修理は程なく終わり、とっとと帰ろうと道具を片付け、念のため社長に連絡
しようと、車に一度戻ろうとしたら、さっきは気づかなかった居間?の脇の
小部屋で、中学生くらいの女子が壁にもたれかかって座り、本を読んでいた。
小部屋も窓にビニールが貼られ、そこから漏れる光が余計に悲しい。よく
わからない箱やごみ、衣類が散乱している中、女子は黙々と本に視線を
落としている。そして、一度そらした視線を再度向けると、瞬時に胸が痛くなった。
白い?Tシャツの肩に大きな穴、学校のジャージの膝にも大きな穴、靴下にも穴、
小汚いおばさんと同じくらい小汚い女子は、ぼっさぼさの髪を指で掻き分けながら
生気の無い顔で「こんにちは」と小声でおれに挨拶した。これくらいの年ならお洒落
とかもしたいだろうに・・・世の中なんかおかしくないか?
車で社長に連絡すると、「そこの家は金もらわなくていいから、いろいろ事情あって
たまに面倒みてるから、そーっとしておいてくれ」と言われた。お代はいいです、と
おばさんに言うと、「いつも本当に申し訳ないです、社長によろしくお伝えください・・・」
と玄関先で土下座され、見るに見かねて小屋を後にした。