■有田聖孝の凋落 ― 10.コンバージョン (1/8)

有田聖孝が社長室で屈辱的に犯された週の週末の日曜日、
カーマイン・ナイツはラグビー東日本社会人リーグの第二戦に挑んでいた。
夏の暑さの残る中で戦った初戦から三週間しか経過していないが、
季節はすっかり秋らしくなっている。ここ数日は雨の日が多かったが、
今日は曇天ではあるものの今のところ運よく雨は落ちて来ていない。

今日の相手は昭和生命ライフプランナーズだ。去年3位のチームで、
学生時代に関東大学ラグビーで活躍した選手も数多く所属する強豪チームだ。
昇格したばかりのカーマイン・ナイツは序盤戦は
優勝候補のチームとの対戦が続く。

メインスタンドで曇り空を見上げて雨の心配をしながら観戦していた藤島彩音は
見知らぬ女性に声をかけられた。スラリと背が高く少し気が強そうな美しい女性だ。
「もしかして藤島彩音さんですか?」
「はぁ・・、そうですけど何か?」
彩音が怪訝そうな顔で答えると、
「有田さんと仕事で取引させていただいているんだけど、
今日試合があるって聞いたから見に来させてもらったんですよ。
美人の彼女がいるって聞いてたけどスタンド中の女の人を見て
一番きれいだったから声かけさせてもらったの。
早瀬沙羅って言います。よろしくね」