83 :名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 16:22:29 ID:rRDSMZ190
16.

気持ち悪さに耐えながら、もう一方の手を篭手の中に通してゆく。
一旦手が入ってしまうと、筒の部分が再び締まり、彼女の両手を絶妙な力で拘束していた。
親指と四本指に分かれた不自由な篭手、それはただ竹刀を持つためなら十分な形状である。

女性の象徴であるふくよかな胸部は、すでに硬い胴におさえつけられている。
彼女の白いうなじも、美形の素顔も、重い面の中に収められた。
細い魅力的な指は、分厚い篭手に包まれ、感覚は手の内の鹿革を通してのみ
伝わってくる。こうして容赦なく分厚い防具のなかに肢体が次々と封印されてゆく。
かろうじて、面の後ろからはみ出した束ねた髪が、着装した剣士が女性であることを主張していた。
凛々しく、たくましい姿ではあるが、重い防具の見えない内側では、美女が汗の匂いと暑さと
息苦しさに悶え苦しんでいるのである。

横を見ると、智美も着装を完了していた。すると気づいた智美もこちらを見た。
面金越しの智美の顔は、面にきつく締め上げられ、頬の部分がやや膨らんでいるようだった。
鼻先にはすでに汗が噴きだして光るのがみえた。目で合図すると智美が気合を入れた。
「全員起立っ!」
くぐもった声が行き渡った。

フル装備の女剣士たちの稽古前のトレーニングメニューが始まった。