毎日新聞の客員編集委員である牧 太郎氏が、9月28日付の夕刊コラム「牧 太郎の大きな声では言えないが」で
「薩長史観』は大嫌いだ!」と、読み手には‘随分高ぶって書いているな’と思わせる一文を寄せている。

「牧太郎の大きな声では言えないが…:「薩長史観」は大嫌いだ!」
(毎日新聞 2015年09月28日 東京夕刊)より
http://mainichi.jp/shimen/news/20150928dde012070007000c.html

 断っておくが、江戸っ子である。
実家は東京・柳橋の「深川亭」という料亭。戊辰戦争で旧幕府軍を率いて蝦夷(えぞ)地を占領、
一時は「蝦夷共和国」の総裁となった榎本武揚と縁が深く、箱館戦争で降伏、
その後、明治政府に仕えた榎本は「深川亭」を拠点に「江戸っ子会」を起こし「江戸の思想」を守る同志を糾合していた。
 そんな家柄だから、母は「勝てば官軍!」の薩長(さっちょう)が大嫌い。薩長のイナダイ(田舎代議士)は客にせず!
がモットーで、結局、昭和38(1963)年に店を潰した。
 僕はそんな環境で育ったから「明治維新は日本の夜明け」とは思わない。薩摩や長州の勤皇の志士が正義。
皇国にあだなす徳川幕府の賊軍を撃破し、美しい皇国をつくった!というストーリーなんて……。
(略)
 勝てば官軍? たとえ道理にそむいていても、戦いに勝った者が正義となり、負けた者は不正。
この「薩長史観」が日本国の戦争の背景には常に存在した。
(略)
 断っておくが、鹿児島県(薩摩)、山口県(長州)に悪感情を持ってはいない。でも、政治家の「薩長史観」には腹がたつ。
 山口県出身の8人目の首相、安倍晋三さんは「勝てば官軍」の申し子だ。
「美しい国」というキャッチコピーで「戦勝国から押し付けられた価値観を大事にする自虐的な歴史観から脱却しろ!」と言い続ける。
「正しい戦争(=集団的自衛権行使)」に勝利しろ!と言わんばかりだ。
 物事は勝敗によって正邪善悪が決まる!と信じ、「他国の戦争に巻き込まれることはない」などと平気でうそにうそを重ね、
安保関連法を強行採決した。
 江戸っ子は「正義」を装い「うそ八百」を並べるやつらが大嫌いだ。