はより抑圧されることになった。

香織との関係は別に悪くはない。
母親として立派に沙耶を育ててくれてる事には感謝しているし頻繁にその気持ちを示しているつもりだ。
おやすみのキスも香織の方から求めてくれている。
愛がないということはないだろう。