どこかに入らなきゃ・・・由美子はそう思ったが少ないお金を無駄にしたくなくて
大きなバラエティショップに入った。黄色い看板とうるさい音楽とペンギンが目印の
そのお店は、雨宿りにはちょうど良かった。

由美子は傘を探した。しかし何階を探しても傘は見つからない。
お店の店員に聞いたら親切に案内してくれた。
由美子が「有り難うございます」と店員にお礼を言うと店員はその場を離れた。

由美子は傘の値段を見た。安くても500円ほどする。自分のお金の少なさを
思うと傘の購入が躊躇われた。

どうしよう・・・お金ないよ・・・でも傘を買わなきゃ歩けないし。お金さえあれば・・・。
その時由美子の頭に恐ろしい考えが浮かんだ。由美子に万引きという考えが
一瞬頭に浮かんだのだ。

私の学校でも万引きして停学になった子がいたなぁ。あの子は万引きした時どんな
感覚だったんだろ?お父さんやお母さんは泣いたのかな?

そんな事を考えてる時、由美子は自分が父の事を考えている事に無性に腹が
たった。父が悲しむことを率先してしてやろうと思った。

お母さんゴメン・・・由美子はそう呟き店員や客が回りにいないかを見渡した。
幸い由美子の周りには店員も客もカメラもない。何回確認しても怖い。
捕まったら逮捕されちゃうのかな?そんな不安が頭をかすめた。

でも止めるわけにはいかない。心臓がドキドキする・・・。傘を見る振りを
する手も震えていて、呼吸も荒くなる。

「今だ!!」由美子は自分のタイミングを計り折り畳み傘を上着の袖口に忍ばせた。