両親が口をそろえて言ったことは
「卒業して仕事に就く時にしなさい」
M子のことは話さず、ひたすら説得を続けること2時間余り、学費以外の生活費
家賃その他の援助を求めないことを条件に、父が保証人になってくれました。
その日はM子はまだ休んでいましたがR美の話では、殆ど腫れもひいてきたので
明日から出てくると言っていたとのことでした。
翌日、朝一で銀行に行き教習所に通うつもりで貯めた貯金を下ろして不動産屋に
支払いに行きました。既に家主さんの了解は頂いてくれていて、家の鍵を受け取りました。
そして午後からバイトに行くとM子は既に来ていました。
左目の目尻と頬、口の下に絆創膏は貼っていて、見た目にはさほど大した怪我には
見え無い程度でしたが、調理の方にまわって作業していました。
店長からは「今日は僕がレジに立つから、N君厨房の方頼むよ!」
そういわれてM子と他の後輩男子達と調理にまわりました。
お昼時のピークも過ぎ、ようやく落ち着いた頃にM子に声をかけました。
「アザ、治まってきたみたいだね。よかった。」
「はい、ご心配かけてすみませんでした。」
「いいって。それよりね・・・」
僕はM子に借家を借りたことを知らせました。M子は凄く驚いて
「Nさん!本当にそんなことまでしてくれたんですか!?」
「あ・・・うん。もしかして、迷惑だった?」
いくらなんでも、思い込みと勢いだけで先走りし過ぎたかな・・・その時
初めて気がつきました・・・。
でも、M子は目にいっぱい涙を溜めてこう言ってくれました。
「あ、ありがとうございます!・・・私、この店に入って、Nさんに出会えて
 本当によかったと思います!!」
僕は、少し恐る恐る聞いてみました。
「でね・・形としては、俺と同棲ってことになるんだけど・・・構わない?」
「もちろんですよ!聞くまでもないですよ!今日はR美と一緒に5時上がりなんで
 早速用意しておきますね!」
M子は、思った以上に喜んでくれた。僕もその日は7時で上がらせてもらって
M子と一緒に借家にむかいました。