ザワ…
急に生暖かい風が吹き、木立がざわめく。
その風は一直線に、男に向かい吹き抜けると木の葉が舞い、其処には―――

「鬼太郎!」

希望を含んだねこ娘の声に、男が振り返る。
男が見たのは、少女と同じぐらいの年の、隻眼の少年
「―――その娘を放せ」
ゆらりとした身からは、恐ろしく低い声
「ケッ…ガキが、大人の楽しみを邪魔すると、痛い目にあうぜ?」
「僕は、放せ…と言っている。」
「素直に引きさがりゃァ…痛い目見なくて済むのによ…」
男が指をバキバキ鳴らしながら、鬼太郎のほうを向いた。
「そうか…人間に乱暴するのはどうかと思ったが、そっちがその気なら仕方が無い。」
ズル…鬼太郎の髪の毛が二又に伸び、地面につくと蛇のように地を進む。
無論暗闇の中、男達には見えていない。
シュルシュルと言う音に、違和感は感じていただろうが。
「髪の毛綱!」
「うおっ?!」
鬼太郎の叫び声と共に男達の足元から、髪の毛の柱が昇り身体を束縛する。