(続き)
【2ーb、小便の工夫】
トイレでは女のように「しゃがんで」もしくは「座って」しなきゃならない、と
いつも思い込んでいた。
何年もの間、おれは女の排尿に似せるため、ペニスをもって方向を維持したり
できないようにしてしまう工夫をいろいろしていた。(女装趣味者のタックという
睾丸を体内に隠す技は、おれの陰嚢が大き過ぎてむりだった。)
例えば、陰部をまるごと後に回して股間に押しつけた状態でテープで固定して、
股間を平にしてから、上からガーゼで覆い、性器の切断手術を受けた様子を模造
してみたり。これは見た目だけで精液がもれてくるほど興奮した。ペニスの先を
少し出して、後ろ向きに小便が出るように工夫してみたこともある。これだと
男子用小便器が使えない。尻の谷間や肛門までびちょびちょになり、ドキドキする
ほど刺激的だった。

【3ーa、性転換手術】
おれは通常のトランスセックスではない。(そもそもトランスセックスではないの
かも。)だから性転換手術もきわめて特殊な注文をすることになった。医者は
面食らったが、また興味も示して、おれに協力してくれた。結果は、女性器の外観
はどうということもないものだった。おれは女性器の外観の出来の良さには
まったくこだわらなかったし、深い興味もなかった。(性同一障害者の場合、
そういう患者はきわめて珍しい。普通は精神不安定になるほど過剰に外観の出来に
こだわる。)しかし特殊な機能がついていた。世界でおれにとってのみ意味のある
機能だが。そして、正確には、機能がついているというより、ある機能をあえて
壊した状態なのだが。
(続く)