「昨日はどうも」
「さ、佐々木さん…」
今の時間は真っ昼間。
場所は、自分達が勤めている会社の給湯室の前。
佐々木と安中が二人でいると、もう後はその空間に一人立ち入れるかどうかの狭い場所。
「お返し」
佐々木は、安中の唇になんの躊躇いもなく唇を重ねた。
「ッ?!佐々木さん!や…やめてください!会社じゃ私たちは!…」
「単なる知人、だろ?…でも、昨日のはちょっとひどい別れ方だった」
「う!…で、でもあのままじゃキリがなさそうだったから!…」
「ま、まあ俺…(私)も反省しなきゃいけない点はあった。ごめん(なさい)」
「私は、これでも一応所帯持ちなんで、朝帰りする時は、歴とした理由がないと…ね?」
佐々木と安中は、社内で既にデキているとは噂される仲ではあったが、公式的に認めているスタンスはとっていなかった。
お互いそこそこの見た目を保有していた為、カップルと認めてしまうと、
イタズラに周囲の嫉妬を買う、と危惧した故の安中側の配慮だった。
安中はともかく、佐々木の方は新入社員の様な立場と変わりはないからだ。
(色々と俺の為に手を回してくれてたんだよな、安中…)
もういつだったか忘れたが、初SEXも、その辺りのヤツの苦労や配慮を感じて、さして抵抗を感じなかったんだ――
「じゃ、これで」
「うん」
「―ね、安中?」
「何?」
「…もし子供ができたら、私に乗り換えない?」
安中は、茶を盛大に吹き出した。
「佐々木さん!」
「ごめ〜ん!」