遅い時刻になったし、そのあとすぐにオバサンにお礼とお詫びを言って海の家を出た。
海の家を出るとまた、撮影監督くんが指示して、俺を隠すように4人で前後左右をブロックして裏の道を駐車場に向かったが、
撮影監督くんは俺の背後の守備を担当した。

石段の下の彼らの自転車のところで「今日は長い時間付き合ってもらってありがとう」「二日も突き合わせたね」と
お礼を言ってそこで別れたのだが、彼らは自転車を押して俺の自動車のところまでついてきた。
ちょっと困ったのは、服は自動車に積んでいて手元には持ってないという設定だったが、実はバックパックに入っている。
設定を壊したくなかったので、彼らの前でバックパックから着替えを出すのはイヤだった。
仕方ないので、バックパックを車内に投げ込んで自動車のルームライトを消して片手でバックパックから服を引っ張り出しつつグローブボックスをゴソゴソして
車内から取り出したように見せた。なぜか彼らは俺が服を着ている間もずっと眺めていた。
服を着終えると、なんだか逆に恥ずかしい気分になった。
撮影監督くんも「服を着てるとなんかヘンな気がする」と同じようなことを言った。
考えてみると、服を着た姿を見せるのはその時が初めてで、それまで彼らが見てた俺はずっと全裸だった。
俺が車に乗り込む帰り際に撮影監督くんが「来てくれたらまた付き合いますよ」と言ってくれた。