「翔太君、足くじいた見たいだし・・・そろそろかえろうか。」
「…そうだな。」
「それじゃ、鬼太郎さん。またね」
手を振る、3人組をにこやかに見送っていた鬼太郎とねこ娘だが、姿が見えなくなると鬼太郎の表情が険しくなった。

「…どうしたの?鬼太郎。」

「…」
無言のまま、ねこ娘の手を握り歩き始めた。

「ちょ。ちょっと…鬼太郎ってば、どうしたの?」

返事はしない、黙ったまま急ぎ足で祭りの人通りを抜け、行きに通って来た林の道に。
嫌だった。
例え子供とは言え、ねこ娘の身体に触れさせたくなかった。
他の男に、ねこ娘を感じて欲しくなかった。
見せたくなかった。
他の誰にも、魅力的なねこ娘を知られたくなかった。
それは、独占欲から来る、子供じみた嫉妬だった。
人間の、しかもあんな子供に嫉妬するなんて、どうかしてるかもしれないが―――
林の小道に入ったところで、歩くスペースがゆっくりになる。
だんだんと祭りのざわめきと灯りが遠のき、ほのかな月明かりだけがあたりを照らすようになると、だんだんとあたりの様子が如何わしさを漂わせる。
かすかに聞こえる、葉のかすれる音に混じって、聞こえる声と息遣い。
夜目と耳のいいねこ娘は、ソレが何であるか直ぐに感じ取ったようだ

「…鬼太郎…早く行こうよ…」

小声で囁くが、鬼太郎は動じず、ますます歩みをゆっくりにする。
ねこ娘は顔を真っ赤にし、ぎゅっと鬼太郎の腕にしがみ付いてうつむいた。
草むらに身を潜ませて人間の若い男女が、交わっているのだ。
それは、鬼太郎も解っていたから、態と…見えるように、聞こえるように
やがて、それらの物音も聞こえなくなったところで、鬼太郎は立ち止まるとねこ娘に口付けた。
それは唇を重ねるだけのものだったが、初めは驚いたねこ娘も、瞳を閉じ、鬼太郎に身を任せる。
しばらく重ねられた唇が解放されると、ようやく鬼太郎が口を開いた。
「…もっと気がついてよ。」

「…えっ?」

「ねこ娘は…女の子なんだから…」
あたりまえの言葉だが、他の男も「そう」見ていると、気がついて欲しかった。
ねこ娘は鬼太郎以外は、あまり意識していないのだ。
…と言うよりも、他の男達が自分をどういった眼で見ているのかを気がついていない。