キッズ用のお手洗いは小さい児童用のトイレや低く設置されて手洗い場があり、紙おむつの交換代もある。
 立たせて履き替えさせるタイプのおむつ交換代に靴を脱いで上がると、桃花ちゃんがバッグから新しい紙おむつを取り出してくれる。
「あっ、これじゃあ下半身丸出しになっちゃうね」
 私が思わず呟く。
ワンピースやスカートならともかく、オーバーオールの様なサロペットは脱ぐと下半身は紙おむつとタイツだけになってしまい、他人が見ればおむつを汚してしまった事が一目で分かってしまう。
「はい、おねえちゃん、あしあげてぇ」
 桃花ちゃんは自分の身体とはいえ、おむつ交換に慣れてきたようで、手際が良くなっている。
「桃花ちゃん、ごめんね」
 濡れた紙おむつを脱ぎお尻を拭いてもらいながら私は桃花ちゃんに何となく謝った。
「えっ、どうしてぇ?」
「何か、桃花ちゃんはまだ小さいのに、私の我がままに付き合ってもらっているから」
「でもね、ももかもね、みおおねえちゃんと、あそぶの、たのしいもん!」
 桃花ちゃんに謝った理由はもう一つあって、実はお漏らしをするのが少しクセになりつつあった。小さな幼児として行動する事にドキドキしている自分がいた。
四歳の身体とはいえ、出先でおむつにお漏らしをしてしまう恥ずかしさやコンプレックスは普段の生活では味わえない背徳感があった。
 それに、私だって桃花ちゃんだって私に隠れてこっそりとエッチな事をしているのも知っている。十五歳の大人になりかけている快感にうずうずしている様子がたまに見かけられた。


「あっ……」
 新しい紙おむつを履きなおしたところで、トイレの個室から女の子が出てきた。今の私と同じくらいの身長なのに一人でトイレに行けるんだ、と複雑な心境になる。
 女の子は私たちを何度がチラチラと見続けて、手を洗って出ていくまで様子を伺っている様だった。そこで私は気が付く。
「多分あの子、桃花ちゃんが私の事をお姉ちゃんって呼んでいたから不思議に思ったんだよ」
 高校生くらいの女の子が幼稚園児くらいの女の子を美緒お姉ちゃんと呼び、私がちゃん付けで呼ぶのは不自然だったはずだ。
「あぁ、そっかぁ!」
「そう、だから入れ替わっているときは、私は桃花お姉ちゃんって呼ぶね!」
「えっ、じゃあぁ、ももかはぁ、みおちゃんって、よべばいいのぉ?」
 ちょっと不思議そうに照れ笑いする表情は紛れもない四歳の桃花ちゃんだった。
「そう、だから早く遊びに行こ!桃花お姉ちゃん!」
「う、うん、みおちゃん、まってよぉ!」
 私は本当の四歳児のようにトイレを出て駆けだしていく。後ろからは大人びた桃花ちゃんの笑い声が響いてくる。
 通り過ぎて行くお店はどれも賑やかで、喧噪に彩られた音はまるで私たちの秘密を隠してくれるようだった。私はスラリとした体格の桃花お姉ちゃんと手を繋ぐと、小さな足を動かしてその中へと消えていった。

おわり