>>398
 同じような人は同じようなところに集まる。
 私は、正統派…女は決まった男にしか体を許さない…という両親から生まれてその両親に育てられた。周りもみんなそうで、私ももちろん正統派だ。
 中学までそれに何の疑問も持たなかった。高校生になっても、そのはずだった。

 しかし、入試当日に熱を出して、入るはずの近くの高校に行けず、二次募集で受かった遠い高校に、入った。

 入学式の日、私は高校へ歩きながら、同じ方向に歩く同じ高校の生徒たちを眺めた。

 「おはよう」「おはよう」
 目の前の男子と女子が挨拶してキスした。これは別に変ではない。両親同士とか、彼氏ととか、キスするのは普通だ。
 「おはよう」
 横の道から出てきた別の女子がさきの男子にキスした。
 え…
 そのあと追いついてきた別の男子が後ろから先の女子たちに声をかけて後ろから両手でそれぞれの女子の胸を掴んだ後、その手をスカートの中に運んだ。
 女子たちは声を上げたが、それは嬉しそうな声に聞こえた。

 ああ、この辺、乱交派が多い地域なんだね。そんな野蛮な人たち、今まで全然興味なかった。
 高校の門に入って、私は見たくないものを見ないように歩いた。
 しかし、ところどころにある、男女が抱き合っているようなピクトグラムは、何だろう?

 入学式は、だいたい普通だった。
 ただ、校長の「セックスは、相手のことを考えて。同意なきセックスは、だめです」
 という言葉は、今までの生活からは想像できないものだった。

 「この学校では、セックスしていい場所といけない場所は表示で分けています。守ってください」
 そのあとの生活指導の先生の説明の中に先のピクトグラムが出てきた。
 その、男女が抱き合っているような表示が掲示されている場所は、セックス可能。それに斜めの線が引いてある表示が掲示されていると、セックス禁止。

 …校内で、セックスしていいなんて…乱交派って、そんな我慢できないの…

 その後、教室に入って、自己紹介の時間になった。
 ほとんどの女子は“私はこういうセックスが好きです”のように、セックスすることが当たり前のように語った。
 私は、名前を名乗った後「私は、正統派です…彼氏もいます…」と、あまり大きくない声で震えそうになりながら言った。
 「何!超保守派!」
 男子がそんな言葉を投げかける。
 その後、委員長が選出され、委員長の司会で最初のホームルームが始まる。
 
 「まず、この教室をセックス可能にするかセックス禁止にするか、決めます」
 「え、セックスするに決まってるでしょ」
 「禁止なんてありえない」
 どちらも女子の声が続いた。
 「では、セックス可能で、よろしいですね。賛成の方は、拍手を」
 私以外の全員が拍手したようだった。
 「では、この教室はセックス可能に決まりました」
 委員長は椅子に乗って、壁に「セックス可能」のピクトグラムを取り付けた。

 「では、ホームルームを終わります…先生、休み時間に入っていいですか?」
 「いいですよ」
 後ろで座っていた担任はその声とともに扉を開けて去っていった。