つづき
もし、会ったらややこしいことになる。ヤったら、地雷になるだろう。
道義、理性、倫理、アラフォー、さまざまな言葉が頭を過ぎり、ブレーキングするも結局、抑えることができなかった。
適当な理由をつけて、飲みに行くことになった。ツイッターからの面接は初めてだったので、やや緊張。
出会い系とも違うので、勝手がよくわからん。健全に飲みに行くだけになるかもしれない。
などと、考えていたら相手と合流。若い。「じっくりコトコト」のポスターの榮倉奈々をより普通にした感じ(以下、エイクラ)。
年は10歳以上下だった。それだけでもう、名伏しがたい魅力がある。
化粧とかファッションが安定していない感じも若々しい。
早い時間の集合だったので、あまり店が開いておらず、適当なチェーン居酒屋にしけこむ。アルコールの薄いサワーと素っ気ないつまみをつつきながら、聞き役に徹する。
最近聴いているバンド、流行っている芸人等々、いまどきの若者らしい話が中心。
いや、同じ年頃のコよりもすこし幼いかもしれない。印象に残る話は一切なし。
ツイッターのような奇行はとくになく、会はなごやかに進む。
ところが、飲みはじめて2時間も経っていないころ、雲行きが怪しくなってきた。
エイクラが徐々に幼児退行し始める。
「エイクラちゃんはねー、○○の漫画が好きなのです!」とか「あれれ〜、この料理はなんですかぁ?」など、
幼児化していき、こちらが投げかける言葉への反応も乏しい。ブリっ子でもない。おそらく、これが電波ツイートの正体。
完全にあっちの世界に行かれても困るので、とりあえず相槌を欠かさず、相手の名を呼び続ける。話はほとんど通じない。
禅問答のようなやりとりが15分ほど続いたのち、ハっと我に返るエイクラ。ひさしぶりに目と目とが合った。
ことの顛末を話すと、エイクラみるみる神妙な顔つきに。「また、出てしまいましたか」。幼児退行はあまり覚えていない様子。
「たまに出るのです。今日はとくに緊張していたので」。そういうものなのか。
追求したところで何かあるわけでもないので、適当にフォローして、きまずい雰囲気の解消に務める。
ただ、また幼児退行したらエイクラはたぶん家に帰れなくなるので、互いのジョッキが空いたタイミングで店を出た。