酒に弱い恵美は二杯、三杯とコップのビールを飲んでると、頬を赤らめて言葉も少しずつたどたどしくなる。
俺が「恵美、もうやめとけ」と声をかけても、恵美は「だいじょぶ……です」と笑い、兄が勧めるままにコップにビールを注いでもらっていた。
やがて、恵美はテーブルに肘をつき、眠そうに目を細める。
「恵美、寝室で休め」と俺が言い、恵美を抱きかかえ寝室連れていって布団に横たえると、すぐに小さな寝息が聞こえてきた。
居間に戻ると兄が一人でビールでなくて湯呑で酒を飲んでいた。
兄はゆっくりと酒を口に含み、ぽつりとつぶやいた「……離婚してから、もう女なんて十年近く縁がないんだ」
不意に告げられた言葉に、俺は返す言葉が見つからなかった。
「悪いな、変なこと言って」と照れる兄に、俺は「いや……別に…」と答え、兄の湯呑に酒を注いだ。