「それじゃ、いってきます」
 「は〜い、いってらっしゃい!…ちゅ」

 「いや、つばさ!も、もう新婚ホヤホヤじゃないしそこまではっ?!」

 「ふふ。油断したあなたの方が悪いのよ?それに…本当に、嫌?」
 「お返し」
 二人の顔が重なる。
 「引き分け、ね…」
 「…何の勝負なんだか」
 幸せな夫婦の、玄関前の寸劇だった。


 あの後―

 鴨井川つばさとの記憶をなくした元・プロデューサーと女性化したつばさは、
つばさの方は一度身を引くようにプロデューサーの前から姿をくらまそうとしたが
記憶がなくなったからなのか、それとも僅か記憶の手がかりがあったのか、
プロデューサーは熱心につばさを探し出して「君を守りたい」とひたすら熱心に口説いたと言う。

 (自分の職すらかなぐり捨てて……バカなんだから…)

 しかし主婦となったつばさは、満更でもなさそうに呟く。少し膨らんだ自分のお腹をさすりながら―