>>9-20 のその後…

綺麗な月夜に誘われて、ねこ娘は、ゲゲゲの森の辺にある小川を散歩していた。
今宵は満月…雲ひとつの陰りも無い…鬼太郎と腕を組んで歩けたら、もっと素敵なのに。
そんな事を思い浮かべながら、軽いため息をつく。
「…どうしたの、ねこ娘?」
「きゃ…」
誰も居ないと思っていたのに、突然声をかけられ、飛び上がるほど驚いた。
恐る恐る振り向く、ねこ娘。
「…鬼太郎」
そこには先程想っていた大好きな人の姿。鬼太郎は、ねこ娘が来るよりも先に、ずっとココに座っていたようだった。
「こんな夜半にどうしたの?」
「今日は月が綺麗だから散歩してたの…それより、鬼太郎こそ、どうしてココに?」
「父さんが…こなき爺と将棋してたんだけど…二人とも白熱しすぎて、なんとなく家にいられなくてさ…」
ハハ…と鬼太郎が笑う。ねこ娘は隣に腰掛けると、膝を抱え微笑む。月に照らされた鬼太郎の横顔がとても綺麗で…ドキドキしながら、しばし見とれていた。

初めて肌を合わせてから、鬼太郎の存在が自分の中で以前よりもずっと身近に、大きくなっていた。

…でも、鬼太郎は”好きだよ”と言ってくれたが、感情をあまり表に出す方ではなかったし、今でも鬼太郎が何を考えているか解らない時がある。
自分が鬼太郎にとって、本当に必要な存在なのか…少々不安な思いがあった。
以前は、片思いで鬼太郎は手の届かない人のような感じがあったから、その時からすれば今は贅沢で夢のようなのだから、あまり欲張ったら、ちょっとずうずうしいかな…とねこ娘は反省した。
春が近づいてきたとはいえ、まだまだ夜風は冷たく、先程まで歩いて温まっていたねこ娘の体温を少しずつ奪っていた。
ブル…小さな肩を抱きかかえ、ねこ娘が震える。
「…寒い」
「大丈夫?」
鬼太郎がねこ娘の方をグイと引き寄せる。鬼太郎に抱き寄せられ、今まで離れていた身体が密着すると、ねこ娘は急に恥かしくて、熱が上がってきてしまう。
ねこ娘の髪に、鬼太郎の髪が触れる。なんだか吐く息の音まで聞こえそうで、心の中まで見透かされてしまいそうな気がして―――
ねこ娘はちょっぴり恐くなって、ごまかすように立ち上がった。
「ねぇ…?こうするとお月様、捕まえられそうだよ。」
目の前の月に両手をかざす。
雲ひとつ無いまっさらな空に浮かぶ月・・・薄紫色の柔らかな髪が、黄金の光に照らされて、身体は光の中に溶けているように映る。
その美しくも儚い後姿に、鬼太郎は思わず抱きついた。
「きゃ…鬼太郎?」
不意に後から抱きしめられて、ねこ娘が名前を呼んだ。鬼太郎は無言のまま更に強く腕を締める。
腕が…かすかに震えている。