「僕くんも良い子見つかるといいのにね こことか来たことある?夜景、綺麗だよ」
「バイト先のみんなでならあるよ だいぶ前の話だけどね」
同級性の既婚者の女にアルバイトの話をする独身の僕をみて若干引いてたと思う。
しかしそんなことを顔に出すことなく今日はすごく楽しかったことを僕に伝えてくる。
結婚して育児に忙しい毎日を送る中で年に2回、夜飲みに出れることは本当に楽しい時間だったんだろう。
それから1つ申し訳なさそうに話し始めた
「私は楽しかったんだけど、僕くんはなんか…あれだったね 一応みんなには声をかけたんだけど」
そう、僕を除く独身組はみんな不参加で、今回参加したのは既婚者のクーちゃん目当てのリア充のみだったんだ。
当然話が合わず、なんで最後まで残ってるのか不思議に思われてたんだろう。
僕が途中お手洗いに行ったときも帰ってきたらその席は誰かが座っていて座る場所がなかった。
それを見たクーちゃんがさりげなく席を立って座ることができたり。
「いいよ。どうして僕が呼ばれたのか不思議だったんだ」
ふたりの間に沈黙が続いた。10秒数秒かもしれないし1分くらいかもしれない。
どうしていいかわからず帰ろうと後ろに倒していた背もたれを戻したときにクーちゃんが僕を抱きしめてきた。
「僕くん、優しいね。今日は来てくれてほんとにありがとう」
幹事で同窓会では20人近くが集まってくれたのに今回はわずか数人。
断る人がほとんどで無視する人も少なからずして辛かったんだろう。
そんな中で話ぶりから僕とももう会えないと感じてしまい途端に寂しさが込み上げてきたんだろう。
「なになになにー どうしたん?クーちゃんも優しいね。僕に席さりげなく譲ってくれたでしょ」
するとにやつきながら僕の目を見て言ってきた。「僕くんは椅子取りゲームがへたくそ。
空いてなかったら無理やり入ってきたらいいんだよ。それまで座ってたんだから遠慮することないの」
自分の弱い心を見透かされえぐられるような感情に僕は思いのたけをぶつけるように強く抱きしめ、キスをした。