「…自首するつもりはないんだな?なんなら、付き添ってもいいんだぞ?」
冷静を装い、余裕を見せ、ジョニーを諭すフリをする祐介。
「モチロンデゴザルyO。バザールデゴザール・ギャハッ(はぁと)」
またしても、机をバンババンッ!とリズミカルに叩き、笑い転げるジョニー。
そのリズム感は彼に流れるニグロの血がなせるものか。
(だめだ…。こいつ、なんとかしないと…)
明らかにラリっているジョニーと、ぽつねんとテーブルの上におかれている
ヘロインの包みを放置し、ファミレスの入り口の公衆電話へと向かう祐介。
携帯から連絡しては、匿名の通報ができないからである。
自分もかかわりを疑われては困る。
公子が死んでから半年。
未だ、病院で昏睡状態のまま眠りこける風子の介護ができるのは祐介だけなのである。
(とにかく、ジョニーをぶち込み、なおかつ自分は一切の無関係を貫く)
そんな虫のいいことを考えているのである、芳野祐介は。
思えば、そんな浅慮、そんな浅薄さが、彼をヘロインマスターへの道へと誘ったのかもしれない。