『女の乳首、下から見るか?横から見るか?』

旬になぞらえた妄想なんぞどうでもよく、今日これから行われる情事に期待で股間を膨らませた俺は、信太山に向かう電車に乗っていた。


信太山は地域住民が利用する駅であったので、周囲の目を気にせず、高校生や家族連れなんかに紛れて下車できた。
夕方、リュックサックとコンビニ袋ひとつ手に持って降りた俺は、ひとり暮らしのアパートに帰る学生にでも見えただろうか?

いや、

安心は出来なかった。

ここに青春18切符なんぞでノコノコやって来てしまった俺は、強制的に有人改札を通ることになってしまう。

手持ちの切符は当然、駅員に見せることとなり、地元民では無い自分が何しに来たか、何となく感づかれたような気がした。
我々小心者にとっての大事である。
もし、この駅員が何も感じてないと言ってくれたとしても、実は何かを感じとっていたとしたら、本音言わず平気な態度を演じていられることは非常に恐ろしいことなのだ。

妙な気分になった。


さておき、
 
ほどなくして新地の中を歩いている俺がいた。

「お兄さん、かわいい子おるで。」と新地お馴染み、やり手婆の決まり文句が聞こえてくる。
とはいえ、飛田のように可愛い子が店前に座ってるなんてことは無いので、ウィンドショッピングのような楽しみは無かった。

店はネットの書き込みを拾って適当に決めておいたところに入った。

「お兄さんなら若い子でええやろ?」と受付で問われる。
乳房の膨らみにこそユートピアがあると信じていた俺は「出来れば胸が大きい子で」とひとつだけ注文をつけてスタイリッシュに受付を済ませた。