すれ違った後、直ちに踵を返し彼女の背中を追った
電車を二本乗り継いだ後、彼女は改札口が一つしかないやや寂しい駅で降りると、駅前のコンビニの横の脇道に入って行った
線路沿いに続くこの道は、やがて長くキツい登り坂となった。その坂道の頂上にポツンと建つ低層の賃貸マンションの前で彼女の脚が止まった。ガチャガチャとエントランスの柵を開ける音がする
こちらはそのまま建物の前を通り過ぎる
エントランスの前に差し掛かった刹那、一階の奥の部屋へ背中を丸めて入って行く彼女を視界の隅に捉える。
3分ほど時間をおいてから、再びマンションの前まで引き返し、郵便受けの名前を確認する
一階の一番奥のものと思われる部屋番号が書かれた郵便受けの表札には、部屋の契約者であるらしい法人名と、ごくありふれた苗字が併記されていた
勤め先の借り上げ住宅なのだろう
個人情報保護もヘッタクレもないな、独り言を呟き帰宅の途に着いた