完全な無臭(=清浄な空気)ではもちろんなかったけど、肺から吐き出された心地よい体温と水分、
そして微かな内臓臭(決して不快でない)が俺の顔面を覆った瞬間、
俺は音をたてないようにその娘の肺から出て小さくて美しく開いた口を経由して吐き出された二酸化炭素と酸素を、
鼻と口の両方から吸い込み、俺の肺の隅々まで送り込んだんだ。
その瞬間、俺はその娘のことがたまらなく愛おしく感じ、
この娘の吐いた息で俺の体全体、毛細血管の末端まで侵されていることにとてつもない興奮と喜びを感じたんだ。
人を愛するって、そういうことなんだと一瞬で悟った。
女の子の息を吸って俺は愛を知ったんだ。