ゆかこって名前の同級生がいて、家が近所だったから
住んでいる家とか家庭環境が微妙なのはわかってたので、
中学出てすぐ就職と聞いてもみんな触れないようにしていた。
物静かで存在感無かったから、特にいじめの対象にもなったり
してなかったし、昼休みはいつも図書室みたいな。
とても小柄で、中学の制服とかジャージも身体に余ってた。
家が近所だったせいで、彼女もなんとなく自分には普通に
接してくれていた。特に意識とかしなかったけど、どことなく
秘密を抱えているような、妙な感じが嫌では無かった。
けれど、やはり中学を卒業してからは全く接点が無かった。
そして、あれから15年経って、地元の病院にシステム保守で
行った時、ロビーのモップかけをしていた清掃婦さんに自分が
落としたLANケーブルを拾ってもらった。
その清掃婦は、紛れも無くゆかこだった。
あの頃のままの小柄な姿はますます小さくなったように感じた。
苦労してきた跡なのか、とても同級生には思えない姿で、全く
化粧っ気も無い地味な雰囲気の、背中まで伸びた髪を束ね三角
巾を巻いた作業服姿は40過ぎのおばさんにしか見えなかった。
そして、彼女に声をかけることは出来なかった。ただ「すみません」
と一言だけ残し、作業に取り掛かった。
作業が終わった頃には彼女は当然居なかったが、幼い頃の環境を
大人まで引きずってしまうのって、なんか虚しいなと思う。
もう1ヶ月も経つのに、もやもやしたままです。