ある駅に毎晩奇妙な老婆が姿を見せていた。
駅のホームをマックシェイクのカップとストローを持って徘徊しているのである。
(一体この婆さん、何者だ?)
誰もが怪訝そうに老婆の姿を見つめた。
うつろな目は宙を見つめている。
「ホームにつばは痰はやめておくれ〜 吐くならこの中に〜」
幾人かのサラリーマンや老人は差し出されたカップに
「カーーーッ ペッ」と痰を吐きだしていた。
嘔吐物を吐く酔っ払いもいた。
老婆は呪文を呟くように
「ホームにつばは痰はやめておくれ〜 吐くならこの中に〜」
とホームの端から端を歩いていた。
しばらくすると、なにやら不快な音が聞こえてきた。
「ずずーっ ずずーっ」
何かを吸う音である。
「ずずーっ ずずーっ ごくん
ずずーっ ずずーっずずーっ ずずーっ ごくん
ずずーっ ずずーっ ずずーっ ずずーっ ずずーっ ずずーっ・・・