「…わ、私はやっぱり「死んだ」んですか?」
「うむ」
千穂は、改めて自分の今のこの状況や状態が普段とは違うことを認識する。
そしてすぐ目の前にいる「何者」かのその姿が、恐らくはとした千穂の推測に確信を抱かせた。
そしてそれを聞いた。
「あなたは、「死に神」ですか?」
「…怖いかね?」
その声は不思議な響きだった。
威圧するでもなければ、なにか荘厳な神託を感じさせるものもなにも「無い」とした―
しかし、それが千穂にとってのこの上ない「不気味さ」だった。
「はい、怖い…です」
「その割には、君は随分と冷静なようだが?」
声の質は変わらない。
(ああ―)
千穂は理解した。
彼に「命は無い」
命のある者、過去にあった者には永遠に届く事の「無い」位置と存在、
自分の目の前にいる彼こそが、本当に「死に神」である事。「命の究極的対岸」。
だから「怖い」と。
生き物の本能が心に告げるのだと―
「冷静、なんでしょうかね?結構頭の中はこれでもパニック状態なんですが…
顔には出ないみたい、です」
「ふむ、言葉に嘘はないようだ」
そこに。
「千穂殿!!」
千穂には聞き覚えのある人の声が響き渡った。
「え?!―な、何でここに…鈴乃さんが?」