結局このあと全員を抱いたせいで朝食が遅れる破目になってしまったのであった。

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「ヒッィク! 昼間っから飲む酒は格別だなあ〜〜」
「おい、いくら無茶な防衛戦でストレス溜まってるからって飲み過ぎだ」
「ただ飲むならまだしも、酒で口が軽くなったせいで俺達の事を何度もバラしそうにしやがって……」
「正体がバレたら官憲が真っ先に飛んでくるぞ!」
「俺達今は守衛じゃないんだ。何かの手違いで死んでしまえば簡単に復活できないって事をもっと自覚しろよ…」
ここはアラム城に近い都市、の酒場の出入り口近く。
この寺院の男達はさっきまで生贄に相応しい女を見定めるという名目で、目ぼしい酒場に入り浸っていたのだ。
本音は生贄など二の次。ひさりぶりのシャバの酒の味を堪能するのが目的で、浴びるように飲み続ける。
やはりリーダー達に何度も撃破され続けたのは相当堪えたようだ。
しかも愚痴を零しながら騒ぎ立てるのがいるから店側から見ると性質が悪い客でしかない。
流石に騒ぎ過ぎたのか、とうとう店主に追い出されてしまったのである。

「いいんだよ! どーせ帰ったって下手すりゃまたあの守衛部隊に配属だぜ…。あいつらに延々とボコられ続けるのはもう嫌だよ……」
路地を歩きながら一番酔っぱらっている男が愚痴を零す。
「それは俺だって同じだよ。だけど俺達があそこで頑張っているから連中も入ってこられないんだろ?」
「クリスタルキーパー様は男だけ殺して女は全員捕らえろって言うけど、ホントにできると思う?」
「無理無理! あいつら最初の頃でも手こずったのに今じゃ更に強くなってるんだぞ……」
「あの頃だって誰一人仕留める事は出来なかったのに、男だけ倒せって無茶ぶりにも程があるわ!」
「全裸の女達なんて陰毛を剃ってからは、ますます大胆な攻撃を繰り出すから色々な意味でやべーよ……ウッ!」
男はシズルやビオラやナツやレイチェルが胸を揺らしながら、何も生えてないオマ○コを晒して攻撃してくるのを思い出して前屈みになる。
「裸の女達がまだ股間に毛を生やしてた頃に、一人だけ服着てた司教らしき女も全裸になったら魔法で積極的に窒息させてくるんだよな…」
前述の4人と違い接近戦を仕掛けてこないカレンまで全裸になった事に内心喜んでいたら、魔法で返り討ちにされた事を思い出す男もいた。
「しかも男に攻撃を集中すると、まるで親の仇のように5人揃って猛反撃してくるし……やっぱ男のアレなのか?」
「状況証拠は揃いつつあるからなあ……ほんと世の中不公平だ…」

男達が愚痴りながら歩いていると、人の往来が盛んな街の大通りに出た。
「おっ!? あの女なんてどうよ!」
一番泥酔している男が、大通りを歩いている一人の女性を指さす。
「馬鹿! 酔っ払い過ぎてまともな判断も出来なくなったか!?」
泥酔した男が薦めた女性は、確かに顔もスタイルも美人の部類に入る整った容姿をしていた。
口の部分に紐を通した大きな巾着袋を片手で軽々と担ぎながら軽快に歩くと、発育のよい胸が僅かに上下に動いて目の保養になる。
「あれはあの裸の女達の同類だぞ……。街中をあんな格好で歩いても平然としているのがいい証拠だ」
女性は確かに美人で胸も大きい。クリスタルキーパーの望む生贄の条件は十分に満たしていた。
ただし―――全てを露わにしていなければ。
比喩でもなんでもない。シズルやビオラやカレンやナツやレイチェルと同じように、文字通りなにも着ていないのである。
そんな格好で大通りを歩けば、性欲を持て余す意味で視線を向ける男ともすれ違うだろうに、恥じらう素振りも見せない。
「女に飢えた野郎どものギラついた目つきにも動じない。間違いない……あいつこの道のプロだ」
「なら美人だけどあの子は除外で。あんなの捕まえようとしたら命がいくつあっても足らんわ」
触らぬ神に祟りなし。散々5人に蹂躙されていた男達は自発的に服を脱いでいる裸の女を警戒するようになっていた。
「じゃあ――――あの女はどうよ?」
泥酔した男が今度は大通りを歩いている別の女性を指さす。
この日、雄羊の寺院に捧げる生贄が決まった瞬間であった。

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※今日はここまで、続きは後日となります。次回こそ新キャラ登場です。