0218名無しさん@ピンキー
2018/11/12(月) 20:01:24.30ID:l6irEwto「そう急くでない。お前さんがもう少しじっとしててくれれば、早く終るんじゃが…」
砂掛けのアパートの一室で、ねこ娘は浴衣を着せてもらっていた。
以前、鬼太郎に渡した手作りの浴衣と一緒に、着付けも教わっていたのだが、結局「今日」と言う日に間に合わなかったのだ。
「ホレ、これで良し。あと、帯の結び方さえ覚えれば、一人でも着られるな。」
「ありがとう、おばば。じゃ、行って来るね。」
「あまり遅くならんようにするんじゃゾ。妖怪とは言え、今時は人間界の方が物騒じゃから…」
「大丈夫よ。鬼太郎と一緒だもん。」
「ホホホ…わしも若い頃は…」
砂掛けが、若かりし頃にトリップした隙に、ねこ娘はそそくさと逃げだし、鬼太郎と待ち合わせた場所へ急ぐ。
「もーおばばったら、昔の話し始めると長いんだもん…」
待ち合わせたのは、ゲゲゲの森出口付近。
そこには既に鬼太郎の姿が有った。
「ご・ごめん…鬼太郎…待った?」
「いや、僕も今来た所だから…」
「あ、その浴衣…」
「うん。せっかくねこ娘が僕のために作ってくれたから…」
「…鬼太郎、自分で着たの?」
「そうだよ。父さんに何でも頼れないしね。自分で出来る事ぐらいは…」
鬼太郎が着ていた浴衣はあの晩―――ねこ娘が、汚した服の代わりにと渡したもの
その浴衣姿を見て、思い出してしまったのだ。あの晩の情事を―――
襟元もきちんとしているのに、色っぽく感じられて、あの晩の乱れた姿を思い出してしまい、ねこ娘はかぁ…と頬を染めた。
「どうしたの?顔…赤いよ。」
「…う・ウウン…なんでも、何でもないよ。」
浴衣姿の鬼太郎を見て、ドキドキしてしまった理由を言える訳がなかった。
「は・早く行こう。お祭り…終っちゃうよ?」
先に歩き出したねこ娘の手を、クイ…と引き寄せ
「今日のねこ娘…凄く可愛いよ。」
耳元で囁かれ、ねこ娘は耳まで紅く染あげた。
手を繋ぎ、ただの男の子と女の子として人間界に降りる。
何時も事件がらみだったので、プライベートで遊びに出かけたのは本当に久しぶりで
お祭りの熱気に、先ほどまでギクシャクしていたねこ娘も、いつもの明るさを取り戻していた。
「ねぇ、何時も疑問に思ってたんだけど、ねこ娘…お金はどうしてるの?」
「あれ〜あたし言ってなかったっけ?アルバイトしてるの。」
「アルバイトって…?」
「―――猫探しの。今ペットブームでしょ?そぉいう依頼が多いんだって。」
「ふーん」
出店の中を、歩きながら他愛もない話をする。
人通りをかき分けるようにして、橋の袂についた。