「…ッ!?はあぁッ?!」
 お、俺がどうしてこんな姿に―?!
 目の前の鏡を見て驚く。
 そこには見知ったいつもの自分の顔ではなく、長い黒髪の、どこからどう見ても「女」の顔が映っていたからだ。
 (確か昨日俺は―…)
 寝起きで混乱しつつも、自分の頭の中をフル回転させて記憶を辿る。


 「佐々木さん、コレどうですか?」
 「…何これ、新手の栄養剤か?」

 (そうだ!―昨日、仕事の帰りに、見た目栄養ドリンクみたいなのを、安中の奴からもらって…)
 「まあそれは否定できないですが…これ、疲れてる人にお勧めな効果が現れるんだとか」

 「胡散臭いな、それ。じゃあなんだ、人によって違う効果が出るって事か?」
 「らしいですよ」

 「お前なぁ…効き目がハッキリしない怪しげな物を、易々他人に勧めるなよ」
 「まあまあ!そこはほら、佐々木さんの「退屈」を紛らすのに一役買えば、と思いまして!」

 (あの時、確かに俺は「まあ、退屈は退屈してたが」とした思いに突き動かされて―)