今思うと馬鹿なことをした。
いわゆる“出会い系”と呼ばれるサイトに年甲斐もなくハマってしまったのだ。
本来の私なら、怪しげなスパムメールは即刻削除するし興味も持たない。
50も半ばを過ぎ、子どももみんな成人し、会社では一応役員に収まっている。
堅物と呼ばれるまでの生真面目さと一本気で今まで生きてきたのに…。
学生時代に柔道で鍛えた体にも衰えを感じていた。
若い頃は旺盛な性欲で妻を毎晩のように泣かせていた股間のムスコも元気がない。
そんな“人生の曲がり角”で感じていた寂しさを紛らわそうとしたのかも知れない。
自分だってまだまだ行ける。今まで女遊びもせずにやってきたんだ…。
そんなことを考えていたようにも思う。
家族の目を盗んでは毎夜のように、好みのタイプを探してサイトを覗いた。
女子高生のような未成年に手を出してはマズいという理性はあった。
もっともそんな子どもに興味はないが。
そんな時、人妻だという30間近の女からメールを貰った。
女の側からメールを貰ったのは初めてだった。
父親のような年上の男が好きだと言う女。
舞い上がった私は言われるままに顔写真を送った。
“お父さんの逞しいものが見たいな”
挑発するようにスケベなメールを送ってくる女。
自宅のトイレでこっそり勃起したムスコの写真を撮った。
携帯のカメラのシャッター音に驚いた。
“すごい!大きい!”
女の反応に男としての自信を取り戻せた気がした。
実際に会いたいという話になった時は、久々に熱くたぎる股間を抑えきれなかった。
…今思うと馬鹿なことをした。でもそう悔やんでも、もう遅かった。
待ち合わせ場所に現れたのは人妻でもなく、それどころか女でもなかった。
私同様、仕事帰りのサラリーマン風の男だったのだ。
「○○さんですよね?」
思いがけず爽やかに笑う若い男。
サイトで使っていたニックネームで呼ばれた瞬間、私は自分の状況を理解した。