>>60 の続き

先輩と向かい合って食べていても、さっきの光景が頭に浮かんできて落ち着かなかった。
先輩が、いつもとは少し違ったように見えて、俺の一方的で勝手な思いなんだが、先輩との距離がずっと縮まっ
たように感じた。

翌日になっても先輩を見ると昨日の光景が浮かんでくる。それに仕事をしていても、ついその姿を目で追って
しまう自分に気付いた。
仕事が終わって、こんな自分をどうすればいいんだろうかと、冷静になるように自分に言い聞かせながら考え
てみた。
俺は先輩が好きだ。先輩は俺が新入社員の頃、戸惑うことが多い俺に、なんでも親切に教えてくれた。
また、彼女が美人の才女として他部門からも一目置かれている事もわかった。
こんな経緯から、年上の先輩に憧れのような気持ちが強かった。
彼女と二人で食事に行ったり飲みに行きたいと想像はしても、先輩は高嶺の花で、俺なんかが誘うのはあまり
現実味がなく、先輩くらいの美人なら彼氏がいても当然だと自分で思い込んでしまっていた。
それが、昨日の出来事で、先輩に対する強い欲望に気付いてしまった。
俺でも手を伸ばせば届くかもしれない一人の生身の女性なんだと再認識できたような気がした。
俺は「彼女を誘ってみよう。結果はともかく、自分の思いを伝える行動をするべきだ」と自分に言い聞かせた。