【職人】MC・催眠系総合スレ その19【求む】 [無断転載禁止]©bbspink.com
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0001名無しさん@ピンキー2019/05/06(月) 23:33:09.44ID:Tja6/Aee
催眠術、MC、洗脳、書き換え、発情、操り、暗示、改変
といった、人の心を操作するシチュエーションに萌えるスレです。
情報交換等の雑談や、SSの投下は一次・二次を問わず大歓迎です。

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【職人】MC・催眠系総合スレ その18【求む】 [転載禁止]bbspink.com
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0109名無しさん@ピンキー2019/08/18(日) 21:58:23.18ID:AJeZl8ks
 そして、ここまでであれば少し面倒なだけの義妹なのだが、
 「兄さん、ちゃんと顔は洗いましたか? 歯も磨きましたよね!?」
 「まだ寝癖が残ってるじゃないですか! どこだって……ここです、ここ!」
 「もっと良く噛んでください! 適当に飲み込んでは駄目です!」
 「制服はちゃんと着ないと駄目です! 生活の乱れは衣服の乱れから始まるんですから
気をつけて下さいと毎朝……ああもぅ、私が直しますから動かないで下さい!」」
 「ハンカチくらい毎日変えないでどうするんですか! はい、これです!」
 朝の強制起床はプロローグに過ぎない。
 見ている両親が苦笑するくらいに、細々としたことで口五月蠅く言ってくる。
 これはもう、ウザいなんてレベルでは無い。
 「はいお弁当です。お母さんが作ってくれたんですから残さず食べないと許しませんからね!」
 そう言いながら弁当箱を押しつけ朝練に向かう理香が扉を閉め、ようやく一息付ける。
 「……はぁ……」
 がっくりと肩を落とす政人。
 そんな様子を楽しそうに眺めながらの両親は、
 「うふふ、理香ちゃんもも朝から大変ね?」
 「いいんじゃないか? 仲が悪いよりは?」
 等と実に暢気なことを仰って下さる。
 「いや、大変なのは俺の方だから……」
 本日も平常運転な子供達の様子に安心したのか、いつものように出勤してゆく二人の背中を
見送ってから戸締まりを再確認し、一時的とは言え義妹から解放された政人は気を取り直して
学校に向かう。
0110名無しさん@ピンキー2019/08/18(日) 21:58:47.91ID:AJeZl8ks
 もっとも、そのお陰か妹が出来てからの政人は自然と身だしなみが整い、清潔感が徐々に身につき
始めたお陰か、心なしか周囲の評価が上方修正され始めてもいた。
 更に、以前より高順位を維持していた学業成績もあって女子の方から積極的に話しかけられる
場面も確実に増加している。
 「ねぇねぇ、今日の放課後さぁ?」
 「うん?」
 「もし良かったら私達と……」
 「兄さんっ!!」
 が、なんの因果か同じクラスになってしまっている理香が大声で割って入ってくる。
 「な、なんだよ?」
 「今日の放課後はお米を買いに行きますから一緒に来て下さい!」
 ぷんすか、と頭から湯気を上げながら睨み付けてくる理香。
 「一緒って、お前部活が……」
 「そ、それなら終わってから待ち合……いえ、部長にお願いして早めに上がらせて頂きますから
図書室で自習でもしながら待ってて下さい! いいですね!」
 「いや、どうしても要るんなら米くらい一人で……」
 「絶っっっっっっっ対に駄目ですっ! いいですか? 家はお父さんもお母さんもお仕事を
していて昼間は私達だけなんです! つまり同じ屋根の下で夜まで同い年の義理の妹である私と
二人っきりなんです! 私達二人以外は誰も居ません! だから家事は毎日、二人仲良く分担して
一緒にきちんとするって約束しましたよね!?」
 「ちょ……おま……」
 周囲で聞き耳を立てている連中に妙な勘違いをされそうなワードを次々と拡散する義妹を制そうと
するが、急に饒舌になった理香は止まらない。
 「そして家事の分担もいっぱいいっぱい、い〜〜〜〜〜〜っぱい話し合って! その結果、兄さんの
分も含めたお洗濯とお台所はの事は全て私が責任を持つということになりました!」
 「いや、だから……」
 「ですから兄さんのご飯は食材選びの段階から全て私の管轄です! お買い物にも二人で一緒に
行って、ちゃんと一緒に選びながら買わないと駄目なんです! わかったら放課後は私だけの為に
開けておいてくださいっ!」
 「だから、ちょっと落ち着……」
 「では私は……えっと、お手洗いに行きますからっ!!」
 言いたいことだけ一方的に言い放ち、返事も聞かずに何故か肩を怒らせながら教室を後にして
姿を消してしまった理香。
 「……もしかして私らってお邪魔だったかも?」
 「みたいだね。ごめんね!」
 「じゃあ、ごゆっくりー?」
 何やら妙な勘違いして、政人が誤解を解こうとする前に勝手に察して離れてゆく女生徒達。
 これが義妹に対しての苛立ちを溜め込んでいた政人にとって、最後のダメ押しとなった。
0111名無しさん@ピンキー2019/08/18(日) 21:59:51.99ID:AJeZl8ks
 そして現在。
 「……こんな……私だって……なのに、こんなのって、ひどい……」
 衝撃的な映像を前に、ぽろぽろと涙を流して泣き始めた義妹の姿に、政人の中の熱が急激に
冷め、代わりに罪悪感が大きく膨らんできた。
 我ながらツッコミどころ満載の説明で逆上するか、半信半疑で真っ青になる程度の反応しか
予想していなかっただけに、どう対応したら良いのか分からなくなってしまう。
 「あ、あのな……理香……」
 「兄さんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 声を掛けた途端に泣きながら部屋を飛び出してしまった理香。




 その後、部屋に閉じこもってしまった義妹に声を掛けてもガン無視され、娘の泣き声を
聞きつけたらしく様子を見に来た両親に呆れられ、適当な言い訳の末に責任を持って仲直り
するよう言いつけられた政人は自室に戻り、ベッドの上で途方に暮れていた。
 「……ちょっと考えれば分かりそうなもんだろうに……」
 とは言え自業自得であることに変わりは無い。
 先ずは時間をおいて、義妹が少しでも冷静になった頃に……
 
 こんこん。

 「……兄さん、起きてますか?」
 「は?」
 ノックと一緒に、すっかり落ち込んだ声。
 いつも口五月蠅く声を張っている理香だけに、ある意味新鮮だ。
 などと感心している場合では無い。
 「理香?」
 ドアを開けると、そこには目を真っ赤に腫らして俯いている姿が。
 ピンクのパジャマに着替えているところを見ると、少しは落ち着いてくれたのかもと
微かに期待してしまう。
 「あの、先ほどのビデオのことなんですけど……」
 「あ、ああ! あれな! あれは」
 「……兄さんは、私が兄さんを好きなる様に催眠術を掛けたって仰ってましたけど、
でしたら私が何を口走ったとしても、全部催眠術の所為というか……」
 「へ?」
 「あ、あんな風に甘えたり抱き付いたりしたのも……その、違うと言いますか……」
 「いや、あの、話が全然見えな」
 「そ、それとですっ!」
 「はいっ!?」
 急に顔を上げ、涙目で睨み付けられて思わず敬語になってしまう。
 「まさかとは思いますけど、あんな破廉恥な行為の被害者は他にいませんよね!?」
 むすっ、と頬を膨らませた理香は怒ってるというか……
 「いや、いないけど。それが」
 「つまり私以外の女の子は誰も兄さんとセック……していないということですね!?」
 「お、おぅ……」
 「と言うことは兄さんは催眠術とやらで誰でも好き勝手に出来るというのに、常日頃から
生意気で口五月蠅い私を最初の相手に選んで、来栖さんでも新垣さんでもなく私が兄さんを
好きになるように仕組んで童貞を捨てたと言うことで間違いありませんか!?」
 「どどどど童貞て」
 「そのまま催眠術をかけっぱなしにしておけば普通のれれ、恋愛関係だって言い張ることで
出来る他の子じゃなくて、催眠術で相思相愛になってもお母さん達に理解して頂くとか色々と
制約が多い私を敢えて選んで、そういう行為が好きなる様にだけ催眠術をかければ済むのに、
わざわざ兄さんが好きになるようにして、それを故意に撮影して何も覚えていない私に見せたと
解釈して構いませんよね異論なんてありませんよね有っても却下しますけど!!」
0112名無しさん@ピンキー2019/08/18(日) 22:00:44.81ID:AJeZl8ks
 グイグイ迫ってくる理香に押されっぱなしの政人。
 もう謝るとか説明するとか、そういう次元では無くなっている。
 「なら今回だけ! 特別に許してあげますっ!」
 「許すのかよ!?」
 立場も忘れて思わずツッコんでしまう。
 「だって私と兄さんはもう……してしまったのでしょう!? だったら過ぎたことを
後悔するよりも今後のことを考えるしかないじゃないですか! 予定も大幅に狂って
しまいましたし……」
 「予定?」
 「それよりもっ! もっと大切なことを確認します!」
 「いや、いまのは流石に聞き捨てな」
 「余計なことは忘れて下さいっ! それよりも兄さんは! 私と……その……するとき、
ひひひひ避妊とか……してくれましたか……?」
 「避妊!?」
 「だって私と兄さんの赤ちゃんですよ! 愛の結晶じゃ無いですか! まだ学生なのに、
ちゃんと育てられるか分からないのに、まだ早すぎるというか……」
 もじもじもじもじ、と体をくねらせる理香。
 「愛の結晶!?」
 「ですから、きちんとしたんですか! してなんですか!?」
 「もしも、してないって言ったら?」
 「その場合は……今更ですけど、きちんと洗浄するというか……でも一人じゃ不安で、 
もう処女じゃないのは無いのは分かっていますけど、中の方は少し怖いですから、兄さんに
お任せして……指なり用品なりで奥まで綺麗に……」
 「…………………………………………外に出したから」
 「本当ですか?」
 ちらり、と上目遣いの疑わしそうな声。
 「ま、まぁな」
 その真っ直ぐな(?)視線を受け止めきれずに反らしてしまう政人。
 「じゃあ何処に出したんですか! いつ出したんですか! 言っておきますけど、外側に
付着しただけでも受精する可能性があることくらいは私だって知ってますからね! あと
射せ……前の液に混じっている可能性があることも!」
0113名無しさん@ピンキー2019/08/18(日) 22:02:02.49ID:AJeZl8ks
 「だから外に出したって言ってるだろ! 腹だよ! ちゃんと抜いてから、手で扱いて
臍の辺りに出したんだって!」
 咄嗟に、さきほどのビデオのフィニッシュを思い出しながら取り繕う。
 「………………………(じぃ〜〜〜っ)」
 逸らした視線を追いかけるように移動した理香、再び下から覗き込んでくる。
 「も、もちろん終わってから全部拭いたしな!」
 そのまま見つめ合うこと、数秒。
 「……そこまで仰るのなら今は信用して差し上げますけど……念のために毎週検査します
からね? もし陽性だったりしたら……責任はとってくれますよね?」
 ふぅ、と息を吐いた理香の肩から幾分か力が抜ける。
 「お、おぅよ!」
 そんな可能性は無い。100パーセント無い。
 だから、ここだけは強気に出れる。
 「そう言って頂けて、少し安心しました。さすがに兄さんも全く後先を考えていなかった訳では
ないようですしね。では……その……始めましょうか?」
 そう言って恥ずかしそうに俯いた理香は、兄の横を通り過ぎて兄のベッドの端にちょこんと
腰を下ろす。
 「へ?」
 「へ? じゃないです。男の人って、その……毎日溜ま……備蓄されていくものなんでしょう?
また知らない間に催眠術で犯されてるのは寂し……不本意ですし、私以外の子に手を出されたら
……だから……きちんと責任を取って下さるというとですし、私が……」
 「…………………………………………」
 「もう関係を持ってしまったんですし、その、赤ちゃんが出来るような行為で無ければ……
さっきは最後まで見てないので良く分からないんですけど……手とかお口とか……あと胸とか、
撮影の時に経験済みの事なら……内緒で発散させて差し上げても良いです、よ?」
 ピンクのパジャマの首元のボタンに手を掛けながら、何かを訴えかけるような上目遣いで
見上げてくる理香。
 「……………………………………………」
 ここは、このまま流されてた方が良いのか?
 或いは『初めて使う催眠アプリが不気味だったんで、とりあえず今から見せるビデオの二人が
自分達に見えるように暗示を掛けただけ』と正直に話すべきか。
 政人は最大に岐路に立たされた。
0114名無しさん@ピンキー2019/08/18(日) 22:05:09.22ID:AJeZl8ks
終わり
兄さん呼び+敬語口調の義妹ってイイよね!>スレチ
0115名無しさん@ピンキー2019/08/18(日) 23:06:43.23ID:qMviZho4
理香ちゃんグイグイ来るなw
催眠置いといてニヤニヤしか出てこないw
0116名無しさん@ピンキー2019/08/19(月) 03:49:05.12ID:uoUj9Dur
>>114
GJ!
サゲもいいね!
これを期に本当にゲスい事やエグい事をやらせちゃうか
前やった通りにゲスい事やエグい事をやらせた様に信じさせるだけで観察を続けるとかもいいね
0117名無しさん@ピンキー2019/08/20(火) 03:14:17.76ID:Zxc1XUdS
乙!
とりあえず犯っちゃう話が多い中でそうくるかwと思わされたわ。
面白かったありがとう。
0118名無しさん@ピンキー2019/08/23(金) 02:53:47.92ID:maLY+GK8
リアルに妹がいるけど妹萌えな人もそれなりにいるのかな
0119名無しさん@ピンキー2019/08/24(土) 15:07:39.27ID:Y8MQ4p+C
>>118
>小学校の頃、親の再婚で出来た義妹で同学年の妹だ。

いないから「リアルな妹」じゃなく、こういう設定になるんだろ。
0120名無しさん@ピンキー2019/08/24(土) 16:07:14.93ID:qhO62ZGo
シスコンって言葉があるくらいなんだから
それなりかは分からないけど姉萌えや妹萌えが
認知される程度にはいるって事じゃないの
0122名無しさん@ピンキー2019/09/01(日) 12:34:11.83ID:/60l7GxH
単に「同級生の義妹」ってのが、書きたいネタに一番都合が良かっただけなんだが
リアル寄りにすると、こんな感じかな?
0123名無しさん@ピンキー2019/09/01(日) 12:35:46.14ID:/60l7GxH
 発端は、ほんの些細な噂話からだった。
 「なぁ優香里?」
 リビングで動物番組に見入っている二つ下のパジャマ姿の妹。
 その背中に、何気ない風を装いながら声を掛ける。
 「ん? なーにー?」
 「お前さ、もしかして誰かと付き合ってるとか……してる?」
 「っ!」
 びくり、ソファにもたれ掛かっていた背筋が伸びショートカットが揺れる。
 これはビンゴだ、と浩一は確信した。
 「きゅ、急に何言ってんの? わけかなんないけど……」
 「いや、だってお前最近までジャージばっかでパジャマなんか着なかったろ? あと土日とか
朝早くからどっか行くようになったし、髪だって……」
 別に妹を毎日観察していたわけではない。
 どちらかというと無関心に近かった。
 だが学校で気になる噂を小耳に挟んだので何気なく様子を覗ってみると、気になる部分が
幾つも浮上してきたのだ。
 「え? なにそれ? ちょっと怖い……っていうかキモい……」
 「キモいってなんだよ! 家族なんだし毎日顔を合わせてるんだから急に変わったら
気付くだろ普通!」
 「………………」
 反論こそ無かったが、首だけ回して振り返った優香里の視線が冷たい。
 「べ、別に深い意味はないって!」
 「…………マジでキモい。っていうか兄貴には関係ないじゃん!」
 これ以上は答えたくない、とテレビに向き直った優香里だが、背筋からは緊張が抜けきれず
画面に集中できていないのは丸わかり。
 やっぱり大当たりだった。
 とは言え、ここでこれ以上追求しても兄妹の関係が拗れるだけ。
 何の進展も解決も得られそうに無いことも明白だったので、浩一は一旦引くことにした。
0124名無しさん@ピンキー2019/09/01(日) 12:36:49.36ID:/60l7GxH
 その数日後。
 「兄貴、ちょっと場所空けてよ」
 妹がテレビを見に来る時間帯を狙い、わざとソファの中央を占拠しながら本を読んでいると
案の定、絡んできた。
 先日の話題はすっかり流れたと判断したらしい優香里の声は普段通り。
 特に何も気にしていないように見受けられる。
 「お、おぅ」
 ここは少し下手に出ておかないと話は進まない。
 体をずらして妹の特等席を空け、更にソファの前に鎮座しているリビングテーブルの上に、
これ見よがしに積んだ書籍の山をズリズリと重そうに動かす浩一。
 「なにそれ? 心理学……?」
 首を傾げ、見たことも無い分厚さの本のタイトルを声に出して読む優香里。
 案の定、食いついてくれた。
 「受験対策の一環だよ。自己催眠で集中力とか記憶力とかを上げる方法があるって聞いたから、
ちょっと勉強してみようかなって」
 「ふーん? なんか難しそう……」
 「そんなことないぞ。これも聞きかじった話なんだけど、女子とかもダイエットに使うって
話もあるし、最近じゃ割と普通だよ」
 「…………ダイエット?」
 怪訝だった目が、興味深そうな光りに変わって浩一の方に向けられる。
 ここまでは成功、間違いなく釣られている。
 「根本的にダイエットの天敵って間食だろ? それってお腹が空いてなくても惰性とか
ストレス発散で手近なモノを食べちゃうって言うのが殆どなんだ。だから軽い催眠暗示で
抑制してやれば簡単に防げるし、その結果で三食をキチンと取るようになれば無理な減食に
なったりもしないから体調を崩したりイライラしたりもしないらしいぞ」
 「なるほど……それって、あたしにも出来るの?」
 彼氏が出来たことで、以前に増して自分の体型や体重に過敏になっている今。
 さも簡単そうに解説してやるだけで、あっさりと乗り気になる。
 ちょっとチョロすぎるような気もするが、そういものなんだろう。
0125名無しさん@ピンキー2019/09/01(日) 12:37:24.55ID:/60l7GxH
 「多分出来るとは思うけど……お前も読んでみるか?」
 ずりずりずり、と再び重そうに本の山を妹の前へと動かす。
 「……もしかして、これを全部読むとか……?」
 うへぇ、とピーマンを前にしたときのような顔になる優香里。
 これも完全に予想通り。
 「全部読む必要は無いと思うけど、生半可な知識じゃ怖いだろ?」
 「そ、それはそうだけどぉ……」
 この時点で『簡単』という前提が崩れているのだが、ダイエットという言葉に誘導されて
視野が狭まっている優香里は、その矛盾には思い至らない。
 ある意味、既に催眠にかかっているとも言えるかも知れない。
 そして本番は此処からだ。
 「じゃあ、俺がかけてやろうか? 催眠術?」
 頭の中で何度も練習した言葉を、出来るだけ自然な風にかける。
 「あ、あたしに? 催眠術を? 兄貴が?」
 警戒するのも無理は無い。
 世間で言うところの催眠術とは、主にショーで行われる極端な代物で、被験者達は
皆揃って碌な目に遭わない。
 催眠で恥ずかしいことや馬鹿っぽいことを無理矢理やらされて赤っ恥を掻く。
 花も恥じらう女子高生なら躊躇して当然である。
 「一通り読んだし、催眠……っていうほどじゃないけど、簡単な暗示なら大丈夫だと
思うけどな。不安なら経過を(スマホで)録音するなり、誰かに立ち会って貰っても
良いし」
 「…………クラスの子とか、呼んでも良い?」
 この様子から察するに、録音と立会人とで二重の保険を掛けるつもりなのだろう。
 だが逆に言えば、催眠術に同意したことにもなる。
 「好きにして良いぞ。その代わりに場所は俺かお前の部屋で。あと出来たら催眠術を
かける時に静かにしてくれる子にしてくれ。リラックスできる場所で俺の声以外は何も
耳に入らない状態じゃないと危ないからな」
 「うん、わかった!」
0126名無しさん@ピンキー2019/09/01(日) 12:38:17.99ID:/60l7GxH
 そして優香里の友達二人の立ち会いで催眠術を掛けて数日後。
 「すごいじゃん兄貴! ご飯しか食べなくても平気になっちゃったよ!」
 先日と同じ夕食後のリビング。
 満面の笑みで浩一の隣に腰を下ろすパジャマ姿の優香里
 間食しようとすると少しお腹が重くなる、という軽い暗示のお陰で体重管理も楽になり
小遣いも余り減らなくなった優香里は大喜び。
 尊敬、と言うほどではないにせよ好感度は一気に上昇。
 昔のように積極的に話しかけてくるようにもなった。
 「それでね? あたしが調子良いみたいだし、自分も試してみたいって、みっくんが
言っててね?」
 みっくん、というのは先日の友人の一人の筈。
 確か相原美空とか言ってた筈だが、なぜ愛称の方が微妙に長くなるのか。
 相変わらず女子の感性は謎に満ちている。
 「もしかして、その子も同じ催眠術を掛けて欲しがってるのか? そりゃ良いけど、
俺のは所詮聞きかじりだし、良く知らない子は少し厳しいかな」
 「そなの?」
 「催眠って言うのは信頼関係が大事なんだ。プロならともかく、ちょっと話した程度の
相手を誘導して正しく催眠術をかけるなんて無理だし、色々準備がいるからな」
 「準備って何を………あ……ほほぉ、そういうことですかぁ?」
 何やら含みのある笑みを浮かべる優香里。
 「な、なんだよ?」
 「あーにーきー? それってぇ、もしかして催眠術の準備って事で遠回しにデートの
セッティングして欲しいって言ってる訳ぇ? へー? ほほー? みっくんみたいな
ボーイッシュが良いんだぁ?」
 つんつんつん、と兄の頬を突きながらの小悪魔顔。
 「はぁ!?」
 「てっきりぃ、まーちゃんみたいに女の子女の子してる子の方が良いと思ってたんだけどぉ、
なるほどなるほどぉ。兄貴もなかなか隅に置けないねぇ?」
 「ち、違うからな! あとワザとらしく語尾を伸ばすな!」
 「またまたぁ、そんなにキョドっちゃってぇ。どうしてもって言うなら取り持ってあげても
良いけどぉ? みっくんも興味津々って感じだしぃ? なんならぁ、まーちゃんも呼んじゃう
とかぁ?」
 「ああもぉ良いよ! 面白い話がるから教えてやろうかと思ったけど止めた!」
 「…………面白い話?」
 きょとん、と首を傾げて声色を戻す。
0127名無しさん@ピンキー2019/09/01(日) 12:38:43.79ID:/60l7GxH
 「ああ、この前読んだところに催眠療法で不眠症を治すって話があったんだけどな!」
 「不眠症って……ノイローゼみたいなもんでしょ? あたし関係ないじゃん」
 と言いつつ催眠術に肯定的になった優香里は、半ば無意識に兄に擦り寄る。。
 「それだけの話ならな。でも、それを応用すると簡単な方法で睡眠の深度を調整出来て、
同じ睡眠時間でも疲れがよく取れて体調が良くなるんだ。当然、そうなると肌の状態とかも
変わってくるって言うのは分かるよな?」
 「……もしかしてニキビとか……」
 「それだけじゃないぞ? 血色も良くなるし、ストレスとか疲れが溜まりにくくなって
普段の表情も柔らかくなるらしいぞ?」
 「……それ、いいじゃん!」
 いくら若くて化粧に頼らなくても良いとは言え、恋する女の子にとっては肌の悩みも
無視できない重大関心事項だ。
 手が届く範囲に効果的な改善方法があると聞いて、飛びつかないわけが無い。
 そんなに簡単なら皆がやってるはず、という当たり前の疑問すら持たない。
 成功体験の恐ろしさである。
 「だから特別に教えてやろうと思ったけど止め止め! お前だって家に呼んだ友達に
色目使うような兄貴に頼りたくなんかないだろうしな!」
 これ見よがし顔を背けると、優香里の顔から血の声が引いてゆく。
 「え……ちょ、ちょっと! うそだから! さっきのは冗談だし! ね、兄貴?
ゴメンするから教えてよぉ!!」
 そして反射的に腕に抱き付き、媚びるような涙目で懇願し始める。
 ほんの数週間前までなら有り得なかった依存度である。
 「………もう下らないことで馬鹿にしないって約束するか?」
 「するするっ! 兄貴のことマジ尊敬するから! 良い子にするからお願いっ!」
 下着も着けていない胸が直接当たることも厭わず、パジャマの上半身を腕に擦り付けて
必死にアピール。
 「じゃあ明日の晩、寝る前にお前の部屋で。誰にも言うなよ?」
 「うん、ありがとう兄貴!」
 もう立会人も要らなくくらいに浩一を信用しきっている優香里。
 これならきっと録音しようとすらしないだろう。
 
 噂で知った、優香里の彼氏。
 男子生徒の間では有名な、女癖の悪い同学年生から妹を引き離すべく、浩一の
作戦は次の段階に移った。
0131名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 15:50:51.44ID:MWSad0c3
 妹の優香里に再び催眠暗示を掛けて数日後。
 直ぐに効果が出るだろうと高を括っていた浩一の期待とは裏腹に、優香里の交際は順調に進んでいる
ようにしか思えないのに肝心の結果が全く伴わない日々が続いている。
 「たっだいまー!」
 そして今日もハツラツとした声と一緒に帰宅する妹。
 六時という門限をギリギリ守って帰ってくるときは大抵デートの後。
 そんなことは推理するまでもなく、居間に顔を出した優香里の様子だけで一目瞭然。
 なにせ以前までは挨拶も無しに自室に直行していたというのに、この時間に帰ってきたときは必ず
浩一や母に一声掛けるくらいに機嫌が良いからだ。
 「兄貴、ただいま」
 「お、おぅ……」
 弾むような足取りで居間に立ち寄った制服姿の優香里は生気に満ちあふれ、笑顔もキラキラと
輝いているように見える。
 まさにリア充を具現化したような明るさで、心なしか以前よりも可愛く見えるほど。
 「今日も勉強? ちょっとは休まないの?」
 そして浩一の身を案じるよな声と眼差し。
 そんな優しさも、催眠術を掛ける前には考えられなかった。
 「ま、まぁ受験生だからな……」
 とは言え、優香里が兄の様子を案じるようになったのは優香里自身の変化だけでは無い。
 催眠術の経過と効果が気になって仕方が無い浩一が、優香里と顔を合わせる頻度を上げるために
居間で勉強をする時間を増やしたのも一因。
 つまり兄にも意識を振り分ける気持ちが生まれたのと同時に、兄が勉強をしている姿を見る機会が
一気に増えたという相乗効果の結果なのである。
 「それよりも、調子とか……どうだ?」
 遠回しにでも状況を確認せずには居られない浩一。
 不審に思われない程度に妹の様子を観察する。
 「ん? ぜっこーちょーだよ、兄貴のお陰で!」
 えっへん、と胸を張る優香里。
 どうやらまだ、無意識下に植え付けた暗示が効力を発揮する条件は揃っていないらしい。
 そうそう思い通りには無いと分かってはいたが、やはり気持ちが沈んでしまう。
0132名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 15:52:30.75ID:MWSad0c3
 「そうか……」
 妹に二つ目の催眠をかける為の建前である『条件を満たせば熟睡出来るようになる『おまじない』』が
期待通りに掛かかり、毎日体調が万全な上に間食も激減して体重の心配も消え、そのお陰で恋愛まで順調と
来れば、もう優香里に怖い物は何も無い。
 明るく元気になって当然である。
 「っていうか兄貴の方こそ大丈夫? なんか顔色悪くない?」
 「そ、そうかな?」
 「ちょっと勉強のし過ぎって感じ? 表情硬いしー?」
 それは色々な後ろめたさとか、状況の推移への不安とかが入り交じって緊張しているだけなのだが、
そんな事情など知る由も無い優香里には疲労の表れに見えてしまう。
 「まぁ、あれだ……受験生だしな……」
 妹の真っ直ぐな眼差しを受けきれず、思わず目を逸らしてしまう浩一。
 「あーにーきーぃ? なんか怪しくないー?」
 前屈みになり、ソファに座った兄と目の高さを合わせながら詰め寄ってきた優香里は右へ左へと
体を揺らしながら浩一の視線を追いかけ回す。
 「怪しくなんかないだろ。お前の気のせいだって」
 「気のせいじゃないし! 明らかに変じゃん!」
 逃げるように顔の向きを変えるごとに、ますます顔が近づいてくる。
 すると化粧品なのか優香里自身の香りなのか、甘さと一緒に体温すら感じられるようになって。
 「ち、近い! 近いって!!」
 「兄貴が逃げるからっしょ! ほら、こっち向けっつーの!」
 そんな問答を続けること、体感時間で数分。
 「もぉ怒ったかんね!」
 むすっ、と頬を膨らませながら追求を中断して背筋を伸ばす優香里。
 だが諦めた、という顔では無い。
 「あたしちょっと着替えてくるけど、直ぐ戻って来るから! 絶対に逃げないでよね! ここで
待ってないと後が怖いよ! いい!?」
 そのまま兄の返事も聞かずに踵を返し、居間から飛び出した優香里の軽快な足音が階段を上って
行った。
0133名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 15:54:05.28ID:MWSad0c3
そして十分ほど後、
 「はい、ここ!」
 純白にロゴが入ったシャツとデニムのホットパンツという見たことの無い格好に着替えた優香里が
浩一の隣に座り、耳かき棒を片手に自分の太股をペチペチ叩いている。
 何を催促しているのかは一目瞭然。
 「……えっと、これは何……かな?」
 だが聞かずにはいられない浩一。
 余りにも現実離れしていて受け入れられないからだ。
 「耳かきに決まってるっしょ! まったく兄貴ってば……あたしの為に催眠術のこと調べてて勉強が
遅れて、それで慌てて追い上げとかホンマツテントーじゃん! ちょっとは休まないとダメ!」
 「…………」
 「ほらほら〜、現役JKの生足だよ〜? しかも耳かきのセットとか超レアだよ〜? これはもう
お金出しても惜しくないって感じ〜?」
 えへへっ、と照れながら笑う優香里。
 流石に少し恥ずかしいらしい。
 「……べ、別に要らないからな!」
 こうして妹とも距離が縮まって嬉しくない訳では無いのだが、余りに急激な変化と、その他諸々のな感情が
入り交じって戸惑いが先に立ち、逆に離れようとしてしまう浩一。
 「えー!?」そんな兄の胸中など知らない優香里は頬を膨らませてストレートに感情表現「別に減る
もんじゃないし、これでも一応は感謝のシルシ? みたいもんなんだから少しは付き合ってよぉ!」
 「だから別にいいって! 気持ちだけ貰っとくから!」
 「それじゃ恥ずかしい思いした『あたし』の方が馬鹿みたいじゃん! ぜったい気持ち良いからぁ! 
ちゃんとするからぁ! ね〜え〜っ!!」
 「ば、ばか、放せって! 放せよ!!」
 腰を浮かそうとした浩一の腕に抱き付き、しっかりホールドする優香里。
 「やだやだやだ〜! ぜったい放さなぃ〜!!」


 「なにやってるの、あんた達?」


 「「………あ」」
 何時の間にか大声になった会話が口喧嘩のように聞こえたのか。
 台所で夕食の用意をしていた母親が、怪訝そうな顔で様子を見に来ていた。
0134名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 15:55:38.40ID:MWSad0c3
 慌てて居住まいを正す浩一。
 「いや、あの、優香里が急に」
 更に体重を預けて兄に寄りかかる優香里。
 「なんか兄貴が疲れてるみたいだったから膝枕で耳かきしてあげるって言ってるのにぃ、全然信用して
くれないんだぁ。気分転換になるしぃ、あたしも彼氏にしてあげる前の練習って感じでウインウインだと
思ったのにぃ、兄貴ってば逃げようとするのぉ!」
 「ちょ、おま、練習とか一言も」
 「お母さんだって、最近の兄貴は詰め込みすぎだって言ってたじゃん? それ、あたしにもちょっとだけ
責任みないなのもあるしぃ、ちょっとだけ休憩して欲しいって思っただけなのぉ! だからお母さんからも
兄貴に言ってやってよぉ! ね〜え〜っ!」
 将を射んと欲すればなんとやら、と言うことなのか。
 矛先を切り替えた優香里は、浩一の腕に抱き付いたまま猫なで声で母親に懇願する。
 「おい! 俺にも一言くらい」
 「……練習台になってあげなさい、浩一」
 「は?」
 「優香里も! お兄ちゃんは受験生なのよ? 甘えても良いけど勉強の邪魔にならないように節度を
持つこと。良いわね?」
 「いや現在進行形で邪魔に」
 「うんっ。ありがとうお母さん!」
 当人を無視した母娘間で勝手に話が進んでゆく。
 恐らく互いを無視し合う兄妹の関係より、喧嘩っぽいじゃれ合いも含めてでも親密で仲が良い関係に
進む方に一票を投じておくべきだろうと判断したのだろう。
 それに浩一以上に孤立気味だった優香里の方からアクションを起こしたのなら、とも。
 「もうすぐご飯も出来るし、どうせ(勉強が)中断しちゃったんだったら、ご飯まで優香里に
付き合ってあげても一緒でしょ? 少しは息抜きもしなさい」
 居間で勉強する時間を増やしたのが裏目に出たか。
 以前と同じ勉強量なのに、目にする機会が増えた分だけ根を詰めているようなイメージを家族に
与えてしまっていたらしい。
 これは完全に浩一の失策である。
 「と言うわけで改めてぇ……はい、ここね?」
 そして親の公認を頂いてしまった優香里は勝ち誇った顔。
 膝を揃えて腰を下ろし、心底楽しそうにスタンバイ。
 仄かに頬を染めている辺りが可憐に思えてしまうのが、これまた悔しい。

 結論から言うと、妹の生足を枕にしての耳かきご奉仕は、不慣れによる最初の数分間の痛みを
除けば腹立たしいくらいに気持ち良かった。
0135名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 15:57:41.73ID:MWSad0c3
 ・
 ・
 ・
 「どう? 上手いっしょ?」
 万全の状態で挑んだ本番は正にパーフェクト。
 やはり事前に兄という同世代の男性を練習台にしたのは大正解だった。
 人間の頭部の意外な重さも事前に知っていれば、どうということもない。
 そして好きな相手に尽くすというのが存外に楽しい物だと知ったのも大きな収穫だ。
 もっとも、流石に素足は恥ずかしくてスカートの上からだけど。
 「あ、うん……気持ち良かったけど……」
 「けど?」
 一応は疑問形で返したけど、薄々察してはいた。
 付き合い始めて一ヶ月の記念日。
 彼の部屋に招かれ、何の考えも無くお邪魔するほど子供じゃ無い。
 ちょっと怖いけど、心の準備もそれなりに出来ているつもりだ。
 「えっと、佐伯さんさえよければだけど……そろそろ……」
 こういう所、ちょっと可愛いなって思う。
 自分の部屋までホイホイ付いて来て、膝枕でサインを送っている彼女相手にビビるとか、
男の子って意外に鈍感っていうか案外繊細だったりする。
 「……そろそろ、シちゃう?」
 自信は無いけど、精一杯に余裕があるっぽい表情を作る。
 先に進みたいのは、こっちだって同じ。
 漫画みたいお留守、という訳ではないので最後まで進んじゃうことは出来ないとは
思うけど、逆に言えば本気で抵抗すれば途中で止めることも出来ちゃうのだ。
 となると友達の体験談を総合して、まぁ前戯辺りまで?
 いや、それだと彼の方が生殺しというか途中でお預けされたみたいになって余計に
高ぶるというか興奮してしまうらしい。
 なら彼女としては出すモノを出させてあげた方が良いかも。
 そう、例えば手とか……お口とか?
 でもオシッコが出る所なんだよね。
 いくら彼のでも、少し気になるしゴムとか持っててくれるかなぁ?
0136名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 15:59:45.75ID:MWSad0c3
 ああもぉ、ちゃんと作戦立てたのに今になって悩んじゃうなぁ。
 「うん、僕も佐伯さんとしたい!」
 「えっと……私も」
 あ、しまった!
 この位置関係って、あたしがリードしないと駄目な流れじゃん!
 なにこのタイミングで言い出してるの?
 てか、なんでオーケーしちゃったかなぁあたし?
 でももう後戻りなんて出来ない空気になっちゃったし。
 最初のキスは、どっちかというと奪われる側になりたかったんだけど、こうなったら
諦めるしかないかも。
 まぁキスはキスだし、この経験を次に生かして今度こそ『あげちゃう』感じに
持っていくように、ちゃんと計画を練れば良いか。
 それに、そんな熱っぽい目で下から見つめられたら、なんかお腹の奥の方から
何かが湧き上がってくるって言うか初めてなのに唇がウズウズしちゃう。
 それによく考えてみたら、あたしの方が少しだけお姉さんだし?
 もう、このまま流れに任せて……


 ゴロゴロゴロ……


 「っ!?」
 痛い!
 なんか急にお腹が……なんで!?
 「あの……佐伯さん? いまの音って……?」
 「な、なんでもないし! 全然平………っっ!!」
 最後まで言う前に何かが刺さったみたいな……これ、すごく痛い!
 「す、すごい汗だよ? 本当に大丈夫!?」
 「ご、ごめんなさ……だいじょぶ……じゃない、みたい……っ!」
 もう座っているのも辛い。
 こんな……生理が重いときでも、ここまでじゃないのに。
 「ちょっと待ってて! すぐに母さんを呼んでくるから!」
 その後、彼のお母さんに介抱してもらってお腹の痛みはすぐ引いたものの、
初めてもお家デートは有耶無耶の大失敗で終わってしまった。
0137名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 16:02:07.36ID:MWSad0c3
とりあえず、ここまでがプロローグ的な感じ
申し訳ないけど、ちょっとジブラルタル海峡沖まで行ってきます
0139名無しさん@ピンキー2019/09/08(日) 23:38:32.99ID:7ccuDERl
ジブラルタル海峡とな?
谷隊長とバレーボールを射出すればいいのかな?
0141名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:42:01.88ID:RyBF81SX
全ての所定を完遂
残敵掃討と友軍捜索の戦力を除き本隊はイタリア半島から帰還しました

と言うわけで>>136からの続き
0142名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:42:37.96ID:RyBF81SX
 優香里の様子に変化が生じ始めたのは『男とエッチなことをしようとするとお腹が痛くなる』という暗示を
浩一が掛け、そんなことをされているとは夢にも思っていない優香里から感謝の印として生足膝枕で耳かきを
してもらってから数日後のことだった。
 その間隔から察するに、自分のアレは本当に練習も兼ねていたらしく、その後に本番に臨んだ優香里が別の
『本番』にも及ぼうとして暗示が発動してしまったと浩一は推測していた。
 そして、その推測は正しかった。
 「…………………」
 一時の浮かれ具合の反動のように落ち込んだ優香里は、帰宅しても無言で部屋に直行。
 恐らく初体験に失敗した後も半月ほどはデートを繰り返したり、頻繁に電話を掛けたりしながら必死に
取り繕い何とか現状を維持しようと努めていたらしいが、刷り込みは甘くない。
 自分なりに対策を講じて何度挑んだところで、原因である催眠暗示を解かない限りが何かが変わったりする
はずも無く、同じ失敗を繰り返して悪化の一途を辿るのみ。
 もはや関係の破綻は時間の問題だろう、と浩一は確信していた。

 もっとも、その浩一とて所詮は素人。
 全てが思い通りに進んでいるわけではない。
 その一つが妹の想像以上の落ち込みようと、妹が衰弱してゆく様子を観察せざるを得ない自分の肩に
のし掛かる罪悪感の重さだった。
 「……そろそろ、か?」
 ほんの一月前までは互いに不干渉だった兄妹。
 殆ど会話も交わさせなかったとは言え、同じ屋根の下に暮らしている故に気付かなかった妹の成長。
 動機こそ不純だったが、数年ぶりに親密さを取り戻した妹は自分の同級生達と比べても遜色が無いくらいに
発育も進み、どこもかしこも柔らかくて温かくて良い匂いまでする乙女に。
 接する機会が増えた故に見ることも多くなった様々な表情の中には、時折ドキリとさせられるようなものも
あり、子供の頃とは違う意味で魅力を感じる瞬間を何度も感じていた。
 そして、それ故に妹が落ち込んで憔悴してゆく姿を見るのが辛い。
 しかも原因は全て自分にある。
 チャラ男に引っかかってしまった優香里の身を案じての事とは言え、所詮は独善的な親切心。
 何も知らない妹が腹痛と失恋のダブルパンチで傷つく姿に胸も痛む。
 また、セックスが出来ないとなればチャラ男の方から速攻で別れを持ち出すだろうから優香里が負う
ダメージは最小限に違いない、という予想も大甘だったと言わざるを得ない状況。
 事が済めば直ぐにでも暗示を解いて、次の恋愛を探させる予定だったというのに、まだ今の恋に心を
残しているかも知れない状態では解放してやることも出来ない。
 自業自得とは言え、重苦しい空気が漂い受験勉強にも身が入らない日々が続いていた。
0143名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:43:37.61ID:RyBF81SX
 そんな浩一が声を掛けられたのは、更に一週間ほどが過ぎた頃の夕方だった。
 「こんにちわ。優香里のお兄さん、だよね?」
 通り過ぎようとした校門の陰からひょっこりと顔を出した一年生の少女。
 長く艶やかな黒髪を三つ編みにして大きめの眼鏡を掛け、それだけなら文学少女っぽい出で立ちだと
言うのに少年のような爽やかさというか凜々しさを漂わせている彼女は、
 「……相原さん、だったっけ?」
 相原美空。
 優香里に最初に催眠術を掛けたとき、立会人として同席した優香里の同級生の一人だ。
 とは言え、その時のボーイッシュな格好とは異なるセーラー服の所為か、微妙に印象が違って
語尾が疑問形になってしまった。
 「あはは、やっぱりね」
 浩一の困惑に気がついたのか、真っ直ぐに背を伸ばしながら苦笑し眼鏡を外す美空。
 「おお!」
 「この前はコンタクトだったからね。これだけでも結構印象が変わっちゃうんだ」
 気さくな雰囲気のお陰か、ハスキーボイスにフランクな口調が不思議と不快にならない美空は
非常に打ち解けやすい印象を与えてくれる。
 「確かに結構変わるな……」
 「でもボクだって気付いてくれたの、嬉しいな。あれから一度も会ってないよね?」
 「確かに『あの時』だけだけど、ずっと優香里に付き添ってくれたからね」
 初めて見る妹の同級生、ということもあって催眠術を施術する間もチラチラと様子を覗って
いたが、その間は一言も喋らず、真剣な眼差しでずっと見守ってくれていた。
 どちらか言うと落ち着きが無くて黙っているのが苦手な性格である優香里の友人の、意外な
大人しさに内心驚いたこともあって二人とも良く覚えている。
 「お世辞でも嬉しいよ。ほら、麻衣子も出ておいでよ」
 「こ、こんにちわ……」
 ちょっと緊張しながら美空の後ろから現れたのは、もう一人の友人である佐藤麻衣子。
 優香里と殆ど背丈が変わらない美空と違い、麻衣子は頭半分ほど低い。
 更に俯き加減の上目遣いの所為で更に小柄に見えてしまう。
 少し茶色がかった髪をサイドテールで伸ばし、祈るように両手を顎の下で組むポーズもあって、
同じセーラーなのに少し儚げで二人よりも年下に見えてしまう。
 「佐藤さんだよね。良く覚えてるよ」
 「あ、ありがとうございましゅ……」
 恥ずかしそうに視線を彷徨わせて語尾で噛んでしまった麻衣子も、先の立ち会いの時は
心配そうに優香里を見守っていた。
 どちらも良い友人らしい、というのが浩一の感想だった。
0144名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:44:42.17ID:RyBF81SX
 「どういたしまして。それよりも二人揃ってどうしたのかな? もしかして優香里に掛けてた
催眠術ダイエットの話? それとも」
 「実を言うと、ちょっとその……人のいる所じゃ話しにくい話なんだ」
 優香里から聞いた話を取っ掛かりにしようかと思ったところで、浩一へと一歩踏み込んできた
美空が食い気味に遮った。
 その真剣そのものの目を見るまでも無く、自分が一人で学校を出るところを待ち伏せて声を
掛けてきた時点で浩一も二人の目的を察していた。
 「近くに公園があるけど、そこで良いかな?」
 頷いたのを確認して、エスコートの意味も含めて浩一は先に歩き始めた。



 ちょっと大きめの児童公園を選んだ理由は夕方になると人気が無くなる事に加え、遊具も
ベンチの数もそれなりにあり、ジュースの自販機まで設置してあるからだ。
 「二人ともレモンティーで良かったかな?」
 「ふぇっ!?」
 「いや、あの、ボクたちは……」
 「良いから良いから。優香里のことを心配して待っててくれたんだろ? もう少し奥の方へ
行こうか?」
 「じゃあ……お言葉に甘えて……」
 「あ、ありがとうござましゅ……」
 少し迷ったが、出来るだけ人目に付きにくい方が良いだろうと判断した浩一は園内のベンチで
一番奥まった場所にある物を選び……一番端に腰を下ろした。
 そして浩一の隣に美空が、その隣に麻衣子が座り、やはり浩一が最初に缶ジュースの
最初に一口飲んで、二人が続き、ようやく一息ついたところで美空が口開いた。
 「家族だし、お兄さんも気付いてるかも知れないけど……最近、優香里の交際って余り
上手くいっていないんだ」
0145名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:45:39.26ID:RyBF81SX
 ぽつりぽつり、と足下を見つめながら話す美空。
 「それは……まぁ、薄々は……」
 「具体的に何が上手くいっていないのかは話してくれないし、無理に聞き出すのも気が引ける
っていうかお節介が過ぎる気がして、ボクたちも詳しいことは分からないけどね」
  そりゃ進展させようと思う度にお腹が痛くなってムードが台無しに、なんて彼氏持ちとしては
格好が悪くてで人には話したくないだろうなぁ、と頭の中で呟く浩一。
 「それでね? その所為だと思うんだけど、最近じぁ暗い顔で下ばっかり見つめてて、口数も
減って……なんていうのかな、その、人目を避けるようになったって言うか……」
 「ユカちゃ……優香里ちゃん、やつれちゃって、ずっとひとりぼっちなんです……」
 「それは………重傷だな……」
 もう一口飲んで喉を潤しても、他に言葉が出てこない浩一。
 どうやら予想以上の状態らしい。
 もちろん悪い意味で。
 しかも、悪いのがチャラ男だとは言え種を蒔いたのは浩一自身だ。
 「お兄さんも、そう思うよね? だからって訳じゃないんだけど問題が問題だし、優香里も
何も話そうとしてくれないし、もちろん優香里には何の非も無いって信じてるけど、他の子達
の中には彼氏の方を問い詰めようって意見もあって……」
 「下手に動いたら火に油を注ぐだけ、ってことにもなるか」
 というかクラス全体を巻き込みつつあるらしい。
 「だから、こんなことをお願いできる義理はないのかも知れないけど……出来たらお兄さんに
優香里が悩んでる理由を聞き出して貰えないかなって……」
 「優香里ちゃん、ちょっと前までお兄さんのことをいっぱい話してたんです」
 「しかも、お兄さんのことを凄く自慢しててね? 多分だけど、優香里が一番頼りにしてるのは
お兄さんだと思うし、お兄さん心理学の勉強もしてるんだね? だったらボクたち素人が無理に
聞き出すよりは絶対に良いと思うんだ!」
 「わたしたちにできるこがあれば、なんでもしますから!」
 堰を切ったように、溢れ出す気持ちを浩一にぶつけてくる二人。
 「わ、分かったよ。とりあえず優香里と話してみるから!」
 負い目もあり、こうなっては拒絶も遠慮も出来ない。
 押し切られるように引き受けてしまった。
0146名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:47:47.15ID:RyBF81SX
 とは言え、考えようによっては大義名分を得たと言えなくも無い。
 その日の夜、頃合いを見計らった浩一は優香里の部屋の前に立っていた。
 事が事だし、彼氏が出来る以前の状態に戻って部屋に籠もってばかりになった妹と向き合うには、
これしかないと判断したからだ。
 「優香里? 起きてるよな?」
 「…………」
 返事は無い。
 だが人の気配はする。
 「入るからな?」
 そして自信もある。
 もとより鍵など付いていないドアを勝手に開けると、廊下から差し込んだ蛍光灯の明かりが
闇夜に沈むベッドまで真っ直ぐに伸びて、カーディガンの姿の背中を浮かび上がらせる。
 「……やっぱりか」
 あまり手を付けなかった夕食の時も制服のままだったし、そのまま着替える気力もなく
突っ伏しているらしい。
 それだけ重傷だと言うことだ。
 「起きてるよな、優香里?」
 そのまま部屋に押し入り、後ろ手にドアを閉めると室内は再び真っ暗に。
 「……入って良いとか、言ってないし」
 起き上がるのも億劫なのか、ベッドに埋めた顔からくぐもった声。
 明らかに歓迎されてはいないが、追い出そうともしていない。
 「今日、相原さんと佐藤さんに会ったぞ?」
 びくり、と反応する背中。
 「二人とも心配してたぞ? かれ……男と上手くいってないんだって?」
 そのまま待つこと、数秒。
 「……兄貴には関係ないもん……」
 なにも話したくない、と言いたげに返事を返す優香里。
 けれど無視されるよりは良い傾向だ。
 「兄貴なんだから関係あるんだよ。ほら、こっち見ろって」
 「……………」
 兄貴ウザい、と言いたげだが渋々片目を向けてくる優香里。
 ここまでは浩一の計算通りだ。
 その顔に向けて、準備しておいたペンライトの明かりを向ける。
 それもフィルムを貼って色を変え光量を抑えた特製のライトだ。
0147名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:48:53.01ID:RyBF81SX
 「ほら、これが何か分かるよな?」
 「何って……前に催眠術に使ってたやつじゃん……」
 「本当にそうか? 良く見てみろ、色が違わないか? どうだ?」
 「……色って……そう言えば……」
 「だろ? この明かりを見ると段々、瞼が重くなってくるぞ?」
 「…………」
 ライトを左右に揺らすと瞳が右へ左へ光源をを追いかけ始め、やがて重たくなった
瞼が下がり始める。
 かかった、と浩一は確信した。
 そのままライトに注目させながら静かにベッドに近づく。
 「そのまま……ほら、もう目を開けているのも辛いだろ? 無理をしないで
目を閉じたら楽になるぞ……じゃあ、3・2・1・ゼロ」
 早すぎず遅すぎず、理解し始めてきた速度でライトを下ろすのと同時に優香里の
瞼も落ちて、眠っているときのような緩やかな呼吸へと移行してゆく。
 だが本当に眠っている訳では無い。
 「優香里、俺の声は聞こえるよな?」
 「……うん、きこえる……」
 催眠誘導で顕在意識とか顕在意識とか言うらしい意識の層の境目が曖昧になり、
寝起きの前後と同じような半覚醒状態になっているそうだ。
 そして、この状態では猜疑心も弱まっているので、少々乱暴な理屈でも自分に
都合が良ければ簡単に他者の意見を受け入れ、信じ込んでしまう。
 言ってしまえば詐欺みたいなものである。
 「いいか? これからお前に幾つか質問をするけど、それに正直に答えれば心が
段々軽くなるけど、嘘をついたり答えなかったりすると胸が苦しくなる。苦しいのは
嫌だよな?」
 「……うん、いや……かも……」
 「よし、じゃあ始めるぞ? 俺の言う通りにすれば大丈夫だからな? 悩みだって
解決させてやるぞ?」
 「……うん……」
0148名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:50:14.78ID:RyBF81SX
 そして質問を始めてから数分。
 やはりというか、所詮は付け焼き刃に過ぎない浩一の催眠暗示は浩一自身の想像とは
若干異なる効果を及ぼしていたことがわかった。
 「まさか、腹が痛くなるどころか問答無用で『下す』とか……」
 軽い腹痛で気が散って続きが出来なくなるどころか、蹲るほどの激痛に見舞われて、
這々の体でトイレに駆け込む羽目になっていたとは思ってもいなかった。
 一人で抱え込んで落ち込んでしまうのも頷ける。
 というか彼氏の前で晒して良い醜態では無い
 絶望してしまう案件だ。
 「これは、俺がなんとかしないとだよなぁ」
 なにもかも浩一の未熟な催眠術が原因なのだ。
 至極真っ当な結論である。
 「えっと……優香里?」
 「……うん……」
 「これから催眠を解くけど、お前は催眠に掛かっている間に俺に何を話したのかを
全て覚えてる。でも逆ギレして怒鳴ったり、俺を引っぱたいたりはしない。なぜかと
言うと、俺は全然悪無いし、怒ったり暴れたりしても悩みは何も解決しないからだ。
わかるよな?」
 「……うん……」
 「それどころか、恥ずかしい秘密を全部知っている俺に頼った方が良いんじゃないかと
思うようになるんだ。だって相談できる相手がいるって言うのは良いことだし、俺なら
誰にも喋ったりしないか安心できるからな? 一人で悩むのも嫌だろ?」
 「……うん、ひとりぼっちは……いや……」
 「一緒に解決しような?」
 「……うん、おねがい、あにき……」
 「じゃあ、三つ数えたら催眠が解けるぞ? 3・2・1・ゼロ!」
0149名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:51:23.87ID:RyBF81SX
 ぱちり、と夢から覚めたように優香里が目を開いた。
 「………………」
 そして数秒間、頭の中で記憶を反芻して整理して、それから恐る恐る片目で兄の
姿を確認して、
 「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 声にならない悲鳴を上げながら毛布を被り、貝になってしまう。
 無理も無い。
 無理も無いが、これでは話も進まない。
 「えっと……優香里?」
 植え付けた暗示があるので、自分に害を及ぼすことは無い。
 そう分かっていても、既に失態を犯している浩一は抜き足差し足で妹に近づき、
指先で摘まんだ毛布の端っこを慎重に捲り上げてみる。
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
 毛布の中の優香里は完全現実逃避モード。
 目と口を閉じ、両の手首で両耳を塞ぎ毛布を握りしめながら震えている。
 「なんていうか……色々大変だったな?」
 ぴたり、と浩一の言葉で震えが止まる。
 「……あんな話聞いて、引いちゃったでしょ……?」
 涙ぐんだ片目が開き、浩一を試している。
 頼りたいが、果たして頼らせてくれるのか。
 暗示と常識が拮抗し、確証を求めているのだ。
 「確かに驚いたけど、引いたりはしないぞ? 覚えてると思うけど、お前が立ったまま
漏らすところだって見たことあるしな」
 「そ、それは昔だし小学校の時だし! 服だって着てたしオシ……ああもぉ、妹に
何言わせようとしてんのよ馬鹿兄貴っ!!」
 優香里の声に覇気が戻る。
 「その通り、馬鹿かも知れないけど兄貴だからな。友達にも相談できないことでも
俺になら話せるだろ? ちゃんと聞いてやるから、な?」
 「……兄貴……」
 うるうるうる、と両目が潤み唇が波打ち始める。
 「とりあえず出てこいよ? それじゃ話もし辛」
 「うぁぁぁぁぁぁんっ、あにきぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
 臍の辺りに衝撃を感じた、と思った浩一は次の瞬間には床に押し倒され、妹に腹に
抱き付かれ、わんわん泣かれていた。
0150名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:52:30.84ID:RyBF81SX
 更に小一時間後。
 「泣き疲れて寝落ちとか、子供かコイツは?」
 浩一に撫でられるとリラックスして、そのまま眠ると安眠できる。
 前回かけた暗示助けもあり、頭を撫でられている間に眠ってしまった優香里の顔はからは
強張りが抜け、浩一の腕の中で穏やかさを取り戻していた。
 すりすりすり、と時折顔を腹に擦り付けて相手の存在を再確認して満足そうに微笑み、
また規則正しい呼吸に戻る妹を引き剥がすことも出来ず、どうしたものかと思いながら
眺めていると、
 「ま、まぁ俺にも責任があるし? 特別に許してやるけどな!」
 可愛い、という言葉が口から出そうになり慌てて飲み込む浩一。
 というか優香里は制服を、浩一も部屋着を着ているというのに触れ合った部分は柔らかくて
温かいし、肩も背中も見た目以上に細いし、特に浩一の太股辺りに乗っかって、少し動かすだけで
ムニュムニュと形を変える胸の脹らみとかなんとも言えない弾力が、
 「いやいやいやいやっ!」
 ぶんぶんと頭を振って、変な方向に進みかけていた思考を慌てて振り払う浩一。
 「こ、こんなことしてるから変な空気になるんだよな? それに朝まで甘えさせてる訳にも
いかないよな?」
 などと自分に言い聞かせるように一人で喋りながら周囲を見回し、少し考えてから優香里の
肩と膝の裏に慎重に手を差し込み、いわゆる『お姫様抱っこ』で妹の体を持ち上げる。
 「……思ったほど重くは無いか……」
 起きているときに言おうものなら憤慨間違い無しの呟きも、いまなら大丈夫。
 「っていうか、やっぱ可愛い……のかな?」
 首が変な方向に曲がらないように引き寄せると、兄の胸に甘えるみたいに頬を付け熟睡する
優香里の無防備な寝顔が、直ぐ側まで近づく。
 チャラ男とは言え一応は彼氏も出来、健全な交際しか出来ないと知られても尚、ハッキリと
振られることは無い程度に執着されているらしい。
 それなりに魅力があるのかも、と思いながら改めて見つめてみると、起きているときは違う
目蓋の形や、寝息を漏らす小さな唇が甘そうというか美味しそうと言うか、どうせ寝てるし
触ったりキスとか、
 「……んん、あにきぃ……」
 幸せそうな寝言と、笑みの形の唇。
0151名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:54:12.62ID:RyBF81SX
 「いやいやいや、寝てる間に……とか最低だからな!」
 チャラ男と大差なくなってしまう危険な誘惑を振り払い、すりすり甘えてくる優香里を
そっとベッドの上に下ろして一息つくと、今度は別の誘惑が。
 「すー、すー、すー……んーーーーーん……」
 すっかり寝入って呼吸が大きく、ゆっくりになった優香里の胸が窮屈そうに制服を持ち上げ、
ひしゃげながら規則正しく上下運動を繰り返している。
 また浩一の体温を失った顔も、時より息苦しそうな表情に。
 それはもう、服が苦しいよぉと訴えかけるようにしか思えない。。
 「え? なにこれ? 俺に脱がせろって言ってるのかコイツ!?」
 「んんーー……あにきぃ……」
 「……寝てるよなお前? 本当に寝てるよな?」
 優香里はただ、寝ているだけじゃない。
 ずっと頭を撫でてやっていたのだから、狸寝入りは不可能だし眠りも深いはずだ。
 「苦しそうな声を出してるよな? だから……なんつーか、コイツの為だよな?」
 服の上にまで浮き上がっている先端辺りの形状から目が離せない。
 同じ年頃の女の子の生乳なんて見たことも無いが、ネットで見た動画やらヌードやらの
お陰で何となく全体的な形まで透けて見えてきそうな気がしてきて、苦しそうに悶える
妹の乳房の前に浩一の理性は決壊してしまう。
 「……脱がすぞ? 本当に脱がすからな? 起きるなら今の内だぞ?」
 震える指で、妹に刺激を与えないように出来るだけスローに、仰向けになって呼吸に
会わせて上下する動きに合わせてブレザーのボタンを外し、続けて首に巻いてあるリボンも
ゆっくりと解く。
 「………………」
 ここまで来ると、もう言い訳をする余裕すら無い。
 優香里の吸音に耳を澄ませながら首元から順番に、へその辺りまでブラウスのボタンも
外して、両手の指先で摘まむようにしながら胸元を左右に開く。
 「……う……わ……」
 言葉にならない呟き。
 赤の他人の『記録』とは違う。
 目の前に存在し、体温も匂いも感じられる本物の胸の膨らみは、それが下着に守られた
状態でも十二分に美しく、扇情的だった。
 まだ未熟で、血が繋がった家族の持ち物だとしてもだ。
 「……すっげー白い……それに……柔らかそうで……」
 ちょっとお洒落なレースの縁取り。
 きっとシンプルなデザインなのだろう、真っ白なブラジャーの紐を引き延ばすように
呼吸を繰り返すそれは、見える部分だけでも雪のように白く清純だと分かる。
 「……あれだよな、コレも……苦しそうだもんな……」
0152名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:55:21.39ID:RyBF81SX
 と思って手を伸ばした浩一だが、
 「フロントホック……の訳ないか……」
 可愛らしい下着の中央に留め具らしき存在は見つけられない。
 普通に背中で外すタイプなのだろう。
 これも外してやりたいが、さすがに仰向けに寝ている状態の妹に覆い被さって、抱きしめる
ように背中に手を回して手探りで試行錯誤しながら外す……というのはリスクが高すぎる。
 「……となると……捲る……しかないのか」
 普通のデザインブラジャーである。
 胸部全体を包む構造に加えて肩紐も存在している。
 これまたネットで見た画像やらイラストやらを思い出しても、下から持ち上げるようにして
捲り上げている物が殆どだったような気がする。
 「ちょっとだけ……ちょっとだけだから……」
 シャツの裾を持ち上げるような要領で引っ張れば……
 「……あれ?」
 ダメだ。
 思ったよりも固い?
 というよりもゴムだかワイヤーだかが入ってる?
 じゃあいっそ、中に手を入れて掬い上げるようにするしかない?
 すっかり理性が溶け落ちてしまった浩一の思考は、既に守るべき一線を越えている。
 優香里が目を覚ますかも、というリスクすら忘れて隙間すら無い下着と素肌の境目に下から
手を割り込ませ、その温もりとフワフワの触感に心臓が破裂しそうな興奮を感じながらも
内側から強引に下着を押し上げて……

 ぷりんっ!

 「浩一〜? あんたお風呂は〜?」
 「っ!!」
 母の呼ぶ声で一瞬にして引き戻された浩一の目の前には、露わになった妹の胸。
 これだけされても目を覚まさない優香里の小さな乳首が、外気に晒されたまま寝息に合わせて
プルプル揺れている。
 「浩一〜?」
 正気に戻ってしまった今、もう元に戻すことなど出来ない。
 それ以前に触ることすら躊躇われる。
 「ご、ごめんっ!」
 あられもない上半身に毛布を被せて誤魔化し、聞こえるはずも無い謝罪だけを残して
妹の部屋を飛び出した。
0153名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 16:56:24.05ID:RyBF81SX
やっとエロくなってきたかな?
というか開放感から来る変なテンションで一気に書いたら予想外の展開にw
0154名無しさん@ピンキー2019/09/21(土) 21:50:46.22ID:rsqLFh8W
14 ◆M7y2ja7yNv/M 2019/09/21(土) 17:23:45.13 ID:rhrJqIQ40
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1565274513/44
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1564787802/50
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1563989676/45
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1563525149/72
(転載元)https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/housekeeping/1568281975/12

6. 連続投稿・重複

無駄w
0156名無しさん@ピンキー2019/09/23(月) 08:24:37.53ID:BwDEiOSF
タイ チョンブリー県 象に踏まれて死んだ男
https://i.imgur.com/gHUwBAX.jpg
https://i.imgur.com/bG2MHV7.jpg
https://i.imgur.com/m5FJkE2.jpg
https://i.imgur.com/jXIwtLj.jpg
ハンガリー ペシュト県(2018年) ハイウェイにて、トラックとワゴン車の大クラッシュ死体グチャグチャ
https://i.imgur.com/LlT2zbX.jpg
https://i.imgur.com/Yn3fB6S.jpg
https://i.imgur.com/TJOpeXV.jpg
https://i.imgur.com/k01D6YO.jpg
https://i.imgur.com/ozCSyqw.jpg
https://i.imgur.com/NusO9Oy.jpg
https://i.imgur.com/MTvzQMy.jpg
芝刈り機がつま先の上通ってった Toe cut by lawnmower
https://i.imgur.com/IY5j8bE.jpg
0157名無しさん@ピンキー2019/09/23(月) 09:50:55.82ID:0+lMX14A
あ、しもた!
何度も読み返したのに美空と麻衣子がセーラー着てるの見落としたわw
ブレザーで脳内補正? 修正? してくださいおねがいします
0158名無しさん@ピンキー2019/09/23(月) 13:39:12.84ID:4nOWXg2r
16 ◆M7y2ja7yNv/M 2019/09/23(月) 09:38:11.13 ID:nww0TyRW0
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1565274513/45
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1564787802/51
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1563989676/46
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1563525149/73
(転載元)https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/housekeeping/1568281975/14

https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1565274513/46
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1564787802/52
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1563525149/74

6. 連続投稿・重複

チクると増えるよチクリマン思った
0163名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:22:21.67ID:Jv7kTNjm
 眠っている妹に欲情して上半身を剥いでしまった翌日。
 浩一は優香里が起きるより先に、逃げるように家を出た。
 というか実際、顔を見るのが怖くて母親の弁当まで遠慮して逃げ出したわけだが。
 「……これからどうすんだよ、俺……」
 相手は妹だ。
 同居している家族だ。
 単なる友達とか級友とは訳が違う。
 今朝は逃亡で何とかなったが、帰宅すれば嫌でも会うことになるのだ。
 いや、それどころか優香里の方は一刻も早く兄を問い詰めたいに違いない。
 現状は単なる問題の先送り。
 無策のまま現実逃避をしているだけなのだ。
 「こういうときこそ催眠術を……だめだよなぁ……」
 術者の言動に対し、否定的な精神状態の相手では催眠術をかける難易度が高くなるというのは
知っている。そして、寝ている間に服を脱がすような兄に対しての優香里の感情は否定的を通り
過ぎて拒絶と言うか激怒に近い状態だろう。
 とてもじゃないが催眠術をかけられる状態では無い。
 よって何か他の方法を模索しなくてはならないのだが。
 「ダメだ、なんにも思いつかねぇ!」
 これは……終わったかも。

 「おい、コーイチ」

 「んあ?」
 同じクラスの男子に肩を叩かれて現実世界に帰還すると、もう日も高くなり周りの連中は
思い思いの場所で昼食を広げていた。
 既に受験モードに突入している教室では、登校さえしていれば授業そっちのけで頭を抱えて
悩んでいても教師に注意されたりはしない。
 完全に放置されたまま、もう昼休みに突入していたらしい。
 なんの打開策も見つからないまま、半日も無駄にしてしまった。
 頭がいっぱいで空腹さえ感じていない。
 「なんか知らねーけど、一年の女子が来てるぞ?」
 「一年……?」
 いま世界で一番会いたくない一年生のナンバーワン。
 妹の怒った顔が頭の中を過るが。
 「あの……佐伯先輩?」
 入り口から顔を覗かせていたのは妹では無く、三つ編みが似合う妹の親友だった。
0164名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:24:15.96ID:Jv7kTNjm
 「ちょっと驚かせちゃったかな?」
 まるで恋人のように寄り添い、浩一と並んで廊下を歩くのは相原美空。
 「まぁ……正直驚いたけど……」
 「だよね?」あはは、と照れ笑い「でも番号もメアドも交換してないし、クラス以外は
分からないから他の方法が思いつかなかったんだよ。どうしても今日じゃないと駄目な
用事もあったしね?」
 二人が向かっているのは屋上。
 女の子の弁当箱にしては大きすぎる包みを抱えているのを見た浩一が、希望的観測込みで
事情を察して場所を変えようかと提案したからだ。
 もちろん、教室中の奇異の視線から逃れるという意味も含めて。
 「用事って……優香里の事かな?」
 「それも込み、かな?」
 地味な眼鏡も似合う美空が、お腹の辺りで抱えていた包みを掲げてみせる。
 「それって、やっぱり?」
 「ご名答! お昼、一緒にどうかな?」
 そうして屋上に到着した二人は、隅っこの辺りで美空が広げてくれたレジャーシートの
上に並んで腰を下ろす。
 鼻歌交じりに弁当箱を広げる美空。
 どちらかと言えば大人そうな女の子だと思っていた美空の方からのアプローチに、本当は
優香里の異変に気付いて問い詰めに来たのではないかと戦々恐々だった浩一だが、明らかに
女の子一人分では無い昼食の量で少し安堵する。
 「ちょっと作り過ぎちゃって、とか言っても説得力無いよね? 実は昨日のお礼の代わりに
頑張って作ってきたんだ」
 「昨日の……相原さんが……?」
 「あーっ! ボクとか言ってるし、皆みたいに女の子らしいことが全然出来ないって思って
るだろ? そんなことはないからね! これでも毎日自分で作ってるんだよ?」
 むすっ、と頬を膨らませる美空。
 「いや、そうじゃなくて……お礼って?」
 そっちもそっちで意外だったけど、とは口が裂けても言えない。
 「それはもちろん、紅茶をご馳走になった上に優香里の事を引き受けてくれたお礼に
決まってるよ。ありがとう、お兄さん」
 そうして一転、笑顔になる。
 涼しげな澄まし顔ばかりな印象だったが、こうしてみると表情も豊かだとわかる。
 「いや、でもあれは優香里……つまり俺の妹だから俺の問題でもあったし、紅茶って
言っても自販機で……」
 「それでも紅茶に違いはないし、お願いを聞いて貰ったことにも変わりは無いんだよ。
そういうところ、ボクは義理堅いんだからね?」
0165名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:26:19.39ID:Jv7kTNjm
 「そ、そういうものなのかな……?」
 「そういうものなんだよ。だから……はい、どうぞ?」
 何時の間にか取り出した可愛らしいフォークで鶏の唐揚げらを刺し、片手を下に添えながら
差し出す美空は満面の笑み。
 まさか嫌とか言わないよね? とプレッシャーを掛けられている気がしないでも無い。
 「え? え?」
 「え? じゃないよ。見ればわかるよね? はい、あーん?」
 「ちょ、ちょっと!」
 「ここまで来て女の子に恥をかかせたりしないよね? 早く食べてくれいないとボクも
食べれないし、お昼休みも終わっちゃうよ? だからぁ、あーん?」
 それは両手が塞がっているからと言う意味なのか、実はフォークが一つしか無いという
意味なのか、どっちにしても追い詰められてしまった浩一。
 「……………あ、あーん……」
 結局、押し切られて美空お手製のさっぱり生姜入り唐揚げや、結構手が込んでるっぽい
味付けの手料理をご馳走になってしまう。


 「やっぱり男の子だね。沢山作っておいて正解だったよ」
 何時の間にか自分の食事も済ませ、手際よく片付ける妹の親友を眺める浩一の食欲も
満たされ、終わってみると中々に楽しい時間だったような気がしないでも無い。
 直前まで食欲すら無かったというのに、我ながら現金で呆れてしまう。
 「それと、これは麻衣子からだよ。クッキーらしいね」
 と、オマケに可愛らしい包みまのお菓子まで頂いてしまった。
 「ありがとう……そう言えば佐藤さんは?」
 「優香里の足止め。適材適所ってやつかな?」
 「足止め……」
 「本当はね、お礼だけじゃ無くって、ボクたちの分も頑張ってくれるお兄さんにスタミナを
つけてもらおうって作戦でもあったりしたんだけど、どうやら余計なお世話だったみたいだね?
まさか昨日の今日で優香里の事を元気づけてくれるなんて、予想外だったよ」
 「それは、つまり……えっと、優香里は……?」
 「うん、朝からカンカンだよ。 カンカン」
 美空の言葉だけで、頭から湯気を吹き上げながら憤慨している妹の様子が想像できてしまう。
0166名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:27:42.59ID:Jv7kTNjm
 「でも俯いて落ち込んでいるよりは全然良いと思うなボクは。きっと麻衣子だって同じだと
思うよ? さすがだね、お兄さん」
 「いや、なんていうか、あれは……」
 実は大失敗だったりするわけで。
 「ん?」と、そんな浩一の様子に気付いた美空が首を傾げる「お兄さん、優香里を元気づけようと
して、わざと怒らせたんじゃないのかい?」
 「期待を裏切っちゃうようで申し訳ないけど、実は……」
 思わず天を仰いでしまう浩一。
 折角の逃避先から、一気に現実へと引き戻されてしまった。
 「それは、なんていうか……詳しい話は……」
 「悪いけど、それはちょっと無理かな」
 「だよねー?」
 あははー、力なく笑う美空。
 だが浩一とて本当の事なんて話せるわけが無い。
 優香里の悩みの原因も、いま怒っている理由も。
 「……あ、でも、どっちみち理由がお兄さんに起因してるんだったら……」
 「相原さん?」
 「……うん、お兄さんなら案外大丈夫かも知れないね。というか、お兄さんじゃ無いと駄目って
いうべきなのかな?」
 「えっと?」
 「うん、そうだね。きっとそうだ。なんだ、やっぱり任せて正解だったんだね」
 「あの、話が全然見えないんだけど?」
 「お兄さん!」
 「あっはい」
 急に真剣な眼差しを向けられて、思わず敬語になってしまう浩一。
 「優香里の事だけど、本当に怒っているけど本当は怒ってはいないんだよ」
 「は?」
 「だから、ただ謝るだけじゃ反って火に油を注ぐだけになるからね? ちゃんと優香里の
話を聞いて、優香里が何を欲しがってるかを見抜いてあげないとだよ?」
 「……気のせいかも知れないけど、わざと分かり難い言い方をしてるとか?」
 「う〜〜ん……」人差し指を唇に当てながら少し思案する美空「……そういうつもりは……
あんまりないんだけど……」
 少しはあるのかよ! というツッコミを必死に堪える浩一。
0167名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:28:34.23ID:Jv7kTNjm
 結局、それ以上に具体的なアドバイスは聞けないま『お兄さんなら大丈夫だよ、ボクが
保証するから』なんて太鼓判だけ押して貰い、そんな美空の言葉を反芻しながら放課後を
迎えた浩一は、とりあえず当たって砕けるしか無いと腹を括って……
 「……………(じぃーーーーっ!)」
 「よ、よぉ……」
 家に帰って気持ちを落ち着けてから話そうと思った矢先に校門で妹の待ち伏せを食らい、
早くもペースを乱されつつ必死に表面を取り繕う。
 「……えっと、優香里?」
 「…………(ぷいっ!)」
 だが待っていたはずの優香里は返事も返さず、不機嫌そうに顔を背けてスタスタと
家とは違う方向に歩き出してしまう。
 「あ、あれ?」
 繰り返しになるが、校門の前だ。
 人通りだって半端なくあるし、大声を出したり慌てて追いかけて肩を掴んだりなんて
目立つ行動は取れない。
 どうしたものかと手をこまねいていると。
 
 ぴたっ!

 10メートルほど進んだ先で優香里が足を止めて、
 「…………(じぃーーーーっ!)」
 振り返り、再びジト目で浩一を睨んでくる。
 「これは……もしかして?」
 追いかけてくれると思っていた、ということなのだろうか?
 恐る恐る、慎重な足取りで近づこうとすると、
 「…………(ぷいっ!)」
 再び前を向いてスタスタと歩き始める優香里。
 終始無言なのが地味に怖い。
 とは言え兄を引き離すつもりはないらしく、それからも10メートルほど進むごとに
振り返っては後ろを歩いていることを確認し、それでも一緒に歩くつもりはないらしく
結構な早足で繁華街へと一直線。
 ようやく足を止め、横に並ぶのを許可された時には、目の前にカラオケショップの
入り口が出現していた。
0168名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:29:20.38ID:Jv7kTNjm
 それから数分後。
 
 ずずず〜〜〜〜〜〜っ!

 受付での対応を全部浩一に押しつけた優香里は、これまた浩一がドリンクバーで用意して
運んできたコップのジュースを一息に吸い上げて、
 「……けぷっ」
 炭酸を一気飲みした反動で可愛い音を立て、少し恥じらいながら空になったコップを
差し出して二杯目を要求。負い目を感じている浩一が召使いのように急いで取ってくると、
今度は音を立てないように半分ほど飲み、ホッと息をついた。
 私、怒ってるからね! と眉間にシワを寄せ目を合わせないまま。
 「……えっと、優香里……?」
 「おいしかった?」
 「へ?」
 妹の第一声が、まるで理解できなかった。
 「みっくんが作った唐揚げ、あ〜んって食べさせてもらっておいしかったよね?」
 「は? ちょ、おま……」
 曖昧極まりないとは言え昼休みにアドバイスを貰い、ここの着くまでにも妹の背中を
見つめながら、浩一とて色々対策や応答のバリエーションなどを考えていた。
 考えていたが、全く想定していなかった角度からジャブを出されて詰まってしまう。
 「私に黙って付き合ってたんだ。良いよね、みっくん。お弁当だって自分で作れるし
勉強も出来るし爽やか系だし……胸は私の方があるけど」
 「いや、だから……」
 「あたしが悩んでる間に、あたしの友達とイチャイチャとかありえなくない? マジで
信じられないんですけど!」
 一度開いた口は止まらない。
 ここ数週間ほどで溜め込んだ鬱憤に諸々を混ぜ込み、ほとんど八つ当たりに近い苦情を
次々と吐き出してゆく優香里。
 そんな理不尽な(実は浩一の所為だが)罵詈雑言と一方的に浴びせられ、思わず反論
しそうになる浩一だが、

 『ちゃんと話を聞いて、その上で優香里が何を欲しがってるかを……』

 元はと言えば自分の催眠術が原因だという事実と、美空のアドバイスとで辛うじて
踏みとどまって、喉まで出かかった言葉を飲み込む。
0169名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:30:30.25ID:Jv7kTNjm
 「そりゃ兄貴が誰と付き合おうと兄貴の勝手かも知れないし! 妹のあたしにイチイチ
報告する義務とかないかも知れないけど、ちょっとはアレだと思わない!?」
 アレが何をさすのか全く理解できないが、とにかく耳を傾け続ける。
 「ねぇ兄貴、ちゃんと聞いてる? 返事がないんですけど!」
 「も、もちろん!」
 「『もちろん』じゃなくて『聞いてます』だと思うんですけどぉ? マジで分かってんの
兄貴は? 昨日、ちょっとはカッコ良いこと言ってたけど朝起きたらいなくなってるし! 
アタシはおっぱ……なんか脱がされてるし! ソッコーで逃げてるし! 超ムカついたから
お昼に行こうと思ったら、まーちゃんが変にからんでくるし! そんで、みっくんが大きな
包み持ってコソコソ出て行くのが見えたから必死に探したら屋上で兄貴とベタベタしてるし!
そんなのありえないし! 兄貴、みっくんとアタシとどっちが大事な訳!?」
 なにその『仕事と私のどっちが大切なの?』みたいな問い詰め方?
 等と口に出したら火に油を注ぐだけだ。
 「そりゃ……お前に決まってるだろ?」
 夫の浮気を疑う新妻に弁解するよう口調になってしまう浩一。
 「ほんとにぃ?」
 中に浮かんでいた氷が残らず溶けてしまったことにも気付かず、両手でコップを持ったまま
兄の顔を凝視する優香里。
 「だから相原さんとは何も無いし、お前は妹なんだから全然違うって!」
 「ふ〜〜ん?」
 心なしか頬を赤らめたような気もするが、不機嫌そうな顔は一向に変わらない。
 まだ及第点は与えられない、ということなのだろうか。
 「…………」
 思わず謝りたくなってしまうが、安易に謝罪の言葉を使ってしまうと火に油を注ぐだけ
らしいので、とりあえず妹の視線を真っ向から受け止めて、せめてもの誠意を示す。
 「……じゃあ兄貴は、みっくんよりもアタシを優先してくれるんだよね? どんな時でも
絶対に?」
 「……可能な限りは……」
 「じゃあじゃあ! 今日みたいに、みっくんがお弁当作って誘いに来てもアタシがダメって
言ったら断ってくれる? 一回だけじゃなくて、何回でも?」
 いきなりハードル高く(?)設定してくる優香里。
 「そ、それは流石に……ほら、手作りだし無駄にしちゃうのも勿体ないって言うか、悪い
気がするし、お前も一緒に食べるとかで……」
 「っ!」
 む〜〜〜っ、と頬を膨らませる優香里。
 どうやら模範解答では無かったらしいが、
 「だ、だってお前の親友だろ? 考えてみろって! 朝早く起きて作った弁当を駄目にして
捨ててる所とか想像してみろよ! あんまり気分が良いもんじゃないだろ?」
 「……………じゃあ、二人っきりはナシで。絶対だよ?」
 どうやら妥協を許してくれたらしい。
 視線を外して渋々ながら受け入れる優香里。
 「それも……出来たらお前から相原さんに説明をして貰えたら……」
 「……兄貴のヘタレ!」
 どうやら、こちらもオーケーらしい。
0170名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:31:36.22ID:Jv7kTNjm
 その後、もう二回ほどジュースの追加を命じられ、会計も全て請け負ったことで多少は溜飲が
下がったらしい優香里に並んで歩くことを許可された浩一は、傍目には二人仲良く肩を並べて
帰宅できた。
 実際、「あら珍しい!」と玄関先で母に驚かれる程度の関係までは修復できたらしい。
 もっとも、兄妹の間で会話らしい会話は全く出来なかったが。
 そして更に夕食も済ませた後、
 「……疲れた」
 幸か不幸か、苦労して妹の機嫌を直したことで生乳を見たことは有耶無耶に出来たようだが、
どっと疲れてしまった浩一は、昨夜の優香里のようにベッドに突っ伏して呟いた。
 特に仲が良いわけでもなかった妹をチャラ男から救おうと催眠術の事を調べ始めてからこっち、
心身共に疲れてばかりの毎日である。ほんとうはもっと受験勉強に身を入れなければならないと
言うのに、殆ど余裕が無い。
 「……これで(受験に)失敗でもしたら……」
 正直、目も当てられない。
 やはり生半可な知識で首を突っ込むべきでは無かったのかも知れない。
 だが催眠術無しでは優香里が話を聞いてくれるとも思えなかったし。
 何度自問自答を繰り返しても堂々巡りである。
 「…………」
 とりあえず今晩も睡眠時間を削って勉強をしなけいといけない。
 それどころか、今すぐにでも開始した方が良い。
 だけど、もう少しだけ休憩して、

 こんこんこん。

 「アタシだけど……」
 「おー」
 ドア越しでも声だけで妹だと分かる。
 が、落ち上がるのも億劫なのでうつ伏せのまま返事を返す浩一。
 「……ちょっと入るね?」
 「へ?」
 これまた昨夜の妹のように片目だけ扉の方に向けると、パジャマ姿で髪を結った優香里が
恥ずかしそうに顔を背けながら入ってきた。
0171名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:32:36.58ID:Jv7kTNjm
 だが、何か用があってきたはずの優香里は後ろ手にドアを閉めた場所に立ったまま、何故か
居心地が悪そうに両腕で胸を庇いながらモジモジと体を揺らしている。
 「………………」
 その上、何しに来たのかを尋ねて欲しそうな目をチラチラと兄の顔を覗っているだけで、
自分から口を開こうとはしない。
 そのまま微妙な空気が数分間ほど続き、
 「どうした?」
 結局、根負けしたのは浩一の方だった。
 もしかしたら今になって胸を見られたことで問い詰めに来られた可能性もあるので、気を遣って
優しめの声色で、簡潔な一言で尋ねる。
 そして兄の方から取っ掛かりを作ってくれたお陰で幾分は緊張が抜けたらしい優香里は、これまた
何故か不機嫌そうに唇を尖らせて横を向いたまま口を開く。
 「あれから、みっくんに電話してみたんだけど……」
 「お、おぅ」
 「兄貴の言った通り、何でもないって言ってた。別に付き合ってもないし、兄貴の分までお弁当を
作ったのも一緒に食べたのも今日が初めてだし、アタシの事心配して昨日兄貴に色々頼んだお礼で、
気になるならアタシが一緒しても全然良いって」
 「お、おぉ……!」
 全ての原因が自分も催眠術だ、と言う点を除けば後ろめたい要素など何も無いのだが、ホッとして
しまう浩一。相変わらず優香里が目を合わせようとしないのも、もしかしたら猜疑心で凝り固まった
挙げ句に詰問口調でアレコレ押しつけてしまったためにバツが悪いからなのかも知れない。
 ともあれ、これで優香里も納得してくれたのなら何よりだ。
 「それで……その、さぁ?」
 「お、おぅ?」
 が、妹の話にはまだ続きがあった。
 「アタシね、なんてゆーか……みっくんに怒られちゃった」
 「お?」
 「だから怒られたの! 兄貴は受験で大変なのに心配掛けちゃダメじゃないかーとか、兄貴が優しい
からって甘えすぎてないかなーとか、ちゃんと感謝してるかーとか、なにあれ? みっくんは誰の
味方だっつーの! アタシの友達じゃん? 兄貴の奥さんかっての!」
0172名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:33:27.57ID:Jv7kTNjm
 どうやら美空にあれやこれやと注意されたのが悔しかったらしい。
 あの理路整然とした口調で正論をぶつけられ、反論すら出来なかったのだろう。
 段々と声が荒くなってゆく優香里。
 「ねぇ兄貴、アタシってば面倒くさい? 一緒にいると疲れる? 可愛げない? 超ワガママ?
そんなに自己チューでウザい系!?」
 「お、おぅ……じゃなくて、そんなことはないぞ、うん!」
 「っ!」
 言い直し気味に慌ててフォローを入れると、優香里の顔が強ばる。
 しかも……なんだか涙ぐんでる?
 「えっと、優香里?」
 失敗したか、と焦る浩一。
 「ほんとに……フォローしてくれるんだ」
 「へ?」
 ぽろぽろと泣き出されてしまった。
 「みっくんが……兄貴は優しいから、アタシが八つ当たりしても………だから、ちゃんとお礼、
しないと……捨てられても知らないよって……」
 「お、おぅ」
 「兄貴、ちょっと起きてくれる?」
 「い、いいけど……」
 涙を拭いながら頼まれると、もう逆らえない。
 しかも妹だ。
 訳が分からないまま、とりあえずベッドの上に座り直す。
 「は、恥ずかしいからこっち見ないでよ? っていうか目ぇ閉じてて!」
 「こうか?」
 正座して目を閉じると、優香里の気配が近づいてくる。
 「動いたらダメだかんね! 絶対だよ?」
 自分に対しては暴力を振るわないという催眠術は効いてる筈だし、いまの話の流れからすると
感謝の気持ちっぽいのも期待できそうだが、負い目があるだけに緊張してしまう浩一。禁止された
視覚以外の残り四感をフル稼働させて……

 ぱふっ

 「ど、どう? ?」
 サラサラの生地越しに温かくて柔らかくて、程良い弾力で全てを受け止めてくれそうな何かを
顔面に押しつけられ、細い腕が後頭部に回され引き寄せられる。
0173名無しさん@ピンキー2019/10/14(月) 08:35:18.77ID:Jv7kTNjm
 何が起こっているのかは希望的観測込みで推測できるが、頭の中で前後の整理が追いつかず
現実として受け入れられない浩一。
 昨晩チラリと拝んだ妹のバストが頭の中に蘇り、軽いパニックに陥ってしまう。
 「ちょ、ちょ……おま、これ……」
 「ひゃんっ! く、くすぐったいから息しないでよぉ!」
 「いや、だって……」
 「ううう動くなって言ったっしょ! あと目、開けてないよね!?」
 ぎゅぅぅ、と更に強く抱きしめられると鼻先が胸骨に当たって少し痛い。
 「お、おぉ……」
 目の前には、というか浩一の視界は妹のパジャマで埋め尽くされている。
 「こ、これもアタシじゃなくて、みっくんが言ってたんだからね! 兄貴は受験だけでも
すっごいストレス溜めてるのに、アタシが負担かけたりベタベタ甘えたりしてジセーシンが
飛んじゃったんだって! だから……アタシが特別にハッサンさせたげる! だって半分
くらいはアタシのせいっぽいし、みっくんじゃ小さくて絶対物足りないし!」
 「ち、小さくて物足りないって……」
 美空の姿を思い浮かべ、頭の中で上半身のラインを想像してみるが、
 「ああっ! いま、みっくんのこと想像したっしょ! ダメだかんね! 兄貴はアタシのこと
以外考えるの禁止!!」
 これでもか、と自分から体を揺すって胸を擦り付けてくる妹。
 もうちょっと質量が欲しいような気もするが、二つの脹らみに挟まれてランダムに擦られる
心地よさは未知の領域だ。
 しかもボディソープか何かの香りと優香里自身の匂いが混ざり合ってクラクラしてくる。
 「かかかカレにだってしてあげたことないし! だから、えっと……ああもぉっ!」
 「おおおっ!?」
 そのまま優香里に押し倒されてしまう浩一。
 「も、もう訳わかんないくらいに恥ずかしいし! 顔見られるのか絶対無理だから兄貴は
このままサッサと寝てよねっ!」
 更に訳の分からないことを宣ってくれる。
 「こ、この状況で寝ろとか無理も大概むぐぐぐぐぐっ!?」
 「やだやだやだっ! 兄貴が寝るまで絶対離さないからぁl!」
 ガッチリホールドしたままだが、流石に自分が上に乗ったままの状態で安眠しろというのは
無理かも知れないと考える程度の知性は残っていたらしい。
 ころりと四分の一回転して兄の負担を減らし、子供をあやすように頭を撫でる。
 「……兄貴には、みっくんがいるかも知んないけど……アタシには兄貴だけだし……」
 「…………」
 「これくらいなら、時々したげるから……アタシのこと捨てないでよぉ……」
0177名無しさん@ピンキー2019/10/15(火) 03:11:31.29ID:aJ7/gqch
>>174

元々近親モノは苦手だけど
なんだかんだでにやにや読んじゃったわ
続き頑張ってくらはい

>>176
なんか繋がんないな
0182名無しさん@ピンキー2019/10/16(水) 03:34:02.22ID:+BgU0hUw
人のレスがある時に来てどうすんだよ
誰も来てない時に来て保守しろよ
役立たずの鴨女
0184名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 03:33:05.62ID:Tm32CUxo
そして今日も



                ば鴨女

              ,. ‐'"´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄``''‐ 、
         / _                 _ \      かも〜んっ…!
        / / ``‐ 、       , ‐'"´ \.ヽ
.         / /      ` ‐---‐''´        ゙i ゙i   俺の書き込みは!
.       i ! v  ##          _      !. !   言うなら商売だ……!
        i !   '"´#~``''‐----‐''"´        ! l
.       l !      u        U      l│   ただ好き放題してる
.        |.│ '´ ̄`ヽ、_,ノノ  (( ヽ、_/ ̄`   |│     わけではない……!
     /゙ヽヽ     __        __  u  .//~ヽ
  _,,. -‐i| i´゙| |    ( __ 。      。__ )    .| |~`i.!‐- 、.._  おまえらだって
     |.| l~゙|.|      / u    ヽ        .|.|`,i.li      今までのエロパロで
.    │ヽ:_;||    u )l     U  l l  vu   ||_,ノ |     楽しんだはずだ…
 _,,. -‐|   |.  ‐--‐" |   v     l ヽ、._,ノ |   |‐- 、._
    |    ! r'二ニヽヽ、.___ ノ-‐'ニ二.ヽ !   .!     楽しませて
.   │     !(( + + + + + + + + + ))l.   |      やったんだから…
    .!      i.ヽ、.二ニニニニニニニニニニニニニ二ン./   │
    |.    i ヽ、 u  ~ 、___,,  U   ノi      |  俺が荒したいスレッドを
.   |      !  i`‐ 、..________,,. ‐'´ ,!      .|    自由に荒すのは
    .!       !.  l、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/  !      .!     当然だっ……!
    |      i.   l、              /   i      .|
.   |     ,. ‐'´\ .!`‐ 、..___,. ‐'´/  /` ‐、    |  なんら問題ない……!


鴨女の敗走録w↓

完全に退治されたw鴨女◆付き

http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1486383601/27

http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/out/1515621617/342
0188名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:04:38.35ID:5FUL4Xm4
 「ねぇ兄貴ぃ、起きてよぉ?」
 自覚があるのかないのか、甘やかして欲しい時に出る媚びた声色と間延びした語尾。
 こんな時は相手をしてくれるまで決して諦めない妹の性格を良く知っている浩一は、微睡み状態で
少し重い頭を再起動させ、ゆっくりと持ち上げる。
 「なんだよ、こんな時間に……」
 「こんな時間だからに決まってるじゃん? お母さん達も寝ちゃったみたいだしぃ、そろそろ
シようよぉ?」
 「しようって、何を?」
 「もぉ、そんなイジワル言うなんてヒドいぃ!」
 浩一の眠そうな顔もお構いなく、不機嫌そうな優香里は兄に見せつけるように、自分パジャマの
ボタンを上から順番に外しつつ襟元を広げて胸を露わにしてゆく。
 「ほら、兄貴の大好きな妹おっぱいだよ? 早く食べて食べてぇ?」
 優香里の顔は性的興奮で上気し、うっすらと汗を浮かべて白く輝く理想的な形と大きさの女子高生
バストの頂点では、グミのような桜色の蕾が充血してぷっくりと膨らんでいる。
 まさに食べ頃の果実を思わせる瑞々しさだ。
 「合格の……お祝い? ごほうび? だからぁ、アタシを全部あげちゃうの! 兄貴の好きにして
いいしぃ、ずぅ〜〜っと兄貴のだけのモノでも良いよ?」
 「っ!」
 思わず唾を飲み込んでしまう浩一。
 「だからぁ、兄貴もアタシのこと絶対に捨てないでね? はい、あ〜〜〜ん?」
 なんとも艶っぽい表情で口を大きく開き、唾液で濡れ光る口内粘膜と舌を見せつけながら自らの
両手で下から乳房を持ち上げつつ、まるで我が子に母乳を与える母親のように乳首を差し出して
くる優香里。
 「大好きだよ兄貴、いっぱい食べてね?」
 そんな妹の色香に誘われるままに桃色の先端を口の中に……
0189名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:05:54.81ID:5FUL4Xm4
 「っ!?」
 目を覚ますと同時に口の中に流れ込んできたのは少し湿った、生暖かい空気。
 そして鼻腔を満たす甘酸っぱい香り。
 更に顔面を圧迫する、心地よすぎる弾力と体温。
 「…………」
 それは言うまでもなく優香里の胸、バスト、おっぱい。
 視界を埋め尽くす妹のパジャマが否応なく現実を再認識させてくれる。
 ついでに、いままで見ていたのが夢であると言うことも。
 「…………優香里?」
 「す〜〜〜っ、す〜〜〜〜っ……」
 どうやら昨夜は妹に抱きしめられ、後頭部を撫でられながら妹の胸に顔を埋めたまま眠って
しまったらしい。
 しかも寝ている間に体勢が変わり、妹を押し倒すような格好で。
 まぁ幸か不幸か優香里も一緒に寝落ちしたらしいが。
 「よくもまぁ、この状態で寝れたよな……」
 自分も、優香里もである。
 もしかしたら、受験や優香里の問題を同時に抱え込んで自分で思っていたよりも疲労が
積み重なっていたのかも知れない。
 もちろん優香里も優香里で心労が溜まってはいただろう。
 とは言え、こんな体勢のまま揃って眠りこけてしまうとは。
 「しかも、こいつで……あんな夢を……」
 受験モードに突入して話す回数も目減りしたとは言え、気軽に話せる女子だってクラスに
何人かいるし、最近は美空にも慕われている雰囲気なのだ。
 なのにどうして、親の目を盗んで妹とヤバいことをする夢を見てしまうのか。
 全ては妹の体温と匂いに包まれながら寝てしまったからだと思いたい。
こんなに柔らかくて温かくて、そのうえ良い匂いがする胸に顔を埋めながら寝たりしたら
誰だって変な夢を見てしまうのが当たり前で……
 「……って! そうじゃないだろ!?」
0190名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:09:36.91ID:5FUL4Xm4
 「う、う〜〜〜ん?」
 思わず声に出して訳の分からない思考を振り払うと、胸の中で顔を動かされた優香里が
居心地が悪そうな声を漏らす。
 「…………」
 反射的に息を止め、しばらく様子を覗うと。
 「…………す〜〜〜〜っ………」
 動かないでよね、と言いたげに腕に力を込めながら安眠に戻る優香里。
 すると呼吸が穏やかで長くなり、顔に押しつけられた脹らみも上下運動というか収縮を
繰り返す訳で。
 「……結構ある……よな?」
 押し倒された時は混乱が先に立って感触どころではなかったが、こうして落ち着いた状態で
改めて再確認すると、想像していた以上に質感と言うか量感がある。
 そう言えばチラリと見てしまった時も同じ仰向けで、それでもツンと張っていたように思う。
 そう気付いてしまうと、直に触れ合いたくなってしまうのが男の性という奴で……
 「…………妹だからな?」
 夢見の名残か、思考が妙な方向に進んでしまう自分を寸前で制する浩一。
 なんとか優香里を起こさないまま、早急に脱出する必要がある気がしてきた。
 「とりあえず……下から、か?」
 無理矢理に抱擁を解こうとすると起こしてしまう可能性が高い。
 なら、余計な刺激を与えないよう下から抜け出すのが賢明だろう。
 そう判断した浩一は、先ず……
 「これは違うからな? 他意はないからな?」
 眠りこけている妹に言い訳をしながら、幸いにもフリーな両腕を慎重に動かし、ブラインド
タッチで優香里の両胸に両手で触れる。
 乳房を固定しながら動くことで、一番敏感な部分への刺激を最低限に抑えるためだ。
 間違っても興味本位ではない。
 
 むにゅっ。
 
 程良い柔らかさと反発感。
 夢の中よりも若干小さい気もするけど、これが所謂『ぷりんぷりん』という奴か、確かに
『ふわふわ』ってういうのとは違うなと妙なところで納得してしまう浩一。
 「いやいやいやいやっ!」
 余計な思考を追い出しながら数ミリずつ、ゆっくりと移動を開始。
 残念ながら『掬い上げる』ほどの質量はないので、本当に不本意ながら手全体で掴むように
包んで左右に開きながら顔を滑らせる。
 だが、その途中で気がついた。
0191名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:10:52.06ID:5FUL4Xm4
 こうして女の子の胸に触るのは初めてだが、それでも違和感を感じる。
 ソフトタッチだが、鷲掴みみたいにしてるのだから形が分かるのは当然だ。
 指先や手の平で、パジャマ越しに感じる体温も質感も素晴らしい。
 だが最大限に気を遣って、最低限の力加減で探ってみても、パジャマのサラサラした生地の
下に別の布製品の存在を見つけることが出来ない。
 具体的に言うとブラジャー。
 つまり下着のことである。
 「まさか、こいつ?」
 ノーブラ?
 着けてない?
 パジャマの下は、すっぽんぽん?
 「そんなわけ……ないよな?」
 家族とは言え、兄は一応異性である。
 妹の行動から察するに、最初から胸に抱きしめる目的で来てたのは間違いない。
 だというのに寝間着一枚とか普通に考えて有り得ない。
 きっと勘違いだ。
 困惑と疑念と、ほんの少しの期待で指先に集中し、決定的な証拠になるだろう妹のバストの
中心部を軽く、ほんとうに軽くなぞると、


 こり……こりこりこり……

 
 あった。
 周囲とは明らかに違う固さ。
 少しだけ顔を出し、指の動きに合わせて転がるような触感を返してくる何かをパジャマの
下に確かに感じる。これはもう、疑いようがない。
 「マジですか?」
 つまり浩一は丸一晩、ノーブラの妹の胸を堪能しながら熟睡していたのだ。
 そう自覚してしまうと、優香里の胸を掴む手に自然と力が加わり、昨日見たばかりの真っ白な
脹らみが頭の中に蘇って、
 「……ん……ん〜〜〜〜〜ん?」
 「って!」
0192名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:12:35.51ID:5FUL4Xm4
 兄の体重を受け止め、やや動きにくそうに優香里が上半身を起こす感触。
 慌てて胸から手を放し、もう四の五の言っていられる状態ではなくなった浩一は優香里の
ウエスト辺りを掴んで、
 「うわ細っ!?」
 などと感心している暇のなく一気に頭を引き抜く。
 「お……おい、優香里!」
 「ふぇ?」
 起き抜けの優香里は、起き上がっても急速な事態の推移に思考が追いつかない。
 というか何が起こっているのか認識できていない。
 ただ妙な『くすぐったさ』で目が覚め、その途中で抱きしめていた枕代わりを失い、一気に
押し寄せてきた肌寒さで目を擦りながらキョロキョロと周囲を見回している。
 慌てて距離を取った浩一にとって、最初にして最後の好機だ。
 「……あに……き?」
 ぽ〜〜っ、とした寝ぼけ眼で兄の姿を視認し、小首を傾げる優香里。
 「ほ、ほら! 目が覚めたんなら自分の部屋に帰れって!」
 「ほぇ? あたしの……おへや?」
 「お、おぅ!」
 「ん〜〜〜〜ん?」
 トロンとした目で不思議そうに唸る妹の肩に手で……掴んで揺らそうとした浩一だったが、
なんだか違うような気がして頭の上に手を置き、髪をかき混ぜるように撫でる。
 「えっと、いまは……ほら、まだ早いからな? ちゃんと寝てこいって?」
 二人揃って寝落ちした所為で部屋の電気は点けっぱなし。
 いまのいままで時間を気にしていなかったが、改めて確認すると、まだ真夜中だ。
 自分はともかく、妹がウトウトしているのも仕方が無い。
 「ん〜〜〜……」
 少し乱暴に撫でられて頭を揺さぶられながらも、今にも目蓋が落ちそうな優香里。
 「って座ったまま寝るなって!」
 よほど心地良いか、女の子座りのまま目を瞑って船を漕ぎ始めてしまう。
 「……らってぇ……まだねみゅい……」
 半分以上寝ている妹の舌っ足らずな声も意外と可愛いが。
 「もしかして低血圧とか?」
 「す〜〜〜〜〜〜〜……」
 「って、おいっ!?」
 「あにきの……におい……す〜〜〜〜っ、す〜〜〜〜っ……」
 そのまま浩一に寄りかかり、幸せそうに顔を擦り付けながら沈没。
 なんとも可愛らしい寝顔で再び熟睡モードに入ってしまった。
0193名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:13:57.48ID:5FUL4Xm4
 そして翌朝。
 「…………兄貴のヘンタイ!」
 結局、妹を引き剥がしてベッドを譲り、勉強机に座って自分の腕を枕代わりに眠ることに
した浩一だったが、再び目を覚ますと毛布を羽織って顔の下に枕を敷いていた。
 どうやら優香里の方が早起きだったらしい。
 そして変な姿勢で二度寝したお陰でアチコチ痛む身体に鞭打って普段を同じ時間に家を
出ると、これまた普段と同じように先に家を出ていた優香里に待ち伏せされた。
 「妹の寝顔とか見てニヤニヤするとか、信じらんないし!」
 「するか! だいたいお前、なんにも覚えてないだろ!?」
 覚えていて、この反応は有り得ない。
 「覚えてなくても分かるっての! ヘンなこととかしてないよね!?」
 「へへ、へんな事ってなんだよ変な事って!?」
 「あーっ、ドモった! 超怪しいし! 絶対してるし!」
 肩を並べて歩く姿だけなら仲も良さげに見えないこともないが、交わしているのは
会話ではなく応酬だ。
 それはそれで、ある意味では兄妹らしいと言えるが。
 「だから勝手に決めつけるな! 何もしてないって言ってるだろ!」
 「じゃあアタシが起きるまで一緒でも良かったじゃん!」
 「……へ?」
 「えっと……つまり、あ、兄貴は色々頑張ってくれないとアタシが困るし! だから椅子で
寝るとか絶対にないし! アタシを一人にするとかありえないのっ!!」
 ぎゅっ、と腕に抱き付いて体重を預ける優香里。
 耳まで真っ赤に染めながら。
 「お、おいっ!?」
 「も、もう子供じゃないし! これくらいヘーキだし! だから、兄貴はアタシにエンリョ
するの禁止! 次も逃げたらマジ怒るから!」
 肩の辺りに頬を擦り付け、形が変わるほどに強く胸を押しつける。
 べったり、という言葉が出てくるほどの密着度だ。
 「どう? イヤ?」
 照れ隠しなのか、拗ねたような顔で下から睨んでくる。
 「い、嫌って言うか……歩きにくいし、誰かに見られたら……」
 子供じゃないから駄目だろ、とは言い出しにくい柔らかさ。
0194名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:16:27.73ID:5FUL4Xm4
 「あ、歩きにくいのは兄貴だけじゃないし! 兄妹だから見られても平気だし!」
 見るからに『いっぱいいっぱい』な様子も、段々愛らしく見えてきてしまう。
 「ま、まぁ……そうだけどな」
 しかも実際、多少気恥ずかしいだけで嫌ではないのだから質が悪い。
 きっと相手が妹だからだろう。
 「でしょでしょ? ねぇ兄貴?」
 「うん?」
 「アタシ、兄貴が兄貴で良かったかもって感じなんだけど、兄貴はどう?」
 他に人通りもないお陰か、徐々に余裕を取り戻してきたらしい優香里が悪戯っぽい笑みを
真っ直ぐに向けてくる。
 「俺が俺で良かったって意味が……まぁ分かるけど……」
 要は、浩一が実の兄で良かったと言いたいのだろう。
 「それでそれで? 兄貴はどう? アタシが妹で良かったよね?」
 ただでさえ歩くづらいというのにピョンピョンと跳ね、望む答えを要求してくる様子は
妹と言うよりも子犬か何かのよう。
 「ま、まぁ良いも悪いも妹は妹だし……って痛い痛い痛いから腕を抓るなって!」
 「よ・か・った・よ・ね?」
 今度はリスの様に頬を膨らませ、これ見よがしに『怒ってるんだけど!』とアピール
する優香里。
 これでは妹と言うより彼女みたいだ、と何気なく感じた次の瞬間、何故だか先ほどとは別の
気恥ずかしさが浩一の中で急激に脹らみ始める。
 「……嫌だったら一緒に歩いたりしないし、一人で落ち込んでるからって心配したりも
しないだろ……」
 自然と、ぶっきらぼうな声になってしまう。
 「ふ〜〜〜〜〜ん?」
 「な、なんだよ?」
 「べっつにぃ? ただぁ、兄貴も結構メンドクサイなぁって思っただけですけどぉ?」
 「はぁ!?」
 「でもまぁ、今日はこれくらいで許してあげよっかなぁ?」
 「おい!?」
 「その代わりぃ、これから兄貴はハンコーするの禁止だから。アタシがハッサンさせたげる
時には絶対逃げないでよね? 兄貴のためなんだから!」
 「…………」
 満足そうに前を向く優香里が眩しくて、なにも言い返せなくなてしまう浩一。
 「そんでもって、絶対に合格してよね? それまで応援するから?」
 「……お、おぉ」
 「んで、兄貴はアタシとがカレとシンテン出来るように助けてね? いまのままじゃエッチ
どころかキスも出来ないし! そんなのありえないもん!」
 「っ!?」
 「って言ってたらカレからだ! ごめん兄貴、なんか待ち合わせしたいーとか言ってるから
アタシ先に行くね? ばいばーい!」
 迷うことなく抱擁を解き、一度も振り返ることもなく駆け足で去って行く優香里。
 ぽっかりと穴が開いたような空虚感で声も出せない浩一は、遠ざかってゆく妹の背中を呆然と
見送るしかなかった。
0195名無しさん@ピンキー2019/10/22(火) 23:19:38.67ID:5FUL4Xm4
ここまで
で、一応の一区切り

個人的な見解だけど、
催眠モノの楽しみ方の一つには催眠の影響で変質してゆく日常ってのもあるんじゃないかと>言い訳
0197名無しさん@ピンキー2019/10/23(水) 21:04:51.54ID:FylbYwB0
キリが良いので更新しといたぜ。どっかミスあったらよろしく
ttp://saim.in
>>157 はブレザーとセーラーどっちを直せば良いんだろう
とりあえずセーラーをブレザーにしといたけど
0202名無しさん@ピンキー2019/11/02(土) 22:19:28.70ID:zjSHOvVj
 それから数日後。
 浩一の計画は全く進んでいなかった。
 優香里の頑固さ、と言うよりも粘り強さが浩一の予想以上だったからだ。
 この期に及んで、唯一頼りになると思い込まされている兄を放り出してチャラ男の呼び出しに
ホイホイ応じるとは思ってもいなかった。
 まぁ浩一が知っている限り優香里の恋愛は今回が初めてだし、騙されて優しくて理解力もある
男だと思い込んでいるのだとすれば、わからないことはない。
 だがチャラ男の執念深さの方は、本当に腹立たしいの一言しか無い。
 いままで散々取っ替え引っ替えしてきたくせに、手を出そうとする度に腹を下してしまうような
面倒くさい優香里を何時までも引き留め続けるつもりなのか。
 もしかして、今度ばかりは本当に好きになっているとか?
 「いやいやいや!」
 優香里は大切な妹だ。
 学年が二つも違うし、ここ何年かは互いに不干渉状態だったが、最近の変化とともに接する機会が
急激に増えた妹は……結構可愛い女の子である。
 容姿だけじゃない。
 少々喜怒哀楽が激しいような気もするが、どの表情も活力に満ちていて明るい。
 それに始終ジャージ姿でいた頃は気付かなかったが、ちゃんとした格好をすればスタイルも良いし、
いざ気合いを入れればファッションセンスだってある。
 それに自分の欠点を指摘されれば渋々でも受け入れて直すし、少し素直さに欠けるとは言え、
文字通り身体を張って償おうとしたり、兄を気遣う優しさもある。
 今度こそチャラ男が改心したかも、等という可能性だけで任せて良いような子じゃない。
 やはり取り返さなくては。
0203名無しさん@ピンキー2019/11/02(土) 22:21:17.96ID:zjSHOvVj
 とは言え、話はそう単純ではない。
 浩一自身の催眠術の技術というか、使い方が稚拙だった為に肝心な優香里に想像を超えて
多大な負担を強いてしまった。
 その所為もあって、結果的に優香里とチャラ男の仲を持つような話を請け負った。
 反故にするような結果になれば、優香里からも美空達からも信頼を失ってしまって何もかもが
水泡に帰しててしまう。
 つまり表面上は優香里の悩みを解決しつつ、破局に持って行く必要がある訳だ。
 正直、当初よりも問題が複雑になってしまった感は歪めない。
 しかも何もかもが浩一の自業自得と来ている。
 この数日間、数え切れないくらいに考えても全てが丸く収まる方法なんて浮かばない。
 もう、いっそ何もかも……
 「いやいやいやいやっ!」
 頭を振って弱気を追い出す。
 発端は偶々だったが、事情を知った以上は頓挫は無い。
 優香里が散々な目に遭わされて、一生傷を負って生きてゆくなんて到底受け入れられない。
 いま、多少辛い思いをさせるとしても守ってやらなければならない。
 そのために初歩的な催眠術だって取得したし、これから更に勉強しても良い。
 もっと効率的で優香里の負担も無い方法を……

 「……お兄さん?」

 気がつくと、何かが日差しを遮っていた。
 昼休みの屋上。
 心中を嘲笑うかのような快晴の中、落下防止のフェンスに寄りかかりながら空を仰ぐように
考え込んでいた浩一の顔を上から相原美空が覗き込んでいた。
 「お、おぉ……じゃなくて! えっと、こんにちわ相原さん」
 「うん、こんにちわお兄さん」
 慌てて居住まいを正す浩一。
 クスクスと笑い、スカートの裾を気にしながら浩一の横に腰を下ろす美空。
 「……もしかして、ずっと見てた?」
 「ずっとって程じゃないさ。そうだね……ほんの10分くらいかな?」
 「それ、ずっとって言わないか?」
 「かもね?」
 なんとも気まずい思いで顔が熱くなる浩一。
0204名無しさん@ピンキー2019/11/02(土) 22:22:27.93ID:zjSHOvVj
 反対に、とても楽しげな美空。
 「ところで相原さん、最近……」
 「優香里なら元気そうだよ。割とね?」
 毎度、と言うほど何回も話をしているわけでは無いが、必ずと言って良いほどにペースを
崩されて翻弄されてしまう浩一。
 「そ、そうか」
 「そうだよ。でも、感心はしないかな? 女の子と二人っきりで話してるのに、真っ先に
他の子の話題を持ち出すのはマナー違反だと思わないかい?」
 「あ……ご、ごめん」
 浩一は三年。
 美空は一年生。
 妹という同じ年頃の女子が身近にいるにも関わらず、何とも不甲斐ない限りだ。
 「なんてね? お兄さんが優香里第一なのはボクも重々承知しているし、別に怒ったりは
してないよ。色々苦労してるみたいだし?」
 「……面目ない……」
 項垂れてしまう浩一。
 「そ、そんなに落ち込まれるとボクの方が困っちゃうよ! いまも言ったけど、ほんの
冗談だからね? 別にまだお兄さんと付き合ってるって訳じゃ無いし、むしろ優香里の事を
お願いしたのはボクの方なんだから全然気にしてないって!」
 余裕ありげな笑みを崩し、眼鏡がズレそうな勢いで手を振り狼狽する美空。
 珍しい、と言うか美空が慌ててる所を見るのは初めてだったが、残念なことに浩一の方にも
意趣返しをするだけの余裕は無い。
 「そう言ってくれて助かるけど……」
 下手なことを言えない以上、自然と口数が減り言葉尻も下がってしまう。
 「ううん、お兄さんは本当に頑張ってるって思うよ? だってほら、優香里だって最近は
刺々しい雰囲気も出してないし、本調子って程じゃないけど段々元気になってきてるよ?
それだけでも、お兄さんは充分に凄いって!」
 「……そうか……」
 それは優香里の心労が多少なりとも軽減されている証拠である反面、チャラ男との関係が
良好に……もとい悪化していることも裏付けてしまっている。
 浩一としては、素直に喜べない。
0205名無しさん@ピンキー2019/11/02(土) 22:23:48.06ID:zjSHOvVj
 「きっとあれだよ! お兄さんは受験と優香里の両立で少し疲れてるんじゃ無いかな? 
だから思考がネガティブになって……えっと、そうだ! 甘い物とかどうかな? きっと
元気が出るよ? ちょうどチョコレートが……」
 ごそごそごそ、とポーチから美空が何かを取り出している気配。
 「……………」
 「……はい、これ! ほらほら、俯いたままじゃ食べさせてあげられないじゃないよ? 
だから、ちょっとだけで良いから顔を上げて……はい、あ〜〜ん!」
 「わ、わるい……あむ……」
 と、差し出された一口サイズの市販のチョコレートを半ば条件反射で口に入れる浩一。
 細くて柔らかい下級生の少女の指先ごと。


 「「あ……!」」


 先日、甲斐甲斐しく唐揚げやら何やらをフォークで食べさせて貰ったお陰で耐性が付いたと
言うか、妹と同じ年の美空に甘やかされることへの抵抗が減衰した浩一は、心ここにあらずの
状態で促されるままに大きく開け、チョコレートを摘まんでいた美空の親指と人差し指を
半分以上口の中に含んだまま。その質感で己の失態に気がついて固まってしまう。
 そして、それは慌てて指を引き抜いた美空も同様ならしく。
 溶けたチョコレートの残滓と、浩一の唾液に塗れた自分の指先を目の前まで引き戻し頬を
染めながらマジマジと見つめた後、
 「ちょ、ちょっと待った!!」
 ぷるぷる震えながら自分の口の中で清めようとする寸前で浩一に手首を掴まれ、取り出した
ハンカチで拭われた。
0206名無しさん@ピンキー2019/11/02(土) 22:25:48.99ID:zjSHOvVj
 それから数分後。
 「と、とりあえずさ? 元気は出たよね?」
 「えっと、まぁ……おかげさまで……」
 何とも気まずい空気の中、それでも二人は並んで座っていた。
 「や、やっぱりね、あれだと思うんだボクは。お兄さんは過保護だと思うんだよ、優香里に
関しては。お願いしたボクが言うのもなんだけど、そろそろ良いと思わないかい?」
 そんな雰囲気を払拭する為か、やや強引に話題を変える美空。
 「……良いって言うと……」
 「よくは分からないけど二人の縒りも戻り始めてるし、そろそろ放任しても良いかなってこと。
お兄さんが優香里を大切にしてるのは悪いことじゃないと思うけど、これは優香里自身の恋愛の
問題なんだし、ここから先は優香里と彼氏とで解決しないと駄目だと思うんだ」
 「そ、そう……かな?」
 「そうだよ。今回は初めてのことだったし、目に見えるくらいに酷い有様だったから手を貸して
あげないと駄目だったと思うけど、これから先も障害にぶつかる度にお兄さんに頼ってばっかりって
訳にもいかないしさ? 乗り越えられる目処も付いたみたいだし、当の優香里自身はともかく、
お兄さんまで心労で項垂れちゃうなんて、ちょっとおかしいよ」
 「でも……」
 「でも、じゃないよ! 自分の恋愛で悩むならともかく、お兄さんはお兄さんであって優香里の
彼氏じゃないんだから、何処かで見切りを付けるって言うか、親離れならぬ兄離れさせてあげないと
一生独り立ち出来なくなるよ優香里は? お兄さんだって、それは困るよね?」
 「……まぁ」
 「だから、お兄さんにお願いした手前もあって……この前、優香里がボクとお兄さんのことで
ヤキモチを焼いて電話してきた時にも少し注意しておいたんだけど……」
 「お、おぅ……」
 どうやら先日、部屋に押しかけてきた優香里と抱き合ったまま寝てしまった日の事らしい。
 その時に優香里が『みっくんに怒られた』とか何とか言ってたのを思い出す浩一。
 「……お兄さんの疲れ具合から察するに、あまり効果は無かったみたいだね」
 「そ、そうか……ちなみにだけど、どんな風に注意したのかな?」
 「えっとね……ボクとしては特別な事は言わなかったとつもりだけど、お兄さんは受験勉強だけでも
大変だから過度な負担を与えないように気をつけた方が良いとか、いくら優しくて頼りになるからって
依存しすぎて一方的に感情をぶつけてないかとか、お兄さんはお兄さんなんだから労る気持ちも持って
色々考えないといけないとか、そんな感じかな?」
 「じゃあ、あの……自制心とか発散とかって話は……?」
 「それも当たり前のことしか言っていないさ。彼氏じゃないんだから、色々ストレスが溜まっている
ところに他人の色恋沙汰で繰り返し愚痴を聞かされたり筋違いな嫉妬心で責められたりしたら腹が立って
当たり前だって教えただけだよ。お兄さん、ボクとのことで優香里から彼女みたいに問い詰められて
我慢できなくなったんだよね? だからお兄さんにだって誰にも迷惑を掛けることがない範囲でなら
自由に発散させる権利があるし、そういう時間を持たせてあげないとって」
 「な、なるほど……」
 どうやら美空と優香里の間で、話の受け取り方の齟齬があったらしい。
 それも双方共に。
0207名無しさん@ピンキー2019/11/02(土) 22:28:09.22ID:zjSHOvVj
 「それに……あくまでも、これはボクの個人的な見立てだけど……いまの優香里って結構危うい
所に立ってると思うんだ」
 「危ない所って?」
 「ボクの気のせいなら良いんだけど、ちょっと言い方が悪いけど両天秤って感じかな? 優香里の
中で彼氏とお兄さんが同率になりつつある気がするんだ。普通なら彼氏のことで頭がいっぱいで当然
なのに、お兄さんの存在が同じくらいに大きくなってる感じがして正直、心配だよ」
 つまり優香里の中でチャラ男のウエイトが減りつつある、という意味である。
 「それ……まずいかな?」
 「当たり前だよ! 外では彼氏、帰ったらお兄さん、で両方とも自分の物にしておきたいなんて
不誠実そのものじゃないか! 仮に……えっと、ボクがお兄さんの彼女だとして、こうやって昼間は
お兄さんと一緒にいるボクが、家に帰った途端に弟たちと異常にベタベタしてて面白かい?」
 「……それは……面白くないかも」
 「だよね? いまは彼氏と微妙に距離を取ってるから問題化してないけど、何かの拍子に気付かれたり
したら一巻のお終いだよ? そうなったら……だから過保護は良くないよ」
 これが普通の恋愛なら、確かに美空の言い分が全面的に正しい。
 だが今回の優香里の場合は事情が違う。
 美空の言う通り、絶妙なバランスで均衡を保っているのなら崩すチャンスでもある。
 浩一の方に傾ける事が出来れば優香里の気持ちをチャラ男から引き離すことも難しくないのだ。
 「つまり相原さんの見た感じ、いまの優香里は……こっちにも?」
 「まだ流石に恋愛と混同するほどじゃないとは思うけど、余り良くない傾向だと思う」
 真剣な顔で前方を見据える美空の様子から察するに、冗談などではないらしい。
 その横顔を見つめる浩一の中で、黒い感情が徐々に脹らみ始める。
 「じゃあ……今後、どんな行動を避けた方が良いと思う?」
 「とにかく、優香里との距離感を考え直した方が良いのは確かだね。家の中での優香里が、どのくらい
お兄さんに甘えているのかは知らないけど……まずはスキンシップ的な行為は減らしていくことをお勧め
するかな? でも意識的に優香里を避けたりしたら駄目だよ? まだ不安定みたいだし、幸いって言うのも
失礼だけど、お兄さんは受験生だし、それを言い訳に少しずつ自立させる感じで」
 「……なるほど」
 つまり、その逆を行けば優香里は一層浩一に依存してゆくわけである。
 「あとは、その……お兄さんが他の女の子と付き合うのも一つの方法だけど……」
 それは確かだろう。
 だからこそ論外だ。
 「色々と厳しいかな。受験もあるし」
 「それは相手の子次第じゃないかな? 例えば家庭的で奥ゆかしいって言うか、つまり、余り
我が儘も言わなくて身近でサポートしてくれる子なら受験も恋愛も……ね?」
 「そんな子がいたとしても、一方的に尽くされるのは気が引けるよ」
 優香里の方から別れさせる為の貴重なアドバイスだ。
 早速、作戦を練り始めながら差し障りの無い返事を返しておく浩一。
 「そ、そういうものなのかな……?」
 「でも相原さんの言うとおりに頑張ってみることにするよ。ありがとう」
 「う、うん……」
 物言いたげな美空の視線も、既に浩一の目には入っていなかった。
0208名無しさん@ピンキー2019/11/02(土) 22:32:10.95ID:zjSHOvVj
ここまで
次回辺りで、ようやく催眠に戻れるっぽい? がるるっ>意味不明


>>197
乙です
ブレザーでオナシャス
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