ただ、親父は二人の様子がおかしくなっていることは気付いてて
母さんに何度か釘をさしていたらしい。
その事で親父と母さんの間でも亀裂が入って、派手に言い争いをした後
親父は愛人の家に逃げ、母さんと妹が家で2人になることが多くなった。
この辺りで妹は度々学校で問題を起こすようになる。
(学校からの呼び出しに、親父は時に、仕事中でもすっ飛んで行ったが、
母さんは「学校の事は学校で解決して下さい」と取り合わなかった)
ここまでの経緯は俺も知っていた。ただ、この問題では俺は蚊帳の外だったので
タッチしなかったし、妹も何もしゃべらなかった。
今月、親父に呼ばれて実家に帰る。
「明日本家に帰るから支度して今夜帰って来い。明日の行先は母さんには言うな」と。
家に着くと親父・母さん・妹の3人が既にリビングにいた。
一家4人揃うのは久し振りだが、妙に空気が張り詰めていた。
親父は俺の顔を見るなり低い声で「座れ」と促す。妹・母さん共に無言。
怖いわ、この空気嫌だなと思いながら座る。しばらく沈黙。
親父は全員見回した後、やっと話を切り出した。
「藍は母さんの一族とは縁を切らせる。もちろん生まれてくる子供もだ」
いきなり爆弾投下。
予期してなかった言葉に俺と母さん親父を見る。
妹は一瞬驚いた顔をするが、正面を見たまま。
「いきなり何を言い出すの?」
母さんは呆れた口調。
「その子の将来の為にもうち(母方家)のバックアップが必要だって、
そういう話でまとまってたじゃない」
「その話はなしだ。バックアップは俺の本家に頼むことにした」
「何勝手なことを・・」
言い終わらないうちに、親父は分厚い大きな封筒をテーブルの上に放り投げた。