646 なまえを挿れて。 sage 2021/01/22(金) 10:31:51.60 ID:6sj2QBJG0
薄暗く静まった部屋。そっと、ドアを開ける。

音がたたないように、足音を忍ばせる。
豆電球のか細い灯りを頼りに、暖かな妹の布団へ向う。

物に蹴躓いて、音をたてないように。一歩一歩踏み出す。

刹那。

みしり…床鳴りがする。奔る電撃、一瞬の硬直。
息を殺し、鼓動が速まる心の蔵に胸を当て、必死に堪える。

やがて辿り着く花園には、小さく可憐な一輪の花の蕾が。

蕾の感触、硬さを確かめたい。
だが、確かめたら、壊れてしまうかもしれない。

ここまで至りて想い悩む。引き返すか、このまま進むか。

思考の間。冷たい手が、布団に温められて蕾の温度と馴染むように、丁寧に時間をかける。

一流の仕事は手間暇をかける。冷たい手が、布団に温められて蕾の温度と馴染むように、丁寧に時間をかける。

一流の仕事は手間暇をかける。
この行為もそうだ。やるとなったら妥協はしない。

勇気を出して一歩を踏み出す。そっと手を伸ばし、触れてみる。寝息は変わらない。

よし。

薄暗い部屋の布団の中、妹を弄る悦び。